一戸建ての売却の流れ:境界・建物の状態の確認と売り方の選び方
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一戸建ての売却は、査定 → 媒介契約 → 売り出し → 売買契約 → 引き渡しの順に進みますが、マンションと違うのは、土地の境界と建物の状態を売主が自分で確かめて買主に示す必要がある点です。境界がはっきりしない、雨漏りなどの不具合を伝えていない、という2つが売った後のもめごとの元になりやすいので、査定を頼む前後に書類と現地で確かめておきます。そのうえで、仲介で売るか買取にするか、古家付きか更地かを、手取りと時間で比べて選びます。
一戸建ての売却の流れ:7つの段階と売主が準備すること
| 段階 | 売主がすること | 一戸建てで特に確かめること |
|---|---|---|
| 1. 書類を集める | 登記事項証明書、公図、地積測量図、建物図面、購入時の契約書を取り寄せる | 面積が登記と実際で合っているか |
| 2. 境界を確かめる | 境界標を探し、隣地との境を確かめる | 越境(塀・屋根・枝)があるか |
| 3. 建物の状態を把握する | 不具合の書き出し、必要ならインスペクション | 雨漏り・シロアリ・傾き・給排水 |
| 4. 査定と売り方の決定 | 複数社に査定を頼み、根拠を聞く | 古家付きか更地か、仲介か買取か |
| 5. 媒介契約と売り出し | 媒介契約を結び、価格を決める | 内見の立ち会いと鍵の管理 |
| 6. 売買契約 | 告知書を出し、契約書を確かめて署名 | 境界の明示、契約不適合の特約 |
| 7. 決済・引き渡し | 残代金の受け取り、登記、鍵の引き渡し | ローンの返済と抵当権の抹消 |
1の書類は、法務局の窓口やオンラインで請求して取れます。登記事項証明書で名義と面積、公図で隣地との位置関係、地積測量図で過去に測った境界の位置と面積を確かめます。地積測量図は、昔に分筆などをしていない土地では残っていないこともあります。購入時の契約書や重要事項説明書は、後で税金の計算(取得費)にも使うので、見つけたら売却の書類と一緒に保管してください。
相続した家なら、1の前に相続登記で名義を相続人に変える必要があります。全体の順番は相続不動産の売却の流れ、売却の段階ごとの期間は不動産売却の流れで扱います。
境界と面積の確かめ方:一戸建て売却で最初に見ること
一戸建ての買主は、土地の広さと隣との境が分かることを重く見ます。売主の確かめ方は次のとおりです。
- 現地で境界標を探す:土地の角に、コンクリートや金属の杭・プレートが入っていることが多い。塀の下や植え込みに隠れていないかを見る。
- 地積測量図と照らす:杭の位置と図面の位置、辺の長さが合うかを確かめる。
- 隣地の所有者と確認する:杭がない・ずれている場合は、土地家屋調査士に測量を頼み、隣の所有者に立ち会ってもらって境を確かめる。
- 越境を確かめる:塀・雨どい・屋根・エアコンの室外機・庭木の枝が隣にはみ出していないか、隣からはみ出してきていないか。枝の扱いは空き家の苦情が来たらで扱います。
ここで知っておきたいのが「筆界」と「所有権の範囲」の違いです。筆界は、土地が登記されたときにその範囲を区切るものとして決められた線で、所有者どうしの合意で動かすことはできません(法務省「筆界特定制度」)。隣の人と話しても筆界が分からないときは、法務局の筆界特定登記官に筆界特定を申請できます(不動産登記法131条)。申請の手数料は土地の価格で決まり、法務省の例では、対象の2つの土地の価格の合計が4,000万円なら8,000円です。手続きの中で測量が要るときは、その費用も申請人の負担になります。筆界特定は所有権がどこまであるかを決める手続きではないので、所有権の争いになっているなら弁護士への相談を考えます。
境界の確認がどこまで進んでいるかは地域でも違います。土地の境界や面積を調べる国の地籍調査は、2024年度(令和6年度)末時点で、全国の対象地域の53%しか終わっていません(国土交通省、2025年6月27日公表)。測量の費用・期間と、売るときにどこまで測るかの考え方は土地の売却に測量は必要?で詳しく扱います。
建物の状態の確かめ方:告知書とインスペクション
売主は、引き渡した建物が契約の内容に合わないとき、買主から修理や代金の減額、損害賠償、解除を求められることがあります(民法562条〜564条、契約不適合責任)。どんな状態の建物を売るのかを契約の内容としてはっきりさせておくことが、売主を守ることにもつながります。
告知書(物件状況等報告書)に書くことの例:
- 雨漏りの有無と、あった場合の場所・時期・修理の内容
- シロアリの被害や駆除の履歴
- 建物の傾き、床のきしみ、壁のひび
- 給排水管の水漏れ・詰まり、給湯器の故障
- 増改築やリフォームの時期と内容
- 近隣とのもめごと、騒音や臭いなど、買主が知りたいと思われること
相続した家で住んでいなかった場合は、分からないことも多いはずです。そのときは推測で「問題なし」と書かず、「分からない」と書きます。不具合を知りながら告げなかった場合は、責任を負わない特約があっても責任を免れないとされているからです(民法572条)。
