相続登記と名義変更 / 悩み整理

相続登記をしないとどうなる?過料だけでない売却・融資・相続の不利益

この記事のもくじ
  1. 相続登記をしないとどうなる:起きることの一覧
  2. 売れない・担保にできない:売却と融資の場面
  3. 相続人が増えていく:数次相続と共有の行き詰まり
  4. 権利を主張できない場面と、免税の期限
  5. 放置してきた人が今からやる順番

相続登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があるだけでなく、家を売れない、担保にして借りられない、次の相続が重なって話し合う相続人が増えていく、といった不利益が積み重なります。過料よりも、売りたいときに売れないことや、親族が増えて合意が取れなくなることのほうが、実際には重い負担になりがちです。この記事では、放置で起きることを根拠つきで整理し、今から取り戻す順番を示します。

相続登記をしないとどうなる:起きることの一覧

まず全体を一枚で見ます。「いつ表に出るか」の列のとおり、多くは放置している間は気づかず、売る・借りる・次の相続が起きる、といった場面で一度に表に出ます。

一覧表:相続登記を放置したときの不利益
起きること いつ表に出るか 根拠
10万円以下の過料が科される可能性 登記官から催告を受け、期間内に申請しなかったとき 不動産登記法76条の2・164条
売却できない 買主が見つかり、名義を移そうとしたとき 法務省(相続人申告登記のページ)
担保にして借りられない 建て替えやリフォームの融資を受けるとき 同上(抵当権の設定にも相続登記が必要)
相続人が増え、話し合いが難しくなる 相続人の誰かが亡くなったとき(数次相続) 民法896条
取得した分を第三者に主張できないおそれ ほかの相続人の持分が売られた・差し押さえられたとき 民法899条の2
登録免許税の免税を使えなくなる 2027年3月31日を過ぎてから登記したとき 租税特別措置法84条の2の2

義務化の期限の数え方そのものは相続登記の義務化:期限3年・過料10万円以下・相続人申告登記で扱っています。ここでは、過料以外の不利益を中心に見ていきます。

売れない・担保にできない:売却と融資の場面

亡くなった人の名義のままの家を、相続人がそのまま買主に名義移転することはできません。法務省の相続人申告登記の説明は、売却や抵当権の設定をする場合には別に相続登記が必要だと明記しています。相続人申告登記をしていても同じで、申告登記は権利関係を示す登記ではないため、売る前には別に相続登記をします。

困るのは、売る話が具体的になってから登記を始めると、戸籍集めと遺産分割に時間がかかり、買主を待たせてしまうことです。相続人の1人が遠方にいる、連絡が取りにくい、といった事情があると、さらに延びます。売却を少しでも考えているなら、買主を探す前に相続登記を済ませておくのが、取引を止めない順番です。売却までの全体の流れは相続不動産の売却の流れ:登記から売却・申告までの順番と期限にまとめています。

融資も同じです。相続した家を建て替える、リフォームする、といった目的で家を担保に借りるとき、金融機関は抵当権の設定登記をします。その前提として、所有者が相続人になっている必要があります。

相続人が増えていく:数次相続と共有の行き詰まり

相続登記をしないまま相続人の1人が亡くなると、その人の相続人(配偶者や子)が、遺産分割に加わる立場を引き継ぎます(民法896条)。これを数次相続と呼びます。たとえば、祖父の家を兄弟3人で分けないまま、そのうち1人が亡くなると、話し合いの相手はその配偶者と子に広がります。代を重ねるごとに相続人は増え、面識のない親族や連絡先の分からない人が混ざると、遺産分割協議書に全員の実印をもらうこと自体が難しくなります。

遺産分割がされていない相続財産は、相続人の共有です(民法898条)。共有の家を取り壊す・大きく作り替えるといった変更には、共有者全員の同意が要ります(民法251条)。相続人が増えるほど同意を集めるのは難しくなり、空き家のまま管理だけが続く状態に陥りがちです。法務省の特設ページは、所有者不明土地の発生原因の約3分の2を相続登記の未了が占めると説明しています。

祖父母の代の名義が残っている場合の登記の順番は数次相続の相続登記:祖父名義の家を登記する順番と中間省略で扱います。共有のまま売る・持分を手放す方法は共有名義の不動産の売却:全員の同意が要る場面と持分だけ売る方法へ。

