相続放棄した人に相続登記の義務化は関係ある?義務の対象者の整理
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家庭裁判所で相続放棄が受理された人は、相続登記の義務の対象外です。放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされ(民法939条)、相続登記の申請義務を負うのは「相続により所有権を取得した者」だからです(不動産登記法76条の2第1項)。ただし、家族に「何もいらない」と言っただけ、遺産分割で何も受け取らなかっただけの人は、法律上の放棄をしていないので扱いが違います。義務は、残った相続人と、放棄で相続人になった次順位の人に移ります。
相続放棄が受理された人は、相続登記の義務化の対象外になる
相続登記の申請義務は、相続で不動産の所有権を取得した人にかかります。期限は、自分のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内です(不動産登記法76条の2第1項)。相続放棄は家庭裁判所に申述して受理されるもので(民法938条)、受理されると、その相続については初めから相続人とならなかったものとみなされます(939条)。相続人でない以上、相続で所有権を取得していないので、登記の申請義務も生じません。
気をつけたいのは、「放棄」という言葉が家族の間で広く使われていることです。法律上の相続放棄と、話し合いで取り分をゼロにすること(いわゆる事実上の放棄)は別物です。
| 立場 | 申請義務 | 3年の数え方・ポイント |
|---|---|---|
| 家庭裁判所で相続放棄が受理された人 | なし | 初めから相続人でないとみなされる(民法939条) |
| 家族に「いらない」と伝えただけの人 | あり(遺産分割が成立するまで) | 分割前は相続人全員が法定相続分で共有している状態 |
| 遺産分割で、その不動産を取得しなかった人 | 分割の成立で義務がなくなる | 法務省Q&Aの説明 |
| 遺産分割でその不動産を取得した人 | あり | 取得を知った日から3年以内。法定相続分の登記や相続人申告登記の後に分割したときは、分割の日から3年以内 |
| 放棄で新たに相続人になった次順位の人 | あり | 自分が相続人になり、取得したことを知った日から3年以内 |
| 相続人申告登記をした人 | 申し出た本人は義務を果たしたとみなされる | その後の遺産分割で取得したら、分割の日から3年以内に登記 |
放棄の手続きそのもの(申述先、収入印紙800円、受理までの流れ)は、相続放棄とは?期限3か月の手続き・費用・してはいけないことで通して説明しています。
放棄した人が出たあと、残った相続人の義務と手順
放棄した人がいると、相続人の顔ぶれと法定相続分が変わります。残った相続人は、新しい顔ぶれで遺産分割をするか、法定相続分の共有で登記するかを決め、3年以内に義務を果たします。
| 放棄がない場合 | 長男が放棄した場合 | |
|---|---|---|
| 相続人 | 母・長男・次男 | 母・次男 |
| 法定相続分 | 母1/2、長男1/4、次男1/4 | 母1/2、次男1/2 |
配偶者と子が相続人のとき、配偶者が1/2、子が残り1/2を等分します(民法900条)。長男は初めから相続人でないとみなされるので、子の1/2は次男1人のものになる、という筆者の計算です。長男の子(孫)が代わりに相続することもありません。相続放棄は、代襲相続が起きる理由(死亡・欠格・廃除、887条2項)に入っていないからです。
残った相続人の進め方は次の順番です。
- 放棄が受理されたことを書面で確かめる:放棄した人に受理通知書を見せてもらいます。登記や金融機関の手続きで示す書面が要るときは、受理した家庭裁判所に受理証明書を申請できます(収入印紙150円分)。
- 相続人と財産を確定する:放棄後の顔ぶれで、誰が相続人かを戸籍で確かめます。不動産の漏れがないかは相続登記の前に名寄帳で親の不動産を漏れなく調べる取り方で調べられます。
- 遺産分割をするか、法定相続分で登記するかを決める:遺産分割に期限はありませんが(民法907条1項)、登記の3年は動いています。話し合いが長引きそうなら、相続人申告登記で義務を果たしておく方法があります。その手順は相続人申告登記とは:遺産分割がまとまらない時の義務の果たし方で扱っています。
- 3年以内に登記を申請する:期限や過料の考え方は、正本の相続登記の義務化:期限3年・過料10万円以下・相続人申告登記で確かめてください。
