実家の片付けの進め方:親が元気なうち・亡くなった後の手順と費用
この記事のもくじ
実家の片付けは、親が元気なうちは親本人が決め、亡くなった後は相続人どうしで合意してから手を付けるのが基本の順番です。どちらの場合も、最初に探すのは通帳や権利証などの書類で、捨てるのはそのあとです。費用は、交通費や粗大ごみの手数料がかかる「自分でやる」方法と、人手と処分をまとめて任せる「業者に頼む」方法を、家族の手間と通う回数で比べて決めます。
実家の片付けは「親が元気なうち」と「亡くなった後」で進め方が違う
同じ実家の片付けでも、誰が物の持ち主で、誰が決めるのかが変わります。民法206条は、所有者が自分の物を自由に使い、処分できると定めています。親が健在なら実家の物は親の物で、子が良かれと思っても、勝手に捨てる権限はありません。親が亡くなると、物は相続財産になり、相続人が複数いれば遺産分割までは全員の共有になります(民法898条)。
| 比べる点 | 親が元気なうち | 親が亡くなった後 |
|---|---|---|
| 物の持ち主 | 親本人 | 相続人(複数なら共有) |
| 何を捨てるか決める人 | 親 | 相続人全員の話し合い |
| 急ぐ理由になりやすいもの | 転倒の防止、介護や住み替えの準備 | 賃貸の明け渡し、空き家の管理、売却の予定 |
| 先に気をつけること | 親の納得と体力に合わせる | 相続放棄を考える人がいないか |
| 業者に頼むときの契約 | 親本人の了解のもとで | 相続人の代表が、全員の了解を得て |
亡くなった後の片付けでは、相続放棄との関係がいちばん注意のいる点です。相続財産の全部または一部を処分すると、相続を認めた(単純承認)とみなされる場合があります(民法921条1号)。家族の中に放棄を考えている人がいるなら、片付けを始める前に話し合ってください。どこまで手を付けてよいかは相続放棄と遺品整理:形見分けや部屋の片付けはどこまでしてよいかで確かめられます。
親が元気なうちの実家の片付け:本人が決める形で進める手順
親が健在なうちの片付けは、子が主導する作業ではなく、親が自分の暮らしを整えるのを手伝う作業です。進め方の順番は次のとおりです。
- 目的を親と合わせる:「物を減らしたい」ではなく、「つまずかないように」「探し物を減らしたい」など、親にとっての得を言葉にします。嫌がられたときの話し方は親が実家の片付けを嫌がるとき:話し合い方と少しずつ進める方法に文例があります。
- 書類と貴重品の置き場所を決める:通帳・印鑑・保険証券・年金の書類・家の権利証を1か所に集め、その場所を家族で共有します。将来の相続手続きでも、これがいちばん役に立ちます。
- 床と通路から始める:玄関・廊下・寝室からトイレまでの動線にある物を、まず床から上げます。捨てるかどうかは後で決めても構いません。
- 「残す・手放す・保留」の箱で親が分ける:子は箱を用意して運ぶ係になり、どの箱に入れるかは親が決めます。保留の箱には日付を書いて、時期を決めて見直します。
- 手放す物の出し方を決める:市区町村の粗大ごみ、家電のリサイクル、買取、譲渡など、出し方ごとに分けます。売れる物を出すときの順番は実家の片付けで出た物の買取:家具・家電・骨董の売り方と順番を参考にしてください。
- お金・書類・デジタルの整理につなげる:物の片付けが進んだら、口座や契約、スマートフォンの中身まで含めた生前整理の進め方:物・お金・書類・デジタルの4分野で整理するに移ります。
親の物忘れが気になり始めているときは、片付けと並行して、お金や契約の管理の備えも考えます。意思表示をした時に意思能力がなかった契約は無効とされているため(民法3条の2)、判断能力が落ちてからでは、業者との契約や実家の売却が進められなくなることがあります。家族でできる準備は親が認知症になる前にやること:財産・委任・信託の対策チェック表にまとめています。
親が亡くなった後の実家の片付け:相続人で決めてから手を付ける手順
亡くなった後は、悲しみの中で期限に追われがちです。慌てて捨てると、手続きに要る書類や、相続人の間で分けるはずだった物まで失うことがあるので、順番を守ります。
- 期限のある事情を確かめる:実家が賃貸なら、解約と明け渡しの時期から逆算します(賃貸の部屋の遺品整理:明け渡し期限と相続人の原状回復の範囲)。持ち家なら急ぐ期限はないことが多く、四十九日や相続の話し合いの後に始める家族もいます。
- 相続放棄を考える人がいないか確かめる:いるなら、その人の判断が済むまで、値のつく物の処分や持ち出しは控えます。
- 書類と貴重品を先に探す:通帳、キャッシュカード、証券会社や保険会社からの郵便物、権利証、年金の書類、借入の書類。探す場所の一覧は遺品整理で探すべき貴重品と書類:相続手続きに必要な物のリストにあります。
- 相続人で分け方のルールを決める:形見として欲しい物、売る物、処分する物の決め方と、費用を誰がどう負担するかを話し合い、決めたことをメモにして共有します。
- 仕分けと処分を進める:家族でやる部分は遺品整理を自分でやる手順:残す・譲る・売る・捨てるの仕分け方の4分類で進め、重い家具の運び出しや大量の処分は業者に回します。遠くて通えない場合の頼み方は遠方の実家の遺品整理:立ち会いなしで頼む時の確認と鍵の預け方を見てください。仏壇や人形のように捨てにくい物は、遺品の供養はどうする?仏壇・人形・写真の手放し方と費用で手放し方を確かめます。
- 片付けた後の家の行き先を決める:住む、貸す、売る、手放すのどれにするかで、どこまで片付けるか(家具を残すか、空にするか)が変わります。
片付けを長く後回しにすると、空き家としての問題にもつながります。総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、2023年10月時点の空き家は900万2千戸で過去最多でした。国土交通省のガイドラインは、管理不全空家等の例の一つに、清掃されず多量の腐敗したごみ等がある状態を挙げています。食品や生ごみは、ほかの片付けを待たずに早めに出しておくと安心です。
