相続税と申告 / Q&A

相続税での家屋の評価額:固定資産税評価額をそのまま使う理由

この記事のもくじ
  1. 家屋の相続税評価額は「固定資産税評価額×1.0」
  2. 貸家・建築中・増改築した家の評価
  3. 門・塀・庭木などの附属設備の扱い
  4. 固定資産評価証明書の取り方と、評価で確かめること

相続税での家屋(建物)の評価額は、固定資産税評価額に倍率1.0を掛けた額、つまり固定資産税評価額そのものです(国税庁 No.4602、財産評価基本通達89)。固定資産税評価額は、家のある市区町村(東京23区は都税事務所)で固定資産評価証明書を取れば分かります。ただし、人に貸している家、建築中の家、増改築が評価に反映されていない家などは、計算が変わります。この記事では、そのまま使える理由、場面ごとの計算、証明書の取り方を順に説明します。

家屋の相続税評価額は「固定資産税評価額×1.0」

財産評価基本通達89は、家屋の価額を「固定資産税評価額」に「別表1に定める倍率」を掛けて評価すると定めています。この倍率は国税局長が年ごとに財産評価基準書で示しており、たとえば令和8年分の東京都の基準書は「家屋の固定資産税評価額に乗ずる倍率は1.0」としています。国税庁のタックスアンサー No.4602 も、家屋は固定資産税評価額に1.0を掛けた金額で評価すると説明しています。

ここでいう固定資産税評価額は、市区町村が固定資産課税台帳(家屋課税台帳など)に登録した価格です(地方税法381条、通達89の定義)。毎年の固定資産税を計算するために市区町村が決めている価格を、相続税でも借りて使う仕組みです。家屋ごとに市場で売り値を調べる代わりに、すでに公的に決まっている価格を使うので、相続人が自分で鑑定を頼む必要はありません。

気をつけたいのは、この評価額は「売れる値段」とは別の数字だという点です。古い木造の家は固定資産税評価額が数十万円になることもありますが、それは相続税の評価額であって、売却価格の目安ではありません。家と土地は別々に評価し、土地は路線価や倍率で計算します。両者の違いは相続する不動産の評価方法:路線価・倍率方式・建物の評価額の違いで整理しています。

貸家・建築中・増改築した家の評価

固定資産税評価額をそのまま使えない場面を、通達と財産評価基準書の定めでまとめます。

家屋の状態ごとの相続税評価
家屋の状態 評価額の出し方 根拠
自分や家族が住んでいた家 固定資産税評価額×1.0 評価基本通達89
人に貸していた家(貸家) 自用の評価額−自用の評価額×借家権割合×賃貸割合 評価基本通達93
亡くなった時点で建築中の家 その時点までにかかった費用(費用現価)×70% 評価基本通達91
増改築が固定資産税評価額に反映されていない家 反映済み部分の評価額+増改築部分の価額 財産評価基準書の注記(評価基本通達5)
分譲マンションの一室(2024年1月以後の取得) 固定資産税評価額×区分所有補正率 国税庁 No.4667

貸家は、借りている人がいる分だけ評価額を下げます。借家権割合は国税局長が定める割合で、令和8年分の東京都は100分の30です。賃貸割合は、壁や扉で区切られ独立した出入口がある部分(各独立部分)の床面積のうち、亡くなった時点で貸していた部分が占める割合です。継続して貸していた部屋がたまたま空いていただけなら、貸している部分に含めてよいとされています(評価基本通達26(2)とその注)。筆者が置いた例で計算すると次のとおりです。

  • 固定資産税評価額1,000万円、全室を貸していた:1,000万円−1,000万円×0.3×1.0=700万円
  • 同じ家で、床面積の4分の3を貸していた:1,000万円−1,000万円×0.3×0.75=775万円

建築中の家は、まだ固定資産税評価額がついていないため、亡くなった時点までにかかった建築費用(費用現価)の70%で評価します。工事の請負契約書と、それまでの支払いの記録を集めておきます。

