実家の売却で一括査定を使う:登記前に申し込める?準備と注意点
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相続した実家の一括査定は、相続登記がまだでも申し込めます。ただし、実際に売る段階では話が変わります。買主に名義を移す登記を申請するとき、売主の名前が登記簿の名義人と合っていないと、申請は却下されます(不動産登記法25条7号)。亡くなった親の名義のままでは売れないので、査定を取りながら、相続登記と相続人の合意を進めておくのが現実的な順番です。ここでは、段階ごとに何が要るか、申し込む前の準備、注意する期限を整理します。
相続登記の前でも一括査定は申し込める:売却の段階別に要るもの
実家の売却は、査定、売却を頼む契約、売買契約、引渡しと名義変更の順に進みます。段階が進むほど、確認される事項が増えます。
| 段階 | 相続登記 | 相続人の合意 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 査定の依頼 | 登記前でも申込み可 | 1人でも依頼可。ただし早めに共有 | 机上査定なら家に来てもらう必要はない |
| 不動産会社と媒介契約 | 会社が登記簿を調べ、名義を確かめる | 共有なら売る意思の確認が要る | 相続人全員の署名や委任を求められることがある |
| 売買契約 | 売主として契約するため、名義を整える段取りが要る | 全員の同意 | 契約の時期は会社と司法書士に確認 |
| 決済と名義変更 | 買主への移転登記の前に、相続人名義にしておく | 全員の署名・押印 | 売主の名前が登記簿と合わないと申請は却下される |
売却を頼む契約(媒介契約)以降の細かい順番は、売る会社と登記を担当する司法書士によって段取りが違います。相続登記を済ませる時期だけは、早い段階で会社に聞いておきます。
相続登記には期限があります。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請する義務があり(不動産登記法76条の2第1項)、売る予定があっても義務は消えません。期限と過料は相続登記の義務化:期限3年・過料10万円以下・相続人申告登記にまとめています。相続人申告登記をしても、売却に必要な相続登記の代わりにはならない点にも注意してください。
申込みの前にそろえる書類と情報:6つの準備
一括査定の入力は、物件の所在地、種類、広さなどを聞かれます。分かる範囲で正確に入れるほど、机上査定の精度が上がります。申し込む前に、次の6つを手元に用意します。
- 登記事項証明書(登記簿):法務局で請求できます。手数料は書面で1通600円です(登記手数料令2条)。名義人、地番、地積、建物の構造と床面積、抵当権の有無が載っています。
- 固定資産税の納税通知書:毎年春に届く書類で、所在地と評価額が載っています。見当たらないときは、市区町村で名寄帳を取って親の名義の不動産を確かめます。手順は相続登記の前に名寄帳で親の不動産を漏れなく調べる取り方にあります。
- 家の情報:築年数、増改築の履歴、土地の形、前の道路の幅。分からなければ、分からないまま伝えて構いません。
- 鍵と図面の所在:建築時の図面、測量図、設計図書があるかを探します。
- 相続人の一覧:誰が相続人かを戸籍で確かめます。人数と連絡先を整理しておくと、会社とのやり取りが進みます。
- 家の中の状態の写真:荷物が多い家は、片付ける前に撮ります。残置物の扱いは実家の売却で残置物はどうする?荷物ごと売る方法と片付けの比べ方で比べられます。
建物が登記されていない場合もあります。その場合の扱いは未登記建物の相続登記:表題登記の手順としない場合の売却への影響で確かめてください。
相続人の合意を取る:査定の段階で伝えること
遺産分割が終わるまで、相続した不動産は相続人全員の共有です(民法898条1項)。共有の不動産に変更を加えるには他の共有者の同意が要るため(民法251条1項)、売却は全員の意向がそろって初めて進みます。
査定を取る前に、相続人へ一言入れておくと後の話が早くなります。
文例(相続人へのメール):「実家の売却を考える材料として、不動産会社の机上査定を取ってみようと思います。査定を取るだけで、売ると決めたわけではありません。結果が出たら共有します。進め方に希望があれば教えてください。」
遠方の相続人に手続きを任せる段階では、委任の範囲を書面にします。項目と文例は不動産売却の委任状の書き方にあります。
意見が分かれたときの進め方は実家の売却で兄弟の意見が分かれたら:合意の作り方と代金の分け方に、売ってお金で分ける換価分割を含む遺産分割の方法は遺産分割の方法4つ:現物・代償・換価・共有の違いと家の分け方にあります。
相続の放棄を考えている人は、売却を進める前に注意が必要です。相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認をしたものとみなされる場合があります(民法921条1号)。査定を取る行為が処分に当たるかは個別の判断になるので、放棄を迷っているうちは売却契約や代金の受取りに進まず、先に家庭裁判所や弁護士に相談します。
査定額・相続税評価額・固定資産税評価額は別の数字
相続した家には、似た名前の金額がいくつも出てきます。一括査定で出るのは、売り出しの目安になる査定額です。
| 金額 | 誰が出すか | 使う目的 |
|---|---|---|
| 査定額 | 不動産会社 | 売り出し価格を考える参考。売れる値段を約束するものではない |
| 相続税評価額 | 国税庁の基準で計算(路線価・倍率方式など) | 相続税の計算 |
