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相続した底地の売却:借地人への売却と買取業者の比べ方

この記事のもくじ
  1. 相続した底地の売却が難しい理由:借地借家法のしくみ
  2. 底地の売却の前に確かめる書類と数字
  3. 借地人に底地の売却を打診する手順と文例
  4. 等価交換:借地人と土地を分け合う方法
  5. 借地人と一緒に第三者へ売る方法と、売ったあとの税金
  6. 底地の買取業者の価格が低い理由と比べ方

相続した底地を手放す方法は、借地人に買ってもらう、借地人と土地を分け合う等価交換、借地人と一緒に第三者へ売る、底地の買取業者に売るの4つが基本です。買う動機がいちばん強いのは、買えば自分の土地になる借地人です。業者買取は早く手放せる代わりに価格が低くなりやすい、という違いがあります。最初に契約書と地代の記録をそろえ、借地人に買う意思があるかを打診するところから始めます。

相続した底地の売却が難しい理由:借地借家法のしくみ

底地とは、建物を建てるために人に貸している土地を、貸している側(地主)から見た呼び名です。借地人は建物を建てて住み、地主は地代を受け取ります。底地を相続すると、地主の立場がそのまま相続人に移ります(民法896条)。

底地が売りにくいのは、借地借家法が借地人を強く守っているからです。

  • 期間が長い。 借地権の存続期間は30年で、契約でこれより長くもできます(3条)。更新後は最初が20年、2回目以降は10年です(4条)。
  • 地主の都合で終わらせにくい。 期間が満了しても、建物があって借地人が更新を求めれば、原則として更新したとみなされます(5条)。地主が異議を述べるには「正当の事由」が要ります(6条)。
  • 建物を買い取る義務が生じうる。 更新されずに終わった場合、借地人は地主に建物を時価で買い取るよう請求できます(13条)。
  • 登記がなくても借地権を主張できる。 借地人が自分名義で登記した建物を持っていれば、土地の買主にも借地権を主張できます(10条)。

1992年8月1日の借地借家法の施行より前に設定された借地権は、契約の更新などについて旧借地法の例によるとされています(附則6条など)。借地は何十年も続くため、相続した底地にこの古い契約が残っていることがあり、その場合は更新の扱いが今の法律と違う点があります。

買主から見ると、底地は「自分では使えず、地代の収入だけが入る土地」です。地代は地主と借地人が合意して決め、税金の増減や近隣の地代との比較で不相当になったときに増減を請求できる仕組みです(11条)。協議がまとまらなければ裁判で決めることになり、地主の都合で自由に上げられないため、投資として見たときの魅力が小さく、買える人が限られます。

底地の売却の前に確かめる書類と数字

売り方を選ぶ前に、次の書類と数字を手元にそろえます。借地人や不動産会社と話すときの土台になります。

  • 土地賃貸借契約書(契約日、期間、地代、更新料・承諾料の取り決め)
  • 地代の受取記録(通帳、領収書の控え)と、滞納の有無
  • 土地と借地人の建物の登記事項証明書(建物の名義、抵当権の有無)
  • 固定資産税の課税明細(地主が払っている税額と、地代との差)
  • 相続税の申告をした場合は、その時の底地の評価額

相続税の計算では、普通の借地権が付いた底地(貸宅地)は「自用地としての価額−自用地としての価額×借地権割合」で評価します(国税庁 No.4613)。たとえば自用地としての価額が3,000万円、借地権割合が60%なら、底地の評価額は3,000万円−1,800万円=1,200万円です(筆者の計算)。ただしこれは相続税のための値で、売れる値段ではありません。評価額の調べ方は相続する土地の評価額の調べ方:路線価図の読み方と計算の手順で扱います。

