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農地は相続土地国庫帰属制度で手放せる?農地法の制限と選択肢

この記事のもくじ
  1. 農地は相続土地国庫帰属制度で手放せる:申請できる条件
  2. 負担金はいくら:20万円で済む田畑と面積で決まる田畑
  3. 売る・貸すなら農地法の許可:買い手が農業をする人に限られる
  4. 相談の順番:農業委員会から法務局の本局へ
  5. 相続放棄で農地だけ手放すことはできない

相続した田んぼや畑も、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう申請ができます。法務省のQ&Aは、農地も申請できると明記しています。ただし、建物や農機具小屋がある土地は却下され、農用地区域などの田畑は負担金が面積で決まるため、20万円で済まないことがあります。売ったり貸したりする道も、農地法の許可で買い手が農業をする人に限られるため、申請の前に農業委員会と法務局の両方に相談して比べるのが近道です。

農地は相続土地国庫帰属制度で手放せる:申請できる条件

国庫帰属を申請できるのは、相続または相続人への遺贈で土地を取得した人です。制度が始まった2023年4月27日より前に相続した田畑も対象です。法務省の統計(2026年9月30日現在の速報値)では、申請6,125件のうち田・畑が2,372件と最も多く、帰属した3,231件のうち農用地は1,013件でした。農地を手放したい相続人が多く使っている制度だと分かります。

申請の前に、次の点を自分の農地に当てはめてください。

確かめること 申請への影響
小屋・ビニールハウスの骨組みなどが残っていないか 建物があれば却下、工作物や樹木が管理の邪魔になれば不承認になりうる
隣の田畑との境界が分かるか 境界が明らかでない土地は却下
水路や農道として他人が使っていないか 通路など他人の利用が予定される土地は却下
抵当権や賃借権(小作)が付いていないか 担保権・使用収益権がある土地は却下
共有者がいるか 共有者全員で申請。1人でも反対なら申請できない
周りの農地の営農に支障が出ていないか 主に農用地として使われている土地では審査で確かめられる

法務省のQ&Aによると、国に帰属した農用地は農林水産大臣が管理し、窓口は地方農政局です。耕作されないまま荒れて、周辺の農地に支障が出ている状態だと、承認されにくくなります。草刈りなど最低限の手入れを続けながら申請するのが無難です。

却下・不承認の典型と、だめだったときの次の手は相続土地国庫帰属制度が使えない場合の典型と次の手にまとめています。制度全体の流れは相続土地国庫帰属制度とは:国に引き取ってもらう条件と費用が入口です。

負担金はいくら:20万円で済む田畑と面積で決まる田畑

費用は2段階です。申請するときに審査手数料として土地1筆あたり14,000円(収入印紙)を納め、承認されたら負担金を納めます。審査手数料は、却下・不承認・取下げになっても返りません。田畑は1枚ごとに筆が分かれていることが多く、5筆なら手数料だけで70,000円になります(筆者の計算)。

負担金は基本が20万円ですが、田畑のうち次のものは面積に応じて決まります。

  • 市街化区域や用途地域の中にある田・畑
  • 農業振興地域の農用地区域などにある田・畑

法務省の概要資料には、一部市街地・農用地区域等の田畑の例として、500㎡で約72万円、1,000㎡で約110万円が載っています(政令の式で1,000㎡を計算すると112万8,000円です。筆者の計算)。面積に比例して増えるわけではなく、広いほど1㎡あたりの額は下がります。隣り合う2筆以上が同じ区分なら、申し出て1筆とみなして計算してもらえます。自分の田畑の額は、法務省の負担金のページにある自動計算シートに登記の地積を入れると出せます。

早見表:相続した農地の手放し方と、かかるお金・相手
手放し方 主なお金 相手・許可
国庫帰属 1筆14,000円+負担金(20万円か面積で算定) 法務局の本局が審査、承認後に国へ
農家に売る 売却代金を受け取る。登記費用など 農業委員会の許可(農地法3条)
宅地などに転用して売る 転用の手続き費用。売却代金を受け取る 知事等の許可(5条)。市街化区域は届出
農地中間管理機構に貸す 賃料を受け取る(所有は残る) 機構の事業として貸し付け
相続放棄 家庭裁判所の手続き費用 農地だけでなく全財産を手放す

