相続税の申告は誰がする?払う人の決まり方と連帯納付義務
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相続税を申告して納めるのは、亡くなった人から相続や遺贈で財産を受け取った一人ひとりです。遺産全体の課税価格の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると、相続税の総額が受け取った割合に応じて各人に割り振られ、税額が出た人に申告と納付の義務がかかります。申告書は相続人がまとめて1通で出すことも、別々に出すこともできます。税金は各人が自分の分を払うのが原則ですが、誰かが払わなければ、ほかの人が自分の受け取った財産の範囲で代わりに払う「連帯納付義務」があります。
相続税を申告・納付するのは財産を受け取った人
相続税法27条1項は、相続や遺贈で財産を取得した人と、相続時精算課税の適用者を申告する人と定めています。課税価格の合計が基礎控除を超え、その人に納める税額が出る場合に申告が必要です。「長男だから」「喪主だから」といった立場で決まるのではありません。
| 立場 | 申告・納付の対象になるか |
|---|---|
| 遺産分割で財産を取得した相続人 | 取得した額に応じて税額が出れば対象 |
| 遺言で財産をもらった人(相続人でない孫・甥姪・知人を含む) | 対象。配偶者・父母・子以外は税額が2割加算されることがある |
| 相続放棄をしたが、死亡保険金を受け取った人 | 対象(保険金はみなし相続財産)。保険金の非課税枠は使えない |
| 生前に相続時精算課税で贈与を受けた人 | 遺産を受け取らなくても、贈与された財産が加算されて対象 |
| 何も受け取っていない相続人 | 申告の義務はない |
気をつけたいのは、特例で税額がゼロになる人も申告が要ることです。国税庁の「相続税の申告のしかた」は、小規模宅地等の特例などを使って基礎控除以下になる場合や、配偶者の税額の軽減で納める額が0円になる人も、申告書の提出が必要だと案内しています。基礎控除を超えるかどうかの一次判定は相続税の基礎控除で一次判定する方法で確かめられます。
孫や兄弟姉妹が遺言で受け取る場合の加算は相続税の2割加算が孫・兄弟姉妹・甥姪に及ぶ理由で扱います。
申告書は共同で1通にも、別々にもできる
申告書の出し方には決まりがあります。
- 提出先:亡くなった人の死亡時の住所地を所轄する税務署。相続人の住所地の税務署ではありません。
- 期限:相続の開始を知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月目の日。土日祝日なら翌日です。国税庁の例では、2026年6月9日に亡くなった場合の期限は2027年4月9日です。
- 出し方:提出先が同じなら、財産を取得した人が共同で1通を作って出せます(相続税法27条5項)。連絡がとれないなどの事情があれば、別々に出しても差し支えありません。e-Tax でも提出できます。
| 出し方 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 共同で1通 | 分割がまとまり、相続人どうしで連絡がとれる | 全員の財産・税額が1通に載るので、互いの取得額が分かる |
| 別々に提出 | 疎遠・対立していて共同作業ができない | 相続税の総額は遺産全体から計算するので、他の人が取得した額も把握して書く |
共同で出すか別々に出すかは、税額そのものには影響しません。ただ、別々に出すと数字が食い違うことがあるので、どの財産を誰が取得したかを分割協議書などで固めてから作るのが近道です。申告全体の段取りは相続税の申告の流れ:10か月の期限までにやることにまとめています。
なお、亡くなった人自身の所得税の申告(準確定申告)は、相続税とは別の手続きで、期限は4か月です。こちらも相続人が行います。詳しくは準確定申告とは:4か月の期限・必要な人・やり方へ。
税額は「取得した割合」で各人に割り振られる
相続税は、まず遺産全体で「相続税の総額」を出し、それを各人が取得した課税価格の割合で分けます。誰がいくら払うかは、遺産分割で誰が何を取得したかで決まるということです。
国税庁「相続税の申告のしかた」の例(課税価格の合計1億円、相続人は妻と子2人)で流れを見ます。
- 基礎控除は 3,000万円+600万円×3人=4,800万円。課税遺産総額は 1億円−4,800万円=5,200万円。
- 法定相続分で分けたと仮定して税率を掛けると、妻340万円・子145万円・子145万円で、相続税の総額は630万円。
- 実際の取得額(課税価格)が妻8,000万円・子1,000万円ずつだとすると、総額630万円を取得割合で分けて、妻504万円・子63万円・子63万円。
- 妻は配偶者の税額の軽減(504万円)を受けて0円。納めるのは子2人の各63万円。
この例で妻の納付額が0円でも、軽減を受けるために妻も申告書に載ります。配偶者の軽減の範囲と、使いすぎたときの注意は相続税の配偶者控除と二次相続での注意で扱います。
| 場面 | 申告書に載る人 | 税金を納める人 |
|---|---|---|
| 妻と子2人が遺産を分けた(上の国税庁の例) | 妻・子・子 | 子2人(妻は軽減で0円) |
| 遺言で甥が預金を受け取った | 甥(ほかに取得した人も) | 甥(税額に2割加算) |
