相続登記と名義変更 / 文例

相続登記の申請書の書き方:法務局の記載例と課税価格の書き方

この記事のもくじ
  1. 相続登記の申請書の全体像:記載例と同じ並びで書く
  2. 各欄の書き方:記載例の注記を読み解く
  3. 課税価格と登録免許税の書き方:筆者の計算例
  4. 用紙・とじ方・収入印紙の貼り方
  5. 出す前に見直す5か所

相続登記の申請書は、法務局の「不動産登記の申請書様式について」のページにある様式と記載例をもとに作ります。2026年10月5日(令和8年10月5日)からは国籍等の欄が加わった新しい様式に変わったので、この日以降に出すなら「R8.10.5以降に申請する場合」と書かれた版を使います。書く項目は、登記の目的、原因、相続人、添付情報、申請日と申請先、課税価格と登録免許税、不動産の表示の順です。この記事では、遺産分割で長男が自宅の土地と建物を取得した例で、欄ごとの書き方と課税価格の計算を示します。

相続登記の申請書の全体像:記載例と同じ並びで書く

法務局の記載例(遺産分割、2026年10月5日以降用)の並びに合わせた、申請書の文例です。名前・住所・番号はすべて「○」に置き換えています。実際には自分の住民票と登記事項証明書のとおりに書きます。

文例: 登記申請書 登記の目的 所有権移転 原   因 令和○年○月○日相続 相 続 人 (被相続人 ○○○○)       ○○市○○町○丁目○番○号       (住民票コード○○○○○○○○○○○)       ○○○○ 印       氏名ふりがな ○○ ○○       生年月日 昭和○年○月○日       国籍等 日本       メールアドレス ○○○@○○○       連絡先の電話番号 ○○○-○○○○-○○○○ 添付情報 登記原因証明情報 住所証明情報 国籍を証する情報 □登記識別情報の通知を希望しません。 令和○年○月○日申請 ○○法務局○○支局 課税価格 金1,580万2,000円 登録免許税 金6万3,200円 不動産の表示  不動産番号 ○○○○○○○○○○○○○  所 在 ○○市○○町○丁目  地 番 ○番  地 目 宅地  地 積 ○○○・○○平方メートル  (建物は、所在・家屋番号・種類・構造・床面積を続けて書く)

遺言で取得した場合や法定相続分で登記する場合も、骨組みは同じです。違うのは原因の考え方ではなく、添付する書類と、相続人の欄に持分を書くかどうかです。どの書類を付けるかは相続登記の必要書類で場合別に整理しています。

各欄の書き方:記載例の注記を読み解く

記載例の注記を、書き間違えやすい点に絞って表にしました。

欄 書くこと 間違えやすい点
登記の目的 「所有権移転」 相続でも「相続登記」とは書かない
原因 被相続人が亡くなった日+「相続」 協議の成立日・遺言書の日付を書いてしまう
相続人 被相続人の氏名、取得する人の住所・氏名、押印(認印で可) 住民票と1字でも違う住所・氏名を書く
住民票コード 書けば住民票の写しの添付を省ける 書かないなら住民票の写しを付ける
氏名ふりがな・生年月日・メールアドレス 申請人になる相続人の分を書く 家族と共用のアドレスを書く(本人だけが使うものを書く)
国籍等 日本国籍なら「日本」 2026年10月5日より前の様式には欄がない
連絡先の電話番号 平日の日中につながる番号(携帯可) 書き忘れると補正の連絡が来ない
添付情報 登記原因証明情報・住所証明情報・国籍を証する情報 代理人が申請するときは代理権限証明情報も
登記識別情報の通知 希望しないときだけ□にチェック 意味が分からずにチェックしてしまう
申請日・申請先 提出する日と、不動産の所在地を管轄する法務局 自宅の最寄りの法務局を書く
不動産の表示 登記事項証明書のとおり 住居表示(○番○号)と地番を取り違える

氏名ふりがな・生年月日・メールアドレスは、法務局が住民基本台帳ネットワークで住所や氏名の変更を把握し、本人の了解を得て職権で変更登記をする「スマート変更登記」に使われます。国籍等は2026年10月5日施行の不動産登記規則の改正で加わった項目で、内部の情報として保有され、登記簿で公開されるものではありません。日本国籍の人は、相続人であることを示す戸籍で足りるので、国籍を証する書類を重ねて出す必要はないと記載例に書かれています。

不動産番号(13桁)を書くと、土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積の記載を省けます。ただし記載は任意なので、分からなければ全部書けば足ります。敷地権付きのマンションは書き方が別で、不動産番号を書いても敷地権の種類と割合は省けません。

