相続で税理士は必要か:相続税がかかる人・かからない人の分かれ目
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相続で税理士が必要かどうかは、相続税の申告が要るかどうかでほぼ決まります。遺産の総額が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら申告は要らず、税理士に頼む場面は多くありません。基礎控除を超えると申告が要り、配偶者の税額の軽減や小規模宅地等の特例で税額がゼロになる場合でも、特例を使うために申告書を出す必要があります。この「申告は要るが税額はゼロかもしれない層」と「税額が出る層」が、税理士を考える人です。国税庁の統計では、令和6年分に亡くなった人のうち相続税の課税対象になったのは10.4%(166,730人)です。このほか、申告書は出したものの相続税額がなかった人が39,755人いました(同じ統計の外書の数)。
一次判定:遺産総額と基礎控除を比べる
税理士に連絡する前に、自分でできる一次判定があります。遺産の総額をおおまかに出し、基礎控除の額と比べるだけです。基礎控除の数え方(相続放棄した人や養子の数え方)は相続税の基礎控除で一次判定する方法にまとめているので、ここでは判定の流れだけを示します。
- 相続人の数を数える:配偶者と子2人なら3人です。基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円になります(筆者の計算)。
- プラスの財産を書き出す:預貯金、土地・建物、株式・投資信託、生命保険金(受取人が相続人なら、500万円×法定相続人の数を超える部分)、亡くなる前3年以内に相続人などがもらった贈与(相続開始が2027年1月1日以降だと加算の期間が延びていきます。生前贈与の加算期間の早見表で確かめてください)。
- マイナスを引く:借入金などの債務と、葬式費用。
- 基礎控除と比べる:明らかに下回るなら申告は要りません。上回るか、近くて判断がつかないなら次の章へ進みます。
土地の値段は、売れる値段ではなく相続税の評価額(路線価や固定資産税評価額をもとにした額)で見ます。国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」に財産額を入れると、申告が要るかの目安を判定でき、税務署から届く「お尋ね」への回答も作れます。
申告が要るか・税額が出るかで3つに分かれる
一次判定の結果で、読者は次の3つに分かれます。どの層かによって、税理士の要否の考え方が変わります。
| 層 | 遺産総額と基礎控除 | 申告 | 税理士の関わり方 |
|---|---|---|---|
| A | 明らかに基礎控除以下 | 不要 | 相続税では通常不要。準確定申告・売却の税金は別に考える |
| B | 基礎控除を超えるが、特例を使うと税額がゼロになりうる | 必要(特例の適用のため) | 頼むか、税務署の相談を使って自分で出すかを選ぶ |
| C | 特例を使っても税額が出る | 必要 | 頼む人が多い。評価と特例の選び方で税額が変わる |
Bの層でつまずきやすいのは、「税額ゼロ=何もしなくてよい」と思い込むことです。 配偶者が取得した遺産は、1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額の多い方まで相続税がかかりませんが、この軽減は申告書に記載して出すことが条件です。自宅の土地の評価を(330㎡までの部分で)80%減らせる小規模宅地等の特例も同じで、申告書に特例の適用を書き、計算明細書や遺産分割協議書の写しを添えます。しかもどちらも、原則として申告期限までに遺産の分け方が決まっていることが前提です。期限までに分割がまとまらないと、いったん法定相続分などで分けたものとして特例なしで申告・納税します。申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておき、申告期限から3年以内に分割できたら、分割を知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をして特例を使う流れになります。特例の要件は小規模宅地等の特例の要件で確かめてください。
税理士に頼むほうがよい場面
Bの層でも自分で申告する人はいますが、次に当てはまるものが多いほど、税理士に頼む意味は大きくなります。
- 土地がある:路線価方式では、土地の形や道路との接し方で補正が入ります。倍率地域、私道、貸している土地、農地や山林があると評価の手間が増えます。
- 小規模宅地等の特例を使いたい:同居していたか、持ち家がないか(いわゆる家なき子)、親が老人ホームにいたかなど、要件の当てはめが細かく、誰が土地を取得するかでも結果が変わります。
- 遺産分割がまとまっていない:未分割のまま期限が来ると、配偶者の軽減も小規模宅地等の特例もいったん使えません。分割後の手続きまで見通した段取りが要ります。
- 家族名義の預金がある:亡くなった人のお金でつくられた家族名義の預金は、相続財産に含めるかの判断が要ります。
