不動産売却の税金と特例 / Q&A

不動産売却後に税務署から届くお尋ね:無視してよいか・回答の書き方・申告の要否

この記事のもくじ
  1. お尋ねが届いたら、まず見る4点
  2. 申告が要るかの判断:利益があるかで決まる
  3. お尋ねと税務調査の事前通知は、ここで見分ける
  4. 状況別の動き方:申告済み・未申告・赤字
  5. 回答の書き方:手順と注意
  6. 申告が必要だった場合の動き方

不動産を売ったあとに税務署から届くお尋ねは、売却の内容を確かめ、確定申告が必要かどうかを尋ねる文書です(国税庁のページに「お尋ね」の定義は載っていないため、文面と項目は届いた文書で確かめます)。届いたことだけで税金がかかると決まるわけではありません。回答する前に、「利益が出たか」と「特例を使うか」を自分で計算して、申告が要るかを判断するのが順番です。

お尋ねが届いたら、まず見る4点

届いた文書を開いたら、回答の前に次の4点を確かめます。

  1. 差出人の税務署と担当部署、連絡先。 分からない点は、ここに電話して聞けます。
  2. 回答の期限と方法。 郵送か、オンラインかなど、書かれた方法に従います。
  3. 対象になっている物件。 売った年と物件の所在地が、自分の売却と合っているか。心当たりがない場合も、そのまま連絡先に問い合わせます。
  4. 「調査」「事前通知」という言葉があるか。 あれば、お尋ねとは別の手続きの可能性があり、扱いが変わります。

国税庁は、無申告加算税の率を、調査の事前通知を受ける前か後かで分けています。事前通知の前に自主的に申告すれば5%、後だと10%以上です(No.2024)。文書の種類がどちらか迷うときは、連絡先に電話して「これはお尋ねですか、調査の事前通知ですか」と聞くのが確実な確かめ方です。

申告が要るかの判断:利益があるかで決まる

申告が要るかは、国税庁の計算式で決まります。

譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)= 譲渡所得金額(利益)

国税庁は、この計算で利益がある人は、原則として確定申告が必要としています。次の表で、自分の状況を当てはめてください。

早見表:計算結果ごとの申告の要否
計算結果 申告 回答のしかた
利益がある(特例を使わない) 必要 売った内容を回答し、別に申告書を出す
利益はあるが、3,000万円控除などで税額が出ない見込み 必要 特例は申告書に書いて受ける。税額ゼロでも申告書を出す
利益がなく赤字 原則不要 売却額と取得費・費用を示し、赤字だった旨を伝える
計算がまだできていない 先に計算 取得費不明なら売却額の5%で試算する

取得費は購入代金に購入時の手数料などを足した額で、建物は減価償却費相当額を引きます。譲渡費用は仲介手数料、測量費、印紙代など、売るために直接かかった費用です(No.3202)。数字の探し方は取得費不明の不動産売却の税金:5%の概算と取得費の探し方にあります。

マイホームの3,000万円特別控除は、売った年の前年・前々年に同じ特例を使っていないなどの条件があります(No.3302)。条件に当たるかを自分で判断できないときは、譲渡所得税の相談窓口:税務署の電話相談と確定申告会場の使い方の国税相談専用ダイヤルで聞くのが近道です。

回答に使う資料をそろえる

お尋ねの項目は文書ごとに違うため、書かれた項目に沿って書きます。利益を計算する材料は共通なので、先に次の資料を集めておくと、回答も申告も進みます。

知りたいこと 手元の資料
売った日、売った金額 売買契約書、決済の明細、引渡しの記録
売った物件の特定 登記事項証明書、固定資産税の通知書
いつ・いくらで取得したか 購入時の売買契約書、通帳の記録。相続なら亡くなった人の取得時の資料
売るためにかかった費用 仲介手数料の領収書、測量費、印紙代
住んでいたか 住民票、戸籍の附票

相続した家は、取得費と取得日を亡くなった人から引き継ぎます(No.3270)。回答に取得時期を書くときは、相続日ではなく、亡くなった人が取得した時期を基準に長期か短期かを数えます。相続した実家の売却の流れは、不動産売却の確定申告:やり方・期限・必要書類を順番に解説で確かめられます。

お尋ねと税務調査の事前通知は、ここで見分ける

お尋ねは「売却の内容を教えてください」という文書での確認で、国税庁のページに定義は載っていません。一方、税務調査には法律に決まった手順があります。国税通則法74条の9は、調査の前に税務署長等が納税義務者へ、調査を始める日時、場所、目的、対象の税目、対象の期間、対象の帳簿書類などを通知すると定めています。

見るところ お尋ね 調査の事前通知
書かれていること 売却した物件、売った年、申告の有無を確かめる項目 調査の日時・場所・目的・税目・期間・対象書類
求められる動き 文書の指示どおりに回答する 日時・場所の変更は、合理的な理由を付けて相談できる(同条2項)
迷ったとき 文書の連絡先に「これはお尋ねですか」と聞く 税務代理人(税理士)がいれば、その人にも通知される

日時と場所が指定されていれば調査の事前通知の可能性が高く、売却の内容を尋ねる欄だけならお尋ねです。どちらか決めかねるときは、連絡先に電話して種類を聞くのが一番早い確かめ方です。

