相続税の控除一覧:配偶者・未成年者・障害者・相次相続の早見表
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相続税の「控除」には、**財産の額から引くもの(基礎控除・債務や葬式費用・死亡保険金の非課税枠)と、計算した税額から引くもの(税額控除)**の2段階があります。税額控除の主なものは、暦年課税分の贈与税額控除、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除の6つで、国税庁はこの順番で差し引くと定めています(No.4152)。この記事では、対象者と計算式を一覧にし、順番と計算例を示します。
相続税の控除は2段階:財産から引くものと税額から引くもの
相続税の計算は、財産の額を出してから税額を出す流れです。どの段階で引く控除かを分けて見ると、混同しにくくなります。
| 段階 | 主な控除 | 引くもの | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 財産の額から引く | 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠 | 500万円×法定相続人の数 | 生命保険の相続税の非課税枠 |
| 財産の額から引く | 債務控除・葬式費用 | 借入金・未払金・葬式の費用 | 相続税の債務控除:借金や葬儀費用は引ける? |
| 遺産の合計から引く | 遺産に係る基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数 | 相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×人数で一次判定 |
| 税額から引く | 6つの税額控除 | 下の早見表 | この記事 |
財産の額から引く控除は、税率を掛ける前の金額を小さくします。税額控除は、税率を掛けて出した各人の税額から、決まった額をそのまま引きます。財産の額から引く段階で合計が基礎控除以下になれば、税額控除を考える前に相続税はかかりません。
税額控除6つの早見表:対象者と計算式
| 順 | 控除 | 対象になる人 | 控除額の計算 | 申告書 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 暦年課税分の贈与税額控除 | 生前贈与が相続財産に加算された人 | 加算された贈与に課された贈与税額 | 第4表の2 |
| 2 | 配偶者の税額軽減 | 法律上の配偶者 | 相続税の総額×(次のいずれか少ない額)÷課税価格の合計:①課税価格の合計×法定相続分か1億6,000万円の多い方、②配偶者の課税価格 | 第5表 |
| 3 | 未成年者控除 | 18歳未満の法定相続人 | 10万円×18歳になるまでの年数 | 第6表 |
| 4 | 障害者控除 | 85歳未満の障害者である法定相続人 | 10万円(特別障害者は20万円)×85歳になるまでの年数 | 第6表 |
| 5 | 相次相続控除 | 10年以内に2回目の相続があったときの相続人 | 1回目に課された相続税額を、経過年数などで調整した額 | 第7表 |
| 6 | 外国税額控除 | 外国の財産に外国で相続税に当たる税を課された人 | 外国で課された税額をもとにした一定額 | 第8表 |
このほか、相続時精算課税で贈与を受けた人がすでに納めた贈与税を引く「相続時精算課税分の贈与税相当額の控除」があり、6つを引いた後に差し引きます。引ききれない分は還付の対象です(No.4152)。
それぞれの要点は次のとおりです。
- 配偶者の税額軽減:配偶者が実際に取得した正味の遺産が1億6,000万円か法定相続分相当額のどちらか多い額までなら、配偶者に相続税はかかりません(No.4158)。申告期限までに分割されていない財産は、原則として対象外です(「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えて3年以内に分割した場合などは対象になります)。二次相続まで見た考え方は相続税の配偶者控除:1億6,000万円の軽減と二次相続での注意で扱っています。
- 未成年者控除:成年年齢の引き下げに合わせて、対象は18歳未満です(No.4164)。古い資料にある「20歳」は、2022年3月31日以前の相続の話です。
- 障害者控除:一般障害者は年10万円、特別障害者は年20万円です(No.4167)。
- 相次相続控除:1回目の相続から10年以内に2回目の相続があると、1回目に納めた相続税の一部を2回目の税額から引けます(No.4168)。相続人に限られ、相続を放棄した人は使えません。
差し引く順番と、引ききれないときの扱い
税額控除は、各人の税額に2割加算をしたあとで、早見表の1から6の順に引きます(No.4152)。順番が決まっているのは、控除によって「引ききれない分」の扱いが違うためです。
- 2割加算をする:配偶者と子・父母以外の人(孫や兄弟姉妹など)は、まず税額を1.2倍にします。対象者の見分け方は相続税の2割加算とは:孫・兄弟姉妹・甥姪が対象になる理由で説明しています。
- 1〜6の控除を順に引く:引いた結果がマイナスになる場合、納める税額は0円です。
- 未成年者控除・障害者控除の引ききれない分を移す:本人の税額から引ききれない分は、その人の扶養義務者(親など)の相続税額から引けます(相続税法19条の3・19条の4)。
- 相続時精算課税分の贈与税を引く:6つを引いた後の税額から差し引き、引ききれない分は還付の対象になります(No.4152)。
未成年者控除と障害者控除の両方に当たる人は、未成年者控除を先に引き、残った税額から障害者控除を引きます。過去の相続で同じ控除を使った人は、控除できる額に上限があります(相続税法19条の3第3項)。
