不動産売却の流れ / Q&A

任意売却でも譲渡所得税はかかる?自宅の3,000万円控除との関係

この記事のもくじ
  1. 任意売却でも、譲渡所得の計算は普通の売却と同じ
  2. 利益が出る例(筆者の計算)
  3. 自宅なら、3,000万円特別控除で課税がなくなる場合が多い
  4. 売却損が出たとき:住宅ローンが残る家の譲渡損失の特例
  5. 残った借金の免除を受けたとき
  6. 申告の時期と、売る前に確かめること

任意売却でも、家を売った利益には譲渡所得税がかかります。ローン残高は、税金の計算に出てきません。計算に使うのは、売却価額と、その家の取得費と、売るためにかかった費用です。自宅であれば3,000万円特別控除で課税がなくなることが多く、売却損が出たときは別の特例があります。どの場面で何を使うかを、国税庁の資料で順に整理します。

任意売却でも、譲渡所得の計算は普通の売却と同じ

不動産を売ったときの譲渡所得は、給与など他の所得とは別に計算します(分離課税)。国税庁の説明では、式は次のとおりです。

譲渡所得の金額 = 売却価額 -(取得費 + 譲渡費用)

ここに、住宅ローンの残高や、返済に回した額は入りません。オーバーローンの家でも、売却価額が買ったときの値段(建物は減価償却を引いた額)より高ければ利益が出ます。逆に売却価額が取得費を下回れば損失で、この場合は課税されません。

譲渡費用は、仲介手数料や印紙税の売主負担分など、売るために直接かかった費用です。抵当権の抹消登記費用や引越し代が譲渡費用に入るかは、国税庁のページで確かめられなかったので、領収書を残して税務署か税理士に確認してください。

税率は、売った年の1月1日で所有期間が5年を超える長期譲渡所得なら、所得税15%、住民税5%です。復興特別所得税は所得税額の2.1%が加わります(2026年中の売却)。5年以下は短期で税率が高くなります。相続で取得した家は、亡くなった人の取得日を引き継いで所有期間を数えます。

早見表:任意売却の税金は「利益が出たか」で分かれる
場面 税金のあつかい 自宅で使える特例
売却価額が、取得費と譲渡費用の合計を上回った(利益が出た) 譲渡所得税・住民税の対象。ローン残高は計算に入らない 3,000万円特別控除(確定申告が必要)
売却価額が、取得費と譲渡費用の合計を下回り、かつローン残高も下回った(損失が出た) 課税はない。損失を他の所得と相殺できるのは特例の要件に当たるときだけ 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除

利益が出る例(筆者の計算)

数字は仮のものです。長期譲渡所得で、自宅を任意売却した場合を考えます。

  • 売却価額:2,400万円
  • 取得費(購入代金から建物の減価償却相当額を引いた額):1,800万円
  • 譲渡費用(仲介手数料など):90万円
  • 売却時の住宅ローン残高:2,800万円(売却価額より400万円多いオーバーローン)

譲渡所得は、2,400万円 -(1,800万円 + 90万円)= 510万円です。ローン残高が売却価額を400万円上回っていても、510万円の利益として扱います。控除なしで計算すると、所得税は510万円×15%=76万5,000円、復興特別所得税は76万5,000円×2.1%=1万6,065円、住民税は510万円×5%=25万5,000円で、合計は約103万6,000円です。

建物の取得費は、取得価額から減価償却費相当額を引いて求めます。計算の細部は、取得費が分からないときの扱い(売却価額の5%を取得費とする方法)も含めて取得費不明の不動産売却の税金で確かめられます。計算方法の全体は譲渡所得税の計算方法にあります。

自宅なら、3,000万円特別控除で課税がなくなる場合が多い

現に住んでいる家、または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家は、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます(所有期間は問いません)。上の例の510万円なら、控除後の課税譲渡所得は0円です。

ただし、次の点を見落とすと使えません。

  1. 確定申告をする。 控除で税額が0円になっても、特例は確定申告をして初めて受けられます。
  2. 特別の関係がある人への売却は対象外。 親子、夫婦、生計を一にする親族、内縁関係の人などが買主の場合は使えません。
  3. 前年・前々年に同じ特例などを使っていない。 売った年の前年と前々年に、この特例や、譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受けていないことが要件です。
  4. 住んでいた家であること。 特例のためだけの入居や、別荘は対象外です。
  5. 売った年、その前年、前々年に、マイホームの買換えや交換の特例を使っていない。

