相続税と申告 / 悩み整理

相続税の税務調査:時期・調べられる点・申告後に備えること

この記事のもくじ
  1. 相続税の調査はいつ来る?連絡の来かたと期間の上限
  2. 調べられやすい点:名義預金・現金・亡くなる前の贈与
  3. 調査の流れ:事前通知から終了まで
  4. 申告後に備えること:残しておく資料のチェックリスト
  5. 指摘を受けそうなときの相談先

相続税の税務調査に「申告から何年後」という決まった時期はありません。決まっているのは上限で、税務署が税額を直せる期間は申告期限から5年、偽りや不正の行為があれば7年です(国税通則法70条)。調査の数は少なくありません。国税庁の発表では、2024事務年度(令和6事務年度)に相続税の実地調査は9,512件行われ、そのうち82.3%で申告漏れなどが見つかりました。ほかに、文書や電話、来署の依頼で誤りの見直しを求める「簡易な接触」が21,969件ありました。調べられやすいのは、家族名義の預金、手元の現金、亡くなる前の多額の引き出しです。この記事では、調査の連絡の来かた、見られる点、流れ、申告後に残しておく資料を順に示します。

相続税の調査はいつ来る?連絡の来かたと期間の上限

相続税について税務署と接点ができるのは、大きく次の3つの形です。

形 中身 加算税の扱い
実地の調査 自宅などに職員が来て質問や書類の確認をする。原則として電話などで事前通知がある 誤りがあれば過少申告加算税などの対象
簡易な接触(行政指導) 文書・電話・来署の依頼で、計算誤りや記載漏れがないか見直しを求める 自主的に修正申告を出せば過少申告加算税はかからない(延滞税はかかりうる)
申告のない人への照会 申告の要否を確かめる文書(お尋ね)が届く 申告が必要なら期限後申告になる

国税庁のFAQは、担当者が連絡するときは、具体的な手続きの前に「調査」なのか「行政指導」なのかを明示すると説明しています。電話が来たら、まずどちらなのかを確かめてください。

実地の調査の事前通知では、調査を始める日時と場所、目的、税目、対象の期間、対象となる帳簿書類などが伝えられます(国税通則法74条の9)。通知は電話などで行われ、何日前に来るかの決まりはなく、準備のための時間を置くとされています。申告内容などから事前通知をすると調査に支障が出ると判断された場合は、通知なしで行われることもあります。

早見表:相続税の調査の件数と結果(国税庁・2024事務年度)
項目 件数・金額
実地調査の件数 9,512件
申告漏れなどの非違があった件数 7,826件(非違割合82.3%)
うち重加算税を課した件数 1,065件(非違件数の13.6%)
追徴税額の合計(本税+加算税) 824億円(1件当たり867万円)
簡易な接触の件数 21,969件(非違5,796件、追徴税額138億円)
無申告事案の実地調査 650件(追徴税額142億円)

調べられやすい点:名義預金・現金・亡くなる前の贈与

国税庁の資料では、2024事務年度に申告漏れとされた相続財産は2,879億円で、そのうち現金・預貯金等は837億円(29.1%)で、「その他」の区分を除くと最も大きい区分です。有価証券は393億円、土地は353億円でした。調査で確かめられやすいのは、次のような点です。

  • 家族名義の預金(名義預金):国税庁の「相続税の申告のしかた」は、名義にかかわらず、亡くなった人が資金を出していたことなどから亡くなった人の財産と認められるものは課税の対象になると説明しています。妻や子の名義でも、原資が亡くなった人で、本人が通帳や印鑑を管理していた預金は申告に含めるかの検討が要ります。名義預金と判断されやすい例は預金の相続と相続税:名義預金と判断される例と記録の残し方で扱います。
  • 手元の現金と、亡くなる前の引き出し:国税庁が公表した調査事例には、亡くなる前に引き出した多額の現金を相続人の自宅で保管し、申告から外していた例があります。引き出したお金の使い道を説明できるようにしておくことが大切です。現金の申告の仕方はタンス預金の相続税:現金が申告から漏れやすい理由を参照してください。
  • 亡くなる前の贈与:2026年中に亡くなった場合、相続や遺贈で財産を取得した人が亡くなる前3年以内に受けた暦年課税の贈与は、110万円以下でも相続税の計算に加えます。2027年1月以後の相続から、この期間は段階的に7年へ延びます。
  • 財産の評価:土地の評価の補正、非上場株式、貸付金などは計算が複雑で、誤りが出やすい項目です。

