家なき子特例とは:持ち家のない子が小規模宅地等の特例を使う要件
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家なき子特例とは、亡くなった親と別居していて自分の持ち家がない子などが、親の自宅の土地に小規模宅地等の特例(330㎡まで評価額80%減)を使える仕組みの通称です。使えるのは、親に配偶者がいないこと、親と同居していた相続人がいないこと、相続開始前3年以内に自分や配偶者・三親等内の親族などが持つ家に住んでいないこと、など6つの要件をすべて満たす場合だけです。2018年(平成30年)の改正で要件が厳しくなり、親族の持ち家に住んでいた人などは使えなくなりました。
家なき子の6つの要件を一つずつ確かめる
国税庁 No.4124 と「相続税の申告のしかた」では、配偶者・同居親族以外の親族が自宅の土地を取得した場合の要件として、次の6つを挙げています。
- 日本国籍のない制限納税義務者でないこと。 海外に住んでいても日本国籍があれば、この要件では外れません。
- 亡くなった人に配偶者がいないこと。 父が亡くなって母が健在なら、子は家なき子特例を使えません(母が取得すれば配偶者として要件なしで使えます)。
- 亡くなる直前に、その家に住んでいた相続人がいないこと。 相続放棄をした人も、放棄がなかったものとして数えます。兄が親と同居していれば、別居の弟は使えません。
- 相続開始前3年以内に、国内にある自分・自分の配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある法人が所有する家に住んだことがないこと(亡くなった人の自宅を除く)。
- 相続開始時に住んでいる家を、過去に一度も所有したことがないこと。
- 相続開始時から申告期限まで、その土地を持ち続けること。
③の「住んでいた相続人」は、国税庁の通達(69の4-21)で、亡くなる直前にその家で亡くなった人と共に起居していた人をいうとされています。
| 順番 | 確かめること | 外れる例 |
|---|---|---|
| 1 | 亡くなった人に配偶者がいるか | 母が健在 |
| 2 | 同居していた相続人がいるか | 兄が実家で親と同居していた |
| 3 | 3年以内の住まいの所有者 | 妻の実家(妻の親名義)に住んでいた |
| 4 | 今の住まいを過去に持っていたか | 自宅を売って、そのまま借りて住んでいる |
| 5 | 申告期限まで持ち続けるか | 10か月以内に実家を売った |
| 6 | 国籍・納税義務の区分 | 日本国籍がなく海外に住んでいる |
2018年の改正で外れるようになった住まい方
国税庁の通達(69の4-22の2)によると、所得税法等の一部を改正する法律(平成30年法律第7号)で家なき子の要件が改められ、2018年4月1日から2020年3月31日までの相続には経過措置がありました。改正後の今の要件④⑤では、自分と配偶者の持ち家に住んでいた人だけでなく、親族や同族会社が持つ家、かつて自分が持っていた家に住む人も外れます。今から相続が始まる場合、経過措置は関係なく、6つの要件で判定します。
次のような住まい方は、今の要件では家なき子に当たりません。
- 配偶者の親が持つ家に住んでいた。 配偶者の親は姻族の一親等で「三親等内の親族」に入ります。
- 自分のおじ・おばが持つ家を借りていた。 おじ・おばは三親等内の血族です。
- 自分の同族会社の社宅に住んでいた。 自分・配偶者・三親等内の親族などが株式の50%超を持つ法人や、これらの人が理事などになっている持分のない法人は「特別の関係がある法人」です(租税特別措置法施行令40条の2第15項)。
- 持ち家を親族や自分の会社に売り、家賃を払って住み続けている。 今住む家を過去に所有していたので⑤に当たります。
一方、勤務先の一般の社宅や、親族と関係のない人から借りた賃貸住宅に3年以上住んでいる場合は、④⑤に当たらず、ほかの要件しだいで対象になりえます。自分の家族の住まいが「三親等内の親族」の所有かどうかは、登記事項証明書で所有者を確かめると確実です。
家なき子が使えるかで変わる税額(筆者の計算)
対象になるかどうかで、課税価格は大きく変わります。たとえば、母はすでに亡くなり、一人暮らしの父の自宅の土地(250㎡・評価額5,000万円)を、賃貸に住む長男が相続したとします。
| 場合 | 土地の課税価格 |
|---|---|
| 家なき子特例を使える | 5,000万円−5,000万円×80%=1,000万円 |
