実家の売却で先に家族が決める4つのこと:売る流れと時期の考え方
この記事のもくじ
実家を売る流れは、①家族で売るかどうかを決める → ②売主を決めて相続登記 → ③片付け → ④査定・媒介契約 → ⑤売買契約・引渡し → ⑥翌年の確定申告の順です。つまずきやすいのは①と②で、名義が亡くなった親のままだと買主へ名義を移せず、相続人が複数なら「誰が売主か」「代金をどう分けるか」が決まるまで先へ進めません。親がまだ健在なら実家の持ち主は親本人なので、売るかどうかを決めるのも親です。「いつ売るか」に法律上の期限はありませんが、登記の義務と税の特例には期限があります。
実家を売る6つの段階と、家族が決めること
段階ごとに、家族で決めることと、かかわる期限を並べます。
| 段階 | すること | 家族で決めること | 期限・時期の目安 |
|---|---|---|---|
| ①売る・残すの判断 | 住む人、維持費、売る時期を話す | 売るのか、残すのか | 税の特例を使うなら売却期限から逆算 |
| ②売主と分け方 | 相続人の確定、遺産分割、相続登記 | 売主は代表者か全員か、代金の割合 | 相続登記は取得を知った日から3年以内 |
| ③片付け | 荷物の仕分け、処分 | 残す物、担当、費用の負担 | 内見が始まる前 |
| ④査定・媒介契約 | 複数社の査定を比べ、売り出し価格を決める | 最低価格、売り出しの期限 | 専任媒介の契約は3か月以内で更新 |
| ⑤売買契約・引渡し | 契約、残代金の受け取り、鍵の引渡し | 立ち会う人、委任する人 | 引渡しの日が譲渡の日(原則) |
| ⑥確定申告 | 譲渡所得の申告 | 申告は各相続人が自分の分 | 売った翌年の2月16日〜3月15日 |
相続した不動産全般の手順は相続不動産の売却の流れにまとめています。この記事では、実家ならではの「家族の決めごと」を中心に、各段階を見ていきます。
売り出す前に家族で決める4つのこと
実家の売却が止まる原因の多くは、手続きではなく、売り出す前に決めておくべきことが決まっていないことです。次の4つを、家族で先に話し合います。
- 売るのか、残すのか。 誰かが住む、貸す、空き家のまま持つ、売る、のどれにするか。住む人がいないなら、維持費を誰が払い続けるかも一緒に決めます。判断の材料は親が亡くなった後の実家をどうするかの5つの論点で整理しています。
- 誰が売主になるか。 代表者一人の名義にして売る方法と、全員の共有名義のまま売る方法があります。代表者名義は手続きが軽くなりますが、協議書に「売って代金を分けるための名義」と書いておかないと、代金を配るときに贈与と見られるおそれがあります。書き方は相続不動産の換価分割の進め方で確かめられます。
- 代金の分け方と、費用の精算方法。 売れた代金から、仲介手数料や登記の費用、片付けの費用などを引いた残りを、誰にどの割合で渡すかを決めます。
- 売り出しの条件。 最低でいくらまでなら売るか、いつまでに売れなければ価格を見直すか、荷物は片付けてから売るかを決めます。売り出しの前には、近所や親戚に伝えるタイミングも決めます。文例は実家を売却するときの近所・親戚への挨拶にあります。
決めたことは、口約束にせず、全員が見られる形で残します。たとえば、次のようなメモをきょうだいで共有します。
実家売却の取り決めメモの例:「売主は長男名義とし、売却代金から仲介手数料・登記費用・片付け費用を引いた残りを3人で3分の1ずつ分ける。最低売却価格は査定を3社取ってから全員で決める。売り出して6か月売れなければ、価格の見直しを全員で話し合う。」
このメモはあくまで話し合いの記録で、売主の名義と代金の配分を法的に固めるには、遺産分割協議書にする必要があります。ひな形の使い方は遺産分割協議書のひな形で確かめられます。
売るためにかかるお金の目安。 仲介手数料には上限があります。国土交通省の報酬告示では、売買代金(消費税を含まない額)のうち200万円以下の部分に5.5%、200万円超400万円以下の部分に4.4%、400万円を超える部分に3.3%を掛けた額の合計が、課税事業者の不動産会社が売主から受け取れる上限(消費税込み)です。
