不動産の机上査定と訪問査定の違い:使い分けと訪問で見られる点
不動産の査定には、資料とデータだけで出す机上査定(簡易査定)と、担当者が現地と室内を見て出す訪問査定の2種類があります。はじめて頼むなら、まず2〜3社に机上査定を頼んで会社と大まかな価格帯を見て、売る方向が固まったら、売却を任せたい会社の訪問査定を受ける順番が無理のない進め方です。机上査定は早く手軽に出る代わりに、室内の状態や周辺の環境が入らないぶん、訪問査定より幅のある数字になります。
机上査定と訪問査定の違いを表で比べる
2つの査定の違いは、現地と室内を見るかどうかから生まれます。査定額の考え方そのもの(取引事例の比較と建物の評価)は、どちらも同じです。考え方は不動産の査定とは:査定額の決まり方と鑑定評価・売れる値段の違いで説明しています。
| 比べる点 | 机上査定(簡易査定) | 訪問査定 |
|---|---|---|
| 査定に使う情報 | 所在地、面積、築年数、間取りなど依頼者が伝えた内容と、取引事例や地価のデータ | 左に加えて、現地で見た外観、室内、設備、周辺の環境、境界の状況 |
| 担当者と会うか | 会わない。メールや電話で連絡を受ける | 現地で会う。室内を見せる |
| 見えない点 | 雨漏り、傷み、日当たり、においや騒音、越境、リフォームの出来 | 登記や書類だけで分かる点は事前に確認が必要 |
| 数字の性格 | 取引事例から出した目安。幅が広い | 物件の個別の事情を入れた査定。売り出し価格の相談に使える |
| 向いている場面 | 売るか迷っている、相場を知りたい、複数社を比べて絞りたい | 売ると決めた、売却を任せる会社を選ぶ、価格を詰めたい |
| 頼むときの負担 | 氏名と連絡先、物件の情報 | 日時の調整、立ち会い、書類の準備 |
訪問査定は、物件を実際に見る分、会社が価格の根拠を具体的に説明しやすくなります。宅建業法は、媒介契約で価額に意見を述べるときは根拠を明らかにするよう定めています(34条の2第2項)。机上査定の段階でも、どの事例を使ったかは聞いてかまいません。
どちらの査定も、受けた時点で売る義務は生じません。査定額が売れる値段を約束するものではない点は、訪問でも同じです。
机上査定が向いている場面と、使うときの注意
机上査定は、まだ売ると決めていない段階の情報収集に向いています。
- 相場を早く知りたい:不動産情報ライブラリで自分で調べた幅と、会社の見立てを突き合わせられます。
- 会社を絞りたい:数社の机上査定を比べ、極端に高い、または低い会社を見分けます。
- 家に人を入れたくない:遠方の空き家、居住中で都合がつかない場合など、訪問前に目安だけ欲しいとき。
- 相続の相談材料にしたい:相続人が複数いて、売るかどうかを話し合う前に、おおよその価格を共有したいとき。
注意したいのは、机上査定の額を鵜呑みにして期待を高くしないことです。物件の状態は、依頼者が伝えた内容以上のことは反映されません。たとえば「築30年」と伝えても、外壁や屋根をこれまでに直したかどうかで建物の評価は変わります。机上査定の額は、訪問で下がることも上がることもある暫定の数字と受け止めます。
依頼するときは、伝える情報を正確にそろえておくと、机上査定でも精度が上がります。メールで頼む場合の書き方は不動産の査定依頼メールの例文:伝える情報と書き方のポイントを使ってください。複数社に一度に頼む方法は不動産一括査定とは:しくみ・使い方・申し込む前に確かめることで比べられます。
訪問査定で見られる点と、準備する書類
訪問査定では、担当者が現地と室内を回り、机上のデータに載らない点を確認します。会社によって細かさは違いますが、次の点が中心になります。
| 場所 | 見る点 | 価格に響く理由 |
|---|---|---|
| 外観・敷地 | 外壁のひび、屋根の傷み、塀、境界標、隣地との越境 | 修繕費と、境界の問題は売却の妨げになる |
| 前面道路 | 幅、舗装、接している長さ、私道かどうか | 土地の評価と、建て替えの可否に関わる |
| 室内 | 床の傾き、壁や天井のしみ、結露やカビ、においの有無 | 雨漏りや傷みの手がかりになる |
| 設備 | 給排水管、給湯器、キッチン・浴室・トイレの状態 | 交換費用の見込みを建物の評価に入れる |
| 周辺 | 日当たり、眺望、騒音、嫌悪施設、買い物や駅までの動線 | 買主がつくか、つくまでの期間に響く |
| 履歴 | リフォームの時期と内容、雨漏りや修理の履歴 | 建物の評価を上げる材料にも下げる材料にもなる |
