不動産がある家の相続税:基礎控除を超えるかを評価額で見積もる
家や土地がある家で相続税がかかるかは、不動産を売値ではなく相続税の評価額で見積もり、預金などと合計して基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)と比べて判断します。土地は路線価×面積(路線価のない地域は固定資産税評価額×倍率)、建物は固定資産税評価額です。評価額は査定額や売れた値段とは別の物差しなので、「家が高く売れそうだから相続税がかかる」とは限りません。反対に、自宅の土地が小規模宅地等の特例で80%減って基礎控除の内側に入る家もありますが、その場合は申告が要ります。
不動産は「どの値段」で数えるか
不動産には値段の物差しがいくつもあります。相続税の判定で使うのは、国税庁の決まりに沿った評価額だけです。
| 物差し | 中身 | 相続税の判定に使うか |
|---|---|---|
| 査定額 | 不動産会社が「この値段で売り出せそう」と示す額 | 使わない |
| 売れた値段 | 実際の売買の価格 | 使わない(死亡日時点の評価が基準) |
| 路線価 | 道路に面した標準的な宅地の1㎡当たりの価額。国税庁が毎年公表 | 土地に使う(路線価地域) |
| 固定資産税評価額 | 市区町村(東京23区は都税事務所)が固定資産税のために決める額 | 建物に使う。倍率地域の土地は倍率を掛けて使う |
評価の方法そのもの(貸している土地、借地、農地などの扱い)は相続する不動産の評価方法で扱います。この記事では、自宅や空き家になった実家のような「自分たちで使っていた家と土地」で、基礎控除を超えるかを見積もる手順に絞ります。
手順:土地と建物の評価額を見積もる
土地(路線価地域)
- 土地の面積を確かめる:登記事項証明書の地積、または固定資産税の課税明細書の地積を見ます。
- 国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」を開き、亡くなった年の路線価図を選ぶ:2026年の相続なら令和8年分です。
- 土地が面している道路の数字を読む:路線価図は千円単位なので、「200」なら1㎡20万円です。数字の横のアルファベットは借地権の割合を示す記号で、自分で使っている土地の見積もりでは掛けません。
- 路線価×面積で概算する:奥行きが長い・短い、角地、形がいびつといった事情があると補正率で調整されます。概算では補正率を1.00と置き、正確な額は申告時に計算し直します。
土地(倍率地域):路線価図にその地域の路線価がなければ、評価倍率表でその町の宅地の倍率を確かめ、固定資産税評価額×倍率で出します。
建物:固定資産税評価額をそのまま使います(×1.0)。毎年届く固定資産税の納税通知書に同封される課税明細書に載っています。手元になければ、市区町村の役所(東京23区は都税事務所)で評価証明書を取ります。
マンション:敷地全体の評価額に敷地権の割合を掛けた土地部分と、建物部分(固定資産税評価額)の合計です。2024年1月1日以後の相続では、分譲マンションの多くで区分所有補正率を掛ける新しい評価が使われます。詳しくはマンションの相続税評価(2024年からの新しい評価方法)を見てください。
路線価図の読み方と補正率の当て方を画面の順に追うときは、相続する土地の評価額の調べ方が手順書になっています。
計算例:都市部の自宅と、地方の実家
例の数字で見積もりの流れを示します(いずれも筆者の計算。補正率は1.00と仮定し、ほかの財産や贈与はない前提)。
| 項目 | 例A:都市部の自宅(配偶者と子2人) | 例B:地方の実家(子1人) |
|---|---|---|
| 土地 | 路線価250千円×200㎡=5,000万円 | 固定資産税評価額900万円×倍率1.1=990万円 |
| 建物 | 固定資産税評価額800万円 | 固定資産税評価額300万円 |
| 預貯金 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 正味の遺産額 | 7,300万円 | 3,290万円 |
| 基礎控除 | 4,800万円(3人) | 3,600万円(1人) |
| 判定 | 2,500万円超える → 申告が要る | 310万円下回る → 申告不要 |
検算:例Aは5,000+800+1,500=7,300万円、7,300−4,800=2,500万円。例Bは900×1.1=990万円、990+300+2,000=3,290万円、3,290−3,600=−310万円。