| 固定資産税評価額 | 市区町村 | 固定資産税の計算、倍率方式の土地の評価の基礎 |
相続税の申告に使う評価額は、国税庁の定める方法で計算するもので、不動産会社の査定額とは別の数字です。土地は、路線価地域なら路線価方式、それ以外は固定資産税評価額に倍率を掛ける倍率方式で評価し、家屋は固定資産税評価額で評価します(国税庁タックスアンサー No.4602)。路線価の読み方は相続する土地の評価額の調べ方:路線価図の読み方と計算の手順で扱っています。
宅地建物取引業者は、媒介契約に書く売却価額について意見を述べるときに、その根拠を明らかにしなければなりません(宅地建物取引業法34条の2第2項)。査定書を受け取ったら、近隣の取引事例など、価格の理由が書かれているかを見て、数字だけの査定書は根拠を聞きます。査定額の高い会社が売れる会社とは限りません。根拠の聞き方は不動産の査定が高すぎる会社に注意:根拠の聞き方と売り出し価格に具体例があります。
売却を急ぐ理由になる期限:税の特例と登記
実家の売却には、税の特例の期限がつくことがあります。査定は、期限から逆算した早い時期に取り始めます。
- 取得費加算の特例:相続税が課された人が、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売ると、納めた相続税の一部を売った家の取得費に加算できます(国税庁 No.3267)。
- 空き家の3,000万円特別控除:昭和56年5月31日以前に建築された被相続人の居住用の家(区分所有建物を除く)などを、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、かつ2027年12月31日までに売ることが期限です。売却代金が1億円以下などの要件もあります(国税庁 No.3306)。令和6年1月1日以後の譲渡で、家や敷地を取得した相続人が3人以上のときの上限は2,000万円です。
- 相続登記:知った日から3年以内。遺産分割後の追加の登記は、分割の日から3年以内です。
2つの特例は同時には使えず、どちらを選ぶかは個別の計算になります。要件と期限の見方は相続不動産の売却期限:3年以内に売ると使える税の特例の早見表に、空き家特例の要件は相続した空き家の3000万円控除:特別控除の要件と2027年末の期限にあります。実際に使えるかどうかの判断は税理士や税務署に確認します。
一括査定を申し込む:入力で気をつける点
ここまで準備ができたら、一括査定の申込みに進みます。入力のときは次の点に気をつけます。
- 所有者の欄は、相続登記が済んでいなければ「相続予定」「相続した」などの選択肢を選ぶ
- 備考欄に「名義は亡くなった親のまま」「相続人は〇人で全員に共有している」と書く
- 連絡方法は、窓口になる人の連絡先に一本化する
- 土地だけを売るのか、建物付きで売るのかを分かる範囲で書く
連絡方法の指定は不動産一括査定を電話なしで使える?連絡方法の指定と注意点に、備考欄の文例を載せています。
複数社の査定額と根拠を比べる材料として、一括査定は選択肢の一つです。実家が土地中心なら、種類によって査定先が変わるので、土地の売却の一括査定:更地・古家付き・農地で変わる査定先も見ておきます。相続した不動産全体の流れは相続不動産の売却の流れ:登記から売却・申告までの順番と期限でたどれます。
よくある質問
Q. 登記の名義がまだ亡くなった親のままでも、一括査定を申し込めますか?
申し込めます。査定は売却の準備の段階で、名義を移す登記を申請する段階とは別です。申込み画面で物件の所有者を選ぶ欄があれば「相続予定」や「相続した」を選び、備考欄にも名義が親のままであることを書いておきます。売買に進むときは、相続登記を先に済ませる必要が出てきます。
Q. 相続人の1人だけで申し込んでも、あとで困りませんか?
査定を取る段階では、1人でも申し込めます。ただし遺産分割が終わるまで、実家は相続人全員の共有です。売ると決めるには他の相続人の同意が要るので、申し込んだ事実と査定額は、早めに全員に伝えておきます。話さずに進めると、売る段階で反対されて、査定にかけた手間が無駄になりかねません。
Q. 相続税の申告が終わる前に、査定を取っても問題ありませんか?
問題はありません。査定額は売るための参考で、相続税の申告に使う評価額とは別の数字です。ただし、相続税の申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月なので、査定の結果を待たずに、申告に向けた手続きも並行して進めます。税額の計算は税理士に相談できます。
出典・参考にした公的な情報
- 不動産登記法 第25条・第76条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第251条・第898条・第921条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業法 第34条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 登記手数料令(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(タックスアンサー No.3267)(国税庁)
- 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(タックスアンサー No.3306)(国税庁)
- 相続税の申告と納税(タックスアンサー No.4205)(国税庁)
- 土地家屋の評価(タックスアンサー No.4602)(国税庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。