相続税と申告 / 制度解説

相続する不動産の評価方法:路線価・倍率方式・建物の評価額の違い

この記事のもくじ
  1. 相続する不動産の評価方法の全体像
  2. 土地:路線価方式と倍率方式
  3. 建物:固定資産税評価額×1.0
  4. 評価額・時価・査定額・公示価格の違い
  5. 評価が変わる主な場面
  6. 自分で出せる範囲と、税理士に頼む範囲

相続する不動産の評価方法は、土地と建物で分かれます。土地は、路線価が決まっている地域なら「路線価×補正率×面積」の路線価方式、それ以外の地域なら「固定資産税評価額×倍率」の倍率方式で評価します。**建物は「固定資産税評価額×1.0」**で、固定資産税の評価額と同じです(国税庁のコード4602)。この評価額は相続税を計算するための額で、売れる値段や不動産会社の査定額とは別のものです。この記事では3つの評価方法の違いと、評価額・時価・査定額の違い、貸している土地やマンションで評価が変わる場面を整理します。

相続する不動産の評価方法の全体像

早見表:相続する不動産の種類ごとの評価方法
不動産の種類 評価方法 使う資料
路線価地域の宅地 路線価×奥行価格補正率などの補正率×面積 路線価図(国税庁の財産評価基準書)
倍率地域の宅地・田・畑・山林 固定資産税評価額×倍率 評価倍率表、固定資産税評価額
建物(自宅など) 固定資産税評価額×1.0 固定資産税の課税明細書・評価証明書
分譲マンション 敷地全体の価額×敷地権の割合+区分所有部分の固定資産税評価額。2024年1月1日以後の相続は区分所有補正率を掛ける場合がある 登記事項証明書、課税明細書
人に貸している土地・建物 権利関係に応じて評価額を調整(貸家建付地・貸宅地など) 借地権割合・借家権割合、賃貸の状況

土地の評価は、宅地・田・畑・山林などの地目ごとに行います。同じ人が持つ土地でも、自宅の敷地と貸している駐車場では使い方が違うので、別々に評価するのが基本です。

土地:路線価方式と倍率方式

路線価方式は、市街地の土地に使う方法です。路線価は、道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額で、路線価図に千円単位で書かれています。評価する土地の奥行きや形、角地かどうかに応じた補正率を掛けて、面積を掛けます。

倍率方式は、路線価が決まっていない地域の方法です。その土地の固定資産税評価額に、地域ごとに決められた倍率を掛けます。固定資産税評価額は、都税事務所や市区町村役場で確かめられます。

国税庁の2026年7月の報道発表によると、路線価等は1月1日を評価時点とし、1年間の地価変動などを考えて、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に決められています。令和8年分(2026年分)の路線価等は2026年7月1日に公開されました。どちらの地域かの区分は、市街地的な形態の地域を路線価地域、それ以外を倍率地域とするのが原則とされています。

相続で使うのは、亡くなった年の分の路線価・倍率です。路線価図の読み方と補正率の当て方は、次の相続する土地の評価額の調べ方:路線価図の読み方と計算の手順で、筆者の計算例を使って順番に示します。

建物:固定資産税評価額×1.0

家屋は、固定資産税評価額に1.0を掛けて評価します(コード4602)。毎年届く固定資産税の納税通知書に付いている課税明細書か、市区町村で取る評価証明書で額が分かります。

筆者の計算例:自宅の土地が路線価200千円の普通住宅地区にあり、間口10m・奥行15m・150㎡の長方形(補正率1.00)。建物の固定資産税評価額は600万円。 土地 200,000円 × 1.00 × 150㎡ = 30,000,000円 建物 6,000,000円 × 1.0 = 6,000,000円 合計 3,600万円

この家の相続人が配偶者と子2人の3人なら、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です(コード4152)。不動産だけでは超えませんが、預金や生命保険金などを足して判定します。家屋の評価の細かい点(建築中の家、増築部分)は相続税での家屋の評価額で扱います。

