生前贈与の不動産売却の税金:贈与された家の取得費の引継ぎと特例
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親から生前贈与された家や土地を売ると、売却益(譲渡所得)に所得税と住民税がかかります。ポイントは3つで、取得費と取得時期は親から引き継ぐ、自分が住んでいた家ならマイホームの3,000万円控除を使える、そして相続で受けた家に使える「空き家の3,000万円控除」と「取得費加算の特例」は、生前贈与で受けた家には使えないことです。以下、売る人が迷う順に答えます。
Q1. 贈与された家を売ると、どんな税金がかかる?
かかるのは、譲渡所得に対する所得税・復興特別所得税・住民税です。贈与税は、もらった年の分としてすでに精算が済んでいるので、売るときに改めてかかることはありません。譲渡所得は給与などと分けて計算する分離課税で、式は次のとおりです(国税庁 No.3202)。
譲渡所得=売った金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除
利益が出なければ、譲渡所得の税金はかかりません。税率は、売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるかどうかで分かれます。
| 区分 | 所有期間(売った年の1月1日時点) | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
どちらも所得税額の2.1%の復興特別所得税が加わり、長期なら合わせて約20.315%です。申告は売った年の翌年2月16日〜3月15日に行います(No.3102)。税金の全体像は不動産売却の税金の全体と確定申告にまとめています。
Q2. 取得費は親が買った値段を使えるの?
使えます。所得税法60条は、贈与で取得した資産は贈与した人が「引き続きこれを所有していたものとみなす」と定めています。国税庁 No.3270 も、贈与で取得した土地建物の取得費は贈与者が買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算し、取得の時期も贈与者のものを引き継ぐと説明しています。
加えて、業務に使っていない家なら、子(受贈者)が贈与のときに払った登記費用と不動産取得税も取得費に入れられます。生前贈与の登記は登録免許税が評価額の2%と重いので、この扱いは見落とさないようにします。登記の費用の内訳は生前贈与の登記を司法書士に頼む費用で確かめられます。
建物は年数とともに価値が減るものとして、購入代金から減価償却費に当たる額を引いた残りが取得費になります(土地は引きません)。親の購入時の売買契約書・領収書・登記費用の領収書が、取得費の証拠になります。贈与を受けたときに、こうした書類も一緒に引き継いでおくのが、後で売る人にとって一番の備えです。
Q3. 親の購入時の書類がないとどうなる?
取得費が分からない場合は、売った金額の5%を取得費とすることができます(No.3258)。ただしこの場合は、子が払った登記費用や不動産取得税を足すことはできません(No.3270)。書類があるかないかで税額が大きく変わる例を、筆者の計算で示します。
前提(筆者の仮の数字):親が1995年に土地を1,500万円で購入。2022年に子へ贈与し、子は登記費用と不動産取得税を合わせて60万円払った。子はその土地に住まず、2026年に3,000万円で売却。仲介手数料は上限で105万6,000円(3,000万円×3%+6万円に消費税10%)。所有期間は親の取得から数えるので長期。
| 項目 | 購入時の書類がある | 書類がなく5%を使う |
|---|---|---|
| 取得費 | 1,500万円+60万円=1,560万円 | 3,000万円×5%=150万円 |
| 譲渡費用 | 105万6,000円 | 105万6,000円 |
| 譲渡所得 | 1,334万4,000円 | 2,744万4,000円 |
| 所得税15%+復興特別所得税 | 204万3,600円 | 420万3,000円 |
| 住民税5% | 66万7,200円 | 137万2,200円 |
| 合計 | 約271万円 | 約558万円 |
検算:1,334万4,000円×15%=200万1,600円、その2.1%=4万2,033円で、合計を100円未満切り捨てて204万3,600円。2,744万4,000円×15%=411万6,600円、その2.1%=8万6,448円で、合計420万3,000円。住民税は各5%です。書類を探すときの手順は取得費不明の不動産売却の税金で扱っています。
| 項目 | 生前贈与で受けた家 | 相続で受けた家 |
|---|---|---|
| 取得費・取得時期 | 親から引き継ぐ(No.3270) | 親から引き継ぐ(No.3270) |
| 子が払った登記費用・不動産取得税 | 業務用でなければ取得費に入る | 業務用でなければ登記費用が取得費に入る |
| マイホームの3,000万円控除 | 子が住んでいた家なら使える | 子が住んでいた家なら使える |
| 空き家の3,000万円特別控除 | 使えない(相続・遺贈で取得した家が対象) | 要件を満たせば使える(2027年12月31日の譲渡まで) |
| 取得費加算の特例 | 使えない(相続・遺贈で取得し相続税が課された人が対象) | 相続税を払った人は使える |
Q4. 3,000万円控除などの特例は使える?
