遺産分割がまとまらない時の相続税の申告:遺産分割未了での手順
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遺産分割未了でも、相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)は延びません。まとまっていない財産は、各相続人が法定相続分で取得したものとして計算し、期限内に申告・納税します(国税庁 No.4208)。このとき配偶者の税額の軽減と小規模宅地等の特例は使えませんが、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を付け、期限から3年以内に分割すれば、後から使えます。
遺産分割未了の相続税の申告で、先に知っておく3つのこと
国税庁 No.4208・No.4158 と相続税法の条文から、未分割の申告で動かない点を3つにまとめます。
| 決まり | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 期限は延びない | 10か月以内に申告・納税。期限が土日祝なら翌日 | 相続税法27条、No.4205 |
| 計算は法定相続分で | 未分割の財産は民法の相続分(寄与分を除く)で取得したものとして各人の課税価格を出す | 相続税法55条、No.4208 |
| 特例は「3年以内の分割」で後から | 配偶者の税額の軽減・小規模宅地等の特例は、申告期限から3年以内に分割すれば修正申告・更正の請求で適用できる | 相続税法19条の2、租税特別措置法69条の4、No.4208 |
「分割が終わるまで申告しない」を選ぶと期限後申告になり、延滞税や無申告加算税の対象になりえます(詳しくは相続税の申告をしないとどうなる?無申告加算税・延滞税と期限後申告)。分割の話し合い自体に期限がない点は遺産分割に期限はある?10年を過ぎると変わることと相続税の期限で整理しています。
未分割で申告する手順(期限10か月までの7ステップ)
- 申告が要るかを一次判定する。 遺産の総額(債務・葬式費用を引いた後)が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかを見ます。数え方は相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×人数で一次判定する方法へ。
- 財産と債務の一覧を、相続人全員で同じものにする。 分け方でもめていても、「何がいくらあるか」は共通の資料にしておくと、後の修正申告・更正の請求が楽になります。
- 法定相続分で各人の課税価格を出す。 配偶者と子2人なら、配偶者1/2・子は各1/4(民法900条)。遺言で一部の財産の行き先が決まっている場合や、一部だけ分割が済んでいる場合は、その部分は決まった人の取得として扱い、残りを法定相続分で割り振ります。
- 特例を使わずに税額を計算する。 配偶者の税額の軽減と小規模宅地等の特例を入れない額が、期限内に納める税額になります。
- 分割見込書を添付する。 後で配偶者の軽減を使うなら申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を付けます(No.4158)。小規模宅地等の特例も、施行規則23条の2で「分割されていない事情と分割の見込みの詳細」を明らかにした書類の添付が求められています。
- 申告書を出す。 提出先は亡くなった人の住所地を所轄する税務署です。相続人が共同で1通出すことも、別々に出すこともできます。
- 納税資金を用意する。 未分割でも預金の一部は払戻し制度で引き出せます(預金の相続の仮払い制度:遺産分割前に引き出せる上限と手続き)。一度に払えないときの延納は相続税の延納・物納:要件と利子税、申請から許可までの流れへ。
見込書に書く内容の例:「分割されていない理由:相続人間で不動産の取得者について協議中のため」「分割の見込み:協議を続け、まとまらない場合は家庭裁判所の調停を申し立てる予定」
筆者の計算:配偶者の軽減が使えないと、期限内に納める額がどう変わるか
特例が使えない影響が大きいのは配偶者です。次は仕組みを見るための仮の数字です(筆者の計算。小規模宅地等の特例・生命保険の非課税などは考えません)。
- 遺産の課税価格の合計2億円、相続人は配偶者と子2人(基礎控除4,800万円)
- 課税遺産総額1億5,200万円を法定相続分で分けると、配偶者7,600万円・子各3,800万円
- 相続税の総額:7,600万円×30%−700万円=1,580万円、3,800万円×20%−200万円=560万円×2人。合計2,700万円
| 人 | 未分割での申告(法定相続分・軽減なし) | 分割後に配偶者が1億円を取得し軽減を適用 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 2,700万円×1/2=1,350万円 | 0円(取得額が1億6,000万円以内) |
| 子A | 675万円 | 675万円 |
| 子B | 675万円 | 675万円 |
| 合計 | 2,700万円 | 1,350万円 |
この例では、期限内には配偶者も1,350万円を納め、3年以内に分割がまとまれば更正の請求で戻ってくる流れになります(検算:2,700万円×1億円÷2億円=1,350万円、2,700万円×5,000万円÷2億円=675万円)。分割の内容が変われば子の税額も変わるので、表は「法定相続分どおりに分けた場合」の一例です。
分割がまとまった後:4か月以内の更正の請求と、3年を過ぎそうなときの承認申請
