不動産売却の流れ / 悩み整理

老後の住み替え:持ち家を売って移る先の選び方と資金の考え方

この記事のもくじ
  1. 老後の住み替えは「移る先」と「出口」を組み合わせて考える
  2. 移る先を比べる:マンション・賃貸・高齢者向け住宅・子との同居
  3. 高齢者向け住宅と有料老人ホーム:契約前に確かめること
  4. 今の家の出口:売る・リースバック・貸す
  5. 資金の考え方:売却の手取りと毎月の費用を並べる
  6. 判断力があるうちに、家族と決めておくこと

老後の住み替えは、移る先と今の家の出口を分けて決めると整理できます。移る先の候補は、マンションの購入、賃貸住宅、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム、子との同居の4つです。今の家の出口は、売る、売って住み続ける(リースバック)、貸すの3つです。売ったお金で移った後の毎月の費用をまかなえるかを、年金などの収入と並べて確かめてから動くと、後から資金が足りなくなる事態を避けやすくなります。

老後の住み替えは「移る先」と「出口」を組み合わせて考える

住み替えの相談で多いのは、移る先を先に決めてしまい、家の売却や資金の見通しが後回しになる流れです。順番は逆にして、次の3つを同じ表で並べます。

決めること 具体的な中身
移る先 マンション購入/賃貸/高齢者向け住宅/子との同居
今の家の出口 売る/リースバック/貸す
お金 売却の手取り、移る先の初期費用、毎月の費用、収入との差
組み合わせ表:移る先×今の家の出口
  • マンション購入:今の家は売る(売却代金を購入資金に回す)。リースバックは移らない前提の選択肢
  • 賃貸:今の家は売る。売却代金を家賃にあてる計算が中心
  • 高齢者向け住宅:今の家は売る、または貸す。入居時の前払金の有無を確かめる
  • 子との同居:今の家は売る。代金の扱い(贈与になる場合がある)を先に決める
  • 今の家に住み続ける:リースバックで売却代金を得る。家賃と契約期間が条件

住み替えの進め方(売り先行・買い先行、つなぎ融資、仮住まい)は住み替えの進め方:売り先行と買い先行の違いと資金計画の立て方に、住宅ローンが残る場合は住み替えの住宅ローン:残債がある場合の住み替えローンと審査にあります。この記事では、老後ならではの移る先の比べ方と資金の考え方を扱います。

移る先を比べる:マンション・賃貸・高齢者向け住宅・子との同居

4つの移る先を、初期費用、毎月の費用、見守りや介護、注意点で比べます。金額は物件や地域で大きく変わるため、ここでは確かめる項目を並べます。

移る先 初期費用 毎月の費用 見守り・介護 主な注意点
マンション購入 購入代金、諸費用 管理費、修繕積立金、固定資産税 自分で手配 階段・エレベーターなど将来の暮らしやすさ。購入資金に60歳以上向けのローンを使う方法もある
賃貸 敷金など 家賃(亡くなるまで続く) 自分で手配 入居審査の条件(保証人、保証会社、年齢)を事前に聞く。終身建物賃貸借という契約もある
サービス付き高齢者向け住宅 敷金、前払家賃がある場合も 家賃、サービス費、食事など 安否確認と生活相談が必須 介護が必要になったときの対応を事前に聞く
有料老人ホーム 前払金がある場合も 利用料、食費、介護費 施設の職員または外部の事業者 前払金の返還と保全を確かめる
子との同居 増改築の費用が出ることも 生活費の分担 家族 費用の負担と、うまくいかなかったときの戻り先

マンション購入では、60歳以上向けの住宅ローンとして住宅金融支援機構の「リ・バース60」があります。毎月の支払いは利息のみで、元金は亡くなったときに相続人が一括で返すか、担保の住宅と土地を売って返す仕組みです。住まいの建設・購入・リフォームなどに使え、生活資金には使えません。取扱いは提携する金融機関ごとで、年齢や限度額などの条件も金融機関によって違います。

