取得費加算の計算明細書の書き方:記載例と添付する書類
取得費加算の計算明細書(正式には「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」)は、Ⓐ売った財産の相続税評価額、Ⓑ売った人の取得財産の価額など(相続税の申告書第1表の①+②+⑤)、Ⓒ売った人の相続税額を、申告書から写して、Ⓓ=Ⓒ×Ⓐ÷Ⓑ で加算額を出す書類です。様式は国税庁のサイトにあり、相続開始日が令和5年(2023年)1月1日以後用と、平成27年(2015年)1月1日以後用の2種類があります。この記事では、様式の構成、欄の写し方、記載例、添付書類、検算の仕方を、国税庁の様式の記載要領に沿って示します。
様式は2種類:相続開始日で選ぶ
国税庁の様式は、相続開始日で分かれています。
| 様式 | 対象 |
|---|---|
| 令和5年1月1日以後相続開始用 | 2023年1月1日以後に開始した相続 |
| 平成27年1月1日以後相続開始用 | 2015年1月1日から2022年12月31日までに開始した相続 |
2つの様式は、構成は同じですが、相続税の申告書第1表の欄の番号が違います。たとえば、Ⓒに写す相続税額は、令和5年以後用では第1表の⑲、平成27年以後用では第1表の㉒の金額です。申告書の様式が、年分で変わったためです。様式の中に、写す欄の番号が書いてあるので、番号を見て写します。取得費加算の仕組みと要件は取得費加算の特例:相続税を払った人が売却益の税金を減らすしくみで確かめられます。
明細書の構成:上の欄と3つの囲み
様式を上から見ると、次の部分に分かれています。
| 部分 | 書くこと |
|---|---|
| 上部の欄 | 譲渡者(売った人)、被相続人の住所・氏名、相続の開始があった日、相続税の申告書を提出した日、提出先の税務署 |
| 1 譲渡した相続財産の取得費に加算される相続税額の計算 | 売った財産の所在地・種類・利用状況・数量・譲渡した年月日(最大3列)、Ⓐ相続税評価額、Ⓑ相続税の課税価格、Ⓒ相続税額、Ⓓ取得費に加算される相続税額 |
| 2 相続税の申告書第1表に小計の額がある場合 | 贈与税額控除や相次相続控除を受けている人が、Ⓒを計算し直す(Ⓔ〜Ⓘ) |
| 3 相続税の申告書第1表に小計の額がない場合 | 同じく、算出税額から税額控除を引いて、Ⓒを計算し直す(Ⓙ〜Ⓢ) |
| 関与税理士・電話番号 | 税理士が関与した場合に書く |
2と3は、贈与税額控除または相次相続控除を受けている人だけが書く欄です。様式には、受けていない場合は2と3の記載は不要と書かれています。多くの人は、1だけを書きます。
1の欄の書き方:ⒶからⒹまで
上部の欄には、売った人の住所・氏名、亡くなった人(被相続人)の住所・氏名、相続の開始があった日、相続税の申告書を出した日と税務署を書きます。
財産の欄には、売った財産の所在地、種類(土地、建物など)、利用状況、数量、譲渡した年月日を書きます。同じ年に2つ以上の相続財産を売ったときは、列を分けて、売った財産ごとに計算します。
Ⓐ 相続税評価額には、売った財産の、相続税の申告で使った評価額を書きます。売った価額ではありません。
Ⓑ 相続税の課税価格の欄には、様式に「相続税の申告書第1表の①+②+⑤の金額」と書かれています。①は取得財産の価額、②は相続時精算課税適用財産の価額、⑤は純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産の価額で、いずれも売った人の欄の金額です。債務や葬式費用を引いたあとの第1表の「課税価格」の欄とは、金額が違うことがあります。
Ⓒ 相続税額には、相続税の申告書第1表の相続税額の欄の金額を写します。贈与税額控除や相次相続控除を受けている人は、2または3で計算した金額(Ⓘ またはⓈ)を書きます。
Ⓓ 取得費に加算される相続税額は、「Ⓒ×Ⓐ÷Ⓑ」で計算した額です。
様式の裏面の記載要領には、次の注意があります。
- 同じ年に相続財産を2つ以上売った場合は、売った財産ごとに計算する。
- ⒷとⒸは、相続税の申告書の「各人の合計」の欄ではなく、売った人の「財産を取得した人」の欄の金額を写す。Ⓐ、Ⓔ〜Ⓗ、Ⓙ、Ⓚ、Ⓜ〜Ⓠも、売った人の金額を書く。
- Ⓓが、売った相続財産の譲渡益を超える場合は、譲渡益に相当する金額がⒹになる。
- 交換や収用、買換えなどの特例を受ける場合や、被相続人居住用家屋やその敷地の売却で租税特別措置法第35条第3項の適用を受ける場合は、Ⓐの金額を、記載要領の式で計算し直す。
- 代償分割で代償金を払って取得した財産を売った場合は、Ⓐを「評価額−支払代償金×評価額÷(Ⓑの金額+支払代償金)」で計算する。
「各人の合計」の欄の金額を写す間違いは起こりやすいので注意します。兄弟で相続した場合、合計欄の金額を使うと、売った人の金額と合わず、加算額がずれます。
記載例(筆者の計算)
