相続放棄と借金の相続 / 悩み整理

相続放棄したら次は誰が相続人?次順位への連絡と全員放棄の流れ

この記事のもくじ
  1. 相続放棄したら次は誰?次順位へ移る順番の早見表
  2. 次順位の人がすること:3か月の数え方と必要な戸籍
  3. 次順位への知らせ方:伝える中身と手紙の文例
  4. 全員が相続放棄したら:相続財産清算人と残った家
  5. 次順位に回す前に考えたい3つのこと

相続放棄をすると、その人は初めから相続人でなかったものとみなされ(民法939条)、相続権は同じ順位の残りの人へ、同じ順位に誰もいなくなれば次の順位へ移ります。順番は「子 → 父母などの直系尊属 → 兄弟姉妹」で、兄弟姉妹が相続開始前に亡くなっているなどで相続権を失っているときだけ、その子である甥・姪が代わりに相続人になります。配偶者は順位とは別に常に相続人です。全員が放棄して相続人がいなくなると、家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人が財産を清算します。

相続放棄したら次は誰?次順位へ移る順番の早見表

民法は、子がいない場合に、直系尊属、兄弟姉妹の順で相続人になると定めています(887条・889条)。放棄した人は「いなかった」扱いになるので、この順番がそのまま繰り上がります。

放棄した人 次に相続人になる人 補足
子のうち1人 残りの子(配偶者がいれば配偶者も) 他に子がいる限り、親や兄弟姉妹には回らない
子の全員 父母(2人とも亡くなっていれば祖父母) 親等の近い人が先(889条1項1号)
父母・祖父母の全員 被相続人の兄弟姉妹 先に亡くなった兄弟姉妹がいれば、その子(甥・姪)が代わりに入る
兄弟姉妹(甥・姪を含む)の全員 相続人なし(配偶者がいれば配偶者だけ) 相続人がいなければ相続財産清算人の手続きへ

見落とされやすい点が2つあります。1つ目は、放棄した人の子には相続権が移らないことです。代わりに相続する「代襲相続」が起きるのは、本来の相続人が先に亡くなっていた場合などに限られ、放棄は入っていません。仕組みは代襲相続と相続放棄:親が放棄したら子は代襲できるかで詳しく扱っています。

2つ目は、配偶者がいる場合の扱いです。配偶者は常に相続人なので(890条)、子が全員放棄しても配偶者の相続権は残り、配偶者と父母、配偶者と兄弟姉妹という組み合わせに変わります。配偶者自身も放棄したいなら、別に申述が必要です。

甥・姪や叔父・叔母に回ってくるのはどんなとき?

甥・姪が相続人になるのは、亡くなった人の兄弟姉妹が、相続が始まる前にすでに亡くなっていた場合です(889条2項が887条2項を準用)。兄弟姉妹が生きていて放棄した場合は、その子である甥・姪には移りません。また、兄弟姉妹の代わりに相続するのは甥・姪までで、甥・姪の子には続きません(889条2項は再代襲の887条3項を準用していない)。

「叔父が亡くなって自分に通知が来た」という場合は、自分の親(叔父の兄弟姉妹)がすでに亡くなっていて、叔父に子も存命の親もいないか、その人たちが全員放棄したときに、甥・姪として相続人になります。逆に、亡くなった人から見た叔父・叔母、いとこは、889条の順位に入っていないため相続人になりません。順位の全体は相続の順位の早見表で確かめられます。

流れ図:放棄で相続権が移る順番
  • 第1順位:子(先に亡くなった子がいれば孫)→ 全員が放棄すると次へ
  • 第2順位:父母(2人とも亡くなっていれば祖父母)→ 全員が放棄すると次へ
  • 第3順位:兄弟姉妹(先に亡くなった兄弟姉妹がいれば甥・姪)→ 全員が放棄すると相続人なし
  • 相続人なし:家庭裁判所が相続財産清算人を選ぶ → 清算 → 残りは国庫
  • 配偶者:どの段階でも常に相続人(放棄するなら本人の申述が別に要る)

次順位の人がすること:3か月の数え方と必要な戸籍

相続人になった人は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に、相続するか、限定承認か、放棄かを決めます(915条1項)。次順位の人の場合、亡くなった日ではなく、先順位の人が全員放棄して自分が相続人になったと知った時から数える、という説明が一般的です。個別の起算点をどう見るかは家庭裁判所の判断になるため、知った日が分かる手紙や債権者からの通知書は、封筒ごと保管しておきます。

次順位の人が放棄するときの手続きは、先順位の人と同じく、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所への申述です。費用は申述する人1人につき収入印紙800円分と、裁判所ごとに額が違う連絡用の郵便切手です。

違いが大きいのは戸籍の範囲です。裁判所の案内では、立場ごとに次のように分かれています。

申述する人 共通の書類に加えて必要な戸籍
父母・祖父母 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍、亡くなっている子(と代襲者)の出生から死亡までの戸籍、自分より下の代の直系尊属で亡くなった人の死亡の記載のある戸籍
兄弟姉妹 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍、亡くなっている子(と代襲者)の出生から死亡までの戸籍、直系尊属の死亡の記載のある戸籍
甥・姪 兄弟姉妹の欄の書類に加えて、親である兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍

共通の書類は、被相続人の住民票除票または戸籍附票と、申述する人の戸籍謄本です。先順位の人が同じ家庭裁判所にすでに出している書類は不要とされているので、先順位の人から「どこの家庭裁判所に、何を出したか」を聞いておくと、集める量を減らせます。戸籍の集め方の順番は相続放棄の必要書類:立場ごとの戸籍の範囲で整理しています。

