相続登記のオンライン申請:申請用総合ソフトと書類の送り方
この記事のもくじ
相続登記はオンラインで申請できますが、オンラインだけでは完結しません。戸籍の証明書は市区町村長の電子署名付きの電子文書では発行されていないため、申請情報はパソコンから送り、戸籍や遺産分割協議書などの書面は後から法務局へ郵送か持参します。法務省はこの方法を「特例方式」と呼んでいます。使うのは「申請用総合ソフト」で、申請する人のマイナンバーカードとICカードリーダライタが必要です。この記事では、準備から完了の受け取りまでを順に説明します。
相続登記のオンライン申請は「特例方式」:何を送り、何を郵送するか
オンライン申請では、本来、添付情報も作成者の電子署名が付いた電子文書で送ります。相続登記ではそれができない書類があるため、次のように分けて出します。
| 出すもの | 出し方 | 補足 |
|---|---|---|
| 申請情報(申請書の中身) | 申請用総合ソフトで作り、電子署名して送信 | 申請人のマイナンバーカードで署名する |
| 戸籍の証明書・遺産分割協議書・印鑑証明書など | 書面の原本を法務局へ郵送か持参 | 「書面により提出した添付情報の内訳表」を付ける |
| 登録免許税 | 電子納付、または収入印紙・領収証書を貼った納付用紙を提出 | 電子納付には期限がある |
| 住所を証する情報 | マイナンバーカードの電子証明書を提供すれば不要 | 住民票の写しを書面で出してもよい |
事前準備(カード・リーダ・ソフト・申請者情報登録) → 申請情報を作成し電子署名して送信(平日17時15分までなら当日受付) → 登録免許税を電子納付(到達日の翌日から1日間) → 書面の添付情報を発送(受付の日から2日以内に法務局へ到達) → 補正のお知らせ(あれば)→ 手続終了のお知らせ → 登記完了証などをダウンロード
紙の申請と比べたときの利点は、申請書を印刷して持ち込む手間が減ることと、補正や完了の知らせがソフトに届くことです。反対に、パソコンの準備や電子署名の操作に慣れていないと、そこで時間を取られます。書面で出す場合の手順と比べたいときは相続登記を自分でする手順を先に読んでください。
事前準備:マイナンバーカード・ICカードリーダライタ・申請用総合ソフト
法務局の案内では、取得する人が自分で相続登記を申請する場合、マイナンバーカードの電子証明書が必要です。準備は次の4つです。
- マイナンバーカード:署名用電子証明書の有効期限が切れていないか確かめる
- ICカードリーダライタ:マイナンバーカードで電子署名をするために別に用意する
- 申請者情報の登録:登記・供託オンライン申請システムのサイトで、申請者IDとパスワードを登録する(1年間利用がないと自動で削除される)
- 申請用総合ソフトのインストール:推奨環境はWindows 11、.NET Framework 4.8.1、ブラウザはMicrosoft EdgeかGoogle Chrome
申請用総合ソフトは、IDとパスワードを入れずに「キャンセル」を押すとオフラインで起動でき、送信以外の作業(申請情報の作成など)はオフラインでもできます。初めて使う人向けに、システムのサイトに操作手引書と、登記の事例ごとの「想定事例版」の手引書があります。
なお、ブラウザから使える「かんたん登記・供託申請」では、相続登記の申請はできません。ブラウザで出せる不動産登記の申請は建物滅失の登記と登記名義人の表示変更の登記で、申出なら相続人申告登記と検索用情報の申出です。期限内に義務だけ果たしたい人は、ブラウザでできる相続人申告登記も選択肢になります。
申請の手順:作成・署名・送信・納付
操作の細部は手引書に譲り、順番と注意点を並べます。
- 申請用総合ソフトで、所有権移転登記(相続)の申請書様式を選び、申請情報を作る。欄の中身は書面の申請書と同じ(相続登記の申請書の書き方)
- 添付情報の欄で、書面で提出するものを指定する
- 申請情報にマイナンバーカードで電子署名をし、送信する。平日17時15分までにシステムへ届いたものがその日の受付になり、それ以降や休日に送ったものは翌業務日の受付になる
- 登録免許税を納める。ソフトの「納付」ボタンから、インターネットバンキングなどで電子納付できる
- 書面の添付情報を発送する(次の見出しで説明)
電子納付の期限は、申請情報がシステムに到達した日の翌日から起算して1日間です(休日は除く)。金曜日に送ったなら、月曜日の終わりが期限になります。電子納付を使わない場合は、収入印紙か税務署などで現金を納めた領収証書を「登録免許税納付用紙」に貼り、受付年月日と受付番号を書いて法務局へ持参か送付します。納付用紙はソフトに用意されていて、申請人の住所・氏名などが自動で転記されます。なお、法務局の窓口に現金を持って行っても登録免許税は納められません。
