相続登記の義務化の正当な理由とは:過料が科されない場合と催告
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相続登記の義務化では、正当な理由があれば、期限内に申請しなくても過料は科されません(不動産登記法164条1項は「正当な理由がないのに」怠った場合に10万円以下の過料と定めています)。法務省は、相続人が極めて多い、遺言の有効性や遺産の範囲が争われている、申請する人が重病、DV被害で避難している、経済的に困窮している、の5つを一般的な例として挙げています。過料の前には登記官からの催告があり、その段階で事情を説明して認められれば、裁判所への通知はされません。
Q. 相続登記の義務化の「正当な理由」とは?法務省が示す5つの例
法務省が「一般に正当な理由があると認められる」と示しているのは、次の5つです。これに当たらなくても、個別の事情から申請しないことに正当性が認められれば、過料の通知はされないとも説明されています。判断するのは登記官で、最終的に過料を科すかどうかは裁判所です。
| 法務省が示す例 | 想定される状況 | 残しておくもの(筆者の整理) |
|---|---|---|
| 相続人が極めて多数で、戸籍の収集や相続人の把握に多くの時間がかかる | 祖父母の代から登記がなく、相続人が数十人に広がっている | 戸籍の請求記録、相続人の一覧と連絡の経過 |
| 遺言の有効性や遺産の範囲が争われ、不動産の帰属が明らかでない | 遺言の無効を主張する訴訟や、遺産分割調停が続いている | 裁判所の事件番号・期日の通知 |
| 申請義務を負う本人に重病などの事情がある | 入院や療養で手続きができない | 診断書、入院の記録 |
| DV被害者などで、生命・心身に危害が及ぶおそれがあり避難している | 加害者に住所を知られたくない | 相談した窓口や支援の記録 |
| 経済的に困窮し、登記の費用を負担できない | 戸籍の取得費や登録免許税も払えない | 収入の状況が分かる書類 |
この表の「残しておくもの」は、催告を受けたときに事情を説明しやすくするための整理で、法務省が提出書類として定めたものではありません。
DVや親族からの脅しなど、身の安全に関わる事情があるときは、登記より先に安全の確保を優先します。相談できる窓口は相続手続きの無料相談窓口一覧:登記・税・売却まで番号と受付時間にまとめています。
Q. 催告から過料までの流れは?正当な理由はいつ伝えますか?
法務省の説明では、登記官が義務違反を知り、相当の期間を定めて催告し、期間内に申請がなければ地方裁判所に通知して、裁判所が10万円以下の過料を決めます。ただし、相続人の説明から正当な理由があると登記官が認めたときは、通知されません。4段階の詳しい流れは相続登記の義務化:期限3年・過料10万円以下・相続人申告登記にあります。
事情を伝えるときは、催告書の連絡先に、事実を時系列で短く書いて伝えます。たとえば次のような書き方です。
文例:「催告書(令和○年○月○日付)を受け取りました。対象の土地は父○○の名義です。父の遺言について、令和○年○月から○○地方裁判所で有効性を争う訴訟が続いており、不動産を誰が取得するか決まっていません。判決が確定したら速やかに登記を申請します。事件番号の分かる書類の写しを添えます。」
病気で動けない場合や、費用が出せない場合は、次のように事実と見通しを短く書きます。
文例(病気):「催告書を受け取りました。私は令和○年○月から入院しており、現在は退院の見通しが立っていません。診断書の写しを添えます。退院後に相続人申告登記をし、体調が戻りしだい相続登記を進めます。」
文例(費用):「催告書を受け取りました。対象は父名義の土地と家で、私は収入が少なく、登記の費用を一度に用意できません。まず登録免許税のかからない相続人申告登記を申し出たうえで、費用の工面がつきしだい相続登記を進めます。収入の状況が分かる書類を添えます。」
どちらの文例も、「いつまでにどう進めるか」を書き添えている点が要です。説明だけして何も進めない状態が続くと、事情が解消した後の申請が遅れるおそれがあります。
文例は事実の伝え方の一例で、正当な理由に当たるかを決めるのは登記官です。書けるのは、実際にある事情と、それを示す書類だけにします。
正当な理由を伝えるのは、催告を受けた段階です。期限を過ぎたからといって、催告なしにいきなり過料が科されるしくみではありません。また、登記官が義務違反を知るきっかけは、遺言や遺産分割協議書に別の不動産も取得すると書いてあるのに、その一部しか登記されていない場合などに限られる、と法務省は説明しています。