- 相続人が多い・遠方に住んでいる:書類のやりとりと署名押印に時間がかかり、10か月の期限に余裕がなくなります。
- 非上場の会社の株式や、事業用の資産がある:評価の方法が別にあります。
- 次の相続(二次相続)も見ておきたい:配偶者がどれだけ取得するかで、配偶者が亡くなったときの税額が変わります。
逆に、相続人が一人で、財産が預貯金だけで、税額が出ない程度の超え方なら、税務署の電話相談センターと面接相談を使いながら自分で申告する人もいます。国税庁のタックスアンサーにも、相続人の確認から財産の評価、遺産分割、申告・納税までの手順が載っています。
相続税の申告は誰に頼む?司法書士・行政書士ではない理由
「相続の手続きを頼んでいる司法書士に、申告もまとめて頼めないか」と考える人は少なくありません。結論は、相続税の申告は税理士の仕事です。
税理士法2条は、他人の求めに応じて行う税務代理(申告の代理)、税務書類の作成(申告書の作成)、税務相談(課税標準などの計算の相談)を税理士の業務とし、52条で税理士・税理士法人でない者がこれを行うことを禁じています。国税庁は、これらを行えるのは税理士・税理士法人と、国税局長に通知した弁護士・弁護士法人だけで、それ以外の者は行えないと説明しています。52条は報酬の有無を条件にしていないため、無償であっても、それ以外の者が行えば税理士法に違反しえます。
| 頼みたいこと | 頼む先 |
|---|---|
| 相続税の申告書の作成、税額の計算の相談 | 税理士(国税局長に通知した弁護士も可) |
| 相続登記と、その登録免許税の計算 | 司法書士(登録免許税は税理士業務の対象の税から除かれている) |
| 遺産分割協議書の作成 | 司法書士・行政書士・弁護士 |
| もめている遺産分割の交渉・調停の代理 | 弁護士 |
税理士に頼む人も、自分で出す人も、期限は同じです。相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内で、提出先は亡くなった人の住所地を所轄する税務署です。ほかの期限との順番は相続の期限一覧で確かめてください。
頼むと決めたら:費用と選び方を先に知っておく
税理士の報酬は事務所ごとに決まり、公的な相場はありません。報酬の決まり方と見積書で比べる項目は、次の相続税の税理士費用で扱っています。どの事務所に頼むかは、相続に強い税理士の選び方のチェック表で絞り込めます。
連絡する前に、次の3つを手元にそろえておくと、最初の面談で「頼むべき層か」を具体的に話せます。
- 一次判定のメモ(相続人の数、財産の種類ごとのおおよその額)
- 固定資産税の納税通知書(土地・建物の所在と評価額の手がかり)
- 遺言書の有無と、遺産の分け方の話し合いがどこまで進んでいるか
面談の冒頭で伝える例:「相続人は母と私と弟の3人です。自宅の土地・建物と預金があり、基礎控除の4,800万円を少し超えそうです。母が自宅を相続する予定で、配偶者の軽減と小規模宅地等の特例を使えるか、申告を頼む場合の費用を教えてください」
よくある質問
Q. 相続税がかからない場合でも税理士に頼むことはありますか?
あります。相続税の申告が不要でも、亡くなった人の所得税の準確定申告が要る場合や、相続した不動産を売って譲渡所得の確定申告をする場合には、税理士に頼む人がいます。ただし手続きの多くは税務署の相談を使いながら自分で進めることもできるので、作業量と期限を見て決めます。
Q. 相続税の申告を司法書士にお願いできますか?
できません。相続税の申告書の作成や税額の計算の相談は、税理士法で税理士と、国税局長に通知した弁護士の仕事とされています。司法書士が扱うのは相続登記と、登記にかかる登録免許税の計算です。登記と申告の両方が要る場合は、それぞれの資格者に頼みます。
Q. 税理士に頼むならいつまでに連絡すればよいですか?
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。財産の評価や遺産分割の話し合いに時間がかかるので、基礎控除を超えそうだと分かった時点で早めに相談するほうが、選べる税理士も段取りの余裕も増えます。
出典・参考にした公的な情報
- No.4152 相続税の計算(基礎控除)(国税庁)
- No.4205 相続税の申告と納税(国税庁)
- No.4158 配偶者の税額の軽減(国税庁)
- No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)(国税庁)
- No.4208 相続財産が分割されていないときの申告(国税庁)
- No.4202 相続税の申告の準備(国税庁)
- No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金(国税庁)
- 令和6年分 相続税の申告事績の概要(国税庁)
- 相続税の申告要否判定コーナー(国税庁)
- No.9204 にせ税理士にご注意(国税庁)
- 税理士法 第2条・第51条・第52条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。