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親が認知症になったら財産管理はどうなる?口座凍結と家族ができること

この記事のもくじ
  1. 親が認知症になると預金はどうなる:取引が止まる理由
  2. 家族ができること・できないこと
  3. 急ぐ支払いがあるときの進め方
  4. 元気なうちにできる備え

親が認知症になっても、預金や家がすぐに家族のものとして扱えるようになるわけではありません。銀行の預金は本人の財産で、払い出すには本人の意思確認が必要なため、本人が判断できなくなると家族であっても代わりに下ろすことはできないのが原則です。これが、家族から見た「口座凍結」の正体です。全国銀行協会(全銀協)が2021年に示した考え方では、判断能力が落ちた人の取引は成年後見制度などの利用を促すのが基本で、親族による払い出しは、本人の医療費の支払いなど本人の利益になることが明らかな場合に限った例外とされています。家族ができることは、①本人と一緒に手続きする、②銀行に代理の手続きを届け出る、③家庭裁判所に成年後見を申し立てる、の3つが中心です。

親が認知症になると預金はどうなる:取引が止まる理由

銀行が払い出しに慎重になるのは、意思能力のない人の取引は無効になりうるからです(民法3条の2)。後から「本人は理解していなかった」と争われると、払い出しの有効性そのものが問題になります。

全銀協の考え方は、状況を次のように分けて、銀行がどう対応するかの目安を示しています。

状況 銀行の対応の考え方(全銀協)
本人が判断できる 本人と通常どおり取引する
本人の判断能力が落ちてきた 親族などに成年後見制度などの利用を促すのが一般的。やむを得ず本人と取引する場合は、本人のための支払いか確かめるなどして対応
成年後見人などがいる 後見人などと取引する。後見人以外の親族からの払い出しの依頼には応じない
本人が元気なうちに代理人を届け出ていた 本人から有効に代理権を与えられ、銀行が届出を受けていれば、代理人と取引する
代理権のない親族が依頼する 成年後見制度の利用を求めるのが基本。本人の医療費などの支払いで、本人の利益に合うことが明らかな場合に限り、応じることが考えられる

注意したいのは、これは全銀協が会員の銀行に示した参考の考え方で、どの銀行にも同じ対応を義務づけるものではない点です。銀行によってはより厳格に対応したり、取引を断ったりすることもありうると書かれています。「医療費なら家族が下ろせる」と決めつけず、取引銀行に確かめるのが出発点です。投資信託などの解約は元に戻すのが難しいため、預金より慎重に扱うとされています。

なお、亡くなった人の預金を一部引き出せる仮払いの制度(民法909条の2)は相続が始まった後の制度で、存命の親には使えません。相続の場面の扱いは相続で口座凍結されたら:解除までの流れで確かめてください。

家族ができること・できないこと

預金以外も含めて、親の判断能力が落ちた後に家族ができることを整理します。

やりたいこと 家族だけでできるか 進め方
生活費・医療費・施設費の支払い 本人と一緒なら可能な場合がある。代理権のない家族だけでは原則できない 本人同席で窓口へ。続けて必要なら後見の申立て
定期預金の解約・まとまった払い出し できない 成年後見人などが行う
実家の売却・賃貸 できない(本人に意思能力がなければ売買は無効になりうる) 後見人が行い、住まいなら家庭裁判所の許可
介護サービス・施設の入所契約 本人に代わって契約する権限は、家族というだけでは持てない 契約できる状態なら本人が結ぶ。難しければ後見人などが本人を代理して契約
親が相続人になる遺産分割(例:祖父母の相続)の協議 親の代わりに合意することはできない 後見人が親の代わりに協議に加わる(後見人も相続人で利益がぶつかるときは特別代理人)
郵便物の整理・通帳の保管・支出の記録 できる 本人のための管理として記録を残す

家族が本人のお金を管理するときは、本人の財産と家族の財産を混ぜないことと、何に使ったかを記録することが基本です。領収書を残し、通帳の出入りに用途を書き込んでおくと、後で後見人に引き継ぐときや、親が亡くなって相続になったときに、きょうだいへの説明ができます。

実家の売却が目的の人は認知症の親の不動産売却は誰がどう進める?意思能力で分かれる3つの道、相続手続きが止まっている人は相続人に認知症の人がいる相続手続き:止まる場面と進め方へ進んでください。