| 長男が放棄し、保険金だけ受け取った | 長男(ほかに取得した人も) | 保険金に税額が出れば長男 |
| 遺産は基礎控除以下、特例も使わない | 申告は不要 | なし |
連帯納付義務:ほかの相続人が払わないとき
相続税法34条1項は、同じ人から相続や遺贈で財産を取得した全員が、自分が受けた利益の価額を限度として、互いに連帯して納付する責任を負うと定めています。兄弟の一人が自分の相続税を滞納すると、ほかの相続人に納付を求める通知が届くことがある、という仕組みです。
国税庁「相続税の申告のしかた」が示す例です。
| 相続人 | 相続税額 | 相続で受けた利益の価額 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 0円 | 5,000万円 |
| 子1 | 50万円(納付済み) | 2,500万円 |
| 子2 | 50万円(未納付) | 2,500万円 |
この場合、子2が払っていない50万円について、配偶者と子1がそれぞれ受けた利益の範囲で連帯して納付する義務を負います。配偶者は自分の税額が0円でも対象になる点に注意が必要です。
連帯納付の対象から外れるのは、次の3つです(34条1項ただし書)。
- 本来の納税者の申告期限などから5年以内に、税務署長が連帯納付義務者に「納付通知書」を出していない分
- 本来の納税者が延納の許可を受けた分
- 本来の納税者が農地などの納税猶予を受けた分
手続きの順番も案内されています。督促状を出して1か月たっても完納されないと、連帯納付義務者に「完納されていない旨」のお知らせが届きます。納付を求めるときは納付期限などを書いた納付通知書が送られ、それから2か月たっても完納されなければ督促状が届きます。このほか、亡くなった人自身に未納の相続税があった場合や、課税の基礎になった財産が贈与などで移った場合にも連帯納付の義務が生じます(34条2項・3項)。
申告の前に相続人どうしで決めておくこと
誰が申告し、誰が払うかで後からもめないために、次の順に確かめておくと安心です。
- 相続人と財産を確定する。 戸籍で相続人を確かめ、財産と債務の一覧を作る。期限の全体像は相続の期限一覧で見られます。
- 基礎控除を超えるかを見る。 超えなければ、特例を使わない限り申告は不要です。
- 遺産分割をまとめる。 誰が何を取得するかで各人の税額が決まります。期限までにまとまらないときの申告は遺産分割がまとまらない時の相続税の申告へ。
- 共同で出すか、税理士に誰が頼むかを決める。 共同で頼めば費用の分担も話し合えます。
- 各人が期限内に納めたかを確かめ合う。 連帯納付義務があるので、他人事にしないことが大切です。払えない人がいるときは相続税が払えない場合の延納・物納・売却の比べ方を早めに読んでおきます。
文例(相続人へのメール):「相続税の申告期限は○年○月○日です。申告書は全員分を1通にまとめて提出したいと考えています。各自の納付額が決まったら、納付が済んだ日を互いに連絡し合いませんか。」
納め方(納付書・口座振替・クレジットカードなど)は相続税の納め方:期限・納付書・支払い方法で扱います。各人の税額の計算や、特例を使えるかの判定は税理士の仕事です(税理士法52条)。どこまで自分でできるかは相続で税理士は必要かを参考にしてください。
「相続税 申告 誰がする」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。
よくある質問
Q. 遺産を何も受け取らなかった相続人も、相続税の申告をしますか?
相続税法27条で申告するのは「相続や遺贈で財産を取得した人」と相続時精算課税の適用者です。遺産分割で何も受け取らず、死亡保険金や精算課税の贈与もなければ、その人に申告の義務は生じません。ただし、ほかの相続人の申告書には法定相続人の一人として名前が出ます。
Q. 相続放棄をした人にも相続税がかかることはありますか?
あります。相続放棄をしても、受取人として死亡保険金を受け取れば、みなし相続財産として相続税の対象です。このとき「500万円×法定相続人の数」の非課税枠は放棄した人には使えません。一方で、基礎控除の人数には放棄がなかったものとして数えます。
Q. 連帯納付義務は、いつまでも続くのですか?
相続税法34条1項は例外を定めています。本来の納税者の申告期限などから5年以内に、税務署長が連帯納付義務者へ納付通知書を出していない分、延納の許可を受けた分、納税猶予を受けた分は、連帯納付の対象から外れます。
出典・参考にした公的な情報
- 相続税法 第27条(相続税の申告書)・第34条(連帯納付の義務等)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国税庁「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」相続税の申告・納付・連帯納付義務(国税庁)
- 国税庁 タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税(国税庁)
- 国税庁 タックスアンサー No.4152 相続税の計算(国税庁)
- 国税庁 タックスアンサー No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金(国税庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。