筆者の計算例:売買代金が2,400万円なら、200万円×5.5%=11万円、200万円×4.4%=8万8,000円、2,000万円×3.3%=66万円で、合計85万8,000円が上限です(検算:2,400万円×3%+6万円=78万円、これに1.1を掛けると85万8,000円)。実際の手数料は不動産会社と媒介契約で決めるため、契約書の記載を確かめます。地方の実家などで売買代金が800万円以下になりそうなときは、空き家等の特例があり、通常の計算より多く、売主から33万円(税込)まで受け取れる場合があります(報酬告示の第七)。上の計算より高くなることがあるので、媒介契約の前に金額を確かめます。区分の詳細は仲介手数料の上限と計算式で確かめられます。
代金の分け方の例も確かめておきます(費用は仮の数字です)。売買代金2,400万円、売るためにかかった費用の合計が300万円、きょうだい3人で等分なら、(2,400万円-300万円)÷3=700万円ずつです(検算:700万円×3+300万円=2,400万円)。分け方で意見が分かれた場合は、実家の売却で兄弟の意見が分かれたときの合意の作り方と代金の分け方に進みます。
親が健在な場合と、亡くなった後の場合で変わること
同じ「実家を売る」でも、親が健在かどうかで、売主も手続きも変わります。
| 比べる点 | 親が健在 | 親が亡くなった後 |
|---|---|---|
| 売主 | 親本人(名義人) | 相続人(遺産分割で決まる) |
| 売る意思を決める人 | 親 | 相続人全員の合意(共有のままなら全員) |
| 子ができること | 親の委任を受けて準備や手続きを進める | 相続人として協議・登記・売却を進める |
| 先に必要な登記 | 不要(親の名義のまま売れる) | 相続登記(取得を知った日から3年以内) |
親が健在のうちは、子が勝手に売ることはできません。子が親に代わって進める場合の委任状や意思確認は親の家を売るとき子が代わりに進めるにはで扱っています。親の判断力が落ちていると売買契約が結べないことがあり、その場合の手続きは認知症の親の不動産売却と後見人を通す手続きで確かめます。判断力が十分なうちに、売却を任せる仕組みを作っておく方法として、家族信託で実家を売却する流れも選択肢の一つです。
税金の面では、親が実家に住んでいた間に売る場合と、施設に入って住まなくなってから売る場合で、使える特例が変わります。居住用財産の3,000万円特別控除は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件の一つです(国税庁 No.3302)。要件は自宅を売った時の譲渡所得税の3000万円控除で確かめられます。
相続登記・片付け・査定を進める順番
相続登記が先。 名義が亡くなった親のままでは売買の登記ができないので、売主になる人の名義に相続登記をしてから売ります。相続登記には、取得を知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法76条の2・164条)。相続人申告登記は義務を果たしたとみなされる手続きですが、法務省は売却には別に相続登記が必要と案内しているので、売るなら最初から相続登記を選びます。登録免許税は不動産の価額の1,000分の4で、筆者の計算例:固定資産評価証明書の価額が合計1,200万円なら、1,200万円×4/1,000=4万8,000円です。全体の手順は相続登記とはにあります。
片付けは、売り出しの前か、荷物ごと売るかを決める。 実家には、親の思い出の品、貴重品、書類、家具や衣類が残っています。きょうだいで分ける物と処分する物を先に決めないと、片付けの途中でもめます。進め方は実家の片付けの進め方にあります。荷物を残したまま売る方法は実家の売却で残置物はどうするかで比べられます。
査定は複数社で、根拠まで聞く。 不動産会社は、媒介契約書に査定額などの価額を書いて意見を述べるときは、その根拠を明らかにする義務があります(宅建業法34条の2第2項)。査定額の高さだけでなく、「なぜその額か」を各社に聞いて比べます。専任媒介契約の有効期間は3か月が上限で、更新するかどうかは売主が決められます。
実家はいつ売るか:期限から逆算して決める
「いつ売るか」の答えは家族によって違いますが、動かせない期限は先に確かめておきます。相続登記は取得を知った日から3年以内、相続税の申告は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 No.4205)。取得費加算の特例と空き家の3,000万円特別控除にも売る期限があり(No.3267・No.3306)、2つの特例は同じ実家で重ねて受けられません。どちらが有利かは相続税額や売却益の大きさで変わるので、期限の数え方と比較は相続不動産の売却期限と税の特例の早見表、要件は相続した空き家の3000万円控除と取得費加算の特例で確かめます。
