相続税の申告を自分でする方法:できるケースとe-Taxソフト・書面の手順
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相続税の申告は、税理士に頼まず相続人が自分で行うこともできます。財産が預貯金や上場株式が中心で、土地は自宅1か所だけ、相続人どうしで分け方が決まっている、という家なら自分で進めやすい部類です。反対に、土地が何か所もある、貸している不動産や同族会社の株がある、小規模宅地等の特例の要件判定に迷う、という場合は難しさが一気に上がります。この記事では、その見分け方と、財産の評価から提出までの手順、申告書をe-Taxソフトと書面のどちらで作るかを順番に示します。
相続税の申告を自分でできるか:しやすいケースと難しいケース
申告書は第1表から第15表まであり、全部を使うわけではありませんが、財産の種類が増えるほど使う表と評価の手間が増えます。まず自分の家がどちらに近いかを確かめます。
| 判断の材料 | 自分でしやすい | 自分では難しい |
|---|---|---|
| 財産の中心 | 預貯金・上場株式(残高や終値で金額が決まる) | 土地が複数、貸家・貸地、農地・山林、非上場株式 |
| 土地の評価 | 自宅1か所で、形が整った宅地 | 不整形地・角地・私道・借地権など補正や割合を使う土地 |
| 特例 | 配偶者の税額の軽減だけ | 小規模宅地等の特例(同居・家なき子・老人ホームの要件判定) |
| 生前の贈与 | 加算の対象になる贈与がない | 暦年贈与・相続時精算課税・家族名義の預金がある |
| 遺産分割 | 申告期限までにまとまっている | まとまらず未分割で申告する |
| 相続人 | 少人数で連絡がとれる | 10人以上で出す、海外に住む人がいる |
「難しい」側に1つでも当てはまるときは、自分で書いた申告書を税理士に見てもらう、という頼み方もあります。他人の求めに応じて申告書を作ったり、個別の税額を相談に乗ったりする仕事は、税理士法52条で税理士(と税理士法人)に限られています。税務署は手続きと法令の取扱いを案内しますが、あなたの家の税額を代わりに計算してくれる場所ではありません。
自分で申告する7つの手順
国税庁の「相続税の申告の準備」とパンフレットの流れに沿って、やることを並べます。期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。パンフレットの例では、2026年6月9日に亡くなった場合の期限は2027年4月9日です。
- 相続人を確定する:亡くなった人の出生から死亡までの戸籍と、相続人の戸籍を集めます。法定相続人の数は基礎控除の計算にも使います。
- 財産と債務の一覧を作る:預貯金、株式、不動産、生命保険金、退職金、借入金、未払いの税金、葬式費用を書き出します。家族名義の預金でも、亡くなった人がお金を出していたものは申告に含めると国税庁は案内しています。
- 財産を評価する:預貯金は相続開始日の残高、上場株式は死亡日の終値とその月・前月・前々月の月平均のうち最も低い額、土地は路線価方式か倍率方式、家屋は固定資産税評価額です。
- 申告が要るかを判定する:課税価格の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかを見ます。特例を使って基礎控除以下になる場合も、申告は必要です。
- 遺産の分け方を決める:遺言書か遺産分割協議書で、誰が何を取得するかを確定させます。配偶者の税額の軽減と小規模宅地等の特例は、原則として申告期限までに分割が済んでいることが条件です。
- 税額を計算して申告書を作る:課税価格から基礎控除を引き、法定相続分で分けたと仮定して税率を掛け、総額を実際の取得割合で配り直します。
- 提出して納める:亡くなった人の死亡時の住所地を所轄する税務署に出し、同じ期限までに納付します。
申告書は、国税庁が示す記載の順序に沿って書くと迷いにくくなります。土地の評価明細書などを最初に作り、次に財産と債務の表(第9表の生命保険金、第11表の財産の明細、第13表の債務と葬式費用、第15表など)を埋めます。そのうえで第1表(課税価格と税額)と第2表(相続税の総額)を作り、最後に配偶者の税額軽減(第5表)などの税額控除の表から第1表へ転記します。具体的な記入例は「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」の36ページ以降に載っています。各段階の期限の全体像は相続税の申告の流れと10か月のスケジュールで確かめてください。
申告書の作り方:e-Taxソフトか書面か
国税庁の申告手続の案内は、パソコンでe-Taxソフトを使って申告書を作り、提出する方法を示しています。所得税の確定申告で使う「確定申告書等作成コーナー」のような画面で相続税の申告書を作る仕組みは、案内に載っていません。混同しやすいので、2つの道具の役割を分けて押さえます。
| 道具 | できること | できないこと |
|---|---|---|
| 相続税の申告要否判定コーナー | 財産額を入れて申告が要るかの目安を見る、税務署からの「お尋ね」の回答を作る、配偶者の軽減と自宅の小規模宅地等を入れた税額の試算 | 相続税の申告書そのものを作る |
| e-Taxソフト | 申告書と明細書を作り、電子で送信する。添付書類はPDFで送れる | 財産取得者が電子証明書を持たない場合の送信(税理士の代理送信を除く) |
