相続人と遺産分割 / Q&A

兄弟姉妹に遺留分はない?遺言で外された兄弟ができることの整理

この記事のもくじ
  1. 兄弟姉妹に遺留分がない根拠と、兄弟が相続人になる場面
  2. 遺言で外された兄弟が確かめられること
  3. 遺言の有効性を争うときは弁護士の仕事になる
  4. 寄与分は使える?介護をしてきた兄弟姉妹の場合
  5. 借金は兄弟にも来る:3か月以内に確かめること

兄弟姉妹には遺留分がありません。民法1042条は遺留分を持つ人を「兄弟姉妹以外の相続人」と定めており、兄弟姉妹の代わりに相続する甥・姪にもありません。 そのため「全財産を妻に」「全財産を長年世話をしてくれた人に」という遺言で外された兄弟姉妹は、遺留分を理由にお金を請求することはできません。それでもできることはあり、遺言が方式どおりに作られているか、作った時に判断する力があったか、遺言にない財産はないか、借金を引き継がないかを確かめます。

兄弟姉妹に遺留分がない根拠と、兄弟が相続人になる場面

兄弟姉妹が相続人になるのは、亡くなった人(被相続人)に子や孫がおらず、父母・祖父母もすでに亡くなっているときです(民法889条1項)。配偶者がいれば、配偶者と兄弟姉妹が一緒に相続人になります。

相続人 法定相続分 遺留分
配偶者 3/4 ある
兄弟姉妹(全員で) 1/4 ない
甥・姪(兄弟姉妹が先に亡くなっているとき) 親の取り分を引き継ぐ ない

遺留分は、遺言で自由に財産を分けられる中で、生活の支えになってきた近い家族に最低限の取り分を残す制度です。民法は、その対象から兄弟姉妹を外しています。遺留分を持つ人の範囲と割合の全体は遺留分とは:割合・請求できる人・期限で整理しています。

兄弟姉妹は、遺言がなければ法定相続分を持つ相続人です。遺言で外されるのは「遺言で財産を受け取る人に指定されていない」状態で、相続人の地位そのものがなくなるわけではありません。この違いが、後で見る借金や遺産分割の話につながります。兄弟姉妹の相続分の計算は兄弟の相続:子どものいない人が亡くなった時の割合で家族図にしています。

遺言で外された兄弟が確かめられること

遺留分がなくても、遺言の内容がそのまま実現されるかを確かめる余地はあります。次の順に見ていきます。

  1. 遺言の写しを手に入れる:遺言執行者がいれば、就任した後に遅滞なく遺言の内容を相続人に通知する義務があります(1007条2項)。兄弟姉妹も相続人なので通知を受けます。自筆の遺言は、家庭裁判所の検認の期日に相続人として出席できます。
  2. 方式を確かめる:自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自分で書き、印を押すことが必要です(968条1項)。財産目録は自書でなくてよい代わりに、各ページへの署名と押印が要ります(同条2項)。公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと公証人が作ります(969条)。なお、2026年6月に成立した民法改正で自筆証書遺言の押印は任意になる予定ですが、施行前の今は押印が要件です。
  3. 作った時の判断する力を確かめる:遺言は15歳から作れます(961条)が、作る時に遺言をする能力が必要です(963条)。重い認知症の診断があった時期と作成日が重なっていないか、介護記録や診療記録の時期を並べて見ます。
  4. 新しい遺言がないかを確かめる:前の遺言と後の遺言が食い違う部分は、後の遺言で撤回したものとみなされます(1023条1項)。日付の新しい遺言が別にないかを探します。
  5. 遺言に書かれていない財産を洗い出す:「自宅を妻に」のように一部の財産だけを指定した遺言なら、書かれていない財産は相続人全員の遺産分割で分けます(907条)。この分割には兄弟姉妹も加わります。
チェックリスト:遺言で外された兄弟姉妹が確かめること
確かめること 手がかり 次の一歩
遺言の写し・検認 遺言執行者の通知、検認期日の呼出し 検認に出席し、原本の状態を見る
方式(自書・日付・氏名・押印) 遺言書の写し・検認調書 方式に疑問があれば弁護士へ
作成時の判断する力 診療記録・介護記録・作成日 時期の重なりを整理して弁護士へ
より新しい遺言の有無 公証役場・法務局での保管の有無 見つかれば内容を比べる
遺言にない財産 通帳・登記・郵便物 相続人全員で遺産分割
借金の有無 督促状・郵便物・借入の契約書 3か月以内に放棄を判断

