借地権の売却相場の考え方:借地権割合と実際の取引価格の違い
借地権の売却相場に、決まった計算式はありません。よく使われる「路線価×面積×借地権割合」は、相続税を計算するための評価額です。実際に売れる価格は、地主の承諾が得られるか、承諾料がかかるか、買い手がつくかによって決まり、この評価額と一致するとは限りません。この記事では、借地権割合の読み方と計算の例、評価額と取引価格がずれる理由、相場の確かめ方を順に説明します。
借地権の売却相場は「借地権割合の計算」だけでは決まらない
まず押さえておきたいのは、数字の性格の違いです。
| 数字 | 何のための数字か | 誰が決めるか |
|---|---|---|
| 借地権の相続税評価額(自用地の価額×借地権割合) | 相続税・贈与税の計算 | 国税庁の財産評価のルール |
| 不動産会社の査定額 | 売り出し価格を決める参考 | 各社(根拠を示す義務あり) |
| 不動産鑑定士の鑑定評価額 | 価格の判定(裁判・交渉の資料など) | 不動産鑑定士 |
| 実際の取引価格 | 売主と買主が合意した価格 | 当事者(地主との条件も影響) |
相続税評価額は、手早くおおよその目安をつけるのには役立ちます。ただし、売るときには地主の承諾が要り(民法612条)、その条件として承諾料の支払いを求められることがあるので、手元に残る額はさらに変わります。承諾の仕組みは借地権の売却:地主の承諾・承諾料・売れないときの選択肢で説明しています。
借地権割合の読み方と、計算の例
借地権割合は、借地の事情が似た地域ごとに定められ、路線価図や評価倍率表に記号で表示されています。国税庁の「路線価図の説明」によると、記号と割合の対応は次のとおりです。
| 記号 | A | B | C | D | E | F | G |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 借地権割合 | 90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
| (国税庁「路線価図の説明」より。路線価図に「215D」とあれば、1㎡あたりの路線価が215,000円、借地権割合が60%という意味) |
借地権の評価額は、その土地を更地として自分で使っている場合の価額(自用地としての価額)に借地権割合を掛けて求めます(国税庁 No.4611)。地主側の土地(貸宅地、いわゆる底地)は、自用地としての価額から借地権の分を差し引いて評価します(No.4613)。
計算の例(筆者の計算):路線価図の表示が「200D」の道に面した、面積100㎡の土地。奥行などによる補正はないものとします。
- 自用地としての価額:200,000円×100㎡=2,000万円
- 借地権の評価額:2,000万円×60%=1,200万円
- 底地(貸宅地)の評価額:2,000万円−1,200万円=800万円
実際の路線価図では、奥行の長さなどに応じた補正率を掛けます。相続のあった年分の路線価図を使い、補正の仕方は相続する土地の評価額の調べ方:路線価図の読み方と計算の手順で確かめてください。
評価額と実際の取引価格がずれる理由
借地権を第三者に売る場面では、評価額どおりの価格にならない理由がいくつも重なります。
- 承諾料がかかる:地主の承諾の条件として承諾料を払うと、その分手取りが減ります。裁判所が承諾に代わる許可を出す場合も、財産上の給付を条件にできるとされています(借地借家法19条1項)。
- 買い手が限られる:買主は土地を所有できず地代を払い続けることになり、契約によっては建替えや増改築にも地主の承諾が要るため、所有権の土地より買い手が絞られます。
- 契約の条件が価格を左右する:残りの契約期間、地代の水準、建替え・増改築の制限の特約などで、買主から見た価値が変わります。
- 建物の状態:建物が古く取り壊しが必要なら、解体費用が見込まれます。
反対に、地主に売る場合は事情が変わります。地主は借地権を買い戻すことで、底地と合わせて土地を自由に使えるようになるため、第三者に売るより話がまとまりやすいことがあります。また、地主が承諾せず裁判所の手続きになったときに、地主が自ら買い取る申立てをすると、裁判所が「相当の対価」を定めて譲渡を命じることができます(19条3項)。この場合、裁判所は原則として鑑定委員会の意見を聴きます(同条6項)。手続きの流れは借地権の売却トラブル:地主が承諾しない・拒否された後の進め方にまとめています。地主の側から見た売り方は相続した底地の売却が参考になります。
借地権の売却価格を確かめる手順
相場を知る方法は、評価額で目安をつけ、査定で現実の幅を確かめる、の2段階です。
- 評価額で目安をつける:国税庁の財産評価基準書で路線価と借地権割合を調べ、上の式で計算します。
- 契約内容をそろえる:契約書、更新の書類、地代の額、建替えや増改築の特約を手元に用意します。査定する会社はこれを見て価格を出します。
- 複数の会社に査定を頼む:借地の売却を扱った経験があるかを最初に聞きます。仲介(媒介契約)の場合、宅建業者は価額について意見を述べるときに根拠を明らかにしなければなりません(宅建業法34条の2第2項)。
- 承諾料を含めた手取りで比べる:査定額から承諾料、仲介手数料、解体費用などを差し引いた額で比べます。
- 必要なら鑑定評価を検討する:地主との交渉や家族間の分け方で価格の根拠が要るときは、不動産鑑定士に依頼する方法があります。査定と鑑定評価の違いは不動産の査定とは:査定額の決まり方と鑑定評価・売れる値段の違いで説明しています。
査定を頼むときの伝え方の例:「相続した借地上の建物と借地権の売却を考えています。契約書と地代の資料をお送りします。第三者に売る場合と、地主に買い取ってもらう場合のそれぞれについて、承諾料の見込みも含めた価格の考え方を教えてください。」
借地権の買取業者に査定を頼む方法もあります。買取は、仲介より価格が低くなりやすい代わりに、買い手探しを待たずに売れる点が特徴です。査定額は売れる値段そのものではないので、仲介の査定額と並べて比べてください。売主にはクーリング・オフがないので、条件に納得してから契約します(自宅の買取・リースバックの強引な勧誘:断り方と相談先)。
価格の判定そのもの(「あなたの借地権は○万円」という判断)は不動産鑑定士の仕事です。借地の相続そのものの扱いは借地権の相続:地主の承諾は要らない理由と名義変更料の考え方を参照してください。
よくある質問
Q. 路線価図に借地権割合の記号がない地域はどうなりますか?
路線価が定められていない地域では、市区町村ごとの評価倍率表に借地権割合が載っています。国税庁の財産評価基準書のサイトで、相続のあった年分の評価倍率表を開いて確かめてください。いずれも相続税の評価のための数字なので、売るときの価格はこれとは別に、査定で確かめます。
Q. 借地権を地主に売るとき、価格はどうやって決めればよいですか?
地主との話し合いで決まります。借地権割合で計算した額は、話し合いの出発点の一つにはなりますが、地主が応じる額とは限りません。複数の不動産会社に査定を頼み、価格の根拠を説明してもらったうえで、必要なら不動産鑑定士の鑑定評価も検討します。
Q. 借地権の買取業者の提示額が、借地権割合の計算よりかなり低いのはおかしいですか?
買取業者は、買い取った後に地主の承諾を得る手間や、再び売るまでの期間と費用を見込んで価格を出すため、計算上の額より低くなりやすいものです。低いこと自体は不自然ではありませんが、仲介で売った場合の査定額と並べ、差の理由を業者に説明してもらってから決めてください。
出典・参考にした公的な情報
- 路線価図の説明(借地権割合の記号)(国税庁)
- No.4611 借地権の評価(国税庁)
- No.4613 貸宅地の評価(国税庁)
- 借地借家法 第19条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業法 第34条の2・第37条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。