不動産売却の流れ / 手順

不動産売却の決済と引き渡し:当日の流れとお金が入るタイミング

この記事のもくじ
  1. 不動産売却の決済当日の流れ
  2. 売却代金はいつ入る?手付金・残代金・精算金のタイミング
  3. 抵当権の抹消:ローンが残る家を売るときの段取り
  4. 固定資産税の精算:日割りの計算と税金上の扱い
  5. 決済までに売主がそろえる書類と前日の確認
  6. 決済の前後に読む記事

不動産売却の決済は、買主から残代金を受け取るのと引き換えに、所有権移転登記の書類と鍵を渡す日です。売却代金がまとまって入るのはこの日で、買主が住宅ローンを使う場合は、融資が実行された後に売主の口座へ振り込まれる流れになります。売主に住宅ローンが残っていれば、受け取った代金でその場で完済し、抵当権の抹消の書類を金融機関から受け取ります。手付金は売買契約の日にすでに受け取っているので、決済で入るのは「売買代金から手付金を引いた残り」と、固定資産税などの精算金です。

不動産売却の決済当日の流れ

決済の日は、売主・買主・登記を頼まれた司法書士・不動産会社、ローンがあれば金融機関の担当者がそろって、次の順に進めるのが基本の形です。

手順表:決済当日にすること(売主の側から見た順番)
順 すること 売主が確かめること
1 司法書士が売主・買主の本人確認をし、登記の書類がそろっているかを見る 実印・印鑑証明書・登記識別情報(権利証)を持参したか
2 買主が残代金と精算金を支払う(ローンなら融資の実行後に振込) 入金額が精算書の金額と合っているか、口座で着金を確かめる
3 売主のローンを完済し、金融機関から抵当権の抹消書類を受け取る 抹消書類を司法書士に渡したか
4 司法書士が、抵当権の抹消と所有権移転の登記を法務局に申請する 登記の申請の予定日を聞いておく
5 仲介手数料の残りや司法書士の費用を支払う 領収書を受け取る
6 鍵・建物の書類(設備の説明書、建築の図面など)を買主に渡す 鍵の本数を数え、引渡しの確認書に署名する

この順番には法律の裏付けがあります。売買のように双方が義務を負う契約では、相手が履行を提供するまで自分の履行を拒むことができます(民法533条)。買主は代金を払うなら間違いなく名義を移してほしく、売主は名義を移す代わりに代金を受け取りたいので、両方を同じ席で同時に済ませます。所有権移転の登記は、売主(登記義務者)と買主(登記権利者)が共同で申請する決まりです(不動産登記法60条)。

引き渡した後に、地震や火事など双方の責任でない理由で家が壊れても、買主は代金の支払いを拒めません(民法567条)。言い換えると、引渡しの日までは売主の側の負担が重いので、空き家の売却では決済の日まで火災保険を切らさず、解約の手続きは引渡しの後にします。

売却代金はいつ入る?手付金・残代金・精算金のタイミング

家を売ったお金は、一度には入りません。入る時期と、そこから出ていくお金を並べると次のようになります。

時期 入るお金 出ていくお金(売主)
売買契約の日 手付金(金額は契約で決める) 売買契約書の印紙代(売主の分)、仲介手数料の一部を払う取り決めならその分
決済の日 残代金(売買代金−手付金)、固定資産税などの精算金 ローンの残り全額、抵当権抹消の登記費用、仲介手数料の残り
決済の後 なし 引越し、翌年の譲渡所得の申告と納税(利益が出た場合)

仲介手数料をいつ払うかは、媒介契約書の「約定報酬の受領の時期」の欄で決まります。国土交通省の標準媒介契約約款では、不動産会社が報酬を受け取れるのは売買契約が成立し、契約の内容を書いた書面を交付した後とされています(専任媒介契約約款9条)。

筆者の計算例:売買代金2,500万円、手付金250万円、ローンの残り900万円の家なら、決済の日に入る残代金は2,250万円です。そこからローン900万円を返すと、手元に残るのは1,350万円から仲介手数料の残りと登記費用を引いた額になります(検算:250+2,250=2,500)。ローンが売却代金で返しきれない場合の考え方は住宅ローンが残っている家を売るにはで扱います。

「お金が入るまで何日かかるか」は、買主のローンの審査と、売買契約で決めた決済日で決まります。契約から決済までの期間や、手付解除の期限は契約書に書かれているので、不動産売却の契約の流れと手付金の注意で確かめておきます。

抵当権の抹消:ローンが残る家を売るときの段取り

住宅ローンを組んだ家には、金融機関の抵当権が登記されています。ローンを全部返しても、抵当権の登記は自動では消えず、抹消の登記を申請して初めて消えます。買主はふつう抵当権のついたままの家を買わないので、決済の日に「完済」と「抹消」を同時に済ませます。

法務省の案内では、抵当権の抹消に使う書類のうち、次のものは抵当権者である金融機関から送られます。

  • 登記識別情報(または抵当権設定契約書に「登記済」の押印があるもの)
  • 登記原因証明情報(「解除証書」や「弁済証書」といった書類)
  • 金融機関から登記の申請を任せる委任状

決済の前にしておくこと:

  1. 決済日が決まったら、ローンを借りている金融機関に「売却のため、この日に一括で返済する」と連絡する。期日前の一括返済には手数料がかかる金融機関があるので、金額を聞いておく。
  2. 返済額(決済日時点の残高と利息)を出してもらい、不動産会社と司法書士に伝える。
  3. 抹消の書類を当日その場で受け取るか、事前に司法書士へ送ってもらうかを決める。