権利を主張できない場面と、免税の期限

遺産分割で自分が家を取得しても、法定相続分を超える部分は、登記をしなければ第三者に主張できないと民法899条の2に定められています。登記をしないでいる間に、ほかの相続人が自分の法定相続分の持分を第三者に売ったり、その相続人にお金を貸した人が持分を差し押さえたりすると、その第三者との関係で争いになるおそれがあります。実際にそうした事態が起きたときに、どう主張できるかは個別の事情で決まり、判断は弁護士の仕事です。

税の面では、2027年3月31日までの登記に限って、相続登記の登録免許税が免税になる措置があります(租税特別措置法84条の2の2)。対象は、相続で土地を取得した人が登記をしないまま亡くなった場合のその人名義への登記と、価額が100万円以下の土地の相続登記です。数次相続の途中の登記や、評価の低い山林・原野を登記するなら、期限内に済ませたほうが負担は軽くなります。延長されるかは決まっていません。

放置してきた人が今からやる順番

何年も放置していても、今から取り戻せます。次の順で進めます。

  1. 不動産を洗い出す:固定資産税の納税通知書、市区町村の名寄帳、法務局の所有不動産記録証明書で、親名義の不動産をすべて確かめる。
  2. 登記簿で今の名義を確かめる:登記事項証明書を取り、名義が親か祖父母か、共有かを確かめる。祖父母の名義なら数次相続として進める。
  3. 戸籍を集めて相続人を確定する:代が重なるほど通数が増えるので、早めに始める。
  4. 期限を確かめる:2024年4月1日より前から知っていた不動産は2027年3月31日まで。過去分の考え方は昔の相続も相続登記の義務化の対象?過去分の期限2027年3月31日へ。
  5. 遺産分割が間に合わないなら相続人申告登記:申し出た人の義務は果たしたことになる。手順は相続人申告登記とは:遺産分割がまとまらない時の義務の果たし方へ。
  6. 遺産分割をして相続登記を申請する:自分でやるか頼むかは、相続人の数と関係で決める。

放置した年数によって、取り戻しやすさは変わります。段階ごとに、やることの重さを並べます。

放置の状態 登記までの道のり
相続から数年で、相続人が全員健在 戸籍は親1代分。協議書に全員の実印をもらえば、通常の相続登記と同じ
相続人の1人が途中で亡くなっている(数次相続) 亡くなった相続人の戸籍と、その人の相続人全員の関与が加わる
祖父母の代から名義が残り、2代以上が亡くなっている 戸籍が数世代分に増え、面識のない親族が相続人に入る。数次相続の記事の順番で進める

数次相続になると、相続分の計算がどう広がるかを、仮の例で見てください。

筆者の計算:祖父が亡くなり、子3人(長男・次男・長女)が相続したが登記せず、その後に長男が亡くなり、長男の妻と子2人が残ったとします。祖父の家の法定相続分は、まず子3人が各3分の1。長男の3分の1は、妻が2分の1(6分の1)、子2人が各4分の1(12分の1)に分かれます。つまり、祖父の家の話し合いの相手は、次男3分の1・長女3分の1・妻6分の1・子2人が各12分の1の5人で、足すと12分の12です。

何も決めずにもう1代重なれば、さらに相続人が増えます。

登記以外の相続手続き(預金・税・年金)も止まっている場合は、相続手続きをしないとどうなる?放置で起きる不利益と今からの順番で全体を確かめます。相続人が多く、戸籍集めや協議書づくりを自分で進めるのが難しいときは、手続きの代行を頼む選択肢もあります。

放置した年数が長いほど戸籍の通数が増えるので、頼む場合は、戸籍集めの通数に上限や追加料金があるかを見積書で確かめます。相続人の間ですでに争いがあるときは、代行ではなく弁護士に相談する領域です。

よくある質問

Q. 相続登記をしないまま固定資産税だけ払っていれば、問題はありませんか?

固定資産税を払っていても、登記簿の名義は亡くなった人のままです。売却や抵当権の設定には相続登記が要り、相続登記の申請義務も残ります。税金の納付と登記の義務は別のものとして考えます。

Q. 親の代から何十年も相続登記をしていない家は、もう登記できないのですか?

何十年たっていても相続登記はできます。ただ、途中で亡くなった相続人の分まで戸籍をさかのぼり、その相続人の相続人も含めて遺産分割をするため、書類と関わる人が増えます。祖父母の名義のまま残っている家の進め方は、数次相続の記事で順番を確かめてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

相続登記の義務化:期限3年・過料10万円以下・相続人申告登記

昔の相続も相続登記の義務化の対象?過去分の期限2027年3月31日

数次相続の相続登記:祖父名義の家を登記する順番と中間省略

相続手続きをしないとどうなる?放置で起きる不利益と今からの順番