取得費不明の不動産売却の税金:5%の概算と取得費の探し方
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親が買った値段が分からなくても、売った金額の5%を取得費にして、不動産売却の税金を計算できます。国税庁は、取得費が分からないときと、実際の取得費が5%を下回るときに、5%を使ってよいと案内しています。たとえば3,000万円で売った場合の取得費は、150万円です。ただし、5%の取得費は小さいので、譲渡益が大きく出て、税金は高くなりやすくなります。5%を使う前に、実額を探す手順と、税額を抑える特例を見ておく価値があります。
取得費が不明なときの5%の概算と、税額のイメージ
譲渡所得は「売った金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除」で計算します。取得費が不明なら、取得費の欄に「売った金額×5%」を入れます。
売った年の1月1日で所有期間が5年を超えている長期の場合、税率は約20.315%です(所得税15%・復興特別所得税・住民税5%)。譲渡費用をゼロとして単純にした筆者の計算で、5%の取得費を使った場合の税額の目安を示します。
| 売った金額 | 取得費(5%) | 譲渡益 | 税額の目安(約20.315%) |
|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 100万円 | 1,900万円 | 約386万円 |
| 3,000万円 | 150万円 | 2,850万円 | 約579万円 |
| 4,000万円 | 200万円 | 3,800万円 | 約772万円 |
検算は、たとえば3,000万円なら2,850万円×0.20315=579.0万円です。実際には、仲介手数料や印紙税などの譲渡費用が引けるので、税額はこの表より小さくなります。引ける費用は不動産売却の税金で引ける費用:仲介手数料など譲渡費用に入るもので確かめられます。
5%を使っても、空き家の3,000万円控除などの特例が使えれば、譲渡益から最高3,000万円が引かれます。特例の入り口は、記事の後半に示します。
5%を使う前に、実額の取得費を探す
取得費の実額が、売った金額の5%を上回るなら、実額を使うほうが税額は小さくなります。国税庁のNo.3252によると、取得費に入るのは、購入代金と購入手数料のほか、購入時の登録免許税や不動産取得税、印紙税(業務用の場合は含まれない)、土地を取得したときの測量費、造成費用、立退料などです。親の時代の書類を、次の順に探します。
| 探す書類 | 分かること |
|---|---|
| 不動産売買契約書・重要事項説明書 | 購入代金、購入手数料、契約日 |
| 領収書・通帳・預金の取引履歴 | 支払った日と額(古い取引は、金融機関に残っているか問い合わせる) |
| 住宅ローンの契約書・返済予定表 | 借入額から、購入額を推定する手がかり |
| 建築工事請負契約書・設計図書 | 建物の建築代金(新築した場合) |
| 登記事項証明書 | 取得した日と原因(売買・相続など)。取得日は、長期・短期の判定に使う |
| 登録免許税や不動産取得税の領収書・納付書 | 取得時にかかった税金 |
| 当時の不動産会社・工務店の取引記録 | 書類がなければ、取引の記録が残っていないかを問い合わせる |
| 親の遺品の整理で出てきた書類 | 古い封筒や手帳に挟まっていることがある |
家の中の書類は、遺品の整理の前に探しておくと、捨てずに済みます。固定資産税の評価額は、国税庁が取得費として挙げているものに入っていないので、取得費の代わりに書くことはできません。
土地と建物の内訳が分からないときの建物の計算
土地と建物を一括で買って、契約書に内訳がないときは、建物の取得価額を、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」で計算する方法があります。表は、建築着工統計をもとにした、1㎡あたりの工事費の目安で、構造と建築年で単価が決まっています。契約書などで土地と建物の価額が区別されている場合は、その金額を使うので、この表は使いません。
筆者の計算例です。1980年(昭和55年)に建てた木造の家(延べ床面積100㎡)を、2026年に売る場合です。
- 標準的な建築価額表の木造・昭和55年は、1㎡あたり92.5千円。取得価額は「92.5千円×100㎡=925万円」。
- 自宅(非業務用)の建物は、取得価額から、減価償却費相当額を引いて取得費を出す。木造の償却率は0.031、経過年数は約46年(6か月以上の端数は1年)。