抹消の登記にかかる登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(土地1筆と建物1棟なら2,000円。筆者の計算)。買主は抵当権のない家を受け取りたいので、決済の日に所有権移転の登記と抹消の登記を同じ流れで申請します。司法書士にまとめて頼むのが通例です。

登記上の住所が今と違う売主は要注意です。申請書の登記義務者の住所が登記記録と合わないと、法務局は申請を却下します(不動産登記法25条7号)。引越しで住所が変わっている人は、住所変更の登記を先に済ませる必要があるので、査定の段階で登記事項証明書を取り、住所を確かめておきます。住所や氏名が変わったときは変更から2年以内に変更の登記をする義務が2026年4月1日に始まっており、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象です(不動産登記法76条の5・164条2項)。それより前に引越した人の期限は2028年3月31日までです。詳しくは住所変更登記の義務化とスマート変更登記で確かめられます。

固定資産税の精算:日割りの計算と税金上の扱い

固定資産税は、その年の1月1日(賦課期日)に登記簿で所有者となっている人にかかります(地方税法343条・359条)。年の途中で売っても、その年度の税金の納税通知は売主に届きます。そこで、引渡しの日から後の分を買主が負担するよう、決済の日に日割りで精算する取り決めをするのが一般的です。精算するかどうか、1年の起算日を1月1日とするか4月1日とするかは、売買契約書の条項で決まります。

筆者の計算例:固定資産税と都市計画税の年税額が12万円、起算日1月1日、引渡し7月1日なら、買主の負担は7月1日から12月31日までの184日分で、120,000円×184÷365≒60,493円です(検算:7月31日+8月31日+9月30日+10月31日+11月30日+12月31日=184日)。

ここで受け取る精算金について、国税庁の質疑応答事例は、売主が受け取った未経過分の固定資産税相当額は、譲渡所得の収入金額に含めると答えています。固定資産税は1月1日の所有者が納めるもので、買主が払うお金は税金の立替えではなく、家と土地の代金の一部とみなされるからです。翌年の確定申告で、売買代金だけを書いて精算金を入れ忘れないよう、精算書を残しておきます。

決済までに売主がそろえる書類と前日の確認

決済の当日に書類が足りないと、登記の申請ができず、代金の受け取りも延びます。司法書士から事前に一覧が届くので、次の点を照らし合わせます。

  • 登記識別情報(または登記済証=権利証):所有権移転の登記では、売主の登記識別情報を出す決まりです(不動産登記法22条)。見つからないときは、別の方法で本人確認をすることになり、時間と費用がかかるので早めに司法書士へ伝えます。
  • 実印と印鑑証明書:登記の申請書や委任状に押印する売主の印鑑証明書は、作成後3か月以内のものに限られます(不動産登記令16条・18条)。決済日から逆算して取ります。
  • 本人確認書類:運転免許証やマイナンバーカードなど。
  • 買主側の登記の申出事項:所有権を取得する人は、登記の申請のとき氏名のふりがなや生年月日などの検索用情報を申し出る決まりで、2026年10月5日からは国籍等も加わりました。買主が準備するもので売主の書類ではありませんが、買主の書類が遅れると登記が止まるので、司法書士に進み具合を聞いておきます。
  • 固定資産税の納税通知書:精算の金額を出すのに使います。
  • 鍵と、設備の取扱説明書・建築の書類:引き渡す鍵の本数を数えておきます。
  • ローンの返済に関する書類:返済額の通知、金融機関の届出印。

前日までに、室内に残す物と持ち出す物が契約どおりか、電気・ガス・水道の名義の切替えや精算の日を決めたかも確かめます。書類全体を段階ごとに見直したい人は不動産売却の必要書類の段階別チェックリストを使ってください。

決済の前後に読む記事

決済の前に契約の条件を見直したいときは、不動産売却の契約の流れ:手付金・違約金・契約不適合責任で、手付解除と違約金の扱いを確かめます。決済のあとは、受け取った代金に税金がかかるかどうかを不動産売却の税金:譲渡所得の計算と確定申告で計算し、翌年の申告に備えます。相続した家を売る場合は、売る前に相続登記を済ませておく必要があるので、相続した不動産を売る流れと期限から読むと段取りがつかめます。

よくある質問

Q. 決済の日に売主本人が行けない場合はどうしますか?

登記を頼む司法書士への委任状と、残代金を受け取る口座を事前に決めておけば、本人が出席しない形で進められる場合があります。ただし司法書士は売主本人の意思と本人確認を事前に面談などで行うので、日程を早めに相談します。遠方の家の売り方は不動産会社にも段取りを確かめてください。

Q. 決済の後で家に不具合が見つかったら、売主はどうなりますか?

引き渡した家が契約の内容に合わなかった場合、売主は契約不適合責任を問われることがあります。どこまで責任を負うかは売買契約書の特約と、引渡しの時に何を告げていたかで決まります。決済の前に、付帯設備表と告知書に書いた内容をもう一度見直しておきます。

Q. 売却代金を受け取った年に、何か手続きは要りますか?

売って利益が出た場合は、売った年の翌年2月16日から3月15日までに譲渡所得の確定申告をします。譲渡の日は原則として引渡しの日なので、12月に決済した家は翌年の申告になります。決済の日に受け取る精算書と領収書は、申告に使うので保管します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

不動産売却の契約の流れ:手付金・違約金・契約不適合責任の注意

不動産売却の必要書類:査定・契約・決済の段階別チェックリスト

相続した不動産はどうする?住む・貸す・売る・手放すの判断材料

住宅ローンが残っている家を売るには:残債の確かめ方と売り方