不動産売却の流れ / 比較

リースバックとは:家を売って住み続ける契約の家賃・買戻しの注意

この記事のもくじ
  1. リースバックの仕組みと、売って引っ越す場合との違い
  2. 契約前に確かめる項目:売買と賃貸借に分けて
  3. 家賃が払い続けられるか:売却代金と家賃の見比べ方
  4. 買戻しは「できる場合もある」にとどまる
  5. 勧誘トラブルへの備えと、検討の順番

リースバックは、自宅を売ってまとまったお金を得て、売った後は買主に家賃を払いながら同じ家に住み続ける契約です。売買の契約と賃貸借の契約がひと続きで結ばれます。国土交通省は、この取引に関する業者向けのガイドラインを2026年10月1日に施行しており(施行済み)、説明すべき項目が整理されています。この記事では、契約前に確かめる項目、家賃が払い続けられるかの見方、買戻しの限度、勧誘トラブルへの備えを順に示します。

リースバックの仕組みと、売って引っ越す場合との違い

国土交通省のガイドラインは、リースバックを「住宅の所有者が住宅を売却して代金を得て、売却後は所有者となった事業者に毎月賃料を払い、引き続き住む契約形態」と説明しています。売買と賃貸借は切り離せない一体の取引です。

同じガイドラインが示す特徴を、普通に売って引っ越す場合と並べます。

比較表:リースバックと、売って引っ越す場合の違い
項目 リースバック 売って引っ越す
住まい 引き続き住める(契約の内容による) 引き渡して転居する
毎月の負担 家賃が新たに発生。固定資産税や大規模修繕費は不要になる場合がある 転居先の家賃やローン
家の扱い 賃借人なので、改変や設備の設置に制限がある 引渡し後は新しい所有者のもの
住み続けられる期間 賃貸借の内容次第で、希望する期間住み続けられない可能性がある 住み続けない
買戻し できる場合もあるが、条件・価格に注意 通常はない

ガイドラインが挙げている特徴は、毎月の賃料負担、住宅に手を入れられないこと、希望する期間住めない可能性、買戻しの条件の4点です。「そのままずっと住める」という言い方は、契約の内容を見ないと正しいかどうか分かりません。

ローンが残る家や老後資金の確保が目的のとき、リースバックは選択肢の一つです。ローンが残る家の売り方は住宅ローンが残っている家を売るにはで整理しています。

契約前に確かめる項目:売買と賃貸借に分けて

ガイドラインは、業者が契約の前に買主や借主に告げなければならない主な事項を、売買と賃貸借に分けて示しています。売主として確かめる側から並べ直すと、次のとおりです。

区分 確かめる項目 契約書のどこを見るか
売買 代金以外にお金のやりとりがあるか、その目的 代金・手付・諸費用の欄
売買 契約を解除する場合の条件、違約金・損害賠償の額 解除、違約金の条項
売買 買戻し特約の有無と内容(期間・価格) 特約条項
賃貸借 家賃の額、支払の時期・方法、家賃以外のお金 賃料、共益費、更新料の欄
賃貸借 契約期間と更新の有無 契約期間、更新の条項
賃貸借 定期建物賃貸借(更新のない契約)かどうか 契約の種類、説明書面
賃貸借 敷金などの精算、管理を委託する先、租税公課の負担 敷金、管理、費用負担の条項
賃貸借 業者が家を第三者に譲る可能性と、賃貸借への影響 譲渡の条項
賃貸借 修繕費用を誰が負担するか 修繕の条項

特に大きく結果が分かれるのは、普通借家か定期借家かです。借地借家法では、期間の定めがある建物賃貸借は、期間満了の1年前から6か月前までの間に更新しない旨の通知をしないと従前と同じ条件で更新したものとみなされます(26条)。一方、定期建物賃貸借は、公正証書などの書面で契約するときに限り、更新がないと定めることができ(38条)、期間が満了すれば賃貸借は終わります。貸主は事前に、更新がなく期間満了で終了することを書面で説明する必要があります。契約書に「定期借家」とあれば、期間が満了した後も住み続けられる保証はありません。

ガイドラインは、業者が説明することが「望ましい」事項として、売買価格と家賃の算定根拠、売却代金が家賃の何か月分に当たるかといった関係の説明も挙げています。これは義務ではないので、売主の側から説明を求めてください。

家賃が払い続けられるか:売却代金と家賃の見比べ方

売却代金が手元に入っても、家賃は毎月出ていきます。売却代金を月額家賃で割ると、「代金が家賃の何か月分か」が分かります。

例(筆者の計算):売却代金1,800万円、月額家賃9万円の場合、1,800万円÷9万円=200か月で、約16年8か月分です。同じ売却代金でも、月額家賃が12万円なら150か月(12年6か月)分です。年金などの収入から家賃を引いた生活費が足りるか、定期借家なら契約期間が終わった後の住まいをどうするかまで、見通しを立てます。

