不動産売却の税金で引ける費用:仲介手数料など譲渡費用に入るもの
仲介手数料は、不動産を売ったときの譲渡所得の計算で**売却額から引ける費用(譲渡費用)**です。国税庁は、譲渡費用を「土地や建物を売るために直接かかった費用」とし、仲介手数料、売主が負担する印紙税、測量費などを挙げています。この記事は、引ける費用と引けない費用を表で仕分け、実家を売る場合の費用の振り分けと、税額が下がる大きさを計算します。引ける費用をもらさず拾うほど、利益が小さくなり、税額も下がります。
譲渡費用に入るもの:国税庁の区分
譲渡費用の根拠は、国税庁のタックスアンサーNo.3255とNo.3202です。どちらの費用も、領収書や契約書で金額と支払先が確かめられることが前提になります。
| 費用 | 譲渡費用に | 補足 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 入る | 売るために支払った分 |
| 印紙税(売主負担分) | 入る | 売買契約書に貼った印紙代 |
| 測量費 | 入る | 土地を売るために測量した費用(No.3202の例示) |
| 貸家を売るための立退料 | 入る | 借家人に明け渡してもらうための支払い |
| 土地を売るための建物の取壊し費用 | 入る | その建物の損失額も入る |
| より有利な条件で売るための違約金 | 入る | 契約済みの買主との契約を解除して払うもの |
| 借地権を売るときの名義書換料 | 入る | 地主の承諾を得るための支払い |
| 修繕費 | 入らない | 維持・管理のための費用 |
| 固定資産税 | 入らない | 維持・管理のための費用 |
| 売却代金の取立ての費用 | 入らない | 代金の回収のための費用 |
上の「入る」の項目の多くは、売ると決めた後に、売るために払ったものです。売買契約書の印紙税には軽減措置があり、2027年3月31日までに作る契約書が対象です。たとえば契約金額が1,000万円を超え5,000万円以下なら、本則の2万円が1万円になります(国税庁No.7108)。延長されるかは、毎年12月ごろの税制改正大綱で確かめます。
引けない費用と、取得費との境目
引けない費用のうち、迷いやすいのは次の3つです。
- 固定資産税:所有している間の維持費なので、売主が納めた分は引けません。日割りで買主から受け取った精算金は、収入の側に入れます(FAQ参照)。
- 修繕費:売る前に直した費用でも、維持・管理のための費用にあたり、譲渡費用になりません。
- 売った代金を取り立てる費用:代金の回収にかかる費用は、売るための費用ではないので入りません。
もう一つ、費用の「置き場所」にも注意します。買ったとき(取得したとき)にかかった費用は、譲渡費用ではなく取得費です。購入時の仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、立退料などは取得費に入ります(国税庁No.3252)。取得費の計算は不動産売却の税金計算の減価償却:建物の取得費の計算方法で、建物の分を減らす手順まで示しています。
タックスアンサーに名前が出てこない費用は、所得税基本通達33-7の考え方に当てはめて仕分けます。通達は、譲渡費用を次の2つに分けています。
- 売るときに支払った仲介手数料、運搬費、登記や登録に要する費用など、売るために直接かかった費用
- 上の1以外で、借家人の立退料、土地を売るための建物の取壊し費用、より有利な条件で売るための契約解除の違約金など、譲渡価額を増やすために払った費用
この2つに当てはめると、迷いやすい3つは次のように整理できます。
| 費用 | 当てはめの結果 | 申告前にすること |
|---|---|---|
| 抵当権を抹消するための登記費用 | 売買契約で売主が抹消を引き受け、引渡しまでに支払う費用は、1の「登記に要する費用」に近く、入る側で整理するのが通達の文言に沿う | 契約書に抹消の負担者が書かれているか確かめ、司法書士の領収書を残す。国税庁の公表ページに名指しの記載はないので、税務署で最終確認 |
| 引越し代 | 売るために直接かかった費用でも、価額を増やすための費用でもないので入らない | 売却の費用としては計上しない |
| 遺品整理・家財の処分の費用 | 同上。入らない。ただし土地を売るために建物を壊すときの取壊し費用は、2の区分で入る | 建物の取壊しと一緒に頼んだ場合は、請求書で取壊し分を分けてもらう |
名指しの記載がない費用の扱いは、この表が結論です。税務署に聞くときは、電話番号と受付時間を譲渡所得税の相談窓口:税務署の電話相談と確定申告会場の使い方で確かめてから、契約書と領収書を手元に置いて聞きます。
計算例:仲介手数料と税額の関係
仲介手数料には法律で上限があり、売買価格が400万円を超える場合は「売買価格×3%+6万円」に消費税を加えた額が上限です(税込で、400万円超の部分は3.3%)。実際の額は、媒介契約書で決めた額です。上限の仕組みは仲介手数料の上限と計算式:800万円以下の空き家の特例も解説で確かめられます。
