10年以内に二次相続が起きたら:相次相続控除の計算と要件
この記事のもくじ
前回の相続から10年以内に二次相続が起きた場合、今回の相続人は「相次相続控除」で、前回納めた相続税の一部を今回の相続税から差し引けます(相続税法20条)。差し引ける額は、前回の税額を1年につき10%ずつ減らした額が基本で、今回の財産の額や各人の取り分で調整します。前回の相続税が0円だった場合(配偶者の税額の軽減で0円になった場合を含む)は使えない点が、最初の分かれ道です。
相次相続控除が使える3つの要件(二次相続が10年以内のとき)
国税庁 No.4168 は、次の3つすべてに当てはまる人を対象にしています。
- 今回亡くなった人(被相続人)の相続人であること
- 今回の相続開始前10年以内に開始した前回の相続で、今回の被相続人が財産を取得していること
- 前回の相続で取得した財産について、今回の被相続人に相続税が課税されたこと
ここで言う「前回の相続」は条文では第一次相続、「今回の相続」は第二次相続と呼ばれます。前回取得した財産には、前回の被相続人から相続時精算課税で贈与を受けた財産も含まれます(相続税法20条)。
要件ごとに、つまずきやすい点を表にしました。
| 要件 | 当てはまる例 | 当てはまらない例 |
|---|---|---|
| 相続人であること | 子・配偶者などの相続人が相続で取得 | 相続を放棄した人、相続権を失った人(遺贈で受け取っても対象外)、相続人でない孫への遺贈 |
| 10年以内 | 祖父の死亡から4年後に父が死亡 | 2つの相続の開始が10年を超えて離れている |
| 前回に相続税が課税 | 前回、父が相続税を納めていた | 前回は基礎控除以下で申告不要だった、配偶者の税額の軽減で0円だった |
よくある「父→母→子」の順番では使えないことが多い理由
夫婦の一方が亡くなり、残った配偶者が10年以内に亡くなる流れは、二次相続の典型です。このとき一次相続で配偶者が受けた財産は、配偶者の税額の軽減により、1億6千万円か配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い額までは相続税がかかりません(国税庁 No.4158)。
軽減で母の納める税額が0円になっていれば、要件3の「相続税が課税された」に当たらず、子の相次相続控除はありません。逆に、母が1億6千万円や法定相続分を超えて取得して相続税を納めていた場合は、要件を満たす可能性があります。
祖父から父、父から子へと世代をまたいで続けて相続が起きた場合は、配偶者の軽減が関わらないため、前回に父が相続税を納めていれば対象になりやすい流れです。どちらの順番だったかで、まず前回の申告書の「納付すべき税額」を確かめるのが出発点です。
二次相続の税額そのものの目安は二次相続の早見表:子1人〜3人の相続税額の目安と一次相続との合計にまとめています。
相次相続控除の計算式(国税庁のA〜E)
国税庁 No.4168 は、各相続人の控除額を次の式で示しています。
控除額 = A × C ÷(B − A)× D ÷ C ×(10 − E)÷ 10 ※ C ÷(B − A)が1を超えるときは1とする
| 記号 | 意味(国税庁の定義の要旨) |
|---|---|
| A | 今回の被相続人が前回の相続で課された相続税額(延滞税・利子税・加算税は含まない) |
| B | 今回の被相続人が前回の相続で取得した純資産価額(取得財産+精算課税の適用財産−債務・葬式費用) |
| C | 今回の相続・遺贈・精算課税の贈与で財産を取得した全員の純資産価額の合計 |
| D | 控除を受けるその相続人の今回の純資産価額 |
| E | 前回の相続から今回の相続までの期間(1年未満は切り捨て) |
式を言葉にすると、①前回の税額Aのうち、今回まで残っている財産の割合(C÷(B−A)、上限1)に当たる部分を出し、②それを各相続人の取り分(D÷C)で分け、③経過年数に応じて1年10%ずつ減らす、という3段階です。
経過年数Eと最後に掛ける割合は、次のとおりです(筆者の計算)。
| 前回からの期間 | E | 掛ける割合 |
|---|---|---|
| 1年未満 | 0 | 10/10 |
| 1年以上2年未満 | 1 | 9/10 |
| 3年以上4年未満 | 3 | 7/10 |
| 4年以上5年未満 | 4 | 6/10 |
| 6年以上7年未満 | 6 | 4/10 |
| 9年以上10年未満 | 9 | 1/10 |
条文(相続税法20条3号)は「10年から期間の年数を引いた年数、1年未満の端数は1年とする」と書いています。たとえば期間が4年8か月なら、10年−4年8か月=5年4か月で、端数を1年として6年、つまり6/10です。国税庁の書き方(Eを切り捨てて10−4=6)と同じ結果になります。
筆者の計算例:祖父→父→子で4年8か月後に二次相続