評価額・時価・査定額・公示価格の違い

相続の場面では、同じ不動産にいくつもの「価格」が出てきます。混ぜて使うと、相続税の判定や遺産の分け方の話がかみ合わなくなります。

価格 誰が決めるか 何に使うか
相続税評価額 財産評価基本通達の方法で計算(路線価・倍率・固定資産税評価額) 相続税・贈与税の計算
地価公示価格 国土交通省の土地鑑定委員会が、毎年1月1日時点の標準地の価格を3月に公示 一般の土地取引の指標。路線価はこれを基にした価格の80%程度が目途
固定資産税評価額 市区町村(東京23区は都) 固定資産税の計算、倍率方式と家屋の相続税評価の基
査定額 不動産会社 売り出し価格の目安。売れる値段そのものではない
鑑定評価額 不動産鑑定士 不動産の鑑定評価に関する法律に基づき、経済価値を判定して価額に表す

相続税と贈与税では、土地等は時価で評価するのが建前ですが、相続人が自分で時価をつかむのは難しいので、国税庁が路線価や倍率を毎年公開しています。一方、遺産分割で「実家を継ぐ人が他の相続人に代償金を払う」ときの不動産の価格は、相続人どうしの話し合いで決めます。国税庁のコード4173も、代償金を時価を基に決めた場合の計算を示しており、その時価の目安として査定額や鑑定評価額が出てきます。査定額の決まり方は不動産の査定とは:査定額と売れる値段の違いで確かめてください。

評価が変わる主な場面

次の場合は、上の基本の式から評価額が変わります。

  • 人に貸している土地・建物:アパートの敷地など貸家建付地は「自用地の価額−自用地の価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」で評価します(コード4614)。借地権割合は路線価図のA〜Gの記号(A 90%〜G 30%)で示され、借家権割合は財産評価基準書で確かめます。
  • 面積の大きな宅地:三大都市圏で500㎡以上、それ以外で1,000㎡以上などの「地積規模の大きな宅地」は、規模格差補正率を掛けて評価します(コード4609)。
  • 分譲マンション:2024年1月1日以後の相続では、築年数・総階数・所在階などから計算する区分所有補正率を掛ける場合があります(コード4667)。詳しくはマンションの相続税評価で扱います。
  • 自宅や事業の土地:一定の要件を満たすと、小規模宅地等の特例で評価額を減らせます。要件は小規模宅地等の特例の要件で確かめてください。
  • 2027年からの見直し(予定):財務省の令和8年度税制改正の大綱では、2027年1月1日以後の相続等について、亡くなる前5年以内に買ったり建てたりした貸付用不動産などを通常の取引価額で評価する見直しが示されています。国税庁の通達の改正を確かめてから当てはめます。

自分で出せる範囲と、税理士に頼む範囲

形のよい自宅の土地と建物だけなら、路線価図と課税明細書で概算を出し、基礎控除を超えるかの一次判定まで相続人が自分でできます。一方、角地・不整形地・がけ地を含む土地、貸している不動産、面積の大きな土地、複数の土地がある場合は、補正率の当てはめと特例の判断で評価額が大きく変わります。読者個人の評価額や税額を判定して示すのは税理士の業務なので、一次判定で基礎控除を超えそうなときは、税理士に評価と申告を頼む選択肢を考えます。

「相続 不動産 評価」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。

土地以外の評価は、株は相続した株の評価額、預金は預金の相続と相続税、現金はタンス預金の相続税、マンションはマンションの相続税評価額、家屋は相続税での家屋の評価額で扱っています。

よくある質問

Q. 相続税の評価額で売らないといけないのですか?

いいえ。相続税の評価額は相続税を計算するための額で、売るときの値段を決めるものではありません。売り出し価格は不動産会社の査定や近い取引の成約価格を見て、売主が決めます。売った後の税金(譲渡所得)は、評価額ではなく亡くなった人が買ったときの取得費を引き継いで計算します。

Q. 固定資産税の評価額と相続税の評価額は同じですか?

建物は同じです。相続税では家屋を固定資産税評価額×1.0で評価するからです。土地は、倍率地域なら固定資産税評価額に倍率を掛けた額、路線価地域なら路線価から計算した額になり、固定資産税評価額とは一致しません。

Q. 亡くなった年の路線価がまだ出ていないときはどうしますか?

路線価はその年の1月1日を評価時点として、年の途中で公開されます(2026年分は7月1日に公開)。公開前に亡くなった場合は、その年分の路線価の公開を待ってから計算します。申告期限は10か月あるので、公開後に計算しても間に合う日程を組めます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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