生前贈与と贈与税 / 手順

株式の生前贈与:証券口座の移管の手続きと評価額・贈与税

この記事のもくじ
  1. 株式を生前贈与する手続きの流れ
  2. 贈与する株の評価額の出し方
  3. 暦年課税と相続時精算課税:贈与税の比べ方
  4. 贈与した後に気をつけること

親の上場株式を子へ生前贈与するには、子の名義の証券口座を用意し、親の口座から子の口座へ株を移す(贈与による振替・移管)手続きを証券会社に依頼します。贈与税の計算に使う評価額は、贈与の日の終値と、その月・前月・前々月の終値の月平均のうち最も低い額です(国税庁 No.4632)。贈与税は暦年課税なら1年110万円を超えた部分にかかり、相続時精算課税を選ぶこともできます。

株式を生前贈与する手続きの流れ

証券会社によって書類の名前や受付の方法は違いますが、流れは次の6段階です。

  1. 贈与する銘柄と株数を決め、評価額の見込みを出す。 次の章の方法で、贈与税がいくらになりそうかを先に確かめます。
  2. 子の名義の証券口座を用意する。 親と同じ証券会社に子の口座があれば社内の振替、別の証券会社なら会社をまたぐ移管になります。会社をまたぐ移管は、手数料や日数が受け入れ側・出す側の両方の規定で決まります。
  3. 贈与契約書を作る。 日付・贈与者・受贈者・銘柄・株数を書き、親子それぞれが署名します。贈与は親の意思表示と子の受諾で成立する契約です(民法549条)。
  4. 証券会社に贈与による振替を依頼する。 親の口座のある証券会社に、所定の依頼書(名称は会社ごとに違う)を出します。本人確認書類や贈与契約書の写しを求める会社もあるので、各社の手続きの案内で必要書類を確かめます。
  5. 子の口座に株が入ったことを確かめる。 取引報告書や残高の画面で、銘柄・株数・受入日を確かめ、贈与契約書と一緒に保管します。
  6. 翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告をする。 暦年課税で110万円を超えた場合や、相続時精算課税を選ぶ場合です(No.4429)。

評価の基準日は、贈与で株を取得した日です。契約書の日付と振替の日が大きくずれると、どちらの日で評価するかで迷うことになるので、契約書を作ってから間をあけずに振替を依頼するほうが整理しやすくなります。親が亡くなった後に株を引き継ぐ流れは、別の手続きです。相続の場合は株の相続手続きを読んでください。

手順図:株式の生前贈与の6段階
  1. 銘柄・株数を決めて評価額の見込みを出す
  2. 子の名義の証券口座を用意する(同じ会社か、別の会社か)
  3. 贈与契約書を作る(親子が署名)
  4. 証券会社に贈与による振替を依頼する
  5. 子の口座への受入れを確かめ、記録を保管する
  6. 翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告(必要な場合)

贈与する株の評価額の出し方

上場株式の評価は、財産評価基本通達169に沿って、次の4つの価格のうち最も低いものを使います(No.4632)。

価格 贈与の場合の基準
1. 課税時期の終値 贈与で株を取得した日の取引所の終値
2. 課税時期の月の月平均 その月の毎日の終値の平均
3. 前月の月平均 前月の毎日の終値の平均
4. 前々月の月平均 前々月の毎日の終値の平均

ただし、負担付贈与や、個人間で対価を払って取得した株は、月平均を使わず課税時期の終値で評価します。月平均の値は、取引所が公表している月間の終値平均などで調べられます。

筆者の仮の数字で計算すると、A社株1,000株を贈与し、贈与の日の終値が3,000円、その月の月平均2,900円、前月2,800円、前々月3,100円なら、最も低い2,800円を使い、評価額は2,800円×1,000株=280万円です。

この評価方法は、相続で株を引き継ぐときと同じ考え方です。相続税での使い方は相続した株の評価額にまとめています。上場していない株式(同族会社の株など)は、財産評価基本通達168の区分により別の方法で評価し、計算が複雑になるため、税理士に頼む場面です。