| 使えない | 5,000万円のまま |
(筆者の計算。250㎡は330㎡以内なので全体が対象。)差は4,000万円で、相続人が子2人なら基礎控除4,200万円と比べたときの結論まで変わることがあります。自宅の土地の特例全体の仕組みは小規模宅地等の特例をわかりやすくで扱っています。
申告期限まで売らない・申告で書類を添える
家なき子特例を使うときの注意は2つです。
- 申告期限まで売らない。 実家を相続して空き家になると早く売りたくなりますが、10か月の申告期限前に売ると⑥を満たしません。売却を考えるなら、相続した空き家を売ったときの譲渡所得の特別控除(相続した空き家の3000万円控除の要件)と時期を合わせて検討します。
- 書類を添える。 国税庁「相続税の申告のためのチェックシート」では、相続開始前3年以内の住所や居所を明らかにする書類、3年以内に住んだ家が自分・配偶者・三親等内の親族・特別関係の法人の所有でないことを証する書類、今住んでいる家を過去に所有していなかったことを証する書類を挙げています(マイナンバーのある人は一部が不要)。
親が老人ホームに入っていた場合も、家なき子の判定はできます。施設に入る前の自宅を「住んでいた家」と扱うための要件は親が老人ホームにいた場合の小規模宅地等の特例へ。ほかに外れやすい場面は小規模宅地等の特例が使えない場合の落とし穴にまとめています。
自分が当てはまるかの判定は誰に相談するか
6つの要件は事実関係で決まるので、過去3年の住所、持ち家の履歴、親族の持ち家の有無を書き出してから相談すると話が早く進みます。
相談前のメモの例:「父は○年○月死亡、母は○年に死亡済み。父は一人暮らし。私は○年から賃貸マンション(大家は親族ではない)に居住。過去に○○市のマンションを所有し、○年に売却。」
家なき子に当たるかの個別の判定や、申告書の作成は税理士の業務です(税理士法52条)。制度の一般的な質問は税務署の相談窓口でもできます。
紹介サービスを使う場合、判定と申告を担当するのは紹介を受けた税理士です。紹介先が登録税理士かは税理士紹介サービスを使う前に確かめる4つの点で確かめ、見積もりでは家なき子の判定が報酬に含まれるかを聞いてください。相続に強い税理士の比べ方は相続に強い税理士の選び方へ。
「小規模宅地等の特例 家なき子」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。
よくある質問
Q. 今は賃貸に住んでいますが、10年前に持ち家を売りました。家なき子になれますか?
持ち家を手放したのが相続開始前3年より前で、今住んでいる賃貸住宅を過去に所有したことがなければ、持ち家に関する要件(④⑤)には当たりません。そのうえで、親に配偶者がいない、同居の相続人がいないなど、ほかの要件もすべて満たすかを確かめます。
Q. 孫が遺言で祖父の自宅の土地をもらった場合も、家なき子特例は使えますか?
家なき子の要件は「配偶者・同居親族以外の親族」が相続や遺贈で取得した場合のものなので、孫が遺贈で取得した場合も、6つの要件をすべて満たせば対象になりえます。なお、孫(代襲相続人を除く)は相続税額の2割加算の対象になります。
Q. 親の家を相続したら、すぐに売ってもよいですか?
家なき子特例を使うなら、相続税の申告期限(死亡を知った日の翌日から10か月)まで土地を持ち続けることが要件です。期限前に売ると特例は使えません。売却の時期は、空き家の3,000万円控除の要件とあわせて考えます。
出典・参考にした公的な情報
- 国税庁 タックスアンサー No.4124 小規模宅地等の特例(令和8年4月1日現在法令等)(国税庁)
- 国税庁「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」特定居住用宅地等の要件(国税庁)
- 国税庁 租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて 69の4-21・69の4-22・69の4-22の2(平成30年改正法附則による経過措置)(国税庁)
- 国税庁「相続税の申告のためのチェックシート(令和6年分以降用)」(国税庁)
- 租税特別措置法施行令 第40条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 租税特別措置法 第69条の4第3項第2号(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。