検認は、遺言書の形や状態を確かめて記録する手続きで、遺言が有効か無効かを判断する手続きではありません(裁判所の案内)。検認が済んだから有効と決まったわけでも、方式に疑問があるから無効と決まったわけでもありません。

遺言の有効性を争うときは弁護士の仕事になる

方式や作成時の能力に疑問があり、遺言の有効性を争うかどうかを考える段階は、個別の事件についての法律判断です。報酬を得て法律事務を扱えるのは弁護士で(弁護士法72条)、このサイトでは「この遺言は無効」といった判断はしません。

弁護士に相談するときは、次の資料をそろえると、短い時間で見通しを聞きやすくなります。

  • 遺言書の写しまたは検認調書の写し
  • 被相続人の戸籍(相続人が誰かが分かるもの)
  • 作成日ごろの診療記録・介護認定の資料・施設の記録
  • 遺言で財産を受け取った人と被相続人の関係が分かる資料
  • 財産の一覧(分かる範囲で)

相談先の種類と探し方は相続手続きの無料相談窓口一覧と相続手続きの専門家の違いと頼み分けにまとめています。遺言の効力そのものの考え方は遺言書の効力:書いて意味があること・ないことで扱っています。

寄与分は使える?介護をしてきた兄弟姉妹の場合

被相続人の介護や事業を長く支えてきた兄弟姉妹が「せめて寄与分を」と考えることがあります。寄与分は、共同相続人の中で被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした人の相続分を増やす制度です(904条の2)。

ただし、寄与分には上限があり、相続財産の価額から遺贈の価額を引いた残りを超えることはできません(904条の2第3項)。全財産が遺言で他の人に渡る場合は、この残りがないため、寄与分で取り分を確保する余地もありません。一部の財産だけを指定した遺言で、遺言にない財産が残っているときに、その遺産分割の中で主張できるかが問題になります。寄与分が認められるかどうかは家庭裁判所の判断で、介護をしたことだけで決まるものではありません。要件は遺産分割で介護の寄与分は認められるかで整理しています。

借金は兄弟にも来る:3か月以内に確かめること

遺言で財産を受け取れない兄弟姉妹も、相続人であることに変わりはありません。そのため、借金については別に考える必要があります。

遺言で相続分が指定されていても、被相続人にお金を貸していた人は、各相続人に法定相続分に応じて請求できます(902条の2)。配偶者と兄弟姉妹が相続人なら、兄弟姉妹全員で4分の1に当たる借金を請求されうるということです(筆者の計算:法定相続分1/4)。財産はもらえないのに借金だけが来る、という事態を避けるには、次のように進めます。

  1. 督促状・契約書・通帳の引き落としから、借金の有無と額を調べる
  2. 相続するか放棄するかを決める期限は、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内(915条1項)。調べきれないときは家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられる
  3. 放棄するなら、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述する(収入印紙800円分と郵便切手)

放棄をすると初めから相続人でなかったものとみなされ、遺言にない財産の遺産分割にも加わらなくなります。手続きと注意点は相続放棄とは:期限3か月の手続き・費用で確かめてください。遺留分のある相続人が請求の期限を数える場合は、遺留分の時効:1年と10年はいつから数えるかへ進んでください。遺留分の額の出し方は遺留分の計算方法と具体例にあります。

よくある質問

Q. 兄弟姉妹の代わりに相続する甥・姪にも遺留分はありませんか?

ありません。甥・姪は、先に亡くなった兄弟姉妹の立場を引き継いで相続人になるため、兄弟姉妹と同じく遺留分を持ちません。遺言で全財産が他の人に渡るときは、甥・姪も遺留分を理由にお金を請求することはできません。

Q. 遺言に「全財産を妻に」とあれば、兄弟姉妹は借金も引き継がずに済みますか?

そうとは限りません。遺言で相続分が指定されていても、亡くなった人にお金を貸していた人は、各相続人に法定相続分に応じて請求できると定められています(民法902条の2)。借金があると分かったら、相続するか放棄するかを決める3か月の期間内に判断します。

Q. 自筆の遺言書を勝手に開けてしまったら、遺言は無効になりますか?

開封したことだけを理由に遺言を無効とする規定は民法にありません。ただし、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人の立会いのもとで開封するものとされ、家庭裁判所の外で開封すると5万円以下の過料の対象になります(1004条3項・1005条)。開けてしまった場合も、そのまま検認の手続きを申し立てます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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