増改築したのに固定資産税評価額が変わっていない家は、増改築していない部分の固定資産税評価額に、増改築部分の価額を足して評価します。増改築部分は、状況の似た近くの家屋の固定資産税評価額を基に、構造・経過年数・用途の差を考えて決めます。似た家屋がなければ、増改築部分の再建築価額から償却費相当額を引いた額の70%です。申告期限までに新しい固定資産税評価額がつけば、その額を使います。

分譲マンションは計算が別の段階に分かれるので、マンションの相続税評価:2024年からの新しい評価方法と影響で確かめてください。

門・塀・庭木などの附属設備の扱い

家屋に取り付けられた設備のうち、電気・ガス・給排水・衛生・冷暖房などの設備で家屋と構造上一体になっているものは、家屋の評価額に含まれます(評価基本通達92(1))。別に計上する必要はありません。

一方、次のものは家屋とは別に評価します。

設備 評価の仕方(評価基本通達92)
門・塀・外井戸など 再建築価額から建築後の償却費の合計(または減価の額)を引いた額の70%
庭木・庭石・あずまや・庭池など(庭園設備) 今の状態で取得するとした場合の価額(調達価額)の70%

一般の住宅の門や塀、庭木で大きな金額になることは多くありませんが、立派な庭園や高価な庭石がある家では評価の対象になります。

固定資産評価証明書の取り方と、評価で確かめること

家屋の評価額を確かめる手順です。

  1. 家屋の一覧を作る:亡くなった人が持っていた家屋を、市区町村ごとに書き出す。未登記の物置や離れも、固定資産税がかかっていれば評価の対象になる。漏れを防ぐには相続登記の前に名寄帳で親の不動産を漏れなく調べる取り方の方法が使える。
  2. 固定資産評価証明書を請求する:家屋のある市区町村の固定資産税の担当窓口(東京23区は都税事務所)に、亡くなった日を含む年度の証明書を請求する。相続人が請求するときは、亡くなった人との関係が分かる戸籍などを求められるので、持ち物と手数料は窓口の案内で確かめる。
  3. 毎年の課税明細書と照らす:固定資産税の納税通知書に同封される課税明細書の「価格」欄で、おおよその額を先に知ることもできる。
  4. 家屋ごとに評価額を出す:自用・貸家・建築中などの区分に当てはめて計算し、共有なら持分の割合を掛ける。
  5. 土地の評価とあわせる:家屋の評価額と敷地の評価額を合計し、基礎控除を超えるかを見る。

家と土地を合わせて相続税がかかりそうかを見積もる方法は不動産がある家の相続税:基礎控除を超えるかを評価額で見積もるで説明しています。貸家の借家権割合は都道府県ごとの財産評価基準書に載っているので、家屋のある都道府県の、亡くなった年分のものを国税庁の路線価図・評価倍率表のサイトで開いて確かめます。

「相続税 家屋 評価額」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。次に読むなら相続税が払えない場合の選択肢:延納・物納・売却のどれを選ぶかです。

よくある質問

Q. 築50年の実家の評価額が、固定資産評価証明書で30万円ほどでした。本当にこの額で申告してよいのですか?

自分で住んでいた家なら、固定資産税評価額に倍率1.0を掛けた額が相続税の評価額なので、その額で計上します。古い木造の家は評価額が低くなりやすく、売れる値段とは関係なく決まります。家の評価額が低くても、敷地の土地は路線価などで別に評価するので、土地の計算を忘れないようにします。

Q. 家を兄弟2人で共有して相続した場合、評価額はどうなりますか?

家屋全体の評価額を出してから、それぞれの持分の割合を掛けて各人の取得額にします。たとえば評価額600万円の家を2分の1ずつ相続すれば、1人あたり300万円です(筆者の計算)。

Q. 亡くなった後に家を解体しました。評価額は0円になりますか?

なりません。相続税の評価は亡くなった日の状態で行うので、その日に建っていた家屋の評価額を計上します。解体した後に土地を売る場合の税金の特例は、売却の税金の記事で別に確かめます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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