不動産売却の税金と特例 / 文例

譲渡所得の内訳書の書き方:相続した不動産を売った場合の記載例

この記事のもくじ
  1. 内訳書の構成:面ごとに書くこと
  2. 記載例の前提:相続した家を売った場合
  3. 1面・2面の書き方:親の取得ではなく「売ったとき」の事実を書く
  4. 3面の書き方:取得費・譲渡費用・計算
  5. 特例を使うとき・間違えやすいところ

譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】は、土地や建物を売った譲渡所得の金額を出す計算書で、売買契約ごとに1枚使います。相続した家を売る場合に、とくに気をつけるのは、取得日と取得価額に親(被相続人)のものを書くことと、建物の減価償却、取得費加算の書き方です。この記事は、国税庁の令和7年分の記載例に沿って、筆者が組んだ相続した家の記載例で、各面の欄を順に示します。

内訳書の構成:面ごとに書くこと

内訳書は1面から5面まであり、使う面は適用する特例で変わります。国税庁の記載上の注意事項は、次のように分けています。

早見表:内訳書の面と、書く場面
面 書く内容 使う場面
1面 住所、氏名、職業、電話番号 常に書く
2面 売った物件の所在地・面積・利用状況、契約日と引き渡し日、買主、譲渡価額と代金の受領状況 常に書く
3面 取得費(購入代金、建物の償却費相当額)、譲渡費用、譲渡所得金額の計算 常に書く
4面 買い換えた資産の明細と計算 買換え・交換の特例を使うとき
5面 被相続人の居住用財産(空き家)の特別控除の要件の確認 空き家の3,000万円特別控除を使うとき

何も特例を使わない、または取得費加算や自宅の3,000万円控除を使う場合は、1面から3面を書きます。空き家特例を使う場合は1面・2面・3面・5面で、内訳書の欄にも印を付けます。特例の添付書類は、内訳書に添えて出します(一覧は不動産売却の確定申告の必要書類:特例ごとの添付書類一覧)。

記載例の前提:相続した家を売った場合

以降の記載例は、次の前提で筆者が組んだ仮の数字です。国税庁の記載例(事例1・事例2)の欄の書き方を、相続した家に当てはめています。

項目 内容
売った物件 親が1992年4月に新築で買った土地と木造の建物。相続後は誰も住んでいない
取得価額(親) 土地800万円、建物1,500万円(契約書で分かれている)
相続 親が2025年10月5日に亡くなり、子(私)が相続
相続税 申告は2026年7月に済み。私の相続税額1,200万円
売買 契約2026年8月10日、引き渡し2026年9月25日、売買代金4,200万円
費用 仲介手数料145.2万円、印紙税1万円、測量費30万円
精算金 引き渡しから年末までの固定資産税等の精算金12万円を受領

この家は1992年築で、昭和56年5月31日以前の建築という空き家特例の要件に当たらないため、取得費加算を使う例にしました。相続税の申告は売った年の確定申告より先に済んでいるので、確定申告に加算をそのまま入れます(後から入れるときは取得費加算の更正の請求:相続税が後で決まった時の手続き)。

1面・2面の書き方:親の取得ではなく「売ったとき」の事実を書く

1面は、売った年の1月1日以後に転居した人だけ、前の住所も書きます。2面は、売った物件と売買の事実を、契約書のとおりに書く欄です。

欄 書き方の決まり 記載例
所在地 売買契約書に書かれた物件の所在地 契約書の所在地(住居表示も併記)
土地の種類・面積 該当するものにチェック。実測して売ったときは、実測面積も書く ☑宅地、実測164.82㎡、公簿165.30㎡
建物 該当するものにチェック ☑居宅、95.00㎡
利用状況 売る直前の利用で選ぶ。該当がなければ「その他」 ☑未利用
売買契約日 契約書の日付 令和8年8月10日
引き渡した日 登記に必要な書類を買主に渡し、最終代金を受け取った日 令和8年9月25日
買主 契約書の買主の住所・氏名・職業 契約書のとおり
①譲渡価額 売買代金に、未経過分の固定資産税等の精算金を加える 42,000,000円+120,000円=42,120,000円
代金の受領状況 手付金・残金などを回ごとに書く 1回目 令和8年8月10日 4,200,000円/2回目 令和8年9月25日 37,920,000円
売った理由 該当するものにチェック。なければ「その他」 ☑その他(相続した家を手放すため)

2回目の37,920,000円は、残金37,800,000円と精算金120,000円の合計です。国税庁の記載例(事例1)も、残金と精算金を合わせて2回目に書いています。共有で売った場合は、あなたの持分と、他の共有者の住所・氏名・持分を書き、譲渡価額は全体と持分に応じた額を二段書きにします。