課税価格と登録免許税の書き方:筆者の計算例

課税価格は、固定資産課税明細書の「価格」または「評価額」です。「固定資産税課税標準額」ではないので、明細書の列を取り違えないようにします。同じ申請書で複数の不動産を登記するときは、価格を合計してから1,000円未満を切り捨てます。登録免許税は課税価格の1,000分の4で、100円未満を切り捨て、1,000円に満たなければ1,000円です。

例として、土地の価格が12,345,678円、建物の価格が3,456,789円の場合を計算します(筆者の計算)。

  1. 価格の合計:12,345,678円+3,456,789円=15,802,467円
  2. 1,000円未満を切り捨てた課税価格:15,802,000円
  3. 税額:15,802,000円×4÷1,000=63,208円
  4. 100円未満を切り捨てた登録免許税:63,200円

申請書には「課税価格 金1,580万2,000円」「登録免許税 金6万3,200円」のように書きます。文例の金額はこの計算に合わせたものです。

早見表:登録免許税の欄に書くもの

・ふつうの場合:課税価格(1,000円未満切り捨て)と税額(課税価格×0.4%、100円未満切り捨て) ・税額が1,000円に満たない場合:登録免許税は「金1,000円」 ・価格100万円以下の土地で免税を受ける場合:課税価格は書かず、「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」 ・固定資産課税台帳に価格がない土地(私道など):管轄の法務局が認定する価格を問い合わせて書く

価格100万円以下の土地の免税は、2027年3月31日(令和9年3月31日)までの登記が対象で、建物には使えません。持分を取得する場合は「全体の価格×持分」で判定します。いくつかのケースでの計算と免税の判定は相続登記の登録免許税で詳しく扱っています。

用紙・とじ方・収入印紙の貼り方

書き終えた申請書は、形式の不備でも補正の対象になります。ハンドブックの注意事項を作業の順に並べました。

  1. A4の丈夫な紙(上質紙など)を縦置き・横書きで使い、裏面には印刷しない
  2. 登録免許税の領収証書または収入印紙は申請書に直接貼らず、別の白紙(収入印紙等貼付台紙)に貼る。印紙には消印も割印もしない
  3. 申請書と台紙を重ね、左側の余白を2か所ホチキスで留める
  4. 申請書が2枚以上になるときや台紙を付けたときは、つづり目に申請人が契印をする(申請人が2人以上なら1人でよい)
  5. 添付書類は、ホチキスで留めた申請書と台紙の後ろにクリップなどで付ける

納め方について、法務局の「登録免許税の計算」では、原則は税務署などで現金を納めて領収証書を貼り、税額3万円以下その他特別の場合は収入印紙で納められると説明されています。上の計算例の63,200円は3万円を超えるので、領収証書を貼る方法が基本です。一方、登記手続のハンドブックは領収証書と収入印紙のどちらの方法も案内しているため、3万円を超える税額で印紙を使いたいときは、申請先の法務局に先に確かめておくと当日あわてません。

出す前に見直す5か所

申請書の書き間違いは、法務局から電話で補正を求められる原因になります。とくに次の5か所は、記載例と1行ずつ見比べます。

  • 原因の日付が、戸籍上の死亡日になっているか
  • 相続人の住所・氏名が住民票の表記(番地・号の書き方や旧字体)と一致しているか
  • 課税価格が「価格(評価額)」から計算されているか、1,000円未満を切り捨てたか
  • 不動産の表示が登記事項証明書と一致しているか(地積の小数点以下まで)
  • 2026年10月5日以降用の様式で、国籍等とメールアドレスの欄を埋めたか

書き上がった申請書の出し方は3つあります。電子データで出す場合は相続登記のオンライン申請、遠方の法務局に送る場合は相続登記を郵送で申請する方法を見てください。書き方で迷った欄は、法務局の手続案内で記載例を見ながら質問できます(法務局の相続登記の相談)。

よくある質問

Q. 相続登記の申請書は手書きでもかまいませんか?

かまいません。法務局のハンドブックでは、パソコンで入力するか、黒のインクやボールペンではっきり書くよう案内されています。消せるインクのペンと鉛筆は使えません。用紙はA4の丈夫な紙を縦置き・横書き・片面で使います。

Q. 土地が登録免許税の免税になるときは、申請書に何と書きますか?

登録免許税の欄に、金額の代わりに免税の根拠となる条項を書きます。価格100万円以下の土地なら「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」のように書き、免税の場合は課税価格の記載は要りません。この書き忘れがあると免税を受けられないと法務局は案内しています。

Q. 申請書の「原因」には、遺産分割協議がまとまった日を書くのですか?

書きません。原因の日付は被相続人が亡くなった日(戸籍上の死亡日)です。遺産分割で取得した場合も、「相続させる」旨の遺言で取得した場合も同じで、協議の成立日や遺言書の作成日を書くのは誤りです。相続人に対する遺贈で取得する場合は別の様式が用意されているので、その記載例で原因の書き方を確かめます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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