システムの利用時間は、平日8時30分から23時まで、休日8時30分から18時まで(12月29日から1月3日を除く)です。ソフトの操作で困ったときは、登記・供託オンライン申請システム操作サポートデスク(050-3786-5797)に問い合わせられます。
書面の添付書類の送り方:受付の日から2日以内に届ける
書面で出す戸籍などは、オンライン申請の受付の日から2日以内(初日と休日などを除く)に法務局へ到達する必要があります。送信してから書類を集め始めるのでは間に合わないので、原本はすべて手元にそろえてから送信します。
- ソフトの「処理状況表示」画面のメニューから「書面により提出した添付情報の内訳表」を印刷する
- 内訳表と添付情報の原本を一緒に、書留郵便などで送るか、窓口に持参する
- 原本を返してほしい書類には、相続関係説明図やコピーを付ける(相続登記の必要書類の原本還付の項)
- 登録免許税を印紙で納めるなら、納付用紙も同じ封筒に入れる
書類の封筒の書き方や返送の受け取りは、書面申請を郵送するときと共通する部分が多いので、相続登記を郵送で申請する方法も参考になります。
補正と完了の知らせ、登記識別情報の受け取り方
申請に不備があると、申請用総合ソフトの「処理状況表示」画面の「補正」欄に、法務局からのお知らせが届きます。事案によっては職員から電話が来ることもあります。オンラインで申請した場合、補正も取下げもオンラインで行い、補正情報にも電子署名をします。登録免許税の不足分だけは、印紙や領収証書を貼った納付用紙でも納められます。登記官が定めた期間内に補正しないと、申請は却下されます。
登記が終わると「手続終了」のお知らせが届き、登記完了証(電子公文書)をダウンロードできます。登記識別情報も原則としてオンラインで通知されますが、そのためには申請時に「登記識別情報通知取得用届出様式」などを作って登記名義人が電子署名をしておく必要があります。紙の登記識別情報通知書で受け取りたい人は、申請情報を送るときに書面での交付を申し出ます。
・オンラインが向く:マイナンバーカードとリーダを持っている、Windowsのパソコンがある、平日に法務局へ行けない ・書面(持参・郵送)が向く:パソコンの準備に時間をかけたくない、相続人が複数で全員が申請人になる、紙で書類を受け取りたい
相続人が複数いて全員が申請人になる場合は、申請情報に申請人の電子署名が要るため、署名の準備も人数分になります。自分のパソコン環境で無理がないかを先に確かめ、難しければ書面での申請に切り替えて構いません。どちらにするか迷ったら、法務局の手続案内で相談できます(法務局の相続登記の相談)。
よくある質問
Q. スマートフォンだけで相続登記をオンライン申請できますか?
できません。相続登記の申請に使う申請用総合ソフトはパソコンにインストールするソフトで、推奨環境はWindows 11です。ブラウザから使える「かんたん登記・供託申請」で出せる登記は建物滅失の登記と登記名義人の表示変更の登記に限られ、相続による所有権移転は対象外です。
Q. オンライン申請なら住民票の写しは要りませんか?
マイナンバーカードの電子証明書(公的個人認証サービスの電子証明書)を申請情報と一緒に提供すれば、そこに記録された住所で現在の住所を確認できるため、住民票の写しや住民票コードの提供は不要になると法務局は案内しています(不動産登記規則44条1項)。
Q. 登記識別情報はどうやって受け取るのですか?
オンライン申請では原則としてオンラインで通知され、申請用総合ソフトにダウンロードして受け取ります。書面の登記識別情報通知書で受け取りたいときは、申請情報を送るときにその旨を申し出ます。紙の通知を希望するときは申請情報の提供と一緒に申し出る必要があるので、申請前に決めておきます。
出典・参考にした公的な情報
- 不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)(法務局)(法務省)
- 不動産登記のオンライン申請について(法務省)(法務省)
- 登記・供託オンライン申請システム(トップページ・ご利用可能時間)(法務省)
- 手続ごとの申請方法一覧表(登記・供託オンライン申請システム)(法務省)
- ご利用環境(登記・供託オンライン申請システム)(法務省)
- 登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)令和8年4月(法務局)(法務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。