親から子へお金を渡すと贈与税はかかる?贈与・生活費・貸し借りの線引き
この記事のもくじ
親から子にお金を渡したとき、贈与税がかかるのは、子がその年(1月1日〜12月31日)に受けた贈与の合計が110万円を超えた場合です。ただし、生活費や教育費として必要な都度に渡すお金は非課税で、返す約束が本当にある貸し借りは贈与になりません。18歳以上の子が親から受ける贈与には、一般より低い「特例税率」が使えます。渡し方ごとの違いと、後で説明できるように記録を残す手順を、よくある質問の順に答えます。
Q1. 親から子にお金を渡すと、贈与税はかかる?
個人から財産をもらうと贈与税の対象になり、暦年課税では1年間に受けた額の合計から基礎控除110万円を引いた残りに税金がかかります(国税庁 No.4402)。親子の間のお金の動きは、性質によって次の3つに分かれます。
| 渡し方 | 贈与税 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 贈与(あげる・もらう) | 1年の合計が110万円を超えた部分にかかる | 子ごとに1年間の合計で判断する |
| 生活費・教育費(扶養義務者から) | かからない | 通常必要なもので、必要な都度に直接充てること(No.4405) |
| 貸し借り(返す約束あり) | かからない | 返済能力と実際の返済があること(No.4420) |
110万円の数え方(もらう人ごと・年ごとの合計で、贈与者が何人いても110万円)や、年をまたぐときの注意は贈与税はいくらからかかるかで詳しく扱っています。この記事では、親から子へのお金の渡し方の違いに絞って進めます。
Q2. 生活費や学費として渡すお金はどこまで非課税?
No.4405 は、夫婦や親子などの扶養義務者から受ける生活費・教育費のうち「通常必要と認められるもの」は贈与税がかからないとしています。ただし対象は、必要な都度、直接生活費や教育費に充てるものに限られ、受け取ったお金を預金したり、株や不動産の購入に充てたりした場合は贈与税の対象になります。
線引きは、お金の使われ方で考えると分かりやすくなります。
- 非課税になりやすい形:大学の授業料を親が学校に直接払う、毎月の仕送りをその月の家賃と食費に使う、入院費を必要なときに渡す
- 課税の対象になりうる形:4年分の学費をまとめて渡し、子の口座で貯金している、仕送りの余りを積み立てて投資に回している、生活費の名目で数百万円をまとめて渡す
場面ごとに並べると、次のようになります。
| 場面 | 渡し方 | 贈与税の見方 |
|---|---|---|
| 子の家賃 | 親が毎月、大家さんや管理会社へ直接払う | 通常必要な生活費を必要な都度払う形で、非課税になりやすい |
| 子の家賃 | 1年分を子の口座へ振り込み、子が毎月使う | 渡した時点で預金になりやすく、使い切れない分は課税対象になりうる |
| 子の医療費・出産費用 | 必要な都度、病院へ直接払う、または実費を渡す | 治療費・子育てに関する費用は生活費に含まれる(No.4405) |
| 大学の学費 | 学校の請求に合わせて親が納付する | 学費・教材費は教育費に当たり、非課税になりやすい |
| 引っ越し・家電の購入 | 必要が生じた都度、その金額を渡す | 必要な都度で、通常の範囲なら非課税の考え方 |
| 生活費の名目で、まとめて数百万円 | 子の口座へ一括で振り込む | 預金や投資に回れば課税対象になる |
どの場面でも、領収書、請求書、振込の控えを子が保管しておくと、後から何に使ったかを説明できます。
まとめて渡すほど、「必要な都度」とは言いにくくなります。家を買う資金を親から受ける場合は、2026年12月31日までの贈与なら、要件を満たすと一定額まで非課税になる住宅取得等資金の特例があります(No.4508)。要件と申告は住宅取得等資金の贈与の非課税で確かめてください。
Q3. 貸し借りにするなら、何をそろえればいい?
