不動産売却の流れ / 悩み整理

親の施設費用のために家を売却する:売る前に確かめる税と手続き

この記事のもくじ
  1. 売主は誰か:親の意思能力で手続きが分かれる
  2. 3,000万円控除の期限:住まなくなってから3年目の年末
  3. 売る前に確かめる税の一覧
  4. 手続きの順番
  5. 親が亡くなった後に売る場合は、税の前提が変わる

親の施設費用のために家を売るとき、まず決めるのは誰が売主として契約するかです。売主は親なので、親が売る意思を理解して決められるなら、本人または委任状を受けた子が進めます。判断が難しければ、成年後見人が売り、親の住まいなら家庭裁判所の許可が必要です。税の面で最初に確かめるのは、居住用財産の3,000万円特別控除の期限です。親が住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ると使える場合があり(国税庁)、施設に入った日を起点に期限を数えます。

売主は誰か:親の意思能力で手続きが分かれる

親名義の家は、親が売主です。次の3通りに分かれます。

親の状態 進め方 詳しい記事
判断できる 親が契約。動けなければ委任状で子が代理 親の家を売るとき子が代わりに進めるには:委任状と意思確認
判断が難しい 成年後見人が売る。居住用の建物とその敷地の処分には家庭裁判所の許可が要る(民法859条の3) 認知症の親の不動産売却:本人の意思能力と後見人を通す手続き
判断できるうちに信託を結んでいた 受託者が売る 家族信託で実家を売却する流れ:受託者が売るときの手続きと税金

後見人が売る場合、裁判所の案内では、本人が現在住んでいなくても、施設に入る前に住んでいた家や、将来住む可能性がある家も許可の対象です。許可を得ないでした処分は無効とされています。売買契約を結ぶ前から、許可の手続きを見越した日程にします。

3,000万円控除の期限:住まなくなってから3年目の年末

親が住んでいた家を売ったとき、売却益から最高3,000万円を引ける特例があります(居住用財産の3,000万円特別控除)。施設に入って住まなくなった家は、以前に住んでいた家屋として、次の要件のもとで対象になります(国税庁)。

  • 売る人(親)が、その家に所有者として住んでいたこと
  • 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。住まなくなった後、どのような用途に使っていてもよい
  • 家屋を取り壊して敷地を売る場合は、取り壊した日から1年以内に売買契約を結び、取り壊してから契約までの間、貸駐車場などに使っていないこと
  • 売った年の前年・前々年に、この特例や譲渡損失の損益通算の特例を受けていないこと
  • 子や配偶者など、特別の関係がある人への売却でないこと
  • 確定申告をして適用を受けること

期限の数え方を、筆者の例で示します。親が2026年9月に施設へ入所し、家に住まなくなったとします。3年を経過する日は2029年9月、その日が属する年の12月31日は2029年12月31日です。この日までに売る必要があります。譲渡の日は原則として引き渡しの日で、契約の効力発生日を選ぶこともできます(国税庁)。年末が近づくと買主との契約や決済が年をまたぐ恐れがあるため、余裕を持って売り出します。

時間軸:施設入所から3,000万円控除の期限まで(例)
  • 2026年9月 親が施設に入所し、家に住まなくなる
  • 2029年9月 住まなくなってから3年を経過する日
  • 2029年12月31日 この日までに売る(引き渡しまたは契約の効力発生日)

住まなくなった日がいつか(入所日か、家財を移した日か、住民票を移した日か)は、実際の生活状況で判断されます。施設に入った時期があいまいなときは、売却前に税務署か税理士に確かめます。

売る前に確かめる税の一覧

家を売って売却益が出ると、譲渡所得の税金(所得税・住民税)がかかります。親の家で使う場面が多いものを一覧にします。

項目 中身 確かめること
売却益の計算 売却額−(取得費+譲渡費用) 親が家を買った時の契約書や建築費の書類。分からなければ売却額の5%を取得費とする扱いがある
譲渡費用 仲介手数料、売主負担の印紙税、土地を売るための建物の取り壊し費用など 領収書を残す
3,000万円控除 売却益から最高3,000万円を引く 上の要件と期限
10年超所有の軽減税率 所有期間10年超の居住用財産で、課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は所得税10%(住民税4%) 売った年の1月1日で家屋・敷地とも所有期間10年超か。3,000万円控除と併用できる
確定申告 売った翌年の2月16日〜3月15日 控除で税額がゼロになっても申告が必要
親の扶養への影響 譲渡所得は合計所得金額に入る 子が親を扶養親族にしている場合、控除を受けられなくなる場合がある