例Bは申告不要の側ですが、差は310万円しかありません。生命保険金の非課税枠を超える分や、亡くなる前3年以内の贈与が見つかれば、すぐに超えます。基礎控除の内側に収まったときの確かめ方は基礎控除を超えない場合は申告不要かを見てください。
小規模宅地等の特例で下がる場合と、その条件
例Aの家で、亡くなった人が住んでいた土地を配偶者が取得すると、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)で330㎡までの部分の評価額が80%減ります。
- 土地:5,000万円×(1−0.8)=1,000万円
- 正味の遺産額:1,000+800+1,500=3,300万円(基礎控除4,800万円を下回る。筆者の計算)
それでも、この家は申告が要ります。国税庁は、特例を受けるには相続税の申告書に適用を受ける旨を書き、計算の明細書や遺産分割協議書の写しなどを添付する必要があるとしています。取得する人による条件の違いも押さえておきます。
| 自宅の土地を取得する人 | 主な条件 |
|---|---|
| 配偶者 | 取得者についての条件はない |
| 同居していた親族 | 相続開始の直前から申告期限まで住み続け、申告期限まで持ち続ける |
| 持ち家のない別居の親族(いわゆる家なき子) | 亡くなった人に配偶者も同居の相続人もいない、相続開始前3年以内に自分・配偶者・三親等内の親族などが所有する家に住んでいない、今住む家を過去に所有したことがない、などの条件をすべて満たす |
同居していた子が取得する場合、申告期限(10か月)より前に売ると特例の対象から外れます。 実家の売却を考えている家は、売る時期と特例の関係を先に確かめてください。原則として申告期限までに遺産の分け方が決まっていることも必要です。要件の全体は小規模宅地等の特例をわかりやすくで扱っています。
見積もりで超えた・境目だったら
路線価方式の補正、私道や貸している部分の有無、特例の選び方で、土地の評価額は大きく動きます。見積もりで基礎控除を超えた、または差が小さかった家は、10か月の期限から逆算して準備を始めます。
- 固定資産税の課税明細書、登記事項証明書、路線価図の写しをそろえる
- 見積もりの表(財産・額・使った資料)を作る
- 国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」で、特例を入れた試算を確かめる
- 自分で申告するか、税理士に頼むかを決める
土地の評価と特例の当てはめは、個別の判断が要る税理士の仕事の部分です。税理士を探す方法の一つとして紹介サービスがあり、紹介された税理士が税理士情報検索サイトに登録されているかを確かめてから面談します。財産全体の見積もり方は相続税の申告はいくらから必要か、相続税の全体の流れは相続税とは?全体像に戻って確かめてください。
次に読むなら相続税の改正はいつから?2026年の最新と2027年に変わることです。
よくある質問
Q. 不動産会社の査定額で相続税を見積もってはいけませんか?
相続税の判定には使いません。相続税では、土地は路線価方式か倍率方式、建物は固定資産税評価額で評価すると国税庁が定めています。査定額は売り出しの参考で、売れる値段とも相続税の評価額とも別物です。売るかどうかを考える材料として分けて扱います。
Q. 親と共有名義の家の場合はどう見積もりますか?
土地・建物の評価額を出したうえで、亡くなった人の持分を掛けます。たとえば土地の評価額が3,000万円で、亡くなった人の持分が2分の1なら、相続財産に入るのは1,500万円です(筆者の計算)。持分は登記事項証明書の「権利部(甲区)」で確かめます。
Q. 亡くなる前に家を売っていたら、どう数えますか?
売却代金が預金などとして残っていれば、死亡日の残高として数えます。不動産としての評価は要りません。相続した後に売る場合は、相続税の判定は死亡日時点の評価額で行い、売った値段は売却益の税金(譲渡所得)の計算で使います。
出典・参考にした公的な情報
- No.4602 土地家屋の評価(国税庁)
- No.4604 路線価方式による宅地の評価(国税庁)
- 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表(国税庁)
- No.4667 居住用の区分所有財産の評価(国税庁)
- No.4124 小規模宅地等の特例(国税庁)
- No.4152 相続税の計算(国税庁)
- No.4611 借地権の評価(国税庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。