遺言書 / 文例

遺言書で甥に相続させる書き方:甥姪への遺贈の文例と相続税の2割加算

この記事のもくじ
  1. 甥姪が相続人になるかの見分け方
  2. 「相続させる」と「遺贈する」で変わる手続きと税金
  3. 甥姪に残す遺言書の文例
  4. 相続税の2割加算と、遺言を書く前に確かめること

遺言書で甥に財産を残すときは、甥がその相続で法定相続人に当たるなら「相続させる」、当たらないなら「遺贈する」と書きます。甥姪が相続人になるのは、亡くなった人に子・孫がおらず、親などの直系尊属もすでに亡くなっていて、甥姪の親(亡くなった人の兄弟姉妹)が先に亡くなっている場合です(民法889条)。どちらの書き方でも、甥姪が財産を受け取ると相続税は2割加算の対象になります(国税庁 No.4157)。この記事では、甥姪が相続人かの見分け方、書き方で変わる手続き、文例を順に示します。

甥姪が相続人になるかの見分け方

まず、亡くなる人(遺言者)の家族関係を、次の順に当てはめます。配偶者は常に相続人で(民法890条)、その他の相続人は順位で決まります(民法887条・889条)。

  1. 子(子が先に亡くなっていれば孫)がいるか:いれば、甥姪は相続人になりません。
  2. 親や祖父母が健在か:健在なら、甥姪は相続人になりません。
  3. 兄弟姉妹が健在か:健在の兄弟姉妹は本人が相続人で、その子の甥姪は相続人になりません。
  4. 兄弟姉妹が先に亡くなっているか:その兄弟姉妹の子(甥姪)が代わりに相続人になります(代襲相続、民法889条2項)。兄弟姉妹の代襲は甥姪までで、甥姪の子には続きません。
早見表:甥姪の立場と遺言の書き方
遺言者の家族 甥姪の立場 遺言の書き方 相続税の2割加算
子がいる 相続人ではない 遺贈する 対象
子はいない、親が健在 相続人ではない 遺贈する 対象
子・親はいない、甥姪の親(兄弟姉妹)が健在 相続人ではない 遺贈する 対象
子・親はいない、甥姪の親が先に死亡 相続人(代襲) 相続させる 対象

甥姪が相続人になる場合の取り分は、亡くなった兄弟姉妹が受けるはずだった分を、その子どうしで等分します(民法901条)。配偶者がいれば、配偶者が4分の3、兄弟姉妹側が4分の1です(民法900条3号)。代襲の範囲は代襲相続とは?孫・甥姪が相続人になる範囲で図にしています。

注意したいのは、遺言を書いた時点と亡くなった時点で、甥姪の立場が変わりうることです。書いた時は兄が健在でも、遺言者より先に兄が亡くなれば、兄の子の甥は相続人になります。迷うときは、相続人かどうかにかかわらず使える「遺贈する」と書く方法もありますが、下の表のとおり手続きと税金が変わる点を踏まえて選びます。

「相続させる」と「遺贈する」で変わる手続きと税金

甥姪に不動産を残す場合、書き方と甥姪の立場によって、名義変更の手続きとかかる税金が変わります。

比べる点 相続人の甥姪に「相続させる」 相続人でない甥姪に「遺贈する」
不動産の名義変更の申請 甥姪が単独で申請できる(不動産登記法63条2項) 原則として登記義務者側(遺言執行者または相続人全員)と共同で申請(60条)
登録免許税(所有権移転) 相続による移転として不動産の価額の0.4% その他の原因として不動産の価額の2%
不動産取得税 かからない(地方税法73条の7第1号) 特定の不動産を指定する遺贈(特定遺贈)は非課税に入らず課税される。割合で渡す包括遺贈は非課税
相続税の2割加算 対象 対象
相続税の基礎控除の人数 法定相続人として数える 数えない

登録免許税は登録免許税法の別表第一で、相続による所有権移転は1000分の4、その他の原因は1000分の20と定められています。不動産取得税は、地方税法73条の7第1号が「相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得」には課税できないと定めています。相続人でない人への特定の不動産の遺贈(特定遺贈)はこの括弧の中に入らないので、不動産取得税の対象になります。なお、甥姪が相続人である場合に「遺贈する」と書いても、相続人に対する遺贈の登記は2023年4月1日から受遺者が単独で申請できます(不動産登記法63条3項)。

