相続税と申告 / 制度解説

二次相続とは?2回目の相続で税金が増える理由と考え方の順番

この記事のもくじ
  1. 二次相続とは:一次相続と何が違うか
  2. 二次相続で税金が増える3つの理由
  3. 筆者の計算例:配偶者の取り分で合計の税額はどう変わるか
  4. 二次相続を考えるときの順番
  5. 税理士に試算を頼むとき

二次相続とは、父母のどちらかが亡くなった相続(一次相続)の後に、残った親が亡くなって起きる2回目の相続のことです。二次相続で相続税が増えやすい理由は3つあります。①相続人に配偶者がいないので「配偶者の税額軽減」が使えない、②相続人が1人減るので基礎控除額が600万円減る、③一次相続で配偶者が多く取得した財産が、配偶者自身の財産に上乗せされて課税される、の3つです。このため、一次相続で配偶者が多く取得するほど一次の税は減り、二次の税は増えます。この記事では、一次相続と二次相続の違い、税金が増える仕組み、筆者の計算例、考える順番を示します。

二次相続とは:一次相続と何が違うか

夫婦と子2人の家族で、先に父、後に母が亡くなる場合で比べます。

比較表:一次相続と二次相続の違い(父→母の順に亡くなる例)
項目 一次相続(父が亡くなる) 二次相続(母が亡くなる)
相続人 母と子2人(3人) 子2人(2人)
基礎控除額 3,000万円+600万円×3人=4,800万円 3,000万円+600万円×2人=4,200万円
配偶者の税額軽減 使える(1億6,000万円か法定相続分相当額の多いほうまで非課税) 使えない(配偶者がいない)
法定相続分 母1/2、子1/4ずつ 子1/2ずつ
自宅の小規模宅地等の特例 母が取得すれば要件なしで使える 同居していた子か、要件を満たす「家なき子」などに限られる
課税される財産 父の財産 母自身の財産+一次で母が取得した財産(使った分を除く)

相続税の総額は、課税される遺産を法定相続分で分けたと仮定して、それぞれに税率を掛けて合計します。二次相続では相続人が少なく、1人あたりの金額が大きくなるため、高い税率の区分に入りやすくなります。

二次相続で税金が増える3つの理由

1. 配偶者の税額軽減が使えない

一次相続では、配偶者が取得した正味の遺産額のうち、1億6,000万円か法定相続分相当額のどちらか多い額まで、配偶者に相続税がかかりません(相続税法19条の2)。この仕組みは配偶者がいる相続でしか使えません。二次相続は子だけが相続人になることが多いので、全額に税がかかります。一次相続の配偶者の税額軽減の要件と手続きは相続税の配偶者控除:1億6,000万円の軽減と二次相続での注意で扱います。

2. 基礎控除額と法定相続分の分け方が変わる

相続人が1人減ると、基礎控除額が600万円減ります。さらに、課税遺産を分ける人数も減るので、1人あたりの額が大きくなり、税率の区分が上がりやすくなります。

3. 財産が配偶者に集まった後に課税される

一次相続で配偶者が多く取得すると、その財産は配偶者自身の預金や持ち家と合わさって、二次相続の遺産になります。一次相続で税がかからなかった財産も、二次相続ではまとめて課税の対象になります。

筆者の計算例:配偶者の取り分で合計の税額はどう変わるか

前提:父の遺産2億円(課税価格)、母自身の財産3,000万円、子2人。一次相続で母が取得する割合だけを変え、二次相続は一次相続から10年を超えた後に起き、その間に財産は増えも減りもしないとします。特例(小規模宅地等など)と相次相続控除は入れていません。税率は相続税法16条の速算表、単位は万円、筆者の計算です。

母の取り分 一次相続の税(子が納める分+母が納める分) 二次相続の遺産 二次相続の税 合計
0 2,700 3,000 0 2,700
1/4(5,000万円) 2,025 8,000 470 2,495
1/2(1億円・法定相続分) 1,350 13,000 1,360 2,710
3/4(1億5,000万円) 675 18,000 2,740 3,415
全部(2億円) 540(母が納める) 23,000 4,240 4,780

検算:一次相続の総額は、2億円−基礎控除4,800万円=1億5,200万円を法定相続分で分け、母7,600万円×30%−700万円=1,580万円、子3,800万円×20%−200万円=560万円が2人分で、合計2,700万円です。子が取得する割合に応じて子が納め、母の分は軽減で0円です。母が全部を取得すると1億6,000万円を超える4,000万円分に軽減が及ばず、2,700万円×4,000万円÷2億円=540万円を母が納めます。二次相続は、たとえば遺産1億3,000万円なら、基礎控除4,200万円を引いた8,800万円を2人で分け、4,400万円×20%−200万円=680万円が2人分で1,360万円です。