要件の全体は自宅を売った時の譲渡所得税の3000万円控除で整理しています。

売却損が出たとき:住宅ローンが残る家の譲渡損失の特例

売却価額がローン残高を下回って譲渡損失が出た場合、国税庁は「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を案内しています。令和9年12月31日までの売却が対象で、新しい家を買わなくても使えます。

要件は、所有期間が売った年の1月1日で5年超であること、売買契約日の前日に償還期間10年以上のローン残高があること、売却価額がそのローン残高を下回ることなどです。親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は対象外です。要件の全体と、新居を買う場合の特例との違いは住み替えの住宅ローンの表で確かめられます。

損益通算できる限度額は、売買契約日の前日のローン残高から売却価額を引いた額で、通算しきれない分は翌年以後3年間繰り越せます。

例(筆者の計算):売却価額2,000万円、取得費2,500万円、譲渡費用80万円なら、譲渡損失は2,500万円+80万円-2,000万円=580万円です。契約日の前日のローン残高が2,600万円なら、限度額は2,600万円-2,000万円=600万円で、損失580万円は限度内なので全額が対象になります。

確定申告書には、特例用の明細書や計算書、契約日前日の住宅ローンの残高証明書、所有期間を示す書類などを添えます。繰越控除を受けるには、損益通算を受けた年に期限内に申告し、その後も毎年損失申告用の申告書を出し続ける必要があります。損失全般の考え方は不動産売却が赤字のときも参考になります。

残った借金の免除を受けたとき

任意売却のあとに残った借金について、借入先が一部を免除することがあります。国税庁は、法人から債務の免除を受けたときは、贈与税ではなく所得税の対象になると説明しています。贈与税の「資力喪失の例外」とは別の扱いなので、免除が出る話が出たら、その時点で税務署か税理士に課税の有無を確かめてください。窓口の番号と受付時間は相続・不動産売却の無料相談窓口一覧にあります。

申告の時期と、売る前に確かめること

譲渡所得の確定申告は、売った年の翌年2月16日から3月15日までです。譲渡日は原則として引渡しの日で、売買契約の効力発生日を選ぶこともできます。契約と引渡しが年をまたぐときは、どちらの年に申告するかが変わるので、売却の日程を組む前に決めておきます。

  • 売買契約書、仲介手数料の領収書、取得時の契約書を保管する
  • 契約日の前日のローン残高証明書を借入先から取り寄せる
  • 親族に売る話があるときは、特例の対象外になることを先に確かめる
  • 売却後も住み続ける方法を考えるときは、買主が誰かで特例の可否が変わるため、先に整理する(契約の形はリースバックとはで扱う)

業者の選び方は任意売却の業者の選び方にまとめています。

よくある質問

Q. 任意売却で売却代金が全部ローンの返済に回り、手元にお金が残らなくても、税金はかかりますか?

譲渡所得は、売却価額から取得費と譲渡費用を引いて計算します。手元に残った額は計算に入らないため、売却代金が全額借入先に渡っても、売却価額が取得費と譲渡費用を上回れば利益が出た扱いです。自宅なら3,000万円特別控除などで課税がなくなる場合が多いものの、特例は確定申告をして初めて受けられます。

Q. 任意売却で赤字になったとき、他の所得と相殺できますか?

住宅ローンが残るマイホームを、ローン残高を下回る価額で売って譲渡損失が出た場合は、要件を満たせば他の所得と損益通算でき、引ききれない分は翌年以後3年間繰り越せます(令和9年12月31日までの売却)。所有期間が売った年の1月1日で5年を超えること、償還期間10年以上のローンの残高があることなどの要件があります。

Q. 親や子に任意売却で家を買ってもらうと、税金の特例は使えますか?

親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は、3,000万円特別控除も、住宅ローンが残る家の譲渡損失の特例も対象外です。親族に売るかどうかは、税の面でも先に確かめます。リースバックや親族への売却と任意売却の関係は別の記事で扱います。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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