**建物状況調査(インスペクション)**は、建築士で国の講習を修了した人が、基礎・柱・壁などの構造の部分や、屋根・外壁など雨水の入るのを防ぐ部分を、目で見るなどの方法で調べるものです(宅建業法施行規則15条の7・15条の8)。不動産会社は、媒介契約書に調査をする人のあっせんの有無を書くことになっています(宅建業法34条の2第1項4号)。標準媒介契約約款の注記のとおり、調査は不具合がないことを保証するものではありませんが、売る前の状態を記録として残せるので、古い家ほど検討する価値があります。売主の責任の範囲の決め方は売主の契約不適合責任で扱います。
一戸建ての売却方法の選び方:仲介か買取か、古家付きか更地か
一戸建ての売り方は、大きく2つの軸で選びます。
| 選び方 | 向いている家・人 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 仲介で古家付きのまま売る | 建物がまだ使える、買主が直して住む地域 | 建物の状態の告知と責任の範囲を決める |
| 仲介で更地にして売る | 新築用地を探す人が多い地域 | 解体費を先に払う。1月1日をまたぐと固定資産税の住宅用地特例が外れる |
| 不動産会社の買取 | 早く現金にしたい、傷みが激しい、荷物が多い | 価格は仲介より低くなりやすい。売主にクーリング・オフはない |
古家付きか更地かは、壊したら戻せないので、両方の前提で査定を頼んでから決めます。解体の費用や税の扱いは空き家の解体、仲介と買取の違いは不動産の買取と仲介の違いにまとめています。不動産会社が広告や注文を受けるときは、自分が買主になる(買取)のか、仲介(媒介)なのかを明らかにする義務があります(宅建業法34条)。チラシや電話で声をかけてきた会社には、どちらなのかを最初に聞いてください。
一括査定を使うと、複数の会社の査定額と根拠を比べられます。査定額は売れる値段ではなく、各社の見込みです。申し込むと複数社から連絡が来ることがあり、売るかどうかは査定の後に決めて構いません。依頼のときに「古家付きと更地の両方で」「境界標の有無」「分かっている不具合」を伝えると、根拠のそろった査定を比べやすくなります。
一戸建ての売買契約から引き渡しまで:注意点のチェックリスト
売買契約では、手付金を受け取るのが一般的です。買主が手付を交付した場合、相手が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、売主は受け取った手付の倍額を現実に提供して契約を解除できます(民法557条)。契約書の手付解除の期日の欄を確かめておきます。
- 境界を明示する時期と方法(引き渡しまでに杭を入れるか、確定測量をするか)が書かれている
- 契約不適合責任の範囲と期間の特約が、告知書の内容と合っている
- 固定資産税の精算の起算日と方法が書かれている
- 残置物を残すか撤去するか、エアコンや照明などの付帯設備の扱いが書かれている
- ローンが残っていれば、決済日に返済と抵当権の抹消ができるよう金融機関と司法書士に連絡した
- 引き渡しの日までに、電気・ガス・水道の名義の変更や解約の段取りを決めた
一戸建てがいくらで売れそうかの調べ方は、次の一戸建ての売却相場で扱います。マンションの場合の違いは相続したマンションの売却を読んでください。
よくある質問
Q. 境界標(境界の杭)が見当たらない一戸建てでも売れますか?
売ること自体はできますが、買主は面積や隣との境が分からない土地を避けがちで、境界をはっきりさせることを売買の条件にされることがあります。まず法務局で地積測量図があるかを確かめ、土地家屋調査士に現地を見てもらって、境界標を入れ直すか、隣地と確認するかを決めます。隣の人と話がまとまらない場合は、法務局の筆界特定制度を使う方法があります。
Q. 一戸建てを売るとき、インスペクションは売主がしなければいけませんか?
宅建業法は、媒介契約書に建物状況調査(インスペクション)をする人のあっせんに関する事項を書くよう不動産会社に求めていますが、売主に調査を義務づけてはいません。調査をすると、買主に建物の状態を示す材料になり、売った後の不具合をめぐる行き違いを減らせます。費用は調査をする事業者の料金表で確かめ、売り出し前にするかを決めます。
Q. 建物が古くて傷んでいる場合、契約不適合責任を負わない約束はできますか?
個人が売主で、買主との合意があれば、責任を負わない、または期間を短くする特約を結ぶことはできます。ただし民法572条により、知りながら告げなかった不具合については、特約があっても責任を免れません。知っている傷みは告知書に書き、知らないことは知らないと書いておくのが基本です。
出典・参考にした公的な情報
- 宅地建物取引業法 第34条・第34条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業法施行規則 第15条の7・第15条の8(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 標準媒介契約約款(国土交通省)
- 民法 第557条・第562条・第566条・第572条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不動産登記法 第123条・第131条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 筆界特定制度(法務省)
- 「土地の戸籍」に関する最新の調査実施状況を公表します(令和7年6月27日)(国土交通省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。