贈与税とは?110万円の基礎控除・税率・申告と親子の贈与の注意点
この記事のもくじ
贈与税は、個人から財産をもらった人にかかる税金です。よく使われる暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計から基礎控除110万円を引き、残りに10%〜55%の税率を掛けます。1年間の合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も要りません。超えたときは、もらった翌年の2月1日から3月15日までに、もらった人が申告して納めます。この記事では、基礎控除・税率・申告・制度の選び方を通しで示し、詳しい話はそれぞれの記事へ渡します。
贈与税とは:誰に、いつ、どんなときにかかるか
贈与税がかかるのは、個人から贈与で財産を取得したときです。会社など法人からもらった財産には贈与税ではなく所得税がかかります(国税庁 No.4402)。税金を納めるのは、もらった人(受贈者)です。
贈与は、あげる人が「無償で与える」と意思を示し、もらう人が受け入れることで成り立つ契約です(民法549条)。この「受け入れる」があることが、あとで説明する名義預金の問題につながります。
現金を渡したときだけが贈与ではありません。国税庁は、次のような場合も贈与を受けたものとみなして贈与税をかけるとしています。
- 自分が保険料を払っていない生命保険の満期金などを受け取った(例:父が保険料を払い、子が満期金を受け取る)
- 借金を返さなくてよいと免除してもらった、肩代わりしてもらった
- 親からお金を借りたが、「ある時払いの催促なし」「出世払い」のように返す前提がない(No.4420)
一方、亡くなった人が自分を被保険者として保険料を払っていた死亡保険金は、贈与税ではなく相続税の対象です。もらったお金が贈与税・相続税・所得税のどれになるかは、誰が払い、誰が受け取ったかで決まります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| かかる人 | 個人から財産をもらった人(受贈者) |
| 数える期間 | 1月1日〜12月31日の1年間の合計 |
| 基礎控除 | 年110万円(もらう人ごと) |
| 税率 | 10%〜55%。直系尊属から18歳以上の子・孫への贈与は特例税率 |
| 申告と納税 | もらった翌年の2月1日〜3月15日 |
| 提出先 | もらった人の住所地の税務署 |
| かからないもの | 扶養義務者からの通常必要な生活費・教育費、社会通念上相当な祝い金・香典など |
110万円の基礎控除と税率:いくらから、いくらかかるか
暦年課税の基礎控除はもらう人ごとに年110万円です。父と母から同じ年に100万円ずつもらえば合計200万円で、110万円を超えます。あげる人の数で枠が増えるわけではありません。数え方の細かい点(年をまたぐ場合、毎年同じ額をもらう場合)は贈与税はいくらからかかるかの記事で扱います。
税率は、基礎控除を引いた後の金額に応じて上がる累進税率で、2種類あります。
| 区分 | 使う場面 | 税率の幅 |
|---|---|---|
| 特例税率(特例贈与財産) | 父母・祖父母など直系尊属から、贈与の年の1月1日に18歳以上の子・孫がもらう | 10%〜55%(4,500万円超で55%) |
| 一般税率(一般贈与財産) | 上以外(兄弟姉妹・夫婦・未成年の子など) | 10%〜55%(3,000万円超で55%) |
国税庁の例では、500万円をもらったとき、一般税率なら53万円、特例税率なら48.5万円です。基礎控除後の390万円に、一般税率は20%を掛けて25万円を引き、特例税率は15%を掛けて10万円を引いて求めます。配偶者の父母(義理の父母)からの贈与は直系尊属ではないので、特例税率は使えません。
金額ごとの早見表と、一般と特例の両方を同じ年にもらったときの計算は、贈与税の税率と計算の速算表にまとめています。
贈与税がかからないもの:非課税になる代表例
110万円を超えても、贈与税の対象にならないものがあります(No.4405)。
- 生活費・教育費:夫婦や親子など扶養義務者から、通常必要な生活費・教育費を、必要な都度直接充てるためにもらうもの。もらったお金を預金したり、株や不動産の購入に充てたりした分は対象になります
- 社会通念上相当な祝い金など:香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物、見舞い