実家の片付けの費用:自分でやる・業者に頼む・組み合わせるの比べ方
実家の片付け費用に、国や自治体が出している相場の統計はありません。そのため、金額の比べ方は「自分でやるといくら・何回通うか」と「業者の見積額」を同じ物量で並べる形になります。
| 進め方 | 主にかかる費用 | 向いている家族 |
|---|---|---|
| 自分でやる | 交通費、粗大ごみの手数料、家電リサイクル料金と収集運搬料金、車の手配 | 実家の近くに住む人がいる、時間をかけてよい |
| 業者に頼む | 作業費、車両費、処分費、オプション(清掃・供養など) | 遠方、期限がある、物の量が多い |
| 組み合わせる | 仕分けは家族、運び出しと処分は業者 | 費用を抑えつつ、重い作業だけ任せたい |
自分でやる場合は、通う回数がいちばん大きく効きます。たとえば、往復の交通費が1人2万円かかる実家に、2人で6回通うと、交通費だけで24万円になります(筆者の計算:2万円×2人×6回)。この額と、業者に頼んだ場合の見積額、休みを取る負担を並べると、どこまで家族でやるかを決めやすくなります。
業者に頼む場合の金額は、物の量、作業人数と日数、運び出しの条件、処分と買取の扱いで決まります。見積書の内訳の読み方は遺品整理の費用は何で決まる?間取りから目安をつける方法と見積書の内訳に、複数社の比べ方と断り方は遺品整理の相見積もりの取り方:比べる項目と断り方の文例にまとめています。
家電のうち、テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目は家電リサイクル法の対象で、家電小売店などに引き取ってもらい、リサイクル料金と収集運搬料金を払います(環境省)。自分でやる場合も業者に頼む場合も、この4品目の数は先に数えておきます。
実家の片付けを業者に依頼する前に確かめる許可と書面
業者を選ぶときは、金額より先に、家庭から出た物を処分できる相手かを確かめます。一般廃棄物を収集・運搬する仕事には、市町村長の許可が要ります(廃棄物処理法7条1項)。環境省は、産業廃棄物処理業の許可や古物商の許可では家庭ごみを回収できないとしています。
- 許可:実家のある市区町村のサイトで一般廃棄物収集運搬業の許可業者を探すか、清掃担当の課に電話で聞きます。業者が許可業者と組んで運ぶ形なら、運ぶ業者の名前を見積書に書いてもらいます。
- 買取:遺品や家財を買い取る業者には古物商の許可が要るので、許可証を見せてもらいます。
- 書面:国民生活センターは、作業日・作業内容・料金・支払方法・解約料と、追加料金が出る可能性を事前に確かめ、残す物と処分する物をはっきり分けるよう助言しています。
依頼の文例:「実家の片付けの見積もりをお願いします。残す物は家族で先に別の部屋へまとめます。見積書には、作業費・車両費・処分費・オプションを分けて書き、処分を担当する許可業者の名前と、追加料金がかかる条件も書いていただけますか。」
確かめる点の全体は遺品整理業者の選び方:許可・見積もり・立ち会いで確かめる7点に、作業後の高額請求などへの備えは遺品整理のトラブル:作業後の高額請求・不法投棄を防ぐ方法と相談先にあります。
片付けが終わった後に実家をどうするかで迷っているなら、親が亡くなった後の実家をどうする?家族で決める5つの論点で、住む人・維持費・売る時期を家族で整理できます。
よくある質問
Q. 片付けを手伝った兄弟が、実家の物をその場で持ち帰ってもいいですか?
親が亡くなった後の実家の物は、遺産分割が済むまで相続人全員の共有です。手伝った人が気に入った物を持ち帰ること自体は珍しくありませんが、ほかの相続人が知らないまま持ち出すと、後で「あれはどこへ行ったのか」ともめる原因になります。持ち帰る物は一覧に書き、相続人どうしで了解を取ってから運び出します。
Q. 仏壇や神棚も、ほかの家具と同じように相続人で分けるのですか?
民法では、系譜・祭具・墳墓は相続財産とは別に、祖先の祭祀を主宰する人が受け継ぐと定められています。そのため、仏壇をどうするかは、まず誰が祭祀を引き継ぐかを家族で決めてから考えます。手放す場合の供養や費用の確かめ方は、[遺品の供養はどうする?仏壇・人形・写真の手放し方と費用](/ihin-kuyou/)にまとめています。
Q. 親が元気なうちに片付けを業者に頼むとき、契約は誰の名前でしますか?
物の持ち主は親なので、作業の範囲を決めて契約するのも親本人が基本です。子が費用を出す場合でも、見積もりには親に同席してもらい、何を処分するかを親が確かめた書面を残します。親の物忘れが進んで内容を理解するのが難しいときは、契約の前に、判断能力が落ちたときの備えを家族で確かめておきます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第3条の2・第206条・第897条・第898条・第921条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第7条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!(環境省)(環境省)
- 見守り新鮮情報 第525号「遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」(国民生活センター・2025年10月30日)(国民生活センター)
- 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)(国土交通省)
- 令和5年住宅・土地統計調査 確報集計 結果の概要(総務省統計局)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。