相続人でない甥姪に不動産を遺贈する場合、名義変更を甥姪だけでは進められないので、遺言執行者を指定しておくことが手続きの負担を大きく減らします。遺言執行者に甥姪本人を指定する書き方もあります。

甥姪に残す遺言書の文例

自筆で書く場合は、全文・日付・氏名を手書きし、押印します。名前の横に生年月日を書くと、同じ名前の人と区別できます。

文例1:相続人である甥に自宅を相続させる(兄が先に亡くなっている場合)

第1条 遺言者は、次の土地及び建物を、甥〇〇〇〇(平成〇年〇月〇日生、遺言者の亡兄〇〇〇〇の長男)に相続させる。 (不動産の表示)

文例2:相続人でない甥に預金を遺贈する(兄が健在の場合)

第1条 遺言者は、〇〇銀行〇〇支店の遺言者名義の預金の全部を、甥〇〇〇〇(平成〇年〇月〇日生、遺言者の兄〇〇〇〇の長男)に遺贈する。

文例3:甥と姪に割合で残し、執行者を決める

第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、甥〇〇〇〇(平成〇年〇月〇日生)及び姪〇〇〇〇(平成〇年〇月〇日生)に、各2分の1の割合で遺贈する。 第2条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、甥〇〇〇〇を指定する。

文例4:甥が先に亡くなったときの予備の定め

第3条 甥〇〇〇〇が遺言者の死亡以前に死亡したときは、同人に遺贈するとした財産を、姪〇〇〇〇に遺贈する。

遺贈を受ける人が遺言者より先に亡くなると、その遺贈は効力を生じません(民法994条1項)。甥の子に自動的に引き継がれるわけではないので、残したい次の相手を書いておきます。配偶者がいる人は、まず配偶者に残し、配偶者が先に亡くなったときに甥姪へ、という形も選べます。書き方は子どものいない夫婦の遺言書で示しました。

相続税の2割加算と、遺言を書く前に確かめること

甥姪が相続や遺贈で財産を取得すると、その人の相続税額にその2割に当たる額が加算されます。相続税法18条は、被相続人の一親等の血族(代襲して相続人になった直系卑属を含む)と配偶者以外の人を加算の対象と定めています。国税庁の案内(No.4157)は、配偶者・父母・子ではない人の例として、兄弟姉妹や、おい・めいとして相続人となった人を挙げています。代襲して相続人になった孫は加算されませんが、甥姪は代襲相続人でも加算される点が違います。

ただし、2割加算は相続税がかかる場合の話です。遺産全体が基礎控除以下なら相続税はかからないので、まず相続税の基礎控除で一次判定をします。加算の仕組みと計算は相続税の2割加算とはで扱っています。

遺言を書く前に、次の点を確かめておくと書き直しを減らせます。

  • 戸籍で、兄弟姉妹と甥姪の正確な氏名・生年月日・続柄を確かめたか
  • 配偶者や親が健在で、その人たちの遺留分を考えたか(甥姪・兄弟姉妹には遺留分がない)
  • 不動産を遺贈する場合、甥姪がその不動産を使うのか売るのかを本人と話したか
  • 甥姪が受け取りを望まない場合の行き先(他の甥姪や団体への寄付)を決めたか

団体への寄付と組み合わせる書き方は遺言書で寄付する書き方で、方式の選び方から全体を確かめたい人は遺言書の種類と書き方から読んでください。

よくある質問

Q. 甥と姪が何人もいます。一部の甥だけに残すことはできますか?

できます。遺言で残す相手は自由に選べ、甥姪には遺留分がないので(民法1042条)、選ばれなかった甥姪が遺留分を理由にお金を請求することはできません。ただし亡くなった人に配偶者や親がいる場合は、その人たちには遺留分があります。

Q. 甥が「いらない」と言ったら、遺言で残した財産はどうなりますか?

遺贈を受けた人は、遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄でき、放棄は死亡の時にさかのぼって効力を生じます(民法986条)。放棄された財産は、遺言に別の定めがなければ相続人の間で分ける遺産に戻ります。甥が相続人でもある場合は、相続そのものを放棄するかどうかは別の手続きで判断します。

Q. 甥に遺贈した財産にも、相続税の基礎控除は使えますか?

基礎控除は遺産全体から差し引くもので、受け取る人ごとの控除ではありません。基礎控除の人数に数えるのは法定相続人で、相続人でない甥は人数に入りません。甥が兄弟姉妹の代わりに相続人になる場合は、法定相続人として数えます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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