生前贈与と贈与税 / 比較

生前贈与の登記を司法書士に頼む費用と自分で申請する方法

この記事のもくじ
  1. 司法書士に頼む場合と自分で申請する場合の費用の違い
  2. 登録免許税と不動産取得税の計算
  3. 自分で贈与登記を申請する手順と必要書類
  4. 司法書士に頼むほうがよい場面と頼み方
  5. 費用と手間で決める:比べ方のまとめ

生前贈与で親の家や土地を子の名義にするときは、法務局に「贈与による所有権移転登記」を申請します。司法書士に頼むと、日本司法書士会連合会(日司連)の2024年3月のアンケートでは、評価額1,000万円の土地・建物の贈与登記の報酬の平均が53,902円でした。これに登録免許税(固定資産評価額の2%)などの実費が加わります。自分で申請すれば報酬はかかりませんが、法務局の記載例に沿って書類をそろえる手間がかかります。

司法書士に頼む場合と自分で申請する場合の費用の違い

贈与登記の費用は「専門家の報酬」と「誰が申請しても払う実費」に分かれます。自分で申請して節約できるのは報酬の部分だけで、登録免許税や不動産取得税は変わりません。

費用の項目 司法書士に頼む 自分で申請する
司法書士の報酬 日司連アンケートの平均53,902円(下の設例の条件つき) かからない
登録免許税 固定資産評価額×2% 同じ
登記事項証明書(申請前の確認・完了後の確認) 報酬とは別に実費 書面請求1通600円、オンライン請求で窓口受取り1通490円
印鑑証明書・住民票・固定資産評価証明書 実費(取得を頼むと手間賃がつくことがある) 市区町村の手数料
不動産取得税 登記の後に都道府県から納税通知が来る 同じ

日司連の平均は、「土地1筆・建物1棟、固定資産評価額の合計1,000万円、贈与契約書等の作成と申請代理」という設例への回答(有効回答1,062件、消費税込み)です。報酬は司法書士が自由に決めるもので、不動産の数や、権利証がない・住所が登記と違うといった事情があれば上がります。司法書士法施行規則22条は、司法書士が依頼を受ける前に報酬の算定方法などの基準を示すことを定めているので、見積もりの段階で基準を出してもらいます。

登録免許税は、筆者の計算で固定資産評価額1,000万円なら1,000万円×2%=20万円です。法務局の記載例でも、課税価格2,000万円に対して登録免許税40万円と書かれています。相続による名義変更の0.4%と比べると5倍で、ここが贈与の登記が重くなる理由の一つです。贈与と相続のどちらで名義を移すかの比べ方は不動産の生前贈与の手続きと税金の比べ方で扱っています。

登録免許税と不動産取得税の計算

登録免許税は、登録免許税法の別表で、贈与など相続以外の原因による所有権の移転が「不動産の価額の1,000分の20」と決まっています。不動産の価額は、同法附則7条により当分の間は固定資産課税台帳に登録された価格を基に計算できます。この価格は、市区町村(東京23区は都税事務所)で固定資産評価証明書を取ると分かります。持分だけを贈与する場合は、価額に持分の割合を掛けた額が課税標準です。計算した税額が1,000円に満たないときは1,000円になります(同法19条)。

不動産取得税は、登記とは別に、不動産をもらった人に都道府県が課す税金です。地方税法73条の7で相続による取得は非課税ですが、生前贈与は課税の対象になります。

不動産取得税の税率は標準4%ですが、住宅と土地は2027年3月31日の取得まで3%、宅地は課税標準が価格の2分の1です(地方税法73条の15・附則11条の2・11条の5)。住宅用の土地や建物には73条の14・73条の24の軽減もあり、受けられるかは都道府県税事務所への申告で決まります。具体的な計算例は不動産の生前贈与の手続きと税金の比べ方の比較表にあります。納税通知が届いてから慌てないよう、登記と同じ時期に税事務所の案内を見ておきます。

早見表:贈与と相続で名義を移すときの税金の違い
税金 生前贈与 相続
登録免許税 評価額×2% 評価額×0.4%
不動産取得税 課税(住宅・土地は2027年3月31日まで3%、宅地は価格の2分の1) 非課税
贈与税・相続税 贈与税(暦年課税か相続時精算課税) 相続税(基礎控除を超える場合)

自分で贈与登記を申請する手順と必要書類

法務局は「不動産登記の申請書様式について」のページに、贈与による所有権移転登記の様式と記載例を載せています。2026年10月5日以降の申請では、新しく名義人になる人の国籍等を申し出る欄がある新様式を使います。手順は次のとおりです。

