不動産売却の流れ / 制度解説

任意売却とは?競売との違い・流れ・相談する前に知ること

この記事のもくじ
  1. 任意売却とは:借入先の同意を得て、普通の売買で売る方法
  2. 任意売却の前に:返済の相談先と、家を残す選択肢
  3. 任意売却と競売の違い
  4. 任意売却の流れ:住宅金融支援機構の手続きの例
  5. 業者に頼む前に知っておくこと

任意売却とは、住宅ローンを返せなくなったときに、お金を貸した側(借入先・保証会社など)の同意を得て抵当権を外してもらい、裁判所の競売ではなく普通の売買で家を売る方法です。決めるのは借入先で、業者だけでは進められません。 返済がまだ続けられる段階なら、任意売却を勧められても、先に借入先へ返済条件の相談をします。この記事では、相談の順番、競売との違い、手続きの流れ、業者に頼む前に知っておくことを順に示します。

任意売却とは:借入先の同意を得て、普通の売買で売る方法

住宅ローンを借りると、家と土地には借入先の抵当権が登記されます。ふつうの売却では、売った代金でローンを全部返し、抵当権を消してから買主に引き渡します。売れる値段がローン残高に届かないと、この「全部返して抵当権を消す」ができません。そこで、借入先が「残高に届かなくても、この価格で売るなら抵当権を外す」と同意して売るのが任意売却です。

住宅金融支援機構(フラット35などの貸し手)は、任意売却を「返済の継続が困難になった場合に、融資住宅を売却して残債務を圧縮する方法」と説明しています。同時に、裁判所の手続きによる強制的な処分ではないため、本人・仲介業者・機構の協力が欠かせないとしています。民間銀行のローンでも、抵当権を外すかどうかを決めるのは抵当権者なので、同意が要る点は同じです。ただし手順や書式は借入先ごとに違うため、自分のローンの窓口で確かめます。

任意売却が話に出るのは、たいてい次のような場面です。

  • 返済の滞りが続き、借入先や保証会社から一括返済を求める通知が届いた
  • 売っても残高に届かない状態(オーバーローン)で、離婚や収入の減少で家を手放したい
  • 競売の開始決定の通知が裁判所から届いた

売ればローンを返しきれる家なら、任意売却ではなく普通の売却になります。残高の確かめ方は住宅ローンが残っている家を売るときの残債の確かめ方、足りない分が出るときの考え方はオーバーローンのマンション売却:足りない分の払い方と住み替えローンで整理しています。

任意売却の前に:返済の相談先と、家を残す選択肢

返済が苦しくなった最初の相談先は、借入先そのものです。返済期間の延長や一時的な減額など、条件の変更に応じてもらえるかは借入先の判断ですが、滞納が長くなるほど選べる道は狭くなります。「来月から払えない」と分かった時点で連絡するのが、いちばん選択肢が残る順番です。

気をつけたいのは、住宅金融支援機構の手続きでは、任意売却の申出書を出すことが「返済継続を断念し、月々の返済を行う権利を放棄した」意思表示として扱われる点です。分割返済中なら残高全額の返済を求められ、一部のフラット35では団体信用生命保険の保障も終わります。申出書は、家を手放すと決めてから出す書類だと考えてください。

家を残したい場合の選択肢として、裁判所の個人再生には、住宅ローンを払い続けながら他の借金を減らす「住宅資金特別条項」があります(民事再生法196条・198条)。使えるかどうかには、住宅にほかの担保がついていないことなどの条件があり、手続きは弁護士か司法書士に相談して決めます。借金全体の整理が要るか、家を売るのが先かを比べる段階では、次の順に相談先を使い分けます。

  1. 借入先(返済条件の変更、任意売却に応じるかどうか)
  2. 法テラスや弁護士会・司法書士会の相談(債務整理・個人再生・破産を含めた全体の判断)
  3. 不動産会社(家がいくらで売れそうかの査定)

窓口の番号と受付時間は相続・不動産売却の無料相談窓口一覧にまとめています。どの資格の人に何を頼めるかは専門家の違いと頼み分けで確かめられます。

任意売却と競売の違い

返済が止まったままにしておくと、借入先は抵当権に基づいて裁判所に競売(担保不動産競売)を申し立てます。裁判所の説明では、申立てを受けると開始決定と差押えの登記がされ、執行官と評価人の調査をもとに資料が作られ、売却基準価額が決まります。入札は売却基準価額から10分の2を引いた額(買受可能価額)以上で行われ、落札者が代金を納めると所有権が移ります。

比較表:任意売却と競売の違い
項目 任意売却 競売(担保不動産競売)
手続き 借入先の同意を得た普通の売買 借入先の申立てによる裁判所の手続き
値段の決まり方 借入先が確認した売出価格をもとに、買主と合意 入札。買受可能価額は売却基準価額の10分の8
物件の情報 不動産会社が通常の販売として広告 裁判所の資料がBITなどで公開される
引渡しの時期 買主・借入先と調整しやすい(機構の説明) 落札者が代金を納めると所有権が移る。応じなければ引渡命令の対象
売主の手間 内見への協力、書類の提出、片付け 調査への対応。売り方は選べない
売った後の借金 足りない分は残る(返済額は協議) 足りない分は残る