早見表:契約書で確かめる項目と、売却で何に影響するか
確かめる項目 売却への影響
契約日(1992年8月1日の前か後か) 更新の扱いが旧借地法か借地借家法か
残りの期間と次の更新時期 買主が見込む地代収入の期間
地代の額と固定資産税 手取りの収入が少ないほど価格は下がる
建物の登記名義 借地人が第三者に借地権を主張できるか
更新料・承諾料の取り決め 将来の収入として評価されるか
底地が共有か単独か 共有なら全体の売却に全員の合意が要る

借地人に底地の売却を打診する手順と文例

借地人は、底地を買えば自分の土地になり、建て替えや売却のたびに地主の承諾を得る必要がなくなります。そのため、第三者より買う動機が強い相手です。

  1. 相続人の間で、売ること・取得する人を決める。 遺産分割前の底地は相続人全員の共有なので、売るには全員の合意が要ります。
  2. 価格の根拠を用意する。 不動産会社に査定を頼み、根拠を聞きます。宅建業法34条の2は、業者が価格について意見を言うときに根拠を示すよう定めています。親族間や大きな金額の取引では、不動産鑑定士の鑑定を使う方法もあります。
  3. 借地人に書面で打診する。 いきなり価格を示すより、まず買う意思があるかを尋ねます。
  4. 条件がまとまったら、契約書の作成と決済を専門家に頼む。 売買の仲介は宅建業者、所有権移転の登記は司法書士の仕事です。

文例:「このたび父○○の死去により、お貸ししている土地を私が相続しました。今後の地代のお振込先は別紙のとおりです。あわせて、将来この土地をご購入いただくお考えがあるか、ご意向をお聞かせいただけないでしょうか。ご検討いただける場合は、不動産会社を通じて価格の根拠をお示ししたうえでご相談したいと考えています。」

借地人が高齢で資金を用意しにくい場合や、すでに建物を売ろうとしている場合は、話の進み方が変わります。借地人が建物を第三者に売ろうとして地主が承諾しないとき、借地人は裁判所に承諾に代わる許可を求められ、その手続の中で地主が自分で建物と借地権を買い取る申立てをすることもできます(19条)。交渉がこじれたときは、地主側の代理人として弁護士に相談します。借地人の側から見た流れは借地権の売却:地主の承諾・承諾料・売れないときの選択肢で扱います。

等価交換:借地人と土地を分け合う方法

等価交換は、底地の一部と借地権の一部を交換し、地主と借地人がそれぞれ完全な所有権の土地を持つ方法です。地主は貸していない土地を手に入れて売りやすくなり、借地人は地代の要らない土地になります。

400㎡の土地を、借地権の割合60%で分けた場合の例です(筆者の計算)。

交換前 交換後
借地人 400㎡の借地権 240㎡の所有権(400㎡×60%)
地主 400㎡の底地 160㎡の所有権(400㎡−240㎡)

実際の割合は、相続税の借地権割合ではなく、話し合いと鑑定などで決めます。土地を分けるには測量と分筆の登記(土地家屋調査士)、所有権の移転の登記(司法書士)が要り、建物の位置によっては分けられない土地もあります。

税金では、借地権は土地と同じ種類の資産として扱われ、底地と借地権の交換は「土地と土地の交換」になります(国税庁 No.3505)。固定資産の交換の特例を使えば、譲渡がなかったものとされます。主な要件は、互いに1年以上持っていた固定資産であること、交換後も同じ用途に使うこと、交換する資産の時価の差が高いほうの20%以内であることなどです(No.3502)。特例を受けるには確定申告が必要で、差額を現金で受け取った分は譲渡所得として課税されます。使えるかどうかの判定は税理士か税務署に確かめます。

借地人と一緒に第三者へ売る方法と、売ったあとの税金

地主と借地人が同じ買主に、底地と借地権をいっしょに売る方法です。買主は、借地権が付いていない完全な所有権の土地を手に入れられるので、底地だけを売るより買い手を見つけやすくなります。売却の仲介は宅建業者に頼み、売買代金を地主と借地人でどう分けるかを、売り出す前に書面で決めておきます。分ける割合は、相続税の借地権割合で自動的に決まるものではなく、両者の話し合いと査定の根拠で決めます。どちらかが降りると成立しないため、借地人に「自分も手放したい」意向があるかを打診の段階で確かめます。