- 減価償却費相当額は「925万円×0.9×0.031×46」で計算すると上限を超えるため、取得価額の95%(878.75万円)が上限になる。
- 建物の取得費は「925万円−878.75万円=46.25万円」。
古い木造の建物は、取得費がほぼ残りません。この計算は、確定申告書等作成コーナーに建築年月日などを入れると、自動で出る機能もあります。表は更新されるので、売る年の分を国税庁のサイトで確かめてください。減価償却の計算の詳細は、不動産売却の税金計算の減価償却:建物の取得費の計算方法で扱います。
土地を買った額が分からなければ、土地の実額は出せないので、土地分は5%の概算取得費を使う場面になります。建物だけ表で算定し、土地だけ5%を使うといった組合せが認められるかは、税務署に確かめてください。
市街地価格指数で推計できると聞いたとき
インターネットでは、「市街地価格指数」で昔の土地の値段を推計する方法が紹介されることがあります。国税庁のNo.3258には、この方法の記載はありません。使えるかどうかは、税務署か税理士に、個別の事情で確かめてください。推計した金額が、そのまま認められるとは限りません。
相続した不動産で5%を使うときの注意
相続した不動産の取得費は、被相続人が買ったときの購入代金などを引き継ぎます(国税庁のNo.3270)。取得した日も、親の取得日を引き継ぐので、相続してすぐ売っても長期になることがあります。
注意したいのは、5%の概算取得費を使うと、相続人が払った登記費用や不動産取得税は、取得費に含められない点です。実額で計算する場合は、これらも取得費に含められます(業務用の資産を除く)。
比較の例です。書類が見つかり、親の購入代金などで計算した取得費の実額が250万円、相続のときに相続人が払った登記費用が30万円とします。売った金額が4,000万円なら、5%は200万円です。実額は「250万円+30万円=280万円」なので、実額のほうが80万円大きくなります。こうした比較は、書類が集まってからやり直します。
取得費が不明でも使える特例と相談先
取得費が不明でも、次の特例は使えます。
- 相続した空き家の3,000万円控除:譲渡益から最高3,000万円を引く。要件は相続した空き家の3000万円控除:特別控除の要件と2027年末の期限。
- 取得費加算の特例:相続税を払った人が、払った相続税の一部を取得費に加える。内容は取得費加算の特例:相続税を払った人が売却益の税金を減らすしくみ、2つの選び方は取得費加算と空き家特例は併用できない:どちらを選ぶかの比べ方で比べられます。
- 自宅の3,000万円特別控除:相続人が住んでいた家などの場合。要件は自宅を売った時の譲渡所得税の3000万円控除:要件と期限。
相続した不動産の取得費と取得日の全体は相続不動産の売却益の税金:親の取得費と取得日を引き継ぐしくみにまとめています。
取得費の実額を探して、どうしても分からず、5%を使うかどうかや、特例との組み合わせで迷う場合は、税理士か税務署に相談します。窓口は譲渡所得税の相談窓口:税務署の電話相談と確定申告会場の使い方に載せています。売る前に、取得費の扱いまで確かめておくと、申告の見通しが立ちます。
よくある質問
Q. 取得費が分からないと、税金は高くなりますか?
実額が分かる場合より、税額が大きくなりやすいのは事実です。ただし、売った金額の5%を取得費にできるほか、空き家の3,000万円控除や取得費加算などの特例が使える場合もあるため、税額は特例の有無で大きく変わります。
Q. 5%の概算取得費を使うと、3,000万円控除は使えなくなりますか?
取得費の決め方と控除は別の計算なので、5%で出した譲渡益から、要件に合う特別控除を引けます。取得費に何を使うかと、特例を使うかは、別々に決めます。
Q. 実額と5%の、どちらを使えばよいですか?
実額が分かって、売った金額の5%を上回るなら、実額のほうが取得費が大きく、税額は小さくなります。実額が5%を下回るときや、実額が分からないときは、5%を使えます。
出典・参考にした公的な情報
- No.3258 取得費が分からないとき(国税庁)
- No.3252 取得費となるもの(国税庁)
- No.3261 建物の取得費(減価償却費相当額)(国税庁)
- No.3270 相続や贈与により取得した場合の取得費と取得時期(国税庁)
- 建物の標準的な建築価額表(国税庁)
- 令和7年分 土地や建物を売却したときの税額の計算方法早見表(国税庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。