筆者の計算例:年数の数え方と相次相続控除
年数は「1年未満の端数は1年」として数えます(相続税法19条の3・19条の4)。この切り上げを落とすと控除額が小さくなります。
| 例 | 計算(筆者の計算) | 控除額 |
|---|---|---|
| 15歳9か月の子(国税庁の例) | 18歳まで2年3か月→3年×10万円 | 30万円 |
| 40歳3か月の一般障害者 | 85歳まで44年9か月→45年×10万円 | 450万円 |
| 40歳3か月の特別障害者 | 45年×20万円 | 900万円 |
相次相続控除の式は、国税庁の表記で「A×C/(B−A)×D/C×(10−E)/10」です。ただし C/(B−A) が1を超えるときは1にします(No.4168)。
- A:2回目の被相続人が1回目の相続で課された相続税額
- B:2回目の被相続人が1回目の相続で取得した財産の純資産価額(債務・葬式費用を引いた後)
- C:2回目の相続で全員が取得した財産の純資産価額の合計
- D:控除を受ける相続人が2回目の相続で取得した財産の純資産価額
- E:1回目から2回目までの年数(1年未満は切り捨て)
例として、A=200万円、B=5,000万円、C=8,000万円、D=4,000万円、E=4年(4年7か月)とします。C/(B−A)=8,000万÷4,800万で1を超えるので1。控除額は200万円×1×(4,000万÷8,000万)×(10−4)÷10=60万円です(筆者の計算)。検算:200万円×0.5×0.6=60万円。制度の要件の詳しい説明は10年以内に二次相続が起きたら:相次相続控除の計算と要件にあります。
申告が要る控除と、障害者に当たる人の範囲
配偶者の税額軽減は、軽減を受けて納める税額がゼロになる人も、申告書を出さなければ使えません(No.4158、相続税法19条の2第3項)。財産の評価を下げる小規模宅地等の特例も同じで、特例を使って基礎控除以下になる場合でも申告が必要です。
障害者控除の「障害者」は、相続税法施行令4条の4が所得税法施行令10条を引いて決めています。主な区分は次のとおりです。
| 区分 | 一般障害者(年10万円) | 特別障害者(年20万円) |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 障害の記載がある人 | 1級または2級の人 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 交付を受けている人 | 障害等級1級の人 |
| 知的障害の判定 | 児童相談所などで知的障害者と判定された人 | 重度と判定された人 |
| 65歳以上の人 | 市町村長などの認定で障害者に準ずるとされた人 | 認定で特別障害者に準ずるとされた人 |
| 常に寝たきりで複雑な介護が必要な人 | 市町村長などの認定で障害者に準ずるとされた人 | 認定で特別障害者に準ずるとされた人 |
このほか、戦傷病者手帳の交付を受けている人(重い等級は特別障害者)や原爆被爆者の認定を受けている人も範囲に入ります。相続税では、寝たきりの人は市町村長などの認定を受けていることが条件です(相続税法施行令4条の4)。所得税の障害者控除と範囲が少し違うので、所得税の扱いをそのまま当てはめないようにします。
控除の対象かどうかを家族の状況に当てはめて判断し、税額を出すのは税理士の仕事です(税理士法52条)。まず式と順番を押さえ、計算の全体は相続税の計算方法:課税価格から納める税額までの5ステップと合わせて確かめてください。
「相続税 控除」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。
よくある質問
Q. 未成年者控除は、相続を放棄した子にも使えますか?
未成年者控除の対象は、財産を取得した18歳未満の法定相続人で、法定相続人かどうかは放棄がなかったものとして判断します(相続税法19条の3)。そのため、放棄した子が遺贈や死亡保険金で財産を取得した場合も、控除の対象になります。財産を何も取得していなければ、相続税額がないので控除する先もありません。
Q. 障害者手帳がない親でも、障害者控除を使えることはありますか?
あります。相続税の障害者の範囲は所得税法施行令10条によっており、精神保健指定医などの判定で知的障害者とされた人や、65歳以上で市町村長などから障害者に準ずると認定された人も含まれます(相続税法施行令4条の4)。認定の窓口は市区町村なので、亡くなる前の状況を含めて問い合わせます。
Q. 税額控除で相続税がゼロになったら、申告しなくてよいですか?
控除によっては申告が要件です。配偶者の税額軽減は、納める税額がゼロになる人でも申告書を出さなければ使えません。小規模宅地等の特例など財産の評価を下げる特例も同じなので、基礎控除を超える遺産がある場合は、申告の要否を控除の前の金額で確かめます。
出典・参考にした公的な情報
- No.4152 相続税の計算(国税庁)
- No.4158 配偶者の税額の軽減(国税庁)
- No.4164 未成年者の税額控除(国税庁)
- No.4167 障害者の税額控除(国税庁)
- No.4168 相次相続控除(国税庁)
- 相続税法 第19条の2〜第20条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 相続税法施行令 第4条の4(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 所得税法施行令 第10条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。