売り出しから買主が見つかるまでの期間は、地域や物件によって大きく違います。特例を使いたい場合は、期限の日に引渡しが終わっている必要があるので、売り出しは期限の半年から1年ほど前に始める計画にすると、価格の見直しにも余裕が持てます。一方で、特例の期限に間に合わせるために、気持ちの整理がつかないまま急いで売る必要はありません。特例が使えなくても売ること自体はできます。売って利益が出るかどうかは、取得費と費用を整理して見積もります。
売った後の確定申告は、各相続人が自分の分を行う
売って利益が出たら、売った年の翌年2月16日から3月15日までに譲渡所得の確定申告をします。譲渡の日は原則として引渡しの日です(国税庁 No.3102)。実家を共有や換価分割で売った場合は、相続人がそれぞれ自分の分を申告します。
実家の取得費と取得の時期は、亡くなった親のものを引き継ぎます(国税庁 No.3270)。親が実家を買ったときの売買契約書や、建てたときの契約書が見つかると、取得費の計算が楽になるので、片付けの際に探しておきます。売買契約書の写しや登記簿、固定資産税の通知書は、申告で使う書類です。
売る前の査定で、複数の不動産会社に売却価格の意見を聞きたいときは、一括査定サービスも選択肢の一つです。査定額は売り出し価格の目安で、その額で売れるとは限りません。申し込むと複数社から連絡が来ること、査定を見てから売らない判断をしてもよいことを踏まえて使います。
よくある質問
Q. きょうだいの一人が実家を売ることに反対しています。売り出してもよいですか?
遺産分割が終わっていない実家は相続人全員の共有で、家全体を売るには全員が売主として契約に加わる必要があります。一人でも反対していると売買契約は結べないので、売り出しの前に反対の理由を聞き、条件を出し合います。話し合いで決まらない場合の進め方は、実家の売却できょうだいの意見が分かれたときの記事で順に説明しています。
Q. 実家に荷物が残ったままでも、査定や売り出しはできますか?
査定は荷物があるままでも頼めます。売り出しや内見は、荷物の量によって見え方が変わるので、売る前に片付けるか、荷物ごと売るかを不動産会社と相談して決めます。親の持ち物は相続人の共有財産なので、勝手に処分せず、残す物を相続人に先に聞いてから進めます。
Q. 親が元気なうちに、子どもの判断で実家を売ることはできますか?
実家の持ち主は親本人なので、売る意思を決めるのは親です。子が代わりに手続きを進めるには、親の委任状と意思の確認が要ります。親の判断力が落ちてからでは売る手続きが止まることがあるため、元気なうちに本人を交えて話しておくと、後の選択肢が広がります。
出典・参考にした公的な情報
- 相続登記の申請義務化について(法務省)
- 相続人申告登記について(法務省)
- 不動産登記法 第76条の2・第76条の3(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 登録免許税法 別表第一(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第898条・第907条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(報酬告示)(国土交通省)
- 宅地建物取引業法 第34条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- タックスアンサー No.3102 譲渡所得の申告期限(国税庁)
- タックスアンサー No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期(国税庁)
- タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例(国税庁)
- タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
- タックスアンサー No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(国税庁)
- タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税(国税庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。