空き家の苦情が来たら:越境する枝・雑草・動物の対処と責任
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空き家の苦情が来たら、まず苦情の中身と場所を具体的に聞き取り、現地の写真で確かめ、いつまでに何をするかを相手に伝えます。空き家の所有者(相続して共有している人を含む)には、周りに悪影響を出さないよう管理する努力義務があり(空家法5条)、越境した枝は2023年4月の民法改正で、催告しても切らなければ隣の人が自分で切れるようになりました(民法233条)。苦情を放っておくと、市区町村からの指導・勧告や、損害が出たときの賠償責任につながりうるので、最初の対応を早めに決めておくことが大切です。
空き家の苦情が来たら最初の1週間でやること
苦情は、隣の人から直接来ることも、市区町村の空き家担当課や自治会を通して来ることもあります。どこから来ても、やることの順番は同じです。
- 苦情の中身を書き留める:何が(枝・草・ごみ・動物・壊れた部分)、どこで(どの境界・どの窓)、いつから、相手が何に困っているか(通行・日当たり・虫・におい)。
- 写真を送ってもらうか、自分で見に行く:遠方なら、近くに住む親族や管理を頼んでいる会社に撮ってもらう。日付の分かる写真を残す。
- 相続人どうしで共有する:相続人が複数いて遺産分割前なら、全員に連絡し、誰が窓口になるか、費用をどう分けるかを決める。
- 相手に返事をする:作業の予定日を伝える。まだ決められないときも「いつまでに予定を連絡する」と期日を示す。
- 作業を手配する:自分でやるか、業者に頼むかを決め、見積もりを取る。
- 作業後に報告する:終わった日と内容を伝え、写真を添える。次の点検の予定も伝えておくと、苦情が繰り返されにくい。
文例(隣の人への返事):「ご連絡ありがとうございます。○○(住所)の空き家を相続した△△です。境界を越えている庭木の枝について、□月□日までに業者に剪定を頼み、終わりましたらご報告します。ほかにお気づきの点があれば、この番号にご連絡ください。」
市区町村の担当課から文書が届いた場合は、それが単なる情報提供のお願いなのか、空家法に基づく指導なのかを、文書の表題と根拠条文で確かめます。指導・勧告の違いは「放っておくとどうなるか」の見出しで説明します。
越境する枝:2023年4月からのルールと所有者がすること
空き家の庭木の枝が隣の土地に伸びている苦情は、とくに多い種類です。2023年4月1日に施行された改正後の民法233条は、次のように定めています。
| 場面 | 民法233条の定め | 所有者(相続人)の側から見ると |
|---|---|---|
| 枝が越境している(原則) | 隣の人は、木の所有者に枝を切らせることができる(1項) | 切るよう求められたら、所有者が切るのが基本 |
| 木が共有になっている | 各共有者がその枝を切り取れる(2項) | 相続人の1人だけでも剪定を進められる |
| 切るよう催告したのに相当の期間内に切らない | 隣の人が自分で切り取れる(3項1号) | 返事をせずに放っておくと、隣の人が切ることになる |
| 所有者が分からない・所在が分からない | 隣の人が自分で切り取れる(3項2号) | 相続登記をしていない家で起きやすい |
| 急迫の事情がある | 隣の人が自分で切り取れる(3項3号) | 台風で折れかけた枝などが典型 |
| 根が越境している | 隣の人が自分で切り取れる(4項) | 改正前から同じ |
「相当の期間」が何日かは条文に書かれておらず、枝の量や作業の手配に要る時間など事情によって判断されます。苦情を受けたら、相手が自分で切る前に、こちらから日程を示すのが話をこじらせない近道です。
切った費用を誰が負担するかも条文にはなく、争いになることがあります。隣の人が業者を呼んで切ったあとで費用を請求された場合は、請求の内訳と催告の時期を確かめてから返事をし、判断に迷うときは弁護士に相談します。どの専門家に何を頼めるかは相続手続きの専門家の違いにまとめています。
雑草・ごみ・動物・蜂の巣:苦情の種類ごとの対処
枝以外の苦情も、原因と頼み先が分かれば手配は難しくありません。
| 苦情 | よくある原因 | 自分でできること | 業者に頼むなら |
|---|---|---|---|
| 雑草が伸びて隣地や道路にはみ出す | 春から秋の草の伸び | 草刈り、防草シートの敷設 | 草刈り・剪定の業者、空き家の管理サービス |
| ごみが投げ込まれる・散らかる | 人の出入りがない敷地 | 回収、門扉の施錠、立入りを断る掲示 | 管理サービスの巡回 |
| 虫・におい | 水たまり、腐ったもの、ふさがった排水 | 残った食品や生ごみの撤去、水の抜けない所の解消 | 清掃業者 |
| 動物が棲みつく | 屋根裏や床下の隙間 | 侵入口の確認 | 許可を持つ駆除業者、市区町村への相談 |
| 蜂の巣 | 軒下・植木・物置 | 近づかない、隣の人に注意を伝える | 蜂の巣の駆除業者 |
| 屋根材や外壁がはがれそう | 経年の傷み | 落下しそうな部分の確認 | 修理業者。危ない場合は解体も検討 |
動物には注意が要ります。野生の鳥やけものは、鳥獣保護管理法8条で、許可なく捕獲することが原則として禁じられており、捕獲の許可は都道府県知事など(9条)が出します。屋根裏の動物を自分で捕まえようとせず、許可を持つ業者に頼むか、市区町村の担当課に相談してください。