筆者の仮の数字で、譲渡費用の合計と、税額への効果を計算します。売った価額は3,800万円、2026年に売り、長期の税率(約20.315%)で、特例は使わない前提です。
| 費用 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 仲介手数料(上限の目安) | (3,800万円×3%+6万円)×1.1 | 132万円 |
| 印紙税(軽減後) | 契約金額1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
| 測量費 | 領収書の額 | 40万円 |
| 譲渡費用の合計 | 132+1+40 | 173万円 |
譲渡費用173万円の分だけ利益が小さくなるので、税額は173万円×20.315%=約35.1万円下がります(検算:173×0.2=34.6、173×0.00315=0.54、合計35.14)。逆に、領収書がなくて費用を拾えないと、この分の税金を余分に払うことになります。計算の全体の手順は譲渡所得税の計算方法:売却額−取得費−譲渡費用−控除の手順にあります。
実家を売る場合の費用の振り分け
相続した実家を売るときは、費用の種類が多く、取得費・譲渡費用・どちらでもないものに分かれます。
| 費用 | 振り分け | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 相続登記の登録免許税・不動産取得税 | 取得費 | 事業に使っていない建物・土地の場合。概算取得費の5%を使うときは加えられない(No.3252・No.3258) |
| 仲介手数料・売主負担の印紙税・測量費 | 譲渡費用 | 売るために直接かかった費用 |
| 建物の解体費用 | 譲渡費用(土地を売るために取り壊したとき) | 空き家の特例との関係は、解体の記事を先に読む |
| 遺品整理・家財の処分 | 入らない | 通達33-7の2区分に当たらない(前の節の表) |
| 売るまでの固定資産税・草刈り・管理費 | 引けない | 維持・管理の費用 |
解体を考えている人は、先に壊すか、売ってから壊すかで、使える特例や税額が変わります。判断材料は空き家の解体:費用の目安・解体前後の固定資産税・売るなら先か後かにあります。遺品整理の費用の見方は遺品整理の費用は何で決まる?間取りから目安をつける方法と見積書の内訳で確かめられます。
内訳書への書き方と、領収書の集め方
申告では、譲渡所得の内訳書の3面に「3 譲渡するために支払った費用」の欄があり、費用の種類、支払先の住所と氏名、支払年月日、支払金額を書きます。国税庁の記載例(事例1)では、仲介手数料3,366,000円、測量費209,000円、収入印紙代30,000円が並んでいました(この事例は共有持分2分の1の土地の売却なので、持分に応じた額を計算欄に移しています)。書く前に、次をそろえます。
- 媒介契約書と、仲介手数料の請求書・領収書(支払日と金額が分かるもの)
- 測量や解体を頼んだ会社の請求書・領収書
- 売買契約書(貼った印紙の額が分かるもの)
- 固定資産税の精算書(買主から受け取った精算金の額を確かめるため)
支払先ごとに費用の名目を分け、合計が内訳書の「譲渡費用」欄と合うように並べると、書き間違いに気づきやすくなります。申告の全体の流れは不動産売却の確定申告:やり方・期限・必要書類を順番に解説に、売却にかかる費用全体の早見表は不動産売却にかかる費用一覧:手数料・税金・登記・解体の早見表にあります。
よくある質問
Q. 買主から受け取った固定資産税の日割り精算金は、収入にも費用にもなりますか?
売主が1月から引き渡しまでの分として納めた固定資産税は、費用になりません。一方、引き渡しの日から年末までの分として買主から受け取った精算金は、譲渡価額に含めて書きます。国税庁の記載例が、その書き方を示しています。
Q. 売るために払ったリフォーム代や修繕費は、費用として引けますか?
修繕費は譲渡費用に入らないと、国税庁が書いています。資産の維持や管理のための支出にあたるためです。工事の領収書は残しておき、申告の前に税務署の窓口で、その工事の扱いを聞いてください。
Q. 費用を引いた結果、赤字になったら、ほかの所得と通算できますか?
土地や建物の譲渡損失は、一定の居住用財産の特例を除き、給与など他の所得と損益通算できません。赤字になったときの特例は、不動産売却が赤字のときの記事で要件を確かめられます。
出典・参考にした公的な情報
- No.3255 譲渡費用となるもの(国税庁)
- 所得税基本通達33-7(譲渡に要した費用の意義)(国税庁)
- No.3202 譲渡所得の計算のしかた(国税庁)
- No.3252 取得費となるもの(国税庁)
- No.3270 相続や贈与により取得した場合の取得費と取得時期(国税庁)
- No.7108 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置(国税庁)
- 令和7年分 譲渡所得の内訳書の記載例(事例1)(国税庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。