- 相続した年の贈与:相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなった年に亡くなった人から受けた贈与(相続税の計算に入れる)
- 特例の非課税分:住宅取得等資金の非課税(2026年12月31日までの贈与が対象。省エネ等住宅1,000万円、それ以外500万円)、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税
教育資金の一括贈与の非課税は2026年3月31日で終わり、2026年4月1日以後は新たに使えません。「教育費を出してもらう」なら、学費をその都度払ってもらう形が非課税の答えになります。特例ごとの一覧は贈与税が非課税になるもの一覧、住宅資金は住宅取得等資金の贈与の非課税、夫婦の居住用不動産は贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)で扱います。
申告と納税:翌年2月1日〜3月15日に、もらった人が出す
申告が必要なのは、暦年課税で1年間の合計が110万円を超えたときと、相続時精算課税を選んで110万円を超える贈与を受けたときです。住宅取得等資金の非課税や配偶者控除は、税額がゼロでも申告することが使う条件になっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | もらった翌年の2月1日〜3月15日(2026年中の贈与なら2027年2月1日〜3月15日) |
| 提出先 | もらった人の住所地を所轄する税務署 |
| 出し方 | e-Tax、郵便・信書便、税務署の時間外収受箱 |
| 作り方 | 国税庁の確定申告書等作成コーナーで作って送信するか、印刷して提出 |
| 納付 | 3月15日まで。振替・クレジットカード・コンビニ(30万円以下)・窓口など |
| 延納 | 税額10万円超で一度に納めるのが難しいとき、5年以内の年賦(利子税あり) |
所得税の確定申告とは別の手続きです。作成コーナーの使い方や添付書類は贈与税の申告のやり方で順に説明します。
申告しないまま放っておくと、無申告加算税と延滞税がかかります。税務署は贈与税の調査で現金・預貯金の移動を多く指摘しています。何が起きるかは親子の贈与税はばれるのかの記事に、税務署が課税できる期間(6年・7年)は贈与税の時効の記事にまとめました。
暦年課税と相続時精算課税:どちらで受けるか
贈与税の課税方法は、暦年課税と相続時精算課税の2つです。もらう人は、あげる人ごとにどちらかを選べます(父からは精算課税、母からは暦年課税、のように)。
| 比べる点 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 使える人 | 制限なし | あげる人:その年1月1日に60歳以上の父母・祖父母など/もらう人:18歳以上の子・孫 |
| 毎年の控除 | 110万円(もらう人ごと) | 110万円(もらう人ごと。2024年1月以後の贈与) |
| ほかの控除 | なし | あげる人ごとに累計2,500万円の特別控除 |
| 超えた分の税率 | 10%〜55% | 一律20% |
| 相続のとき | 亡くなる前一定期間の贈与を相続財産に加算 | 110万円を引いた残りの贈与額を、すべて相続財産に加算 |
| やめられるか | ― | 一度選ぶと、その人からの贈与は暦年に戻せない |
精算課税は「2,500万円まで贈与税を先送りし、相続のときにまとめて相続税で精算する」仕組みです。国税庁の例では、父から毎年1,000万円を3年もらうと、1年目と2年目は贈与税0円、3年目は特別控除の残りを超えた170万円に20%で34万円、相続のときは2,670万円を加算します。
暦年課税の側にも注意点があります。相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなった人から亡くなる前の一定期間に受けた贈与は、相続税の計算に足し戻されます。2026年中の相続なら3年以内の贈与で、2027年1月以後の相続から段階的に7年へ延びます。相続開始日ごとの期間は生前贈与の加算期間の早見表が正本です。
どちらが有利かは、財産の額・家族の構成・あげる人の年齢で変わります。制度ごとの詳しい説明は相続時精算課税とはと暦年贈与とは、比べ方の考え方は贈与税と相続税の比較で扱います。贈与の全体の進め方は生前贈与のやり方へどうぞ。