住宅金融支援機構は、任意売却を勧める理由として、普通の取引なので一般的に競売より高く売れることが期待でき負債が減ること、条件を満たせば売却代金から仲介手数料や抹消登記費用などを差し引いて渡せる場合があること、引渡しの時期を調整しやすく退去後の生活設計を立てやすいことを挙げています。競売では、落札者が代金を納めた後も住み続けると、落札者の申立てにより裁判所が引渡しを命じることがあります(民事執行法83条)。

任意売却の流れ:住宅金融支援機構の手続きの例

民間銀行でも大筋は似ていますが、ここでは手順が公開されている住宅金融支援機構の例を示します。

  1. 「任意売却に関する申出書」を出す。仲介業者は原則として本人が選ぶ
  2. 仲介業者が物件を調べ、価格査定書を出す
  3. 機構(または委託先の債権回収会社)が査定を確かめ、売出価格を通知する。申出から債権回収会社への委託までは通常3か月程度かかる
  4. 本人と仲介業者が専任媒介契約か専属専任媒介契約を結ぶ
  5. 仲介業者が販売し、販売活動状況報告書を出す
  6. 購入希望者が現れたら、機構が抵当権を外せるかを審査する(通知まで2週間程度)
  7. 承諾を受けて売買契約を結ぶ
  8. 代金の決済と、抵当権を消す書類の受け渡し

通知された価格より下で買主を見つけても、抵当権の抹消に応じてもらえないことがあります。初めの媒介契約から6か月たっても購入希望者が現れない場合などは、任意売却をやめて競売に進むことがあるとも書かれています。後ろの順位の抵当権者や、税金の滞納による差押えがある場合は、その人たちの同意も要ります。媒介契約の種類の違いは媒介契約の種類と選び方で確かめられます。

業者に頼む前に知っておくこと

「任意売却専門」とうたう会社から、手紙や電話で連絡が来ることがあります。任意売却も家の売買の仲介なので、頼む先は宅地建物取引業の免許を持つ業者です(宅建業法3条・12条)。住宅金融支援機構の手続きでは仲介業者を本人が選ぶので、連絡してきた会社に決めなければならないわけではありません。

頼む前に、少なくとも次の3点を確かめます。

  • 免許番号を聞き、国土交通省の宅建業者の検索で確かめたか
  • 「引越し代を出します」と言われたら、それが借入先の同意の要る話かどうかを聞いたか(機構のパンフレットが差し引ける費用の例に挙げるのは仲介手数料・抹消登記費用などで、業者だけで決められる話ではない)
  • 「競売は止められる」「残りの借金はなくなる」と言い切られたら、根拠を書面で求めたか

自宅を業者に売る契約には、売主の側からのクーリング・オフはありません。国民生活センターも、自宅を不動産業者に売った場合はクーリング・オフできないと注意を呼びかけています。迷ったら契約書に名前を書く前に、家族か相談窓口に話します。確認点の一覧は任意売却の業者の選び方に、信用情報や残る借金などの不利な点は任意売却のデメリットにまとめています。

よくある質問

Q. 任意売却は、ローンを滞納する前でもできますか?

任意売却は借入先が抵当権を外すことに同意して初めて成り立つ売り方で、同意するかどうかは借入先が決めます。滞納前で返済を続けられる見込みがあるなら、まず返済条件の変更を借入先に相談し、売る場合も普通の売却で残債を払えるかを確かめるのが先です。住宅金融支援機構では、申出書を出すと毎月返済する権利を手放す扱いになる点にも気をつけます。

Q. 競売の手続きが始まってからでも、任意売却に切り替えられますか?

競売の開始決定が出たあとでも、借入先が同意し買主が見つかれば、競売を取り下げてもらって任意売却で終える道は残ります。ただし入札で買受けの申出があったあとは、取下げに最高価買受申出人などの同意が要ります(民事執行法76条・188条)。開始決定の通知が届いたら、日にちのあるうちに借入先と弁護士・司法書士へ相談します。

Q. 任意売却をすれば、残ったローンはなくなりますか?

なくなりません。売却代金で返しきれなかった分は、破産で免責を受けた場合などを除いて返す義務が残ります。住宅金融支援機構は、売却後の返済額を生活状況を踏まえて本人と決めるとしています。残る借金の扱いは任意売却のデメリットの記事で詳しく見ます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

任意売却のデメリット:信用情報・残る借金・売れない場合の競売

任意売却の業者の選び方:悪質業者を見分ける確認点と相談先

住宅ローンが残っている家を売るには:残債の確かめ方と売り方

オーバーローンのマンション売却:足りない分の払い方と住み替えローン