次の4つを紙に書いてから、条件を比べてください。

  1. 月々の収入(年金・給与など)と、家賃を引いたあとの生活費
  2. 契約期間(定期借家なら、満了後の転居先と費用)
  3. 売却代金の使い道(ローン返済、老後資金など)と、残る額
  4. 家賃の改定の条件(上がる可能性があるか、いつ・どう決まるか)

買戻しは「できる場合もある」にとどまる

買戻し特約は民法に定めがあります。不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別の合意があればその金額)と契約の費用を返して、売買を解除できます(579条)。買戻しの期間は10年を超えられません(580条)。期間を定めなければ、5年以内に買戻しをしなければなりません。買戻しの特約を登記すれば、第三者にも対抗できます(581条)。

つまり、リースバックの契約に買戻し特約があっても、期間と価格は契約書の記載がすべてです。買戻し価格が売却価格より高く設定されていないか、期間内に用意できる資金かを見ます。買戻し特約がない契約では、買い戻す権利は契約書の上にありません。買い戻したいときは、買主と新たに合意する必要があります。

勧誘トラブルへの備えと、検討の順番

国民生活センターは、リースバックの相談が増えており、契約当事者の約7割が70歳以上と報告しています。長時間の勧誘で契約してしまった、家賃を値上げされ払えなくなった、認知症の親が相場よりかなり安い額で契約していた、といった事例です。国土交通省の資料では、全国の消費生活センター等のリースバックの相談は、令和4年度116件、令和5年度227件、令和6年度242件、令和7年度214件です。

自宅を不動産業者に売った契約には、売主からのクーリング・オフがありません。契約しない意思を示したのに勧誘を続けること、迷惑な時間の訪問・電話、深夜・長時間の勧誘は、宅建業法47条の2とその施行規則で禁止されている行為にあたりえます。迷惑なときは、はっきり断って今後の勧誘をやめるよう伝え、不安なときは188に相談します。強引な勧誘への対処は自宅の買取・リースバックの強引な勧誘:断り方と相談先に、会社の比べ方はリースバックの会社の比較にまとめています。

検討の順番は、次のようにします。

  1. 住宅ローンの残高と、売却見込み額を確かめる(返済が苦しいなら、借入先に先に相談する)
  2. 売って引っ越す場合と、家賃を払って住み続ける場合の毎月の負担を並べる
  3. 複数の会社から、同じ条件で見積もりと契約書案をもらう
  4. 契約書案の項目を、上の表で一つずつ確かめる
  5. 家族に見せて、署名は急がない

会社に問い合わせる前に、上の確認点を手元に置いておくと、説明の食い違いに気づきやすくなります。

リースバックは、自宅を売って賃貸で住み続ける方法で、相談したから契約しなければならないわけではありません。家賃、契約期間、更新の有無、買戻し特約の有無と価格、業者が家を第三者に譲る可能性は、契約書案で確かめます。家賃は売却価格に応じて決まり、住み続ける間は払い続ける費用になります。売主にクーリング・オフはありません。住宅ローンが残る場合は、借入先への相談が先です。

高齢で住み替えも考えている場合は、住み続けるリースバックと移る先を選ぶ住み替えを老後の住み替え:持ち家を売って移る先の選び方で比べられます。

なお、返済が滞っている状態でリースバックを組み合わせる場合は、借入先の同意が関わります。任意売却と併用できるかは、リースバックと任意売却は併用できる?住み続けるための条件で扱います。売却益が出たときの税は任意売却でも譲渡所得税はかかる?自宅の3,000万円控除との関係を参考にしてください。

よくある質問

Q. リースバックの家賃は、後から上がることがありますか?

契約の内容次第です。国民生活センターには、生活に困ってリースバック契約をしたあとで家賃を値上げされ、払えなくなったという相談事例が紹介されています。契約書の賃料の額、改定の条件、契約期間と更新の有無を、署名の前に確かめます。

Q. リースバックの契約をしたあとに、解約できますか?

自宅を不動産業者に売った場合、売主からのクーリング・オフはできないと国民生活センターが注意しています。宅建業法のクーリング・オフは、業者が売主の取引の買主を守る制度だからです。契約前に家族と相談し、分からない点は消費生活センター(188)で確かめてから署名します。

Q. リースバックで売った家は、買い戻せますか?

買戻し特約を付けた契約なら、決められた期間内に買主が払った代金と契約の費用を返して売買を解除できます(民法579条)。買戻しの期間は10年を超えられません。特約の有無と、期間・価格は、契約書で確かめます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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