急ぐ支払いがあるときの進め方

入院費や施設の入居一時金など、待てない支払いがあるときは、次の順で動きます。

  1. 取引銀行に事情を伝え、何があれば応じてもらえるかを聞く。 本人が同席できるか、請求書を持参すれば銀行から直接支払えるかなど、銀行ごとに対応が違います。
  2. 本人の判断能力について主治医に相談する。 本人がまだ意思を示せるなら、本人の手続きとして進められることがあります。
  3. 継続的な管理が必要なら、成年後見を申し立てる。 申立先は本人の住所地の家庭裁判所です。令和7年の統計では審理の約71.1%が2か月以内に終わっています。
  4. 申立て中でも急ぐ事情があれば、審判前の保全処分を相談する。 家事事件手続法126条は、後見開始の申立てがあった後、本人の財産の管理などのため必要があるとき、家庭裁判所が審判の効力が生じるまでの間の財産の管理者を選ぶなどの処分ができると定めています。全銀協の考え方も、医療費などで至急の支払いが必要な場合にこの保全処分の活用に触れています。

銀行の窓口では、次のように伝えると話が早く進みます。

文例:「父の口座のことで相談です。父は認知症で、本人が来店して手続きをするのが難しい状態です。入院費の請求書(金額○円、支払期限○月○日)があり、父の口座から病院へ支払う方法があるか教えてください。成年後見の申立ても準備しています。必要な書類を教えてください。」

申立ての書類と費用は成年後見の申立ての流れ:必要書類・費用・審判までの期間、制度全体と2026年の改正予定は成年後見とは?親が認知症になった時の財産管理と2026年改正の予定にまとめています。

早見表:親の状態と、家族が取れる財産管理の方法
  • 元気なうち:銀行の代理人の届出/財産管理の委任契約/任意後見契約(公正証書)/家族信託(信託契約)
  • 判断能力が落ちてきた:本人同席での手続き(銀行ごと)/主治医への相談/補助・保佐の申立て
  • 判断が難しい:成年後見の申立て(本人の住所地の家庭裁判所)/急ぐ場合は審判前の保全処分
  • 亡くなった後:相続の手続き(仮払い制度は相続後のみ)

元気なうちにできる備え

親がまだ判断できるなら、凍結に近い状態になる前に打てる手があります。どれも親本人に判断能力がある間でないと結べないことが共通の条件です。

  • 銀行の代理人の届出:全銀協の考え方では、本人から有効に代理権を与えられ、銀行が届出を受けていれば、代理人と取引できます。手続きの名前や代理人カードの有無、使える範囲は銀行ごとなので、取引銀行ごとに確かめます。
  • 財産管理の委任契約と任意後見契約:判断能力があるうちは委任契約で代わりに手続きし、判断能力が落ちたら任意後見に移る形です(公証人連合会の案内では、両方を同時に結ぶことが多い)。任意後見は公正証書で結び、家庭裁判所が監督人を選んだ時から効力が生じます。
  • 家族信託:預金や実家を信託して、子などの受託者が管理・処分できるようにします。信託契約は結んだ時に効力が生じ(信託法4条)、家庭裁判所は関与しません。ただし信託口口座の取り扱いは銀行ごとに違うので、契約書の案の段階で取引予定の銀行に確かめます。

どれを選ぶかは、守りたい財産(預金だけか、実家もか)と、生活面の手続き(介護・入所契約)まで任せたいかで変わります。準備の順番は親が認知症になる前にやること:財産・委任・信託の対策チェック表で、制度の違いは家族信託と任意後見・成年後見の違い:比較表で確かめてください。

よくある質問

Q. 親のキャッシュカードと暗証番号を家族が預かって、ATMで下ろしてもいいですか?

全国銀行協会の考え方は、預金は本人の資産で、払い出しには本人の意思確認が必要、家族でも払い出せないことが前提です。親が判断できない状態で家族がカードを使うと、本人のための支出だったかを後から説明できず、きょうだいとの争いのもとにもなります。続けて管理が必要なら、銀行の代理人の手続きや成年後見の申立てに切り替えます。

Q. 親の口座が止まったのは、銀行が認知症の診断を知ったからですか?

全国銀行協会の考え方が前提にしているのは、本人の意思確認ができるかどうかです。診断名がそのまま取引制限の条件になるとは書かれておらず、どんな場合に取引を制限するか、判断能力の低下をどう把握するかは銀行ごとに違います。全国銀行協会の考え方も、銀行がより厳格な対応をすることがありうると注記しています。止まった理由と再開の条件は、取引銀行の窓口で聞きます。

Q. 亡くなった人の預金を下ろせる仮払いの制度は、認知症の親の口座にも使えますか?

使えません。遺産分割前の預金の払戻し制度(民法909条の2)は、預金者が亡くなった後に相続人が使う制度です。存命の親の口座は、本人の意思確認か、後見人などの法定代理人による取引が前提になります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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