暦年課税と相続時精算課税:贈与税の比べ方

株の贈与でも、贈与税のしくみはお金の贈与と同じです。上の例の評価額280万円を、18歳以上の子が父から受けた場合で比べます(筆者の計算)。

項目 暦年課税 相続時精算課税
使える人 制限なし 贈与の年の1月1日に60歳以上の親・祖父母から、18歳以上の子・孫へ
控除 受贈者ごとに年110万円 年110万円の基礎控除と、贈与者ごとに累計2,500万円の特別控除
280万円の贈与の税額 (280万−110万)×10%=17万円 0円(170万円を2,500万円の特別控除から使う)
手続き 110万円超なら翌年に申告 最初の年に選択届出書を出し、110万円超の年は申告(特別控除は期限内に申告書を出した場合に限り使える)
親が亡くなったとき 相続開始前の一定期間の贈与は相続財産に加算 基礎控除を引いた残り(例では170万円)を相続財産に加算
やめられるか 毎年選び直せる その親からの贈与は暦年課税に戻せない

暦年課税の加算期間は、相続開始日により3年以内から段階的に7年以内へ延びます(No.4161)。相続時精算課税は、一度選ぶと撤回できず、その親からの以後の贈与はすべて精算課税になります(No.4103)。値上がりを見込む株を早めに移したいときに精算課税を検討する家族もありますが、相続税がかかる家かどうかで向き不向きが変わります。制度の全体は相続時精算課税のしくみで確かめてください。

贈与した後に気をつけること

取得費と取得日は親から引き継ぐ。 所得税法60条で、贈与で取得した資産は贈与者が引き続き所有していたものとみなされます。子が後で株を売るときは、親が買ったときの価格を取得費にして譲渡所得を計算します。移管のときに親の取得価額の情報が子の口座に引き継がれるかは証券会社の扱いによるので、親の取引報告書や購入時の記録を子が保管しておきます。

配当は名義が変わった後から子のものになる。 贈与後に受け取る配当は子の所得です。贈与した後も親が売買の指示をしていたり、配当を親の口座で受け取っていたりすると、本当に贈与したのかを問われる材料になります。

子の口座は子が管理する。 ログインのパスワードや取引の判断を親が握ったままだと、名義だけ子にした親の財産と見られることがあります。親から子へのお金の贈与と同じく、記録の残し方が大切です。現金の贈与での記録の残し方は親から子への贈与のしかたを参考にしてください。

株と同じく、名義を移す手続きが要る財産に車があります。親が車を買ってくれる場合や、親の車を譲り受ける場合の手続きは、次の車の生前贈与の名義変更と贈与税で扱っています。親の判断能力が落ちてきた場合の選択肢は親が認知症になったら暦年贈与はできないかを読んでください。

よくある質問

Q. 株を売って現金で渡すのと、株のまま贈与するのは何が違いますか?

親が売ってから現金で渡すと、売却益があれば親に譲渡所得の税金がかかり、そのうえで子に現金の贈与税がかかります。株のまま贈与すれば、親の側で売却の税金は生じず、子は親の取得価額と取得日を引き継ぎます。子が後で売るときに、親の時代からの値上がり分も含めて子の譲渡所得になる点が違いです。

Q. 子が未成年でも株を贈与できますか?

贈与は契約なので、未成年の子の場合は親権者が子に代わって受諾し、子の名義の口座で受け取る形になります。ただし、贈与税の特例税率は贈与の年の1月1日に18歳以上であることが条件なので、未成年の子には一般税率がかかります。相続時精算課税も18歳以上が条件です。

Q. 親が認知症と診断されました。株の贈与はまだできますか?

贈与は親の意思表示が要る契約で、意思能力がない状態で行った法律行為は無効とされています(民法3条の2)。診断名だけで決まるものではありませんが、判断能力が落ちてからの贈与は後で有効性を争われやすくなります。このあとの選択肢は、親が認知症の場合の暦年贈与の記事で整理しています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

親から子へお金を渡すと贈与税はかかる?贈与・生活費・貸し借りの線引き

車の生前贈与:名義変更の手続きと贈与税がかかる金額の目安

相続時精算課税とは:2,500万円の特別控除と110万円の基礎控除

相続した株の評価額:相続税では4つの価格のうち最も低い額を使う