蜂の巣は、刺される危険があるので自分で落とさず、業者に頼むのが無難です。苦情を受けたら、駆除の日までは隣の人に巣の位置を伝え、近づかないようお願いしておきます。
防犯の苦情(人が入り込んでいる、窓が割れている)は、空き巣や放火の心配とつながります。対策の手順は空き家の空き巣・放火対策で扱っています。
放っておくとどうなる:所有者の責任と市区町村の流れ
苦情に応じないまま状態が悪くなると、次の2つの道で所有者に責任が及ぶことがあります。
**1つ目は、損害が出たときの賠償責任です。**民法717条は、土地の工作物(建物や塀など)の設置や保存に欠陥があって他人に損害を与えたとき、まず占有者が、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が賠償する責任を負うと定めています。同じ規定は、竹木の植え方や支え方に欠陥がある場合にも準用されます。古いブロック塀の倒壊や、傷んだ屋根材の落下で隣の家や通行人に被害が出れば、空き家の所有者が責任を問われうるということです。
**2つ目は、空家法に基づく市区町村の措置です。**苦情の多い雑草・ごみ・動物は、国土交通省のガイドラインが管理不全空家等や特定空家等の判断の例に挙げている状態と重なります。指導から勧告に進むと敷地の固定資産税の住宅用地特例が外れ、特定空家等が命令に従わなければ過料や代執行に進みます。どの家を措置の対象とするかは市区町村が個別に判断し、段階ごとの中身と件数は管理不全空家・特定空家とはに、放置した場合の年数ごとの傷みと費用は空き家を放置するとどうなる?毎年のお金と、段階ごとの責任にまとめています。
相続人が複数いて相続登記をしていない家では、ガイドラインも、できる限りすべての所有者等に指導等を行うのが基本としています。「自分は住んでいないから関係ない」とはならず、共有している相続人それぞれに連絡が来うると考えておきましょう。
遠くて行けないとき:業者に頼む場合の見積もりと次の一手
遠方に住んでいて現地に行けないときは、作業を業者に頼むことになります。頼む前に、見積書で次の点を確かめます。
- 作業の範囲(敷地のどこまで、枝は越境部分だけか、木の高さまで詰めるか)
- 刈った草や切った枝の処分費が入っているか
- 作業前後の写真を送ってもらえるか
- 追加料金が出る条件(高所作業、蜂の巣が見つかった場合など)
- 年に何回の作業が要るか、定期契約にした場合の費用
1回の苦情に応じても、草や枝は毎年伸びます。年に何回、誰が見に行くかを決めておかないと、同じ苦情が繰り返されます。月1回の点検項目や管理サービスの選び方は空き家の管理方法を参考にしてください。親が自宅で亡くなった家で、告知や清掃の面でも気がかりがあるときは相続した実家が事故物件になったら:告知の決まりと売り方の選択肢も確かめてください。
苦情への対応と管理の費用が重く感じるなら、その家を持ち続けるかどうかを考える時期かもしれません。建物を取り壊して管理の手間を減らす道は空き家の解体:費用の決まり方と固定資産税、相続放棄を考えている場合の扱いは相続放棄した空き家はどうなるで整理しています。
よくある質問
Q. 隣の人に越境した枝を切られ、その費用を請求されました。払う必要がありますか?
民法233条は、催告しても切らないときなどに隣の人が自分で枝を切れることを定めていますが、切った費用を誰が負担するかは条文に書かれていません。払うかどうかは事情によって判断が分かれるので、請求書の内訳と、いつ催告を受けたかを書き出して、弁護士会の法律相談などで確かめてから返事をしてください。
Q. 相続放棄を考えている空き家でも、苦情を受けて草刈りをしてよいですか?
民法921条1号は、相続財産を処分すると単純承認とみなすと定める一方、保存行為は除いています。草刈りや枝の剪定、壊れた窓の応急のふさぎは、家の価値を保つための行為として扱われやすいものです。ただし建物の解体や家財の売却は処分に当たるおそれがあるので、放棄を決めるまでは手を付けないでください。
Q. 苦情の相手と直接話すのが気まずいときは、どうすればよいですか?
管理会社や作業を頼んだ業者に、作業日と内容の連絡を代わりにしてもらう方法があります。市区町村の空き家担当課を通して苦情が来た場合は、担当課に対応予定を伝えれば、相手にも伝わります。いずれの場合も、作業前後の写真を残しておくと、後で話が食い違ったときに役立ちます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第233条・第717条・第921条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目(法務省)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法 第5条・第13条・第22条・第30条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)(国土交通省)
- 地方税法 第349条の3の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律 第8条・第9条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。