Q. 相続登記のお金がないときは、正当な理由になりますか?
法務省の例には「経済的に困窮しており、登記に要する費用を負担する能力がない場合」が入っています。ただ、どの程度の困窮が当たるかは登記官が個別に判断するので、「お金がないから登記しなくてよい」と自分で決めてしまうのは危険です。費用を抑えて義務を果たす方法を先に確かめます。
| 方法 | かかるお金 | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続人申告登記 | 登録免許税はかからない(戸籍の取得費と郵送費程度) | 法務省 |
| 自分で相続登記を申請 | 登録免許税(価額の0.4%)と書類の取得費。司法書士報酬はかからない | 登録免許税法 別表第一 |
| 価額100万円以下の土地の相続登記 | 2027年3月31日までは登録免許税が免税(申請書に条文の記載が要る) | 租税特別措置法84条の2の2 |
筆者の計算:固定資産評価額が300万円の家と土地を自分で登記すると、登録免許税は300万円×0.4%=1万2,000円。
相続人申告登記なら、登録免許税なしで申し出た人の義務を果たせます。手順は相続人申告登記とは:遺産分割がまとまらない時の義務の果たし方、自分で申請する流れは相続登記を自分でする手順:書類集めから法務局への申請まで、費用の内訳は相続登記の費用:自分でする場合と司法書士に頼む場合の内訳で確かめてください。
Q. 話し合いがまとまらない・相続人と連絡が取れないのは正当な理由?
「遺産分割の話し合いがまとまらない」こと自体は、法務省の5つの例には入っていません。例にあるのは、遺言の有効性や遺産の範囲が争われていて、不動産が誰のものか明らかでない場合です。単に意見が合わないだけのときは、相続人申告登記で期限内に義務を果たすのが、法務省のQ&Aが示す道筋です。申告登記は相続人の1人で申し出られるので、ほかの相続人の協力がなくてもできます。
相続人の一部と連絡が取れない、所在が分からない、という場合も同じです。相続人が極めて多く把握に時間がかかる事情があれば、正当な理由の例に当たりうるので、戸籍集めや連絡の経過を記録しておきます。そのうえで、少なくとも自分の分は相続人申告登記をしておくと、催告を受けたときに義務を果たしていない状態を避けられます。
争いが続いて家庭裁判所の手続きに進む場合、遺産分割の進め方や相手方との交渉は弁護士の仕事です。手続きの流れは遺産分割調停の流れ:申立ての費用・書類・期間と1回目の準備にまとめています。
よくある質問
Q. 正当な理由があれば、相続登記はしなくてよくなるのですか?
なくなるわけではありません。正当な理由は、その事情がある間に申請しなかったことについて過料の通知をしない理由になるもので、事情が解消すれば登記を進めることが前提です。病気が回復した、争いが決着した、といった時点で、遺産分割と相続登記を進めます。
Q. 催告書が届いたら、まず何をすればよいですか?
催告書に書かれた期間と、対象の不動産を確かめます。期間内に相続登記か相続人申告登記を申請できるならそれを進め、できない事情があるなら、その事情を登記官に説明します。説明の材料になる診断書や裁判所の書類などを手元にそろえておきます。
出典・参考にした公的な情報
- 不動産登記法 第76条の2・第76条の3・第164条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 相続登記の申請義務化について(法務省)(法務省)
- 相続登記の申請義務化に関するQ&A(法務省・令和7年3月27日更新)(法務省)
- 相続人申告登記について(法務省)(法務省)
- 租税特別措置法 第84条の2の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 登録免許税法 別表第一(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。