承認されると、負担金の通知が届いた日の翌日から30日以内に納めます。期限を過ぎると承認が効力を失い、申請からやり直しです。所有権は納付した時点で国に移り、登記は国がします。審査の標準処理期間は8か月で、その間の固定資産税や草刈りは申請者の負担のままです。

売る・貸すなら農地法の許可:買い手が農業をする人に限られる

国庫帰属の前に、売る・貸す道も確かめます。農地のまま売るには、農業委員会の許可が要ります(農地法3条1項)。許可は、買い手が取得後に農地の全部を効率的に耕作すると認められない場合や、農作業に常時従事すると認められない場合などには出ません(同条2項)。つまり、農業をしない親戚や近所の人に「ただで持っていって」と渡すことも、許可がなければできません。

宅地や駐車場などにして売るなら、転用の許可が要ります(5条)。市街化区域内の農地は、農業委員会に届け出れば許可は不要です。一方、農用地区域の農地は転用が認められにくく、許可の見込みは農地の区分で大きく変わります。無許可の売買や転用には3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が定められているので、口約束で引き渡さないでください。

売れないときの次の候補が、貸す道です。法務省のQ&Aも、国庫帰属以外の方法として農地中間管理機構(いわゆる農地バンク)の活用を挙げています。所有権は手元に残りますが、耕作する人が見つかれば、草刈りの手間と周りへの気兼ねは減ります。

相談の順番:農業委員会から法務局の本局へ

相続した農地をどうするか決めるときは、次の順で動くと、二度手間が少なくなります。

  1. 相続を知ったら農業委員会に届け出る:相続(遺産分割を含む)で取得した農地は、遅滞なく届け出ます(3条の3)。届出の用紙は市町村の農業委員会にあります。相続登記とは別の手続きです。
  2. 農業委員会で、売る・貸す見込みを聞く:買い手や借り手の候補、転用の見込み、農地中間管理機構への貸し付けを相談します。法務省のQ&Aも、農地は事前に農業委員会へ相談できるとしています。
  3. 相続登記を済ませる:売るにも国庫帰属を進めるにも、名義の整理が前提になります。期限は取得を知った日から3年以内です。義務の中身は相続登記の義務化:期限3年・過料・相続人申告登記で確かめてください。
  4. 法務局の本局で国庫帰属を相談する:土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局(不動産登記部門)で、予約制で1回30分、対面・電話・ウェブで相談できます。登記事項証明書、公図の写し、現地の写真を持っていきます。
  5. 申請する:書類の作り方は相続土地国庫帰属制度を自分で申請する手順を見てください。

田畑と一緒に山林も相続した場合、山林は境界と負担金の考え方が違います。山林を相続土地国庫帰属制度で手放すときの負担金と境界で確かめてください。

相続放棄で農地だけ手放すことはできない

「農地がいらないから相続放棄を」と考える人もいますが、放棄すると預貯金や自宅を含むすべての財産を手放すことになり、農地だけを選んで放棄することはできません。期限も、相続の開始を知った時から3か月以内です。預金などほかに受け取りたい財産があるなら、相続してから国庫帰属や売却で農地だけを手放すほうが、結果として手元に残るものが多くなる場合があります。

田畑に限らず、売れない土地をどう手放すかを比べたいときは、田舎の土地が売れない相続:手放す5つの方法と費用の比べ方に進んでください。

よくある質問

Q. 田んぼに農機具の小屋が建っていても、国庫帰属を申請できますか?

建物がある土地は、申請しても却下される決まりです(相続土地国庫帰属法2条3項)。屋根と壁があって土地に定着した小屋は、登記がなくても建物として扱われうるので、取り壊してから申請することになります。骨組みだけのハウスなど建物でない工作物は、管理の妨げになるかが審査で見られます。解体費と負担金を合わせて、ほかの手放し方と比べてください。

Q. 農地を相続したときの農業委員会への届出は、国庫帰属を申請するなら不要ですか?

不要にはなりません。相続で農地を取得した人は、遅滞なく農業委員会に届け出る義務があり(農地法3条の3)、農林水産省のパンフレットは目安をおおむね10か月以内としています。届出をしないと10万円以下の過料の対象になります。国庫帰属を考えていることも、届出のときに一緒に相談できます。

Q. 兄弟と共有で相続した畑は、自分の持分だけ国に引き取ってもらえますか?

持分だけの申請はできません。共有の土地は共有者全員で申請する決まりで、1人でも同意しないと申請できません。先に遺産分割で1人の単独名義にするか、全員で申請するかを話し合うことになります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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