ここから先の「我が家の場合、どちらで、毎年いくら贈与すると相続税と合わせて税が少なくなるか」は個別の税額の計算で、税理士の仕事です(税理士法52条は、税理士でない者が他人の求めに応じて税務相談をすることを禁じています)。相続税がかかりそうな家庭で、精算課税の選択や数年がかりの贈与を考えるときは、試算を頼む先として税理士を探すことになります。紹介サービスを使う場合も、試算や申告をするのは紹介された税理士で、紹介会社ではありません。費用と担当範囲は見積書で確かめてください。
親子の贈与で注意すること:名義預金と記録
親子の贈与でつまずきやすいのは、「子ども名義の口座にお金を移したのに、贈与になっていなかった」という形です。贈与はもらう人が受け入れて成り立つので、子どもが口座の存在を知らない、通帳や印鑑を親が持ったまま、という状態では、親の財産のままと扱われることがあります。その場合、親が亡くなったときに相続財産として相続税の対象になります。
贈与として残すために、次の点をそろえておきます。
- 贈与のたびに、あげる人・もらう人・金額・日付を書いた贈与契約書を作り、双方が署名する
- 現金の手渡しではなく、もらう人本人の口座へ振り込む(記録が残る)
- 通帳・カード・印鑑は、もらう人が自分で管理する
- 110万円を超えた年は、翌年3月15日までに申告して納める
契約書に書く例:「贈与者 山田一郎は、受贈者 山田花子に対し、現金100万円を贈与し、受贈者はこれを受諾した。贈与者は2026年11月30日までに受贈者名義の口座に振り込む。」
お金を貸すつもりなら、贈与ではなく貸し借りとして、借用書と毎月の振込による返済の記録を残します。返済の能力や状況からみて本当に貸し借りなら贈与にはなりませんが、無利子の場合は利子にあたる分が贈与とされる場合があります(No.4420)。契約書のひな形は暦年贈与の契約書の書き方、親子ならではの場面は親から子への贈与のしかたで扱います。
読む順(入門から手続き、深掘りまで)
状況ごとに、次の順で読むと迷いません。
- まず仕組みを固める:贈与税の税率と計算、夫婦間の贈与税はいくらから、贈与税が非課税になるもの一覧
- 制度を選ぶ:孫への暦年贈与、相続時精算課税のデメリット、精算課税と暦年贈与の併用、相続時精算課税の手続き
- 財産の種類ごとの手続き:不動産の生前贈与、株式の生前贈与、車の生前贈与、教育資金の生前贈与
- 相続との関係:暦年贈与の7年加算の対象者、生前贈与と遺留分、生前贈与で相続トラブルになる例
- 誰に頼むか:生前贈与の相談先、生前贈与の登記を司法書士に頼む費用、暦年贈与のサービス(信託銀行)
- 親の判断力が心配なとき:親が認知症になったら暦年贈与はできないのか、生前の相続対策は何からか
よくある質問
Q. 親から子への贈与にも贈与税はかかりますか?
かかります。親子でも、1月1日から12月31日までにもらった財産の合計が110万円を超えれば暦年課税の贈与税の対象です。ただし、その年の1月1日に18歳以上の子が親や祖父母からもらう分は、一般より低い特例税率で計算します。生活費や教育費を必要な都度払ってもらう分は、贈与税の対象外です。
Q. 贈与税は、あげた人と、もらった人のどちらが払いますか?
申告して納めるのは、もらった人(受贈者)です。申告先も、もらった人の住所地の税務署です。なお、国税庁の案内では、あげた人ともらった人の間に連帯納付の義務があるとされており、もらった人が納めないときは、あげた人が納付を求められることがあります。
Q. 贈与税がかからない方法はありますか?
法律で非課税とされているものを使う方法があります。年110万円以下に収めること、生活費・教育費を必要な都度直接払うこと、住宅取得等資金の非課税(2026年12月31日までの贈与が対象)、婚姻20年以上の夫婦の配偶者控除などです。名義だけ子どもの口座に移す方法は、贈与と認められず相続財産として扱われることがあるので、贈与税を逃れる手段にはなりません。
出典・参考にした公的な情報
- No.4402 贈与税がかかる場合(国税庁)
- No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)(国税庁)
- No.4405 贈与税がかからない場合(国税庁)
- No.4429 贈与税の申告と納税(国税庁)
- No.4103 相続時精算課税の選択(国税庁)
- No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)(国税庁)
- No.4420 親から金銭を借りた場合(国税庁)
- 暮らしの税情報(令和8年度版)財産をもらったとき(国税庁)
- 民法 第549条(贈与)(デジタル庁(e-Gov法令検索))
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。