生前贈与と贈与税 / Q&A

夫婦間の贈与税はいくらから?生活費は非課税・名義を移すと課税

この記事のもくじ
  1. 夫婦間の贈与税はいくらから?110万円と一般税率の計算
  2. 生活費は非課税:かからない範囲とかかる境目
  3. 預金を移すと課税:名義預金と相続のときの扱い
  4. 住宅の共有名義とローン:出したお金と持分がずれると課税
  5. 夫婦の贈与で迷ったときの確かめ方

夫婦の間でも、1年(1月1日〜12月31日)に受け取った贈与の合計が110万円を超えると、贈与税がかかります。 ただし、夫婦は互いに扶養する義務がある間柄なので、日々の生活費や子どもの教育費を、必要なときに必要な分だけ渡すのは贈与税の対象外です。課税されやすいのは、生活費の残りを相手名義の預金に移す、住宅の持分を出したお金と違う割合で登記する、相手のローンを代わりに払う、といった「名義が移る」やり取りです。

夫婦間の贈与税はいくらから?110万円と一般税率の計算

夫婦間の贈与も、親子間と同じく暦年課税で計算します。もらった人ごとに、1年の合計から基礎控除110万円を引いた残りに税率を掛けます。親や祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に使う「特例税率」は、夫婦間には使えません。夫婦間は一般税率です。

1年に配偶者から受け取った額 贈与税(一般税率) 計算
110万円 0円 基礎控除以下。申告も不要
200万円 9万円 (200万円−110万円)×10%
300万円 19万円 190万円×10%
500万円 53万円 390万円×20%−25万円
1,000万円 231万円 890万円×40%−125万円

(筆者の計算。国税庁No.4408の一般税率の速算表による。500万円の例は国税庁の計算例と同じ額)

110万円は「夫婦で1つ」ではなく、受け取る人ごとの枠です。夫から妻へ110万円、妻から夫へ110万円という形なら、それぞれ基礎控除の範囲に収まります。ただし、同じお金を行き来させるだけで、受け取った側が自由に使える財産になっていない形は、贈与があったと言えるかが問われます。年の数え方や、親など複数の人から受けた場合の合計のしかたは贈与税はいくらからかかる?110万円の数え方と年をまたぐ注意にまとめています。

生活費は非課税:かからない範囲とかかる境目

国税庁は、贈与税がかからない財産として「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者」から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものを挙げています。相続税法も、扶養義務者に配偶者を含めると定めています(相続税法1条の2)。民法752条は夫婦が互いに扶助する義務を定めており、生活費のやり取りはこの延長にあります。

境目は、その都度、生活費や教育費として実際に使ったかどうかです。国税庁は、生活費や教育費の名目で受け取っても、預金したり株式や不動産の購入に充てたりした場合は贈与税がかかると説明しています。

見分け方:夫婦のお金のやり取りと贈与税
やり取り 贈与税 理由
夫の口座から毎月の食費・光熱費・家賃を払う かからない 必要な都度、生活費に充てている
子どもの学費を、請求のたびに配偶者が払う かからない 教育費を直接払っている
妻が受け取った生活費の残りを、妻名義の定期預金にためる かかる場合がある 生活費ではなく預金に充てている
夫の預金から500万円を妻名義の口座に移す かかる(110万円超) 名義が移り、妻の財産になる
夫が出したお金で買った株を妻名義の口座で持つ かかる場合がある 購入資金の贈与になる

家計を一つの口座で回し、残高を夫婦どちらかの名義の口座に置いている家庭は多いはずです。生活費として出し入れしている限り、それだけで贈与税の問題にはなりません。問題になるのは、残りを「自分のもの」として別の口座に移したときです。

預金を移すと課税:名義預金と相続のときの扱い

民法762条は、夫婦の一方が婚姻中に自分の名で得た財産を、その人だけの財産(特有財産)と定めています。夫の給料は夫の財産、妻の給料は妻の財産です。ここから、預金の名義について2つの方向の問題が生じます。

  1. 贈与として扱われる場合:夫の預金から妻の口座に移し、妻が自分のお金として管理・使用している。110万円を超えていれば、移した年の贈与として申告が要ります。
  2. 夫の財産のままと扱われる場合:妻名義の口座だが、夫の給料からためたもので、贈与のつもりも申告もない。夫が亡くなったとき、この預金は夫の相続財産として申告の対象になることがあります(いわゆる名義預金)。