賃貸では、高齢者の居住の安定確保に関する法律にもとづく終身建物賃貸借があります。60歳以上の人(同居者がいる場合は配偶者か60歳以上の親族に限る)を対象に、都道府県知事の認可を受けた事業者が、賃借人が亡くなるまで続き、亡くなったときに終わる契約で貸す仕組みです。療養や老人ホームへの入所など、やむを得ない事情があるときは賃借人から解約を申し入れられる定めもあります。対象の住宅は物件ごとなので、探すときは不動産会社に「終身建物賃貸借の住宅があるか」を聞きます。

子との同居では、売却代金を子に渡すと贈与として扱われる場合があります。1年間にもらった財産の合計が110万円を超えると、贈与を受けた人に申告が必要になる場合があります(国税庁)。同居の費用分担は、代金の渡し方と一緒に決めます。

高齢者向け住宅と有料老人ホーム:契約前に確かめること

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、都道府県知事に登録する制度で、各住戸の床面積は原則25㎡以上(共用の居間・食堂・台所などが十分にあれば18㎡以上)、バリアフリー構造、安否確認と生活相談のサービスが必須です。受け取れるお金は敷金と家賃・サービスの対価に限られ、前払金を取る場合は算定の基礎と返還の計算方法を示すこと、入居後3か月以内に解約や死亡で契約が終わったときは前払金を返すこと、返還に備えた保全措置を講じることが基準になっています。

食事の提供、介護の提供、家事の供与、健康管理の供与のうち1つでも行っていれば、サ高住も有料老人ホームに当たり、老人福祉法の指導監督の対象になります。有料老人ホームの設置者には、次のことが法律で求められています(老人福祉法29条)。

  • 入居しようとする人に、介護等の内容などの情報を開示する
  • 家賃・敷金・サービス対価のほかに、権利金などを受け取らない
  • 終身にわたる家賃などを前払金として一括で受け取る場合は、算定の基礎を書面で明示し、返還債務に備えた保全措置をとる
  • 入居から一定期間内に契約が終わったときは、前払金から決められた額を引いた額を返す契約にする

契約前には、パンフレットではなく重要事項説明書と契約書案で、①前払金の有無と返還の条件、②介護が必要になったときの費用と住み替えの条件、③医療が必要になったときの対応、④退去の条件を確かめます。

今の家の出口:売る・リースバック・貸す

移る先が決まったら、今の家の出口を選びます。

出口 売却代金 住まい 毎月の負担 向く場面
売る 手元に入る 売却後は移る 移る先の費用 移る先が決まっていて、まとまった資金が要る
リースバック 手元に入る 売った後も住み続ける 家賃 住み慣れた家で暮らしたいが資金が要る
貸す 入らない(家賃が入る) 移る 管理・修繕・税金 戻る可能性がある、売りたくない

リースバックは、自宅を売って代金を得て、売却後は買主に毎月の家賃を払って住み続ける契約です。国土交通省のガイドラインは、特徴として、固定資産税や大規模修繕費がかからなくなる場合がある一方で毎月の賃料負担が生じること、賃借人として住宅の改変に制限があること、賃貸借の内容次第で希望する期間住み続けられない可能性があること、買戻しできる場合もあるが条件や価格に留意が必要なことを挙げています。

国民生活センターは、強引に勧められるリースバック契約の相談について、契約当事者の約7割が70歳以上と注意しています。自宅を不動産業者に売った契約はクーリング・オフができません。迷惑な勧誘には、きっぱり断って今後の勧誘をしないよう伝え、不安なときは消費者ホットライン188に相談します。断り方と相談先は自宅の買取・リースバックの強引な勧誘:断り方と相談先にまとめ、仕組みはリースバックとは:家を売って住み続ける契約の家賃・買戻しの注意で説明しています。

リースバックは、自宅を売って賃貸で住み続ける方法で、相談したから契約しなければならないわけではありません。家賃、契約期間と更新の有無、定期借家か普通借家か、買戻し特約の有無と価格、業者が家を第三者に譲る可能性を、契約書案で確かめます。月々の家賃は住み続ける間の負担になります。売主にクーリング・オフはありません。住宅ローンが残る場合は、借入先への相談が先です。