3面の書き方:取得費・譲渡費用・計算

3面が、金額を出す中心です。相続した家では、「どなたから、いつ、いくらで購入されましたか」の欄に、親が買ったときの購入先、年月、代金を書きます。

土地:購入先 △△住宅(株)/平成4年4月/8,000,000円 建物:同上/平成4年4月/15,000,000円 構造 ☑木造

土地の小計(イ)が8,000,000円、建物の小計(ロ)が15,000,000円です。登記費用を相続人が払っていたら、事業に使っていない土地・建物では取得費に加えられるので、領収書があれば欄を足します(概算取得費の5%を使う場合は加えられません)。次に建物の償却費相当額を計算します。

15,000,000円(ロ)×0.9×0.031×34年=14,229,000円(ハ)

経過年数は、平成4年4月から令和8年9月までの34年5か月で、5か月を切り捨てて34年です。取得費は(イ)+(ロ)−(ハ)で、8,000,000+15,000,000−14,229,000=8,771,000円です。検算は、15,000,000×0.9=13,500,000、×0.031=418,500、×34=14,229,000です。

取得費加算を使う場合は、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」で出した金額を、取得費の欄の上段に「○相」と付けて二段書きにします。この例の加算額は、相続税額12,000,000円×売った財産の相続税評価額25,000,000円÷取得した財産の価額100,000,000円=3,000,000円です。

取得費 ○相3,000,000円(上段)/取得費の金額 8,771,000円+3,000,000円=11,771,000円

譲渡費用は、支払先、支払年月日、金額を並べます。

費用の種類 支払先 支払年月日 金額
仲介手数料 △△不動産(株) 令和8年9月25日 1,452,000円
収入印紙代 (売買契約書の印紙) 令和8年8月10日 10,000円
測量費 ○○測量事務所 令和8年7月20日 300,000円
譲渡費用(③) 1,762,000円

最後の「譲渡所得金額の計算」は、次の順で書きます。

欄 金額 計算
区分 長期 親の取得(1992年)から売った年の1月1日まで5年を超える
A 収入金額(①) 42,120,000円
B 必要経費(②+③) 13,533,000円 11,771,000+1,762,000
C 差引金額(A−B) 28,587,000円
D 特別控除額 なし この例は控除を使わない
E 譲渡所得金額(C−D) 28,587,000円

この28,587,000円を、申告書第三表(分離課税用)に転記して、税額を計算します。記入の順番は不動産売却の確定申告:やり方・期限・必要書類を順番に解説の手順の表にあります。税率は、長期なら約20.315%です(譲渡所得税の税率:長期20.315%・短期39.63%と所有期間の数え方)。

特例を使うとき・間違えやすいところ

特例を使うと、書き方が変わる欄があります。

  • 自宅の3,000万円特別控除・空き家の3,000万円特別控除:Dの「特別控除額」の欄に控除額を書き、特例適用条文の欄に条文を書きます。控除は、Cの差引金額が限度で、最高3,000万円です(国税庁の記載例・事例2)。空き家特例は5面も書きます。
  • 買換えの特例:4面に買い換えた資産を書き、3面の「4」ではなく、4面の計算を使います。書き方は税務署に確かめる欄が多いので、作成コーナーの案内を使うのが近道です。

間違えやすいのは、次の4点です。

  • 取得日を相続した日で書く:親の取得日を書きます。所有期間は、親の取得から数えます。
  • 建物の償却を忘れる:購入価額のまま取得費にしない。
  • 精算金を落とす:譲渡価額に含めて書く。
  • 契約ごとに分けない:契約が2つあれば、内訳書も2枚にします。

取得費の考え方は相続不動産の売却益の税金:親の取得費と取得日を引き継ぐしくみに、取得費加算の内容は取得費加算の特例:相続税を払った人が売却益の税金を減らすしくみにあります。内訳書は令和7年分以降用の様式で、記載例は令和7年分のものです。令和8年分の手引きが出たら、最新の記載例で見直してください。申告を忘れたときの扱いは不動産売却の確定申告を忘れたら:期限後申告と加算税の扱いで確かめられます。

よくある質問

Q. 内訳書は、売った物件ごとに1枚ですか、契約ごとに1枚ですか?

契約ごとに1枚です。国税庁の記載上の注意事項は、一の契約ごとに1枚ずつ使って、確定申告書と一緒に提出するとしています。土地と建物を同じ契約で売ったなら、1枚にまとめて書きます。

Q. 相続した家の取得日は、相続した日で書けばよいですか?

親が買った(建てた)日を書きます。相続や贈与で取得した土地・建物は、被相続人の購入年月日と購入価額が、その土地・建物の購入年月日と購入価額になるためです。相続した日で書くと、所有期間の判定を誤り、短期の税率で計算しかねません。

Q. 買主から受け取った固定資産税の精算金は、どこに書きますか?

売った日から年末までの分として受け取った固定資産税と都市計画税の精算金は、譲渡価額に含めて書きます。受領の状況を書く欄には、残金と精算金を合わせた額を書く記載例になっています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

不動産売却の確定申告の必要書類:特例ごとの添付書類一覧

不動産売却の確定申告:やり方・期限・必要書類を順番に解説

取得費加算の計算明細書の書き方:記載例と添付する書類

不動産売却の税金計算の減価償却:建物の取得費の計算方法