状況別の動き方:申告済み・未申告・赤字

お尋ねが届いた時点の状況で、次にやることが変わります。

状況 まずやること 回答の方向 回答のあとに進む先
申告済み(売った年に確定申告をした) 控えの申告書と内訳書を出し、お尋ねの項目と数字を合わせる 申告した内容どおりに書く 数字の誤りに気づいたら、税金が増えるなら修正申告、払いすぎなら更正の請求
未申告で、計算すると利益がある 利益と税額を計算し、申告書の準備を始める 売った内容を回答し、申告する旨を伝える 期限後申告。早いほど無申告加算税の率が低い
未申告で、計算すると赤字 取得費と費用の資料で赤字を確かめる 売却額、取得費、費用を示し、赤字だった旨を書く 原則は申告不要。ただし居住用財産の譲渡損失の特例を使うなら申告が必要
未申告で、特例で税額がゼロになる見込み 特例の要件を満たすか確かめる 特例を使う予定と伝える 税額ゼロでも、特例を受けるには申告書の提出が必要

回答のあとの分かれ道は、次のとおりです。

  • 期限後申告:翌年3月15日までに出していないとき。税金は申告と同時に納めます。無申告加算税は、調査の事前通知の前に自主的に出せば5%です。期限後1か月以内に自主的に出し、税金も期限までに納めているなど一定の条件では、課されません(国税庁No.2024)。
  • 修正申告:出した申告が少なすぎたとき。調査の事前通知の前に自主的に出せば、過少申告加算税はかかりません(国税庁No.2026)。
  • 更正の請求:払いすぎていたとき。原則として法定申告期限から5年以内に、税務署へ請求書を出します(国税庁No.2026)。

回答の書き方:手順と注意

回答の書き方に決まった型はなく、届いた文書に従います。書き方のコツは次の3つです。

  • 数字は資料の写しと突き合わせて書く。 記憶で書くと売った日や金額がずれます。
  • 書けない欄は空欄にせず、理由を添える。 たとえば「取得時の契約書が見つからない」と書き、5%概算で計算した旨を伝えます。
  • 回答と申告の控えを残す。 後から問い合わせが来たときに、同じ数字で答えられます。

取得費が分からない場合の書き方の例:「亡父が昭和の年代に取得した土地・建物で、購入時の契約書は見つかっていません。取得費は、売却額の5%相当額で計算しています」

回答を書いている途中で、利益が出ていると分かったら、申告書の準備に移ります。申告書に添える譲渡所得の内訳書の書き方は譲渡所得の内訳書の書き方:相続した不動産を売った場合の記載例で扱います。

税務署へ電話するときの文例

書き方に迷ったときや、届いた文書の種類が分からないときは、文書に書かれた連絡先へ電話します。番号と受付時間は、文書の記載に従ってください。一般的な相談先は譲渡所得税の相談窓口:税務署の電話相談と確定申告会場の使い方にあります。

文例1(種類を確かめる):「令和○年に土地を売却した件で、そちらから文書が届いた者です。これはお尋ねの文書でしょうか、それとも調査の事前通知でしょうか。回答の期限と方法も教えてください」

文例2(赤字のとき):「文書で売却について尋ねられています。計算したところ、取得費と売却費用のほうが売却額より大きく、利益は出ていません。この場合、回答だけで足りるのか、申告書も出す必要があるのかを確認したいです」

電話の前に、売買契約書、取得時の書類、仲介手数料の領収書を手元に置くと、聞かれたことにその場で答えられます。電話の内容と日付、話した担当者の部署をメモに残しておきます。

申告が必要だった場合の動き方

売った年の翌年2月16日から3月15日の申告期間を過ぎていれば、期限後申告になります。出すのが早いほど、加算税の率も延滞税の日数も小さくなります。手順と率は不動産売却の確定申告を忘れたら:期限後申告と加算税の扱いにまとめています。

税額が大きい、特例のどれを選ぶか迷う、共有者がいるといったときは、税理士に頼む場面です。申告書の作成や税額の計算を任せられるのは税理士で、費用の確かめ方は不動産売却の確定申告の税理士費用と、税理士に頼むべきケースにあります。

よくある質問

Q. お尋ねに回答すれば、確定申告をしたことになりますか?

回答は申告書の提出とは別の手続きなので、回答しただけでは申告したことになりません。利益が出ていて申告が必要なら、回答とは別に、売った年分の確定申告書を出します。回答の書き方で迷うときは、届いた文書に書かれた担当部署に電話して確かめます。

Q. 売却して損が出ていたら、回答も申告も要りませんか?

国税庁は、利益がある人は原則として確定申告が必要としています。損が出ていれば原則は申告不要ですが、お尋ねの回答は、届いた文書の指示に従って損が出たことを伝える形になります。居住用財産の譲渡損失の特例を使うなら、損でも申告が必要です。

Q. お尋ねを無視するとどうなりますか?

無視して済ませることはお勧めできません。回答しないこと自体の扱いは文書の説明に従いますが、利益が出ているのに申告もしないままだと、期限後申告になり、無申告加算税と延滞税がかかり得ます。調査の事前通知の前に自主的に出せば無申告加算税は5%で、期限から1か月以内に自主的に出して税金も期限までに納めていれば課されない場合もあります。損が出ているだけなら、その旨を回答するか電話で伝えれば足ります。

Q. 相続した実家を売りました。取得費が分からなくても回答できますか?

回答や申告では、取得費が分からないときは売った金額の5%を取得費にできます。相続した不動産の取得費と取得日は、亡くなった人の取得時のものを引き継ぐので、契約書や通帳の記録が残っていないかを探してから、5%を使うかを決めます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

不動産売却の確定申告を忘れたら:期限後申告と加算税の扱い

譲渡所得税の相談窓口:税務署の電話相談と確定申告会場の使い方

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取得費不明の不動産売却の税金:5%の概算と取得費の探し方