土地・建物の譲渡所得は、給与や年金とは分けて税額を計算します(分離課税)。ただし、譲渡所得は合計所得金額に含まれるため、親を扶養親族にしている子は控除への影響を税務署か税理士に確かめます(国税庁の手引き)。計算と申告を頼める税理士の探し方は、相続手続きの専門家の違い:弁護士・司法書士・税理士・行政書士の頼み分けにあります。

手続きの順番

施設費用に充てるための売却は、日程が決め手になります。逆算して進めます。

  1. 必要な資金と時期を出す:施設の入居時に払う額(一時金・前払金の有無)と毎月の費用、親の年金や預貯金を並べ、いつまでに売却代金が必要かを決めます。
  2. 売主と進め方を決める:親の意思能力を確かめ、本人・委任状・後見・信託のどれかを選びます。
  3. 名義を確かめる:登記簿の名義が親か、住所が今の住所と合っているかを見ます。
  4. 査定を頼む:複数社の根拠を比べます。
  5. 売り出しと契約:専任媒介の有効期間は3か月が上限です。売れない場合の見直しの順番も決めておきます。
  6. 決済・引き渡し:代金は親の口座に入れます。
  7. 申告:翌年に確定申告。控除を使うなら添付書類の準備も要ります。

親が住んでいた家の査定額と、各社が示す価格の根拠を見比べたいときは、一括査定を使う方法があります。査定の数字は成約価格の約束ではなく、各社の見込みです。近い取引事例などの根拠を聞くことが比べる手がかりになります(宅地建物取引業法34条の2)。申し込み後に複数の会社から連絡が入ることがあります。親名義の物件は、親の同意か後見人の判断を得てから申し込み、売る時期は査定のあとに決めて構いません。

遠方の家で現地に通えないときは、遠方の不動産売却:現地に行かずに売る方法と立ち会いが要る場面を参照してください。

親が亡くなった後に売る場合は、税の前提が変わる

親が施設で亡くなり、相続した家を売る場合は、売主が相続人に変わります。相続人は住んでいなかったため、居住用の3,000万円控除は使えず、条件を満たせば被相続人居住用家屋(空き家)の3,000万円特別控除を検討します。老人ホームに入所していた被相続人の家は、要介護認定などの要件を満たすと対象になりえます(国税庁、No.3307)。要件と期限は老人ホームに入っていた親の家と空き家の3000万円控除の要件で説明しています。施設に入っている間に売るのか、亡くなった後に売るのかで使える特例が変わるため、親の健康状態と家の築年数を見ながら、税理士に両方の場合を試算してもらいます。売ったあとの親の移り先や資金の考え方は、老後の住み替え:持ち家を売って移る先の選び方が参考になります。

よくある質問

Q. 親が施設に入ったあと、空き家になった家を貸しても3,000万円控除は使えますか?

国税庁は、以前に住んでいた家屋について、住まなくなった日以後どのような用途に使用してもかまわないと案内しています。貸していても、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば要件の一つは満たします。売却先が子などの特別の関係にある人でないこと、他の特例を前年・前々年に受けていないことなども別に確かめます。

Q. 売却益が出ない場合も、3,000万円控除や確定申告は必要ですか?

売却額が取得費と譲渡費用の合計以下なら、売却益が出ず、譲渡所得税はかかりません。この場合、控除を使う理由もありません。一方、売却益が出て3,000万円控除で税額をゼロにするときは、確定申告をして初めて適用されます。取得費が分からないと売却益の有無を判断できないため、売却額の5%を取得費とする扱い(実際の取得費がそれより少ない場合も5%でよい)を使って先に計算します。

Q. 親の預金だけでは足りず、家を売るまでの間の費用はどうしますか?

売却は査定から入金まで数か月かかるため、その間の施設費用は預貯金や年金収入などでまかなう計画が要ります。売るまでの月数と毎月の費用を掛けて、必要額を先に出します。足りない場合は、費用の払い方を施設に相談できるか、市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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