相続税と申告 / Q&A

相続税と養子縁組:孫を養子にすると減る額と、数えられる人数の上限

この記事のもくじ
  1. 孫を養子にすると相続税が減る仕組み
  2. 数えられる養子の上限:実子あり1人・なし2人
  3. 筆者の計算例:孫養子1人を加えたときの税額
  4. 縁組の前に考えたい注意点
  5. 相談するときに用意するもの

孫などを養子にすると、相続税は減ることがあります。養子が増えると基礎控除などで数える「法定相続人の数」が増えるからです。ただし数えられる養子は、実子がいれば1人、いなければ2人まで(相続税法15条2項)です。 さらに、孫養子は(代襲相続人でなければ)相続税額が2割加算され、税負担を不当に減らす目的と認められる縁組は人数に入れない規定(63条)もあります。減る額は家族の財産と人数で大きく変わるので、この記事では計算の仕組みと、縁組の前に考える判断材料を示します。

孫を養子にすると相続税が減る仕組み

養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し(民法809条)、実子と同じ「子」として相続人になります。相続税では、法定相続人の数が次の3か所に効きます。

人数が効くところ 1人増えたときの変化 根拠
遺産に係る基礎控除 600万円増える 相続税法15条
死亡保険金・死亡退職金の非課税枠 それぞれ500万円増える 相続税法12条
相続税の総額の計算 法定相続分で分ける人数が増え、低い税率の区分を使える 相続税法16条

3つめの効果が大きいのは、相続税の税率が累進(10%〜55%)だからです。課税遺産を法定相続分で分けたと仮定して税率を掛けるので、分ける人数が増えると1人あたりの金額が下がり、適用される税率も下がることがあります(国税庁 No.4155)。

数えられる養子の上限:実子あり1人・なし2人

相続税の計算で数える養子の上限は、次のとおりです(国税庁 No.4170、相続税法15条2項)。

家族の形 民法上の相続人の数 相続税で数える法定相続人の数
実子1人・養子2人 3人 2人(実子1+養子1)
養子3人だけ 3人 2人(養子2)
配偶者・実子2人・養子1人 4人 4人(上限内)

次の人は、養子でも実子とみなされ、上限の対象になりません(相続税法15条3項)。

  • 特別養子縁組による養子
  • 配偶者の実子で、被相続人の養子になった人(いわゆる連れ子養子)
  • 被相続人の子が先に亡くなったなどで、代わりに相続人になった孫など(代襲相続人)

上限は相続税の数え方だけの話です。民法上は養子に人数の制限がなく、相続分も実子と同じです。民法側の扱いは養子は法定相続人になる?実子との割合の違いと相続税の数え方で整理しています。

筆者の計算例:孫養子1人を加えたときの税額

前提(筆者の設定):配偶者はすでに亡く、相続人は子2人。課税価格の合計は2億円で、小規模宅地等の特例など他の控除・特例は考えません。税率は国税庁の速算表(No.4155)で計算します。

比較表:孫養子1人を加える前と後の相続税の総額(筆者の計算)
項目 A:子2人 B:子2人+孫養子1人
法定相続人の数 2人 3人
基礎控除額 4,200万円 4,800万円
課税遺産総額 1億5,800万円 1億5,200万円
1人あたり(法定相続分) 7,900万円 約5,066万6,667円
1人あたりの税額(30%−700万円) 1,670万円 820万円
相続税の総額 3,340万円 2,460万円

Bで、3人が遺産を3分の1ずつ取得すると、各人の税額は820万円です。孫養子は2割加算の対象なので、孫の税額は820万円×1.2=984万円になります(国税庁 No.4157)。3人の合計は820万円+820万円+984万円=2,624万円で、Aより716万円少なくなります(筆者の計算)。