| 時点 | 例(2026年4月15日に死亡を知った場合) | すること |
|---|---|---|
| 申告期限 | 2027年2月15日 | 法定相続分で申告・納税、分割見込書を添付 |
| 分割の期限 | 2030年2月15日(申告期限から3年) | ここまでに分割すれば特例を後から適用できる |
| 承認申請の期限 | 2030年4月15日(3年を経過する日の翌日から2か月) | 3年以内に分割できないやむを得ない事情があるとき |
| 分割の後 | 分割を知った日の翌日から4か月以内 | 税額が減る人は更正の請求、増える人は修正申告 |
分割がまとまったら、取得した額が法定相続分による額と違う人は申告をやり直します。税額が減る人は分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求ができ(相続税法32条1項1号)、増える人は修正申告をします(No.4208)。配偶者の軽減の請求では、遺産分割協議書の写しと相続人全員の印鑑証明書などを付けます(No.4158)。
3年以内にまとまりそうにない場合、配偶者の税額の軽減では、税務署長の承認を受ければ期限を延ばせます(No.4158)。相続税法施行令4条の2が「やむを得ない事情」として挙げるのは、次の場合です。
- 3年を経過する日に、相続に関する訴えが起こされている
- 3年を経過する日に、和解・調停・審判の申立てがされている
- 遺言や審判などで遺産の分割が禁止されている、または相続の承認・放棄の期間が伸ばされている
- そのほか、分割の遅れに税務署長がやむを得ない事情があると認める場合
申請書は、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に出します。承認されると、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内の分割で軽減を使えます。小規模宅地等の特例の側の扱いは、申請の前に税務署か税理士に確かめてください。申請から2か月以内に承認・却下の処分がなければ承認されたものとみなされます(施行令4条の2第4項)。話し合いで決まらないときの家庭裁判所の手続きは遺産分割調停の流れ:申立ての費用・書類・期間と1回目の準備にまとめています。
申告と並行して進めること:相続登記と、税理士への頼み方
不動産がある場合、分割が決まらなくても相続登記の申請義務(取得を知った日から3年以内)は進みます。分割前でも「相続人申告登記」で義務を果たせるので、相続人申告登記とは:遺産分割がまとまらない時の義務の果たし方を見てください。分割の途中で相続人が亡くなり次の相続が10年以内に重なったときは、10年以内に二次相続が起きたら:相次相続控除の計算と要件の控除も関わります。
未分割の申告は、法定相続分での計算、特例を入れた場合との比較、分割後の更正の請求と、多くの場合は申告を2回以上することになる手続きです。相続人が別々の税理士に頼むと評価額が食い違うことがあるので、頼むなら1つの事務所に全員で頼むか、財産の一覧だけは共有しておくと後が楽になります。個別の税額の計算や申告書の作成は税理士の業務です(税理士法52条)。
紹介サービスを使う場合、申告をするのは紹介された税理士です。紹介先が登録税理士かは税理士紹介サービスを使う前に確かめる4つの点で確かめます。見積もりでは、分割後の更正の請求まで報酬に含まれるかを確かめてください。
「相続税 申告 遺産分割未了」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。
よくある質問
Q. 未分割で申告するとき、相続人どうしで申告書を別々に出してもよいですか?
別々に出すこともできます。相続税法27条5項は、相続人が複数いる場合に共同で1通の申告書を出すことが「できる」と定めており、義務ではありません。ただし財産の一覧や評価額が人ごとに食い違うと、後の修正の手間が増えます。
Q. 未分割のあいだ、亡くなった人の預金から相続税を払えますか?
民法909条の2の払戻し制度で、相続人は1人で一部を引き出せます。額は「相続開始時の預金額×1/3×その人の法定相続分」で、金融機関ごとに150万円が上限です。引き出した分は遺産の一部を分割で取得したものとみなされます。
Q. 介護をしてきたので寄与分を主張しています。未分割の申告に反映できますか?
反映しません。相続税法55条は、未分割の財産を民法の相続分で取得したものとして計算すると定め、その相続分から寄与分(民法904条の2)を除いています。寄与分が分割で認められたら、その結果をもとに更正の請求や修正申告をします。
出典・参考にした公的な情報
- No.4208 相続財産が分割されていないときの申告(国税庁)
- No.4158 配偶者の税額の軽減(国税庁)
- No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)(国税庁)
- No.4205 相続税の申告と納税(国税庁)
- 相続税法 第19条の2・第27条・第32条・第55条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 相続税法施行令 第4条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 租税特別措置法 第69条の4・同法施行規則 第23条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第900条・第909条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。