次の数字は、式の動きを見るための仮の数字です(筆者の計算。小規模宅地等の特例などは考えません)。
- 前回:祖父が亡くなり、父が財産を相続。父の純資産価額B=1億円、父が納めた相続税A=1,000万円
- 今回:4年8か月後に父が亡くなり、子2人が6,000万円ずつ相続。全員の合計C=1億2,000万円、各人のD=6,000万円
| 段階 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 残っている割合 | C ÷(B − A)= 1億2,000万 ÷ 9,000万 ≒ 1.33 → 上限1 | 1 |
| ② 前回の税額のうち対象 | 1,000万円 × 1 | 1,000万円 |
| ③ 各人の取り分 | D ÷ C = 6,000万 ÷ 1億2,000万 | 1/2 → 500万円 |
| ④ 経過年数 | E=4 →(10 − 4)÷ 10 | 6/10 → 1人300万円 |
子2人の控除は合計600万円です(検算:1,000万円 × 1 × 6/10 = 600万円)。
父の財産が前回より減っていた場合も見ておきます。今回の合計Cが6,000万円(子2人が3,000万円ずつ)なら、①は6,000万 ÷ 9,000万=2/3です。1,000万円 × 2/3 × 1/2 × 6/10 = 1人200万円、合計400万円になります(検算:1,000万円 × 2/3 × 6/10 = 400万円)。前回受け取った財産を使って減らしていると、そのぶん控除も小さくなる、というのが①の意味です。
控除の順番と、申告前にそろえるもの
相続税法20条は、2割加算・贈与税額控除・配偶者の税額の軽減・未成年者控除・障害者控除(15条から19条の4まで)を当てはめた後の金額から、相次相続控除を差し引くと定めています。相続税の計算全体の流れは相続税の計算方法:課税価格から納める税額までの5ステップ、ほかの控除の一覧は相続税の控除一覧:配偶者・未成年者・障害者・相次相続の早見表で確かめられます。
計算に使うA・Bは前回の申告の数字なので、次のものを先に集めます。
- 前回の相続税の申告書の控え(今回の被相続人の取得財産の額・債務と葬式費用・納付すべき税額が分かる部分)
- 前回と今回の被相続人の死亡日が分かる戸籍(期間Eの計算)
- 前回、相続時精算課税の贈与を受けていた場合はその申告書の控え
- 前回の申告で延滞税・加算税を払っていた場合はその額(Aに含めない)
前回の申告を税理士に頼んでいた場合は、その事務所に控えが残っていることがあります。今回の遺産分割がまとまらず申告期限に間に合わないときの進め方は、遺産分割がまとまらない時の相続税の申告:遺産分割未了での手順で手順にしています。
控除の要件や式は国税庁の公開情報で確かめられますが、自分の家族の数字を当てはめて税額を出し、申告書を作るのは税理士の仕事です(税理士法52条は、税理士でない者が他人の求めに応じて税務相談・税務書類の作成をすることを禁じています)。一般的な質問なら国税庁の電話相談センターでも聞けます。使い分けは相続手続きの専門家の違い:弁護士・司法書士・税理士・行政書士の頼み分けと相続税の相談は税務署でできる?電話相談センターと面接相談の使い方にまとめています。
「二次相続 10年以内」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。
よくある質問
Q. 一次相続で母の相続税が配偶者の税額の軽減で0円だった場合も、相次相続控除は使えますか?
使えません。相次相続控除は、今回亡くなった人が前回の相続で取得した財産に「相続税が課税されたこと」が要件です。配偶者の税額の軽減などで納める税額が0円だった場合は、差し引く元になる税額がないため控除はありません。
Q. 相続を放棄した子が遺贈で財産を受け取った場合、相次相続控除はありますか?
ありません。国税庁の案内では、相続を放棄した人と相続権を失った人は、遺贈で財産を取得しても相次相続控除の対象外です。相続人でない孫などが遺贈で受け取った場合も、要件の「相続人であること」に当たりません。
Q. 前回の相続から10年を少しでも過ぎていたらどうなりますか?
相続税法20条は「第二次相続の開始前十年以内に開始した相続」を対象にしているため、10年を超えると控除はありません。期間は2つの相続の開始の日(亡くなった日)どうしで数えます。
出典・参考にした公的な情報
- No.4168 相次相続控除(国税庁)
- 相続税法 第20条(相次相続控除)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.4158 配偶者の税額の軽減(国税庁)
- No.4152 相続税の計算(国税庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。