検算:Bの1人あたりは1億5,200万円÷3で端数が出るため、先に税率を掛けて1億5,200万円×30%÷3=1,520万円とし、1,520万円−700万円=820万円、3人分で2,460万円です(実際の申告では1人分の額の1,000円未満を切り捨てるので、数十円の差が出ます)。Aは7,900万円×30%−700万円=1,670万円、2人分で3,340万円です。

孫が財産を取得しない分け方なら、2割加算は生じず、総額2,460万円を子2人で負担します。この場合はAより880万円少なくなります(筆者の計算)。ただし、孫に財産を渡すかどうかは、税額だけでなく家族の納得で決まる話です。2割加算の仕組みは相続税の2割加算とは:孫・兄弟姉妹・甥姪が対象になる理由で詳しく扱っています。

縁組の前に考えたい注意点

税額が減る見込みがあっても、縁組は身分関係を変える手続きです。次の点を家族で確かめてから決めます。

  1. 税負担を不当に減らす目的とみなされるおそれ:相続税法63条は、養子を人数に入れることが「相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合」、税務署長が人数に入れないで計算できると定めています。上限内の養子でも、縁組の実態が問われることがあります。
  2. ほかの子の遺留分が減る:子が2人なら各自の遺留分は遺産の4分の1ですが、孫養子が加わり子が3人になると6分の1になります(民法1042条、2分の1×3分の1。筆者の計算)。孫の親でない子にとっては取り分が減るので、争いのきっかけになりえます。遺留分の考え方は遺留分とは?もらえる割合・請求できる人・期限で確かめられます。
  3. 孫養子の2割加算:孫養子は一親等の血族に当たるものの、代襲相続人でない限り2割加算の対象です(相続税法18条2項)。
  4. 縁組の手続き:未成年の孫を養子にするときは家庭裁判所の許可は要りませんが(民法798条ただし書)、配偶者のいる人は配偶者と一緒に縁組をします(795条)。孫が15歳未満なら、親などの法定代理人が代わりに承諾します(797条)。
  5. 18歳未満の孫は未成年者控除の対象:孫養子は法定相続人なので、18歳未満なら未成年者控除(10万円×18歳までの年数)を使えます。控除の一覧は相続税の控除一覧:配偶者・未成年者・障害者・相次相続の早見表にあります。

相談するときに用意するもの

養子縁組が家族の相続税にどう効くかを判断し、税額を試算するのは税理士の仕事です(税理士法52条)。相談の前に次をそろえておくと、短い時間で具体的な話ができます。

相続税に詳しい税理士を探す方法として、税理士紹介サービスを使う選択肢もあります。紹介先が登録税理士かは税理士紹介サービスを使う前に確かめる4つの点で確かめ、見積もりでは養子縁組を含む相続の相談経験と報酬の内訳を確かめてください。申告までの全体の流れは相続税の申告の流れ:10か月の期限までにやることのスケジュールで確かめられます。

「相続税 養子縁組」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。

よくある質問

Q. 養子を3人にすれば、基礎控除は3人分増えますか?

増えません。相続税の計算で数える養子は、実子がいれば1人、実子がいなければ2人までです(相続税法15条2項)。民法上は3人とも相続人になりますが、基礎控除・死亡保険金の非課税枠・相続税の総額の計算では、上限を超える養子は数えません。

Q. 子が亡くなっていて、その子(孫)を養子にした場合も2割加算されますか?

加算されません。孫が亡くなった親の代わりに相続する代襲相続人に当たる場合は、養子であっても2割加算の対象外です(相続税法18条2項ただし書、国税庁 No.4157)。この場合、その孫は基礎控除の人数でも実子とみなされます。

Q. 未成年の孫を養子にするには、家庭裁判所の許可が要りますか?

自分や配偶者の直系卑属(孫など)を養子にする場合は、未成年でも家庭裁判所の許可は要りません(民法798条ただし書)。ただし、配偶者のいる人が未成年者を養子にするときは配偶者と一緒に縁組をすること(795条)、15歳未満の孫は親などの法定代理人が代わりに承諾すること(797条)が定められています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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