この例では、母が全部を取得すると合計4,780万円で、取り分0のときより約2,080万円、1/4のときより約2,285万円多くなります。一方で、取り分0や1/4は母の手元に残る財産が少ない分け方です。母の生活費、介護や住まいの費用、二次相続までの年数で母の財産が減ることを考えると、表の数字だけでは決められません。子の人数や遺産額を変えた目安は、次の二次相続の早見表:子1人〜3人の相続税額の目安と一次相続との合計にまとめています。

二次相続を考えるときの順番

二次相続を見据えた分け方は、次の順番で考えると、税額だけに引っ張られずに済みます。

  1. 配偶者の今後の生活に必要な額を見積もる:年金収入、生活費、医療・介護の費用、住まいを並べ、配偶者が手元に置くべき預金と住まいを先に決めます。住み続ける権利だけを確保する方法として配偶者居住権とは?自宅に住み続けたい配偶者が使う条件もあります。
  2. 配偶者自身の財産を把握する:二次相続の遺産は「配偶者自身の財産+一次で取得した財産」です。配偶者名義の預金や持ち家を一覧にします。
  3. 一次と二次の合計の税額を、いくつかの分け方で比べる:上の表のように、取り分を変えた場合の合計を並べます。
  4. 自宅の土地の扱いを決める:小規模宅地等の特例は、一次相続で配偶者が取得すれば要件なしで使えますが、二次相続では同居していた子や、持ち家のない子など要件を満たす人に限られます。特例の要件は小規模宅地等の特例をわかりやすく:自宅の土地の評価が80%減る要件で確かめます。
  5. 期限と申告を確かめる:一次相続で配偶者の税額軽減を使うには、申告期限までに遺産を分割して申告することが原則です。分割がまとまらない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を出しておけば、3年以内の分割で軽減を受けられます。

二次相続が一次相続から10年以内に起きた場合は、一次相続で配偶者が納めた相続税の一部を差し引ける相次相続控除があります。詳しくは10年以内に二次相続が起きたら:相次相続控除の計算と要件で扱います。

税理士に試算を頼むとき

上の計算例は、評価や特例を入れていない単純な形です。実際には、土地の評価、小規模宅地等の特例を一次と二次のどちらで使うか、生命保険金の非課税枠、配偶者の財産の減り方で結果が変わります。どの分け方にするかの個別の判断と税額の計算は、税理士の業務です(税理士法2条)。相談するときは、次の資料をそろえると試算が早く進みます。

  • 一次相続の財産と債務の一覧(評価の根拠つき)
  • 配偶者自身の財産の一覧と、年金などの収入
  • 自宅に誰が住んでいるか、子の持ち家の有無
  • 配偶者の今後の生活費の見込み

「一次と二次の合計で何通りか試算してもらえるか」「その分の費用は報酬に含まれるか」を見積もりの段階で確かめます。

申告後に誤りに気づいたときの直し方は、前の相続税の申告の誤りに気づいたら:修正申告と更正の請求の違いで扱っています。

「二次相続」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。

よくある質問

Q. 配偶者が遺産を全部相続すれば、一次相続の相続税は0円になりますか?

配偶者の税額軽減で税がかからないのは、配偶者が取得した正味の遺産額のうち、1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い額までです。それを超えて取得した分には税がかかります。軽減は申告して初めて受けられるので、税額が0円になる場合でも申告書の提出が必要です。

Q. 一次相続から10年以内に二次相続が起きたら、何か軽くなりますか?

二次相続で亡くなった人が、10年以内の一次相続で財産を取得して相続税を納めていた場合、二次相続の相続人は「相次相続控除」で、一次相続で納めた相続税の一部を差し引けます。経過した年数が短いほど控除は大きくなります。計算の仕方は相次相続控除の記事で扱います。

Q. 二次相続のことを考えて、一次相続では子どもが多めに取るべきですか?

税額だけで決めると、配偶者の生活費や住まいが足りなくなるおそれがあります。この記事の計算例でも、合計の税額が少ない分け方は、配偶者の手元に残る財産が少ない分け方です。配偶者の今後の生活に必要な額を先に見積もり、そのうえで税額を比べる順番にします。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

二次相続の早見表:子1人〜3人の相続税額の目安と一次相続との合計

相続税の配偶者控除:1億6,000万円の軽減と二次相続での注意

10年以内に二次相続が起きたら:相次相続控除の計算と要件

小規模宅地等の特例をわかりやすく:自宅の土地の評価が80%減る要件