全員が放棄したとき・次順位の相続人に回ったとき
子が全員放棄すると、相続権は直系尊属(親・祖父母)へ、直系尊属がいなければ兄弟姉妹へ移ります(民法889条1項)。次順位の人は、前の順位の人の放棄を知らないことも多く、気づいた時点で相続放棄の3か月と相続登記の3年の両方が問題になります。登記の3年は「自分のために相続の開始があったことを知り、かつ取得を知った日」から数えるので、先順位の放棄を知らなかった期間は数えに入りません。次順位への知らせ方は相続放棄したら次は誰が相続人?次順位への連絡と全員放棄の流れで扱っています。
次順位まで全員が放棄すると、相続人のあることが明らかでない状態になり、相続財産は法人として扱われます(民法951条)。利害関係人などの請求で家庭裁判所が相続財産清算人を選びます(952条)。この場合、登記の申請義務を負う相続人はいませんが、放棄した人でも、放棄の時に財産を現に占有していれば、相続人や清算人に引き渡すまで保存する義務があります(940条)。空き家を占有していた人が放棄した場合の注意は、相続放棄した空き家はどうなる?保存義務の範囲と手放すまでの流れで整理しています。
放棄を迷っている間に、相続登記の期限を気にしなくてよい理由
放棄を考えている人が「登記の義務化で急がないといけないのでは」と焦る必要はありません。期限の長さが大きく違うからです。
| 期限 | 起算点 | 長さ | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 相続放棄 | 自己のために相続の開始があったことを知った時 | 3か月以内(家庭裁判所で伸長できる) | 民法915条1項 |
| 相続登記 | 相続の開始と所有権の取得を知った日 | 3年以内 | 不動産登記法76条の2第1項 |
放棄するかどうかは3か月の中で決め、放棄しない相続人だけで登記を進めるのが自然な順番です。放棄を考えている間は、不動産を売る、名義を自分に移して担保に入れるといった動きは控え、財産の調べと判断に時間を使います。
2024年4月1日より前に開始した相続で登記が済んでいない不動産も、義務化の対象です。この過去分の期限は最短で2027年3月31日(令和9年3月31日)で、取得を知った日が2024年4月1日以後ならその日から3年です。古い相続で放棄した人・しなかった人が入り混じっている場合は、昔の相続も相続登記の義務化の対象?過去分の期限もあわせて確かめてください。相続人に判断能力が落ちた人がいる場合は、次の相続人に認知症の人がいる場合の相続登記の義務化に進んでください。
よくある質問
Q. 相続放棄をしたのに、法務局から相続登記の催告が届いたらどうすればいいですか?
催告は、登記官が遺言や遺産分割協議書などから義務違反を知った場合に、申請を促すために出すものです。放棄が受理されていれば相続人ではないので、家庭裁判所の受理通知書や受理証明書を手元に用意して、相続人でないことを催告を出した法務局に伝えます。提出する書類の形は、その法務局に確かめてください。
Q. 遺産分割で家をもらわなかった兄弟にも、相続登記の義務は残りますか?
遺産分割をしていない間は、相続人全員が法定相続分で不動産を共有している状態なので、全員に申請義務があります。遺産分割がまとまり、その不動産を別の相続人が取得した場合は、取得しなかった兄弟の義務はなくなると法務省のQ&Aで説明されています。
Q. 相続放棄と相続登記は、どちらを先に進めればいいですか?
相続放棄を考えているなら、放棄の判断と申述を先にします。放棄の期限は相続の開始を知った時から3か月以内、相続登記の義務は取得を知った日から3年以内で、放棄の期限のほうがずっと早く来るからです。放棄しない人どうしの遺産分割と登記は、放棄の結果が出てから進めます。
出典・参考にした公的な情報
- 不動産登記法 第76条の2・第76条の3・第164条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第887条・第889条・第900条・第907条・第915条・第938条・第939条・第940条・第951条・第952条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 相続登記の申請義務化に関するQ&A(法務省)
- 相続登記の申請義務化特設ページ(法務省)
- 相続の放棄の申述(裁判所)
- 家事事件Q&A(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。