次順位への知らせ方:伝える中身と手紙の文例

裁判所の家事事件Q&Aは、放棄が受理された後について、財産を管理していれば相続人に引き継ぐこと、債権者から請求されていれば受理を連絡するのがよいことを案内しています。次順位の親族への連絡は、法律で決まった手続きではありませんが、伝えないと相手は債権者の請求で初めて事情を知ることになります。疎遠な親族ほど、早めに書面で伝えるほうが行き違いが起きにくくなります。

伝える中身は、次の4つにしぼると相手が判断しやすくなります。

  1. 誰が亡くなり、自分たちが放棄したこと:放棄が受理された日と家庭裁判所の名前。
  2. 相手が相続人になったこと:どの順位として相続人になったか(例:兄弟姉妹として)。
  3. 分かっている財産と借金:通帳・不動産・債権者からの請求書など、手元にある資料の写し。
  4. 相手が決めること:3か月以内に、相続・限定承認・放棄のどれかを選ぶ必要があること。

文例:「○○様 突然のお手紙で失礼いたします。△△(亡くなった人)が令和○年○月○日に亡くなりました。子である私たちは借金が多いことが分かったため、○○家庭裁判所に相続放棄を申し立て、○月○日に受理されました。この結果、民法の定めにより、△△の兄弟姉妹である○○様が相続人になります。分かっている財産と借金の資料の写しを同封します。相続するか放棄するかは○○様ご自身が決めることで、相続人になったと知った時から3か月以内に決める必要があります。ご不明な点があればご連絡ください。」

文面では、相手に放棄をすすめたり、決めつけたりしないことが大切です。相手にとっては、財産を受け取れる可能性がある場面でもあるからです。相手の住所が分からない、連絡を取りたくない事情があるときは、相続で兄弟と連絡が取れないときの所在の調べ方も参考にしてください。

全員が相続放棄したら:相続財産清算人と残った家

次順位の人も全員放棄すると、「相続人のあることが明らかでない」状態になり、裁判所の案内でもこの場合を含めて相続財産清算人の選任の対象になると説明しています。清算人は、利害関係人(お金を貸していた債権者など)か検察官の申立てで、家庭裁判所が選びます(952条1項)。

段階 中身 期間・費用
申立て 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ 収入印紙800円分、郵便切手、官報公告料5,582円、事案によって予納金
相続人を探す公告 名乗り出る相続人がいないか確かめる 6か月以上(952条2項)
債権者・受遺者への公告 請求の申出を受け付ける 2か月以上(957条1項)
清算と国庫への帰属 弁済・換価、特別縁故者への分与のあと、残りは国庫へ 959条

ここで注意したいのは、全員が放棄しても、清算人が選ばれるまで財産を引き受ける人がいない期間が続くことです。放棄した時点で亡くなった人の家や物を現に占有していた人は、相続人か清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存する義務を負います(940条1項)。空き家が残るときの具体的な考え方は相続放棄した空き家はどうなるか:保存義務の範囲、清算の流れ全体は法定相続人がいない場合の財産:相続財産清算人と特別縁故者で扱っています。

次順位に回す前に考えたい3つのこと

放棄は撤回できない(919条1項)ため、次順位に回る影響まで見てから決めるのが安全です。

  • 兄弟でまとめて申述する:同じ順位の全員が放棄するなら、同じ家庭裁判所に同時に出すと書類を共通にできます。進め方は相続放棄を兄弟まとめてする方法にあります。
  • 限定承認を比べる:借金がどれだけあるか分からない、残したい家があるという場合は、プラスの財産の範囲で借金を払う限定承認という選択肢もあります。相続人全員でする必要がありますが、放棄した人は除いて数えます。仕組みは限定承認とは:借金が分からない時の選択肢と流れを見てください。
  • 相続税の人数の数え方は別:相続税の基礎控除の「法定相続人の数」は、放棄があってもなかったものとして数えます(国税庁 No.4152)。放棄で相続人が入れ替わっても、税の計算上の人数は変わりません。詳しくは相続税の基礎控除:かかるかどうかの一次判定にまとめています。

放棄すべきかどうか自体に迷っている段階なら、相続放棄とは:期限3か月の手続き・費用・してはいけないことから全体を確かめてください。次順位の親族と利害がぶつかりそうなときは、相続人どうしの調整に当たるため、弁護士への相談を考える場面です。

よくある質問

Q. 自分が放棄したことを、次順位の親族に知らせる義務はありますか?

民法に、放棄した人が次順位の人へ知らせることを定めた条文はありません。ただ、次順位の人は自分が相続人になったと知った時から3か月を数えるため、知らせないままでいると、ある日突然、債権者からの請求で初めて事情を知ることになりかねません。家族の関係を考えると、受理された段階で伝えておくほうが相手の判断の時間を確保できます。

Q. 甥・姪が相続放棄をするとき、戸籍はどこまで集めますか?

裁判所の案内では、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍、亡くなっている子(と代襲者)がいればその出生から死亡までの戸籍、直系尊属の死亡の記載のある戸籍、さらに甥・姪が代襲する場合は親である兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍が必要です。先順位の人が同じ家庭裁判所に出している書類は省ける場合があるので、申述先に確かめてください。

Q. 子が全員放棄したら、祖父母が相続人になることもありますか?

あります。第2順位は直系尊属で、父母が両方とも亡くなっていて祖父母が存命なら、祖父母が相続人になります(民法889条1項1号)。親等の近い人が先なので、父母のどちらか1人でも存命なら祖父母には回りません。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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