| 書面(手書き・印刷) | 様式一覧から亡くなった年分の様式を印刷して記入し、持参か郵送で出す | なし(ただし控えは自分で作る) |
国税庁がe-Taxで出せない場合として挙げているのは、10人以上の財産取得者の申告を1度に送る場合と、財産取得者が電子証明書を持っていない場合(税理士などの代理送信を除く)の2つで、どちらも書面で出します。e-Taxなら、マイナンバーの本人確認書類の提示や写しの提出は要りません。
書面で出す場合は、次の2点が以前と変わっています。
- 令和8年分用から様式が変わった:2026年に亡くなった人の申告では、変更前の様式は使わないよう国税庁が求めています。
- 窓口の受付時間が短くなった:2026年10月1日から、税務署の総合窓口の受付は原則として9時から15時までです。期限の日に持参するなら時間に注意し、郵送や時間外収受箱も使えます。
自分で申告するときに漏れやすい点
自分で作った申告書で直しが必要になりやすいのは、計算より「載せ忘れ」と「要件の書き漏れ」です。提出前に次を確かめます。
- 家族名義の預金・株式のうち、亡くなった人が資金を出したものを財産に入れたか
- 相続開始前3年以内に亡くなった人から受けた暦年課税の贈与を加算したか(2026年中の相続の場合)
- 生命保険金と死亡退職金は、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)を引いた額で載せたか
- 葬式費用に香典返しや法要の費用を入れていないか
- 特例を使って税額がゼロになる場合も、申告書を出す段取りにしているか
- 遺産分割協議書の写しと印鑑証明書など、特例ごとの添付書類をそろえたか
添付書類は使う特例によって増えます。一覧と取得先は次の相続税の申告の必要書類一覧にまとめました。申告書を出した後に誤りに気づいたときは、少なく申告していれば修正申告、多く申告していれば一定の期間内に更正の請求で直せます。
税務署の相談と税理士への依頼を使い分ける
自分で進める場合も、迷った点を1つずつ確かめる先があると安心です。税務署では、事前に電話で予約すれば面接で個別の相談ができ、電話相談センターでも一般的な取扱いを聞けます。予約の取り方と聞けることは相続税の相談は税務署でできる?で整理しています。
一方で、土地の評価や小規模宅地等の特例の要件判定、相続人の誰が何を取得すると税額がどう変わるかといった個別の判断は、税理士の仕事です。申告が要るかどうかを先に相続税の基礎控除で一次判定する方法で確かめ、基礎控除を超えそうで「難しい」側の要素があるなら、依頼を検討する価値があります。税理士が要る家かどうかの見分け方は相続で税理士は必要かで確かめられます。
税理士を探す選択肢として、相続税を扱う税理士を紹介するサービスがあります。使うときは、紹介される人が税理士として登録されているか(日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで調べられます)と、報酬の内訳を見積書で確かめてください。報酬の決まり方は相続税の税理士費用と見積もりで確かめる項目で整理しています。
「相続税 申告 自分で」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。
よくある質問
Q. 相続人のうち1人だけが自分で申告してもいいですか?
できます。国税庁の「相続税の申告のしかた」は、財産を取得した人が共同で1通の申告書を作って出せるとしたうえで、連絡がとれないなどの事情があれば別々に出してもよいと案内しています。ただし別々に出すと財産の評価額が人によって食い違うことがあるので、評価の前提だけは相続人どうしでそろえておくと後の手直しが減ります。
Q. e-Taxで出すには、相続人全員のマイナンバーカードが要りますか?
自分たちで送信する場合は、申告する財産取得者それぞれに電子証明書が必要です。国税庁は、財産取得者が電子証明書を持っていない場合(税理士などの代理送信を除く)はe-Taxを使えず、書面で出すよう案内しています。カードを持たない相続人がいるなら、書面での提出を前提に準備すると無理がありません。
Q. 申告書の用紙はどこで手に入りますか?
国税庁のホームページの「相続税の申告書等の様式一覧」から、亡くなった年の分の様式を印刷できます。令和8年分用は2026年1月1日から12月31日までに亡くなった人の申告に使う様式で、それ以前の年に亡くなった人の分は別の年分の様式を使います。税務署でも「相続税の申告のしかた」と一緒に配布しています。
出典・参考にした公的な情報
- B1-2 相続税の申告手続(提出方法・様式・受付時間)(国税庁)
- 相続税の申告のしかた(令和8年分用)(国税庁)
- 相続税の申告書等の様式一覧(令和8年分用)(国税庁)
- 令和8年10月1日からの税務署総合窓口の受付時間について(国税庁)
- 申告内容によって相続税の申告書をe-Taxで提出できない場合(よくある質問)(国税庁(e-Tax))
- e-Taxソフトについて(国税庁(e-Tax))
- 相続税の申告要否判定コーナー(国税庁)
- No.4152 相続税の計算(国税庁)
- No.4632 上場株式の評価(国税庁)
- No.4602 土地家屋の評価(国税庁)
- 税理士法 第2条・第52条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。