建物の状態をより詳しく知りたいときは、建物状況調査(インスペクション)があります。これは訪問査定とは別のもので、国土交通大臣が定める講習を修了した建築士が、基礎・壁・柱・屋根・外壁など構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防ぐ部分を、目視を中心に調べるものです(宅建業法施行規則15条の7)。調査は劣化事象を把握するもので、不具合がないことを保証するものではありません。費用は実施者の料金表で確かめます。
訪問の前に、次の書類を手元にそろえておくと、話が早く進みます。
- 登記事項証明書(または登記簿の写し):所有者、面積、抵当権の有無を確認するため。手元になければ、会社が取ることもあります。
- 固定資産税・都市計画税の納税通知書:所在地と面積、土地・建物の評価額を確かめるため。
- 購入時の売買契約書・重要事項説明書、図面(間取り図、建築確認済証など):築年と構造、法令上の制限を確かめるため。
- 測量図・境界確認書:土地の面積と境界の確認に使う。
- リフォームや修理の記録:時期、内容、金額が分かるもの。
- マンションなら管理規約、長期修繕計画、管理費・修繕積立金の額が分かる書類
- 住宅ローンの残高が分かる書類:売った代金で完済できるかを見るため。
売却の段階全体で要る書類は不動産売却の必要書類:査定・契約・決済の段階別チェックリストにまとめてあります。そろわない書類があっても、訪問査定は受けられます。「ない」と伝えれば、会社が代わりに取る方法を教えてくれます。
相続した家で訪問査定を受けるときの進め方
相続した実家で訪問査定を受けるときは、通常の売却にはない確認が加わります。
- 誰が立ち会うか:相続人の1人が代表で受けるときも、ほかの相続人に日時と目的を伝えておきます。遺産分割が終わるまで、家は相続人全員が持つ状態です。
- 名義の状況を伝える:名義がまだ亡くなった人のままなら、そのことを会社に伝えます。査定は登記の前でも受けられることが多い一方、売買で買主に名義を移すには、先に相続登記が要ります。
- 荷物の状況を伝える:家財が大量に残っているなら、訪問前に伝え、処分の費用をどう扱うかも聞きます。
- 鍵と電気・水道の確認:空き家は電気が止まっていることがあり、室内の確認に支障が出ます。訪問の日に使えるか、先に確認します。
訪問を受けたら、その日に媒介契約を結ぶかどうかは決めなくて構いません。会社の説明を持ち帰り、ほかの会社の査定と並べて比べます。見積書や契約書に署名を求められても、その場で応じる必要はありません。
持ち帰るときの言い方:「家族と相談して、数日以内にこちらから連絡します。」
訪問を受けた会社の査定額が高い場合の確かめ方は、不動産の査定が高すぎる会社に注意:根拠の聞き方と売り出し価格で扱います。査定の費用が気になる場合は不動産の査定に費用はかかる?無料の理由と有料の鑑定が要る場面を先に読んでください。
売り方そのもの(仲介か買取か)を決めたいなら、訪問査定の前に不動産の買取と仲介の違い:査定から売り方を選ぶ判断材料と流れで比べる点を確かめておくと、頼む査定の種類を決めやすくなります。
売る方向が固まってから、複数の会社の机上査定をまとめて受けて、気に入った会社にだけ訪問を頼む使い方もあります。申し込むと連絡が複数の会社から来ることがある点を踏まえ、頼む会社と連絡方法を自分で選べるサービスかどうかを、申し込む前に確かめてください。
よくある質問
Q. 机上査定だけで売り出し価格を決めてもよいですか?
机上査定は室内や周辺環境を見ていないので、売り出し価格を決める前に、頼もうとする会社の訪問査定を受けておくのが基本です。机上査定の額は、現地を見て上下する前の目安と考えます。訪問を受けたうえで、価格が机上査定と大きく変わったときは理由を聞きます。
Q. 訪問査定を頼むと、その会社と媒介契約を結ぶ義務が生じますか?
生じません。査定を受けることと、売却を頼む媒介契約を結ぶことは別です。媒介契約は書面で交わすもので、査定の場で署名を求められても、その場で結ぶ必要はありません。持ち帰って、ほかの会社の査定と比べてから決めます。
Q. 室内が散らかっていても訪問査定を受けられますか?
受けられます。査定のために大がかりな片付けは要りません。ただし、水まわり、押入れ、天井や壁のしみなど、担当者が確認したい場所に近づけるようにしておくと、傷みの見立てが正確になります。荷物が大量に残る実家の場合は、そのことを先に伝えます。
出典・参考にした公的な情報
- 宅地建物取引業法 第34条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業法施行規則 第15条の7・第15条の8(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不動産情報ライブラリ(国土交通省)
- 不動産鑑定評価基準(総論 第7章)(国土交通省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。