子が住んでいた家なら、マイホームの3,000万円特別控除を使えます(No.3302)。今住んでいる家、または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家が対象で、所有期間の長さは問われません。親子や夫婦など特別な関係の人に売る場合や、特例を受けるためだけに入居した家は対象外です。控除で税額が0円になる場合も、確定申告をして初めて特例が受けられます。要件の詳細は自宅を売った時の3000万円控除を読んでください。
さらに、家屋と敷地の所有期間が売った年の1月1日で10年を超えていれば、控除後の6,000万円以下の部分の所得税を10%(住民税4%)にする軽減税率と併用できます(No.3305)。取得の時期は親から引き継がれるので(No.3270)、所有期間の数え方も親の取得の日が起点になります。ただし居住用の特例は、あくまで売る本人が住んでいたことが前提です。
一方、相続で受けた家に使える2つの特例は、生前贈与の家には使えません。空き家の3,000万円特別控除は、国税庁 No.3306 で「相続または遺贈(死因贈与を含む)」で取得した被相続人の家と敷地が対象とされています。取得費加算の特例も、No.3267 で「相続や遺贈により財産を取得した者」で相続税が課税されている人が対象です。親の家を「いずれ売る」と分かっているなら、贈与で移すか相続まで待つかで売るときの税金が変わります。また、贈与した親の相続のとき、贈与した家を子がすでに売っていても、加算の対象になる期間内の贈与なら、贈与時の価額が相続税の計算に足し戻されます(暦年課税は国税庁 No.4161、相続時精算課税は No.4103)。この比べ方は個別の財産と家族の状況で答えが変わるので、贈与の前に税理士に試算を頼む場面です。
Q5. 売る前に何から始めればいい?
売る準備は次の順で進めると、税金と価格の両方の判断材料がそろいます。
- 登記事項証明書で、名義が自分に移っていることを確かめる。 贈与の登記が済んでいないと売買の手続きに進めません。
- 親の購入時の書類と、贈与のときの登記費用・不動産取得税の領収書を集める。
- 自分が住んでいたかどうかで、使える特例を整理する。 住民票の異動の時期も確かめます。
- 相場を知るために、複数の不動産会社に査定を頼む。
- 売った年の翌年2月16日〜3月15日に確定申告をする。
査定を複数社に頼む方法の一つに、一括査定サービスがあります。使う前に知っておきたいのは、査定額は売れる値段ではないこと、申し込むと複数の会社から連絡が来ることがあること、売るかどうかは査定を見てから決めてよいことです。宅地建物取引業法34条の2は、業者が価格に意見を述べるときに根拠を示すよう定めているので、各社の査定の根拠を比べます。しくみと注意点は不動産一括査定のしくみと使い方で確かめてください。
贈与で家を受けたことを兄弟にどう説明するか、相続のときに問題にならないかが気になる人は、次の生前贈与で相続トラブルになる例と遺留分の考え方へ進んでください。
よくある質問
Q. 贈与を受けてすぐに売ったら、短期の高い税率になりますか?
贈与で取得した不動産は、親が買った日を引き継いで所有期間を数えます。親が長く持っていた家なら、子がもらってすぐに売っても、売った年の1月1日時点で親の取得から5年を超えていれば長期譲渡所得です。親が買ってから5年以内の物件だけ短期になります。
Q. 贈与税を払った分は、売るときの取得費に足せますか?
国税庁のNo.3270が取得費に含めるとしているのは、親の購入代金・購入手数料などと、業務用でない場合に受贈者が払った登記費用・不動産取得税です。贈与税はこの一覧に入っていません。取得費に何を入れるか迷うものは、申告の前に税務署の電話相談で確かめます。
Q. 親が住んでいる家を贈与で受けて、親が住んだまま売るとどうなりますか?
売る時点の所有者は子なので、売却益は子の譲渡所得になります。子がその家に住んでいなければ、マイホームの3,000万円控除は子の側では使えません。親が住み続けるかどうかで税金の結果が大きく変わるため、売る前に住まいと名義の関係を整理しておきます。
出典・参考にした公的な情報
- No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期(国税庁)
- 所得税法 第60条(贈与等により取得した資産の取得費等)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)(国税庁)
- No.3208 長期譲渡所得の税額の計算(国税庁)
- No.3258 取得費が分からないとき(国税庁)
- No.3302 マイホームを売ったときの特例(国税庁)
- No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(国税庁)
- No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
- No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(国税庁)
- No.3102 譲渡所得の申告期限(国税庁)
- 宅地建物取引業法 第34条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 令和7年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし・税額の計算方法早見表(国税庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。