親からお金を借りる形にすれば、返している限り贈与ではありません。No.4420 は、返済能力や返済状況からみて真に金銭の貸借と認められる場合は贈与税がかからないとしています。逆に、返済の約束があいまいなものや、実際には返していないものは、借りたお金そのものが贈与とされます。また、利子のない借入れでは、利子に当たる額が贈与とされる場合があります。
貸し借りの形を整える手順は次のとおりです。
- 金銭消費貸借契約書を作る。 次の項目を書き、親子で署名します。
- 子の収入から無理なく返せる返済額にする。 収入に見合わない返済計画は、真に貸借と言いにくくなります。
- 毎月、子の口座から親の口座へ振り込んで返す。 手渡しの返済は記録が残りません。
- 返済の記録(通帳)を、完済まで保管する。
契約書に入れる項目は次のとおりです。
- 貸す人(親)と借りる人(子)の氏名・住所、契約の日付
- 貸す金額と、お金を渡した方法・日(振込なら振込日)
- 返済の期間、毎月の返済額、返済日
- 返済の方法(子の口座から親の口座へ振込)と、振込先口座
- 利息(付ける場合は年の割合と計算方法。付けない場合はその旨)
- 期限に返さなかったときの扱い(残りを一括で返す、遅れた分に年の割合の遅延損害金を付ける、など)
利息は、付けない(無利子)場合に、利子に相当する利益が贈与として扱われることがあります(No.4420)。どの程度の利息なら問題にならないかは国税庁の案内に具体的な数字がないため、金額が大きいときは税務署の電話相談か税理士に確かめます。
契約書の文例:「貸主 父○○は、借主 長男○○に対し、金○○万円を貸し付け、借主はこれを受領した。借主は、令和○年○月から○年間、毎月末日限り、金○万円を貸主の指定する○○銀行○○支店の口座に振り込んで返済する。利息は年○%とする。借主が返済を怠り、その額が○か月分に達したときは、貸主は残額の一括返済を求めることができる。」
返済は、毎月の振込の控え(通帳)が証拠になります。いつも同じ日に同じ額を振り込み、完済したら貸主が「完済した」と書いた書面を出すと、貸借だったことが後から説明しやすくなります。
途中で親が「もう返さなくていい」と言った場合、免除された額は贈与として扱われるので、その年の贈与税の申告が必要か確かめます。
Q4. 贈与税はいくらになる?特例税率の計算例
親や祖父母(直系尊属)から、贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の子や孫が受けた贈与は「特例贈与財産」として、一般より低い税率で計算します(No.4408)。配偶者の父母(義父母)からの贈与には使えません。
特例税率の8段階の表と、一般税率との比べ方は贈与税の税率と計算にまとめています。ここでは計算の一例だけ示します。筆者の計算で、18歳以上の子が1年に500万円を受けたときは、(500万−110万)×15%−10万=48万5,000円です。国税庁 No.4408 に載っている計算例と一致します。
まとまった額を一度に渡したい場合、60歳以上の親から18歳以上の子への贈与なら、相続時精算課税を選ぶ方法もあります。親ごとに累計2,500万円までの特別控除と年110万円の基礎控除があり、親が亡くなったときに相続税の計算に足し戻すしくみです(No.4103)。一度選ぶとその親からの贈与は暦年課税に戻せないため、選ぶ前に相続時精算課税のしくみを読んでください。
Q5. 後で説明できるように、記録はどう残す?
親子の贈与で一番困るのは、何年も後の相続のときに「あのお金は贈与だったのか、親の預金だったのか」を説明できないことです。民法549条で贈与はもらう側の受諾で成立するので、子がもらったことを承知している証拠を残すのが要点です。
- 贈与契約書(日付・あげる人・もらう人・金額を書き、親子それぞれ署名)
- 親の口座から子の口座への振込の記録(手渡しにしない)
- 子が自分で管理している通帳・キャッシュカード・印鑑
- 110万円を超えた年の贈与税の申告書の控え(翌年2月1日〜3月15日に申告)
- 生活費・学費として渡したお金は、何に使ったかが分かる領収書や振込先
贈与契約書の文例:「贈与者 父○○は、受贈者 長男○○に対し、現金○○万円を贈与し、受贈者はこれを受諾した。贈与者は令和○年○月○日までに受贈者名義の○○銀行○○支店の口座に振り込む。」
毎年贈与する場合は、毎年同じ時期に機械的に同じ額を渡すより、その都度契約書を作って意思を確かめるほうが説明しやすくなります。契約書のひな形と保管の仕方は暦年贈与の契約書の書き方にあります。110万円を超えた年は、受けた子が翌年2月1日〜3月15日に、子の住所地の税務署へ申告と納税をします(No.4429)。
お金ではなく、親が持っている株を子に移したい場合は、評価額の決め方と口座の手続きが加わります。次の株式の生前贈与の手続きと評価額へ進んでください。
よくある質問
Q. 親が子の家賃を大家さんに直接払うのは、贈与になりますか?
国税庁 No.4405 は、親子などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために受けたもので、通常必要と認められる分は贈与税がかからないとしています。必要な都度、家賃を大家さんや管理会社へ直接払うなら、この考え方に当てはまりやすい形です。子の収入や暮らしの水準に比べて大きすぎる家賃を長く負担する場合などは、通常必要な範囲かどうかが問われるので、迷うときは税務署に相談します。
Q. 子どもの口座に親がお金を入れておけば、それだけで贈与になりますか?
贈与は、あげる側の意思表示と、もらう側の受諾で成立します(民法549条)。子が口座の存在や入金を知らず、通帳や印鑑を親が管理しているままだと、贈与ではなく親の預金と見られることがあります。子が受け取りを承知していることを契約書で残し、通帳を子が管理するようにします。
Q. 親から借りて返済が途中で滞ったら、贈与になりますか?
国税庁 No.4420 は、返済能力や返済状況からみて真に金銭の貸借と認められれば、借入金そのものは贈与にならないとしています。反対に、「ある時払いの催促なし」のような貸借は、借りたお金そのものが贈与になります。返済が滞ったまま放置すると、貸借の実態が疑われる材料になるので、返済できないと分かった時点で、返済額を見直す契約書を作り直し、返せる範囲の振込を続けます。親が返済を免除したときは、免除された額が贈与として扱われます。
出典・参考にした公的な情報
- No.4402 贈与税がかかる場合(国税庁)
- No.4405 贈与税がかからない場合(国税庁)
- No.4420 親から金銭を借りた場合(国税庁)
- No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)(国税庁)
- No.4429 贈与税の申告と納税(国税庁)
- No.4103 相続時精算課税の選択(国税庁)
- No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(国税庁)
- 民法 第549条(贈与)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。