底地を売って利益が出たときは、売却代金から取得費と譲渡費用を引いた譲渡所得に、所得税・住民税がかかります。相続税を払った人が使える取得費加算の特例もあります。計算の流れは土地を売却したときの税金:譲渡所得の計算と土地だけの注意点5つ、特例は取得費加算の特例:相続税を払った人が売却益の税金を減らすしくみで扱います。

底地の買取業者の価格が低い理由と比べ方

借地人が買わない、交換もできないときは、底地を専門に扱う買取業者に売る方法があります。業者が自ら買うので、借地人との話し合いや買主探しを任せられ、早く手放せます。一方で価格は低くなりやすく、その理由は次のとおりです。

  • 地代の収入が少なく、固定資産税を引いた手取りはさらに少ない
  • 業者が借地人と交渉して底地を売るか借地権を買うまで、何年かかるか読めない
  • 借地借家法で、更新を拒んだり明渡しを求めたりするのが難しい
  • 借地人が建物の買取請求をしたときの資金を見込んでおく必要がある
売り方 価格の傾向 期間 向いている場面
借地人に売る 買う動機が強く、話がまとまれば価格がつきやすい 話し合い次第 借地人に買う意思と資金がある
等価交換 土地の一部が手元に残る 測量と分筆の登記を待つ 土地が分けられる広さと形
借地人と一緒に第三者へ売る 買主が完全な土地を得られるため、買い手がつきやすい 地主と借地人の全員の合意が要る 借地人も手放したい
買取業者に売る 低くなりやすい 早い 早く手放したい、共有者が多い

買取業者を比べるときは、2〜3社から買取価格と条件を書面でもらい、宅建業者の免許番号を国土交通省の検索システムで確かめます。業者に売る側にはクーリング・オフがありません(自宅の買取・リースバックの強引な勧誘:断り方と相談先)。借地人への通知を誰がいつ行うか、地代の精算の方法、引渡しの日を契約前に確かめます。底地を兄弟で共有している場合の進め方は共有名義の不動産の売却:全員の同意が要る場面と持分だけ売る方法、相続した家と土地の全体の整理は相続した空き家はどうする?売る・貸す・管理・手放すの判断と手順に戻って確かめてください。

よくある質問

Q. 底地を相続したら、借地人に何か手続きをしてもらう必要がありますか?

地主の立場は相続で相続人に移るため、借地人の承諾は要りません(民法896条)。実務では、地主が代わったことと、地代の新しい振込先を書面で知らせます。地代の受け取りが途切れないよう、遺産分割で誰が底地を取得するかが決まるまでの受取口座と、受け取った地代の分け方も相続人どうしで決めておきます。

Q. 兄弟で共有している底地を、自分の持分だけ売れますか?

自分の持分だけなら単独で売ることができますが、底地の一部の持分を買う人はさらに限られ、価格は大きく下がりやすくなります。底地全体を借地人や業者に売るには共有者全員の合意が要ります。まずは共有者どうしで、全体を売るか、誰か一人がまとめて取得するかを話し合います。

Q. 相続税の評価額で借地人に売れば、税務上の問題はありませんか?

相続税の評価額は相続税を計算するための値で、売買の値段を決めるものではありません。親族でない借地人との売買でも、価格の根拠は不動産会社の査定や不動産鑑定士の鑑定で確かめます。売った後の譲渡所得の申告や、時価と大きく離れた価格での売買の扱いは、税務署か税理士に確かめます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

借地権の売却:地主の承諾・承諾料・売れないときの選択肢

借地権の相続:地主の承諾は要らない理由と名義変更料の考え方

共有名義の不動産の売却:全員の同意が要る場面と持分だけ売る方法

相続する土地の評価額の調べ方:路線価図の読み方と計算の手順