調査の流れ:事前通知から終了まで

実地の調査は、おおむね次の順で進みます。

  1. 事前通知を受ける:日時・場所・対象を聞き取ってメモします。税理士に税務代理を頼んでいれば、税理士にも通知されます。都合が悪ければ、理由を伝えて日時や場所の変更を相談できます。
  2. 当日の質問と確認:亡くなった人の経歴や生活の様子、財産の管理の仕方、通帳や印鑑の保管場所などを聞かれ、資料の提示を求められます。所要時間や日数は事前には示されず、複数回に及ぶ場合は日程を調整します。
  3. 結果の説明:誤りがあれば、更正すべき額と理由の説明を受けます(国税通則法74条の11第2項)。説明は面談での口頭が基本で、国税庁のFAQは、求めても内容を書いた書面が送られるとは限らないとしています。メモを取り、分からない点はその場で聞きます。
  4. 修正申告の勧奨か、更正:修正申告を勧められることが多く、応じるかは任意です。勧奨のときは、修正申告をすると不服申立てはできないが更正の請求はできる旨を書いた書面が交付されます(同条3項)。応じなければ税務署が更正をします。
  5. 問題がなかった場合:更正すべき点がないときは、その旨の書面が届きます。

修正申告や加算税の計算の詳しい手順は、相続税の申告の誤りに気づいたら:修正申告と更正の請求の違いにまとめています。調査の通知が来る前に自分で誤りに気づいて修正申告を出せば、過少申告加算税はかかりません(国税通則法65条6項)。

申告後に備えること:残しておく資料のチェックリスト

調査で困るのは、「なぜこの金額にしたのか」を後から説明できないことです。申告書の控えと一緒に、次の資料を、少なくとも申告期限から5年はまとめて保管します。

  • 亡くなった人の通帳(過去数年分)と、大きな出金ごとの使い道のメモ(日付・金額・支払先)
  • 家族名義の預金の、原資と管理者の記録(誰が入金し、誰が通帳と印鑑を持っていたか)
  • 生前の贈与の記録(贈与契約書、振込の記録、贈与税の申告書の控え)
  • 土地の評価の計算の根拠(路線価図、固定資産税の評価証明書、測量図)
  • 葬式費用の領収書と、領収書のない支払いのメモ
  • 遺産分割協議書、遺言書の写し、特例の添付書類

税理士に申告を頼む場合は、「書面添付制度」を使うかも確かめます。税理士が申告書の作成で計算・整理・相談に応じた事項を書いた書面を申告書に添付する制度で(税理士法33条の2)、添付があると、税務署は調査の日時を通知する前に、その税理士に意見を述べる機会を与えることになっています(同35条)。調査が行われないことを約束するものではありませんが、申告の根拠を先に説明できる仕組みです。

指摘を受けそうなときの相談先

調査に立ち会って説明すること(税務代理)や、修正申告書の作成は、税理士の仕事です(税理士法2条・52条)。次のようなときは、調査の通知が来る前に、申告を頼んだ税理士か、相続税を扱う税理士に相談します。

  • 申告後に、家族名義の預金や手元の現金が見つかった
  • 亡くなる前の多額の引き出しの使い道を説明できない
  • 自分で申告したが、土地の評価や特例の当てはめに自信がない

相続税の申告を税理士に頼むべき人の目安は相続で税理士は必要か:相続税がかかる人・かからない人の分かれ目で、事務所を比べる観点は相続に強い税理士の選び方:申告件数より先に確かめたい7つの点で確かめられます。紹介サービスを使う場合は、紹介先が税理士として登録されているかを日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで確かめ、見積もりで「調査の立ち会いが報酬に含まれるか」を聞いておきます。

税務署から申告の要否を尋ねる文書が届いた場合の答え方は、次の相続税のお尋ねが届いたら:回答の書き方と申告が要るかの判断で扱います。

「相続税 調査」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。

よくある質問

Q. 税務調査の連絡を断ることはできますか?

調査そのものを断ることは想定されていません。国税通則法128条は、質問に答えない、検査を拒む、正当な理由なく帳簿書類などの提示・提出の求めに応じない、といった場合を罰則の対象にしています。一方で、事前通知された日時や場所は、合理的な理由を付けて変更を求めることができ、税務署は協議に努めるとされています(同法74条の9第2項)。

Q. 調査で何も問題がなかった場合、連絡はありますか?

実地の調査で更正などをすべき点が見つからなかったときは、その時点で更正決定等をすべきと認められない旨を書面で通知すると、国税通則法74条の11に定められています。ただし、新しい情報によって誤りが疑われれば、あらためて調査が行われることはあります。

Q. 調査で指摘された修正申告に応じないと不利になりますか?

修正申告の勧奨に応じるかは納税者の任意で、応じない場合は税務署が更正という処分をします。国税庁は、応じなかったことで不利な扱いを受けることは基本的にないと説明しています。修正申告をすると不服申立てはできなくなりますが、一定の期間内なら更正の請求はできます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

相続税の申告の誤りに気づいたら:修正申告と更正の請求の違い

タンス預金の相続税:現金が申告から漏れやすい理由と申告の仕方

預金の相続と相続税:名義預金と判断される例と記録の残し方

相続で税理士は必要か:相続税がかかる人・かからない人の分かれ目