国税庁が公表した令和6事務年度の調査の状況では、贈与税の実地調査で非違があった2,582件のうち2,154件(83.4%)が無申告で、非違があった財産の62.9%(1,754件)は現金・預貯金等でした。家族名義の預金は、調査で見られやすい財産です。

移すなら、「贈与する・受け取る」を夫婦で書面にし、振込で記録を残し、110万円を超えた年は翌年2月1日〜3月15日に受け取った側が申告します。書面の作り方は暦年贈与の契約書の書き方:ひな形と毎年作る理由・保管の仕方を参考にしてください。古い名義預金と贈与の時効の関係は贈与税の時効は6年?成立しにくい理由と名義預金との関係で扱います。

住宅の共有名義とローン:出したお金と持分がずれると課税

家を買うとき、登記の持分(夫2分の1・妻2分の1など)は、それぞれが実際に出したお金の割合に合わせるのが基本です。相続税法9条は、対価を払わずに利益を受けた場合、その利益を受けさせた人から贈与で取得したものとみなすと定めています。出したお金より多い持分を登記すると、多い分は相手から贈与を受けたとみられる形になります。

筆者の計算例:4,000万円の家を夫3,000万円・妻1,000万円で買い、持分を半分ずつにした

  • 妻の持分の価額:4,000万円×2分の1=2,000万円
  • 妻が出したお金:1,000万円
  • 差の1,000万円が、夫から妻への贈与とみられる額になる
  • 贈与税(一般税率):(1,000万円−110万円)×40%−125万円=231万円

(購入価格で単純に計算した例。登記費用や諸費用は除く)

同じことは住宅ローンでも起きます。夫婦それぞれが借りたペアローンで、妻の分の返済を夫の口座からまとめて払い続けると、妻の借金を夫が肩代わりしている形になります。相続税法9条の考え方からは、肩代わりした分が贈与とみられることがあります。共働きをやめた、育児休業に入ったなど返済の分担が変わったときは、持分や借入の形をどうするか、登記は司法書士、税金は税理士に相談して整理します。

婚姻20年以上なら「配偶者控除」という特例がある

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、住む家やその購入資金を贈与する場合は、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円を控除できる特例があります(贈与税の配偶者控除)。同じ配偶者からは一生に一度で、税額がゼロでも申告が要件です。要件と、登記費用・不動産取得税がかかる点は贈与税の配偶者控除(おしどり贈与):2,000万円の要件と注意で扱います。

夫婦の贈与で迷ったときの確かめ方

迷ったら、次の順に確かめます。

  1. そのお金は、受け取ってすぐ生活費・教育費に使ったか(使ったなら非課税の範囲)
  2. 相手名義の預金・株・不動産になったか(なったなら贈与の可能性)
  3. その年に受け取った合計は110万円を超えたか(超えたら翌年3月15日までに申告)
  4. 住まいの持分は、出したお金の割合と合っているか
  5. 婚姻20年以上で住まいの贈与なら、配偶者控除の要件に当たるか

贈与税がかからないお金の全体像は贈与税が非課税になるもの一覧:生活費・教育費・特例の早見表で確かめられます。生前に配偶者へ渡すのと、相続で配偶者に残すのとでは税の扱いが大きく違うので、比べ方は贈与税 vs 相続税:どちらが得かを比べる考え方を読んでください。次は、毎年少しずつ渡す方法を暦年贈与とは?毎年110万円の贈与のやり方と7年加算の影響で説明します。

よくある質問

Q. 夫の給料が振り込まれる口座のキャッシュカードを妻が使って家計を回すのは、贈与になりますか?

家計の支払いに使っている限りは、夫婦の生活費をその都度払っているだけなので、贈与税の問題にはなりにくい形です。気をつけるのは、残ったお金を妻名義の口座や定期預金に移してためていく場合です。生活費の名目でも、預金に回した分は贈与税がかかる対象として国税庁が挙げています。

Q. 妻のへそくりは、夫が亡くなったときにどう扱われますか?

夫の給料から出たお金を妻がためた預金は、名義が妻でも、夫から妻へ贈与が成立していなければ夫の財産とみられることがあります。民法は婚姻中に自分の名で得た財産をその人の財産と定めているためです。相続税の申告では、名義ではなく誰のお金かで判断されると考えて、ためた経緯を家族で整理しておきます。

Q. 離婚で財産をもらうときも贈与税がかかりますか?

離婚による財産分与は、通常は贈与税がかかりません。夫婦で築いた財産の清算や離婚後の生活の保障と考えられるためです。ただし、分与の額が多すぎる部分や、税を逃れるための離婚と認められる場合は、贈与税がかかると国税庁は説明しています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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