取得費加算の特例の記事の計算例を使います。兄弟2人が親の家と土地を相続し、課税価格は合計1億円、売る人が取得した財産の価額は5,000万円(債務や葬式費用、生前贈与はないので、①+②+⑤も5,000万円)で、売る人の相続税額は385万円です。売った家と土地の相続税評価額は3,000万円、譲渡年月日は2027年6月(仮)とします。贈与税額控除や相次相続控除は受けていません。
| 欄 | 記入内容 | 写す元・計算 |
|---|---|---|
| 譲渡者・被相続人・日付 | 売った人(長男)、亡くなった親、相続開始日、申告書の提出日と税務署 | 相続税の申告書の控え |
| 所在地・種類 | 土地と建物の所在地、土地・建物 | 登記事項証明書 |
| 譲渡した年月日 | 引渡しの日(または契約の効力発生日) | 売買契約書 |
| Ⓐ 相続税評価額 | 3,000万円 | 相続税の申告書の、財産の明細の評価額 |
| Ⓑ 相続税の課税価格 | 5,000万円 | 申告書第1表の①+②+⑤、売った人の欄 |
| Ⓒ 相続税額 | 385万円 | 申告書第1表の、売った人の欄 |
| Ⓓ 取得費に加算される相続税額 | 231万円 | 385万円×3,000万円÷5,000万円 |
書き終えたら、Ⓓの231万円を、譲渡所得の内訳書(取得費の計算)に反映します。内訳書の書き方は譲渡所得の内訳書の書き方:相続した不動産を売った場合の記載例で扱います。
検算の仕方
提出の前に、次の点を確かめます。
- Ⓓ=Ⓒ×Ⓐ÷Ⓑ。上の例なら、385×3,000÷5,000=231(万円)。
- ⒶはⒷを超えない。超えるなら、評価額か、第1表の金額の写し間違い。
- ⒷとⒸは、申告書の「各人の合計」ではなく、売った人の欄の金額と一致する。
- Ⓓは、取得費加算を使わない場合の譲渡益を超えない。
- 財産を複数売った場合、Ⓐの合計が、Ⓑを超えない。
- Ⓒは、相続税の申告書第1表の、売った人の欄の相続税額(贈与税額控除などを受けた人は、2または3で計算した額)と同じか。
相続税の申告書の数字に誤りがあると、加算額も変わります。申告書の数字そのものに迷うときは、相続税の申告をした税理士か、税務署に確かめてください。
添付書類と、確定申告の流れ
取得費加算を使う確定申告には、確定申告書に次の書類を添えます(国税庁のNo.3267)。
- 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
- 譲渡所得の内訳書(土地・建物用)
そのほか、売った財産の特例に応じた書類があります。書類の一覧は不動産売却の確定申告の必要書類:特例ごとの添付書類一覧に、確定申告全体の流れは不動産売却の確定申告:やり方・期限・必要書類を順番に解説にあります。
空き家の3,000万円控除との選択は、取得費加算と空き家特例は併用できない:どちらを選ぶかの比べ方で比べられます。
欄の写し方に迷うときは、売った場所を管轄する税務署の窓口に、次のように聞くと話が早くなります。
文例:「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書のⒷとⒸに、相続税の申告書第1表のどの欄の金額を写せばよいか、教えてください。相続開始日は○年○月○日です。」
窓口は譲渡所得税の相談窓口:税務署の電話相談と確定申告会場の使い方に載せています。個別の数字の判断や申告書の作成の代理は、税理士の仕事です。
よくある質問
Q. 取得費加算の計算明細書は、どこで手に入りますか?
国税庁のサイトの確定申告書等の様式のページから、PDFでダウンロードできます。相続開始日が令和5年(2023年)1月1日以後か、平成27年(2015年)1月1日以後かで様式が分かれているので、相続開始日に合う方を選びます。
Q. 相続税の申告書は、いつ見ながら書けばよいですか?
Ⓑは第1表の①+②+⑤、Ⓒは第1表の相続税額(令和5年1月1日以後の相続開始用は⑲)を、どちらも売った人の「財産を取得した人」の欄から写します。「各人の合計」の欄ではありません。相続税の申告書の控えを手元に置いてから書き始めます。
Q. 同じ年に相続した土地を2か所売ったとき、明細書は何枚ですか?
取得費に加算される相続税額は、売った財産ごとに計算します。様式の1の欄には財産を並べて書く列が3つあるので、財産が3つまでなら1枚に書けます。それを超える場合の書き方は、税務署に確かめてください。
出典・参考にした公的な情報
- 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書(令和5年1月1日以後相続開始用)(国税庁)
- 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書(平成27年1月1日以後相続開始用)(国税庁)
- No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(国税庁)
- 申告書添付書類一覧(譲渡所得・山林所得関係)(国税庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。