資金の考え方:売却の手取りと毎月の費用を並べる

資金は次の順に数字を出します。

  1. 売却の手取りを出す:売却価格から、ローン残債、仲介手数料、登記や測量などの費用、売却益にかかる税金を引きます。手取りの出し方はマンション売却でいくら残る?手取り額の計算方法とローン・税金にあります。
  2. 移る先の初期費用を引く:購入代金や諸費用、敷金、前払金などです。
  3. 毎月の費用を出す:移る先の費用(家賃や管理費、サービス費、食費、介護費)の合計です。
  4. 収入との差を出す:年金などの毎月の収入から3を引き、不足があればその額を出します。
  5. 手取りが何年分に当たるかを見る:2を引いた残りを、不足額の年額で割ります。

筆者の計算で例を示します。売却の手取りが2,500万円、移る先の初期費用が300万円、毎月の費用が18万円、年金などの収入が月13万円だとします。手元に残るのは2,500万円−300万円=2,200万円、毎月の不足は18万円−13万円=5万円(年60万円)です。2,200万円÷60万円=約36.7年分になります。仮の数字なので、自分の数字を入れて同じ式で計算します。ここに病気や介護の費用、住宅の修繕費を上乗せして、余裕を持った見通しにします。

資金の面では、生活費が不足する低所得の高齢者世帯向けに、居住用不動産を担保に生活資金を借りる不動産担保型生活資金(社会福祉協議会)もあります。厚生労働省の一覧では、貸付限度額は土地の評価額の70%程度が目安で月30万円以内、貸付期間は借受人が亡くなるまでなどで、保証人は推定相続人から選ぶとされています。対象世帯の要件があるため、お住まいの市区町村の社会福祉協議会に確かめます。

税金は、今の家を売るとき、自分が住んでいる家(または住まなくなって3年目の年末までの家)なら、居住用財産の3,000万円特別控除などの特例が使える場合があります。子に売ると「特別の関係がある人」への売却になり、この特例の対象外です(国税庁)。新居の住宅ローン控除との関係は住み替えの税金:3,000万円控除と住宅ローン控除の併用の注意で説明しています。

判断力があるうちに、家族と決めておくこと

住み替えは、売買契約や入居契約を自分で結べる間に進めるほうが、本人の希望を反映できます。判断能力が落ちてから家を売る場合は、成年後見人による売却や家庭裁判所の許可が必要になることがあります。元気なうちの備えは親が認知症になる前にやること:財産・委任・信託の対策チェック表にまとめています。

家族とは、①どこに住みたいか、②売却代金をどう使うか、③介護が必要になったときにどうするか、の3点を話し合い、メモに残します。窓口で相談したいときは相続手続きの無料相談窓口一覧:登記・税・売却まで番号と受付時間から選べます。

よくある質問

Q. 老後に持ち家を売って賃貸に移るのと、マンションを買うのはどちらがよいですか?

決める材料は、売却の手取りと毎月の支出の見通しです。賃貸は家賃が亡くなるまで続き、購入は管理費や修繕積立金が続きますが、住まいが資産として残ります。手取りを月々の不足額で割って何年分に当たるかを出し、年金などの収入と並べて比べると、感覚ではなく数字で判断できます。

Q. 高齢者向け住宅に入るために家を売るとき、先に売るか先に入居するかで迷います。

入居後に合わなかった場合に戻る先がなくなる点が、先に売る場合の注意点です。体験入居ができる住宅もあるので、契約前に確かめます。売却には数か月かかるため、入居の申込みの時期と売却の見通しを合わせ、住まなくなってから3年目の年末という税の期限も意識しておきます。

Q. リースバックなら、住み続けながら老後資金を作れますか?

売却代金は手元に入りますが、売った後は毎月の家賃が発生し、契約期間や更新、買戻しの条件によっては希望する期間住み続けられないことがあります。国土交通省のガイドラインも、賃貸借の内容次第で住み続けられない可能性を挙げています。契約書案で家賃と期間、買戻し条件を確かめてから判断します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

住み替えの住宅ローン:残債がある場合の住み替えローンと審査

住み替えの税金:3,000万円控除と住宅ローン控除の併用の注意

リースバックとは:家を売って住み続ける契約の家賃・買戻しの注意

自宅の買取・リースバックの強引な勧誘:断り方と相談先