  1. 登記事項証明書で現在の名義と不動産の表示を確かめる。 所在・地番・家屋番号を、申請書の「不動産の表示」に登記記録のとおり写します。親の住所が登記と違えば、先に住所の変更の登記が要ります。
  2. 贈与契約書(または登記原因証明情報)を作る。 記載例では「贈与者が贈与する意思を表示し、受贈者がこれを受諾した」ことと日付を書き、双方が署名押印します。申請書の原因欄に書く日付は、贈与契約が成立した日です(登記申請の日ではありません)。
  3. 親(贈与者)の書類をそろえる。 登記識別情報(または登記済証=権利証)と、発行から3か月以内の印鑑証明書です。
  4. 子(受贈者)の書類をそろえる。 住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの)で、申請書に住民票コードを書けば省略できます。2026年10月5日以降の申請では、申請書に氏名ふりがな・生年月日・国籍等・メールアドレスも書き、日本国籍なら本籍地が記載された住民票の写しや戸籍の附票の写しなど、国籍等を証する情報も付けます。法務省の取扱いでは、日本に住所があり日本国籍の人が住民票コードを提供して住基ネットで確認できる場合は、この添付が不要とされています。
  5. 委任状を用意する。 記載例は、受贈者が贈与者から申請を委任され、1人で申請する形です。委任状には親が実印を押します。
  6. 固定資産評価証明書で課税価格と登録免許税を計算し、収入印紙を貼って申請する。 窓口・郵送・オンラインのいずれかで出します。

贈与の登記は、もらう人(登記権利者)とあげる人(登記義務者)が共同で申請するのが原則(不動産登記法60条)なので、親の協力が要ります。書き方で迷ったら、法務局の登記手続案内(予約制、1回20分以内)で申請書を見てもらえます。聞けることと予約の方法は法務局の相続登記の相談にまとめています。ただし、法務局は申請書を代わりに作る窓口ではありません。

司法書士に頼むほうがよい場面と頼み方

登記の申請の代理や、法務局に出す書類の作成を仕事として引き受けられるのは、司法書士(と弁護士)です(司法書士法3条・73条)。自分で申請できる人でも、次の場面では頼む価値があります。

  • 親の権利証(登記識別情報)が見つからない
  • 登記上の親の住所や氏名が今と違い、つながりを示す書類が多い
  • 土地が何筆にも分かれている、私道の持分がある、共有名義になっている
  • 抵当権が残っている、または住宅ローンの完済後に抵当権の抹消をしていない
  • 平日に法務局や市区町村へ行く時間が取れない

依頼するときは、物件の数と評価額、権利証の有無、親子の住所を伝えて見積もりを取ります。

依頼文の例:「父から私へ、自宅の土地1筆と建物1棟を贈与で名義変更したいと考えています。固定資産評価額は合計○○万円、権利証はあります。贈与契約書の作成から申請までの報酬と、登録免許税などの実費を分けた見積もりと、報酬の基準をお願いします。」

司法書士は登記の専門家ですが、贈与税の申告書を作ったり、贈与税がいくらになるかを個別に計算したりするのは税理士の仕事です。不動産の贈与では翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告が要ることが多いので、登記と税を別々の専門家に頼む流れになります。頼み分けは相続手続きの専門家の違い、申告の進め方は贈与税の申告のやり方を読んでください。報酬の見積もりの比べ方は相続の司法書士費用の内訳と見積もりの確かめ方が参考になります。

費用と手間で決める:比べ方のまとめ

自分で申請して節約できるのは、日司連の設例の平均で5万円台の報酬です。一方で、申請書の誤りで補正や取下げになると、平日の時間を何度も使うことになります。物件が1〜2件で権利証がそろい、住所の変更もない家族なら、自分での申請も現実的な選択肢です。

贈与契約書の作成と登記は司法書士に、贈与税の申告は税理士に、と分けて見積もりを頼むのが基本です。近くの司法書士会の相談窓口や、複数の事務所への見積もりで比べられます。見積書では、登記を担当する司法書士の名前、報酬と実費の内訳、権利証がない場合などで報酬が上がる条件を確かめてから比べます。税の手続きは、別に税理士へ頼むか、税務署の相談を使います。

名義を移したあとに、その家を売る予定がある人は、取得費や特例の扱いが相続の場合と違います。売るときの税金は生前贈与の不動産売却の税金で確かめてください。

よくある質問

Q. 贈与登記の司法書士報酬は、親と子のどちらが払いますか?

法律で決まった負担者はなく、家族で決めてかまいません。ただ、子が払うべき費用を親が肩代わりすると、その分も親から子への贈与の額に入る見方があるため、誰が払ったかを振込の記録で残しておきます。登録免許税や不動産取得税も同じ考え方で、負担者を最初に決めておくと後の説明が楽になります。

Q. 親が遠方に住んでいて、法務局に一緒に行けません。

法務局の記載例は、もらう人(受贈者)が親から委任状を受け取り、親の代理人も兼ねて1人で申請する形です。親には委任状に実印を押し、贈与契約書(登記原因証明情報)に署名押印してもらい、発行から3か月以内の印鑑証明書とあわせて送ってもらえば、子だけで申請できます。郵送やオンラインでの申請もできます。

Q. 権利証が見つかりません。それでも自分で申請できますか?

申請書には、登記識別情報(権利証)を出せない理由に印を付ける欄があり、その場合は通常と違う本人確認の手続きに進みます。手順が増えて書類の不備も起きやすくなるため、権利証がない贈与登記は司法書士に頼む場面の代表です。まず